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sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:博士と彼女のセオリー

2015-06-22 | 映画


映画祭のトークイベントのために見た映画。
そうでなければ見るつもりがなかったのは放題のせいだな。
博士と彼女のセオリー、ってお涙頂戴の感動モノの匂いがする。
でも原題は The theory of everything (すべてのセオリー)
これは映画の中で何度も出てくる、
宇宙を、世界を解明するシンプルで美しいはずの
ひとつの完璧な方程式、あるいは理論、のことで
アインシュタインを始め、世界を解明しようとする科学者が
夢見ることのひとつです。(という理解であってるのかな?)
なのに、邦題ではメロドラマにしか思えない(メロドラマ好きだけど)。

前半は、若きふたりの出会い。
ホーキングは若くて才能あふれる大学生で、家族の愛情にも包まれて、
何不自由なく勉強も余暇も満喫する毎日。
そこで出会った同じ大学のジェーンと恋に落ちます。
こういう出会いのところ、変人でオタクっぽい若きホーキングでも
女の子を誘うのは躊躇せずに積極的なんですね~。
そして、この辺はみずみずしい描写で、素敵です。
星空、花火、メリーゴーランド、螺旋階段、緑あふれるケンブリッジ大。
コーヒーにミルクを垂らし、その動きを注視するシーン、
友情で彼を支える仲間達、気持ちいいシーンがいっぱいで、うっとり。
(予告にもそれらのシーン結構入ってます)

そして彼女を最初に誘って連れて行ったのが自分ちのディナー。
その後も、けっこうそういうシーンが多くて、
後半でも、ちょっと知り合いになった人を招くのは自分の家の食事。
日本では、家の食事に呼ぶのは、結構親しい人になると思うんだけど、
友達や恋人を、よく知り合う前でもカジュアルに家に招くのが
特別なことじゃなくよくあることなんだなぁ。

ホーキングの家族も、ジェーンの家族も、中流以上?の家庭で
両親もそれぞれ多分インテリ階層で理解がある上品な人たちです。
そういえば、この映画、いい人しか出てこないです。
騙す人も搾取する人も陥れる人もない。貧しい人も妬む人もいない。
そういう意味で、案外起伏のない映画です。
でも、そこを無理に事件作って盛り上げないのが
一応モデルのいる映画の制約でもあり、いいところでもあるかな。

ふたりは恋に落ちて幸せな時間を過ごしますが、
ホーキングが病気を発症して余命2年と言われてしまう。
この時の彼はいいなぁと思う。
全くやけを起こしてないかというと、そうではないけど
決して人には当たらず、絶望の近くにいてもユーモアは忘れない。
いい男だなぁ。
こういうひょろりとした頭のいい人というのが、そもそもかなり好みです。
変人だけど、常にユーモアがあって、気持ちの余裕のある情緒的に安定した人。
ホーキングの役をしているのは→「ジュピター」でキレまくる(そしてキレのある)
不気味な長男を演じてたエディ・レッドメインですけど、
(ホーキング役でアカデミー主演男優賞時受賞。納得のうまさ)
この人の顔は、もともと少し好みだし、
ジェーンの役の子もかわいいし、主演が好みのタイプだと
映画を見るのはかなり楽しくなります。

「わたしは強い人間には見えないかもしれないけど彼を愛してるし
彼もわたしを愛してる」と言って、ジェーンはホーキングと結婚します。
このあと介護生活に入るのだけど
日常の大変さのディテールはあまり描かれない。
でも子供を続けて産み育てながら、彼を支えるジェーンの疲労が
どんどん積もっていくのは、うまく表現されています。
映画で見る限り、ジェーンの愛情は強いけど
愛情たっぷり、というふうには見えません。
最初から、夫を甘やかさず、
できることはぎりぎりまで自分でさせるやり方だったけど、
年月を経るにつれ、彼女の顔から笑顔が少なく
こわばった表情が目立ってくる。

以降ネタバレ。
まあ事実に沿っているので、知ってる人は知ってたでしょうけど
わたし、知らずに見たので、びっくりしました。
ジェーンはひとりでギリギリやってきた家のことを助けてもらい、
子供達にも家族の楽しい時間を持たせようと、
聖歌隊で知り合ったジョナサンに、ホーキング同意の元、助けを求めます。
ジョナサンは奥さんをなくして一人ぼっちになった人ですが
健康で明るく穏やかで優しく、神を信じる温かい人。
彼にしょっちゅう家に来てもらい、家族同様に過ごすうちに、
無神論者で、病気も進行しているホーキングには与えてもらえない
やすらぎを覚えて彼に惹かれていきます。
でもいつしか二人のことが噂になってしまい、彼は去ります。

その間にも研究が進んで有名になっていくホーキング。
そして病気の進行で口がきけなくなった彼の
世話係兼秘書的な人として雇われた明るくおおらかな女性に、
今度はホーキングが惹かれるようになります。
結局、夫婦は別れることになりますが、映画では円満な別れ方です。
お互いに愛情も尊敬もあり、相手を尊重しあったままの別れ。
ホーキングは秘書?の女性とアメリカへ。
ジェーンはジョナサンと再び会って、結婚します。

その辺、あんまり無理にドラマチックにせず、淡々と描かれています。
最後まで寄り添った感動物語かと思ってたので
後半は、そうだったのか!と驚きながら見ましたが
30年連れ添い支えた妻を、感動的に描きすぎることなく
かといって、別れをドライに描きすぎることもなく、
愛情は、変わらなくても変わるんだなぁというか、なんというか、
諸行無常だなぁと感慨深い映画だと思いました。
思ってたよりずっとよかった。好きな映画です。

ただ最後で、ふたりで、僕らの作り上げたものを見てごらんと言って
自分たちの子供3人を眺めるシーンというか、そのセリフは蛇足。
センチで安っぽい家族主義で終えなければいいのにとそこだけ不満。

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