アイルランドのダブリンが舞台の映画。
思ってたようなハートウォーミングな感じだけじゃなく、
孤独のしみいるいい映画でした。
チラシやポスター見たら→「ル・アーブルの靴磨き」みたいな映画かなと思うけど
それもまた違って、もう少し柔らかくわかりやすいかなぁ。
イギリスの映画って、スコーンと空が広がってるような感じがなくて
どこか、居心地よくごちゃっとしたところがあって、いいなと思うことが多い。
ロンドンで時計職人をしていた初老の男が、失職し、住むところもなくし
田舎に戻ってくるけど、住所不定のせいで失業手当や年金などがもらえない。
何度も手続きにいくけど、毎回新しい書類を渡されて門前払い。
駐車場に止めた車の中で生活しているんだけど
同じ駐車場で車内生活をしている若者、カハルに懐かれて
不承不承連れ回されているうちに気持ちが通じ合い・・・
主人公が好きになる女性の静かで落ちついた生活が素敵です。
カハルにそそのかされて、車をとばして危ない運転をするところ、
それで、やってみたあと、気持ちいい!と笑うとこ、ここも好き。
ロンドンに長かった設定の主人公の英語は聞き取れても
ダブリンっ子のカハルの英語の訛りは、わたしには聞き取れなかったし、
カハルが明るく元気な若者役でも、ドラッグと貧困のせいか
歯は汚く黒ずんでいるところ、とかのディテールも丁寧に作られてて良い。
ラストはちょっと悲しいんだけど(個人的にはすごく悲しかった)
希望のある終わり方で、これから主人公は、きっと
空虚ではなく暖かいものに囲まれる人生になるだろうと思える。
そして
異常に人懐こくて、明るく騒々しくて、オープンで、
悪ふざけが好きなドラッグ中毒の男の子カハル。
何も抱えてないような顔でふらふら生きていて、目だけがすんでいる、
こういう子知ってる。知ってた。
ものすごく人なつこく調子がよくいつもテンション高く女好きで
いつ見てもハーブやっててお酒も飲んでて、何もこわがらないし、
でもキレたらいつか人を殺したりするんじゃないかと思うような
危ないところのある子、知ってた。
実際に新聞沙汰の事件を何度か起こしたこともある。
何年も会ってなくて消息もわからなかったけど、
先週だったか数年ぶりに電話が来てびっくりした。
生きてたのね、とほっとした。
好きな人たちには、ものすごく優しい子です。
わたしにはやさしかったけど、それでも危ない子だと思ってたので
常に距離は測ってた。
どこか投げやりな生き方で、その場しのぎ的に楽しく過ごしていたけど
緩慢に死の方を向いているようにしか見えなかくて、そういう子って、
一蓮托生くらいの覚悟がないと助けることはできないし、
わたしにはそんな覚悟もないし、
ただの友達の友達で、そこまでの関係でもなかったし。
まともじゃない、と思うこともあったけど、時々すごく目が澄んでいて、
こういう目が澄んでる人は本当に怖いからなぁ。
こういう子には人間じゃない成分があるんだと思う。
天使か悪魔か両方か。
そういう人は長生きしないし、この子もいつまで生きているだろうと、
やっぱり思う。
映画の中の青年の運命と重ねて、思い出してしまった。
わたしの知ってた子は、きれいな子ではなかったけど
→「千年の愉楽」の中本の男たちみたいなところがあるんだよな。
汚れて澱んでいて無垢、みたいな。
投げやりでやけくそで、でも、あっけらかんと死にそうな。
自分のお葬式で流すのはこれにしてくれと言われた曲があるけど、
お葬式があってもわたしの知らないうちに終わってるでしょう。
こんな風に、思い出すと、切ない人ばかりやなぁ。
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