Sightsong

自縄自縛日記

ジャック・デジョネット『Made in Chicago』

2015-01-18 09:10:12 | アヴァンギャルド・ジャズ

ジャック・デジョネット『Made in Chicago』(ECM、2013年)。

最近これほどまでに楽しみにしていた盤はなかった。何しろ、ヘンリー・スレッギル、ロスコー・ミッチェル、ムハール・リチャード・エイブラムスというAACMを代表する面々の共演である。スレッギルとミッチェルとは、記憶では、70年代の『Nonaah』や『L-R-G / The Maze / S II Examples』において共演しているものの、これまでさほど大きな録音での絡みはなかったのではないか。スレッギルとエイブラムス、ミッチェルとエイブラムスとはいくつもの印象深い接点があった。

あまりそのような印象はないが、デジョネットもれっきとしたシカゴ人脈である。60年代前半には、スレッギル、ミッチェル、デジョネットともに、エイブラムスの「エクスペリメンタル・バンド」に入っていた経緯がある。(デジョネットはその後すぐにニューヨークに進出し、チャールス・ロイドのグループに入った。)

Henry Threadgill (as, bass fl)
Roscoe Mitchell (sopranino sax, ss, as, baroque fl, bass recorder)
Muhal Richard Abrams (p)
Larry Gray (b, violoncello)
Jack DeJohnette (ds)

そんなわけで、昨日入手してからずっとこればかり聴いている。

もっとも心を動かされるのは、ミッチェルの変態ぶりだ。Joeさんのレビューの通り、かれのサックスは、確信犯的に「呪術的」で「ぐじゃぐじゃ」なのだ。ミッチェルは昔からそうなのだが、今なお過激。余人の到達できないところに平然として立っているように見える。

それに対峙して、スレッギルもまた強烈な存在感を発散する。ミッチェルのソロのなかに唐突に入っていくフルートのおぞましさなんて、もうぞくぞくさせられるのだ。そして時空間を刃の粗いナイフでざくりと切り裂いていくようなサックスも健在。もはやかつてのように吹きまくるわけではないし、自身のリーダー作のようにおそろしく緊密なアンサンブルで固めるわけではないのだが、個性だけは消しようもなく残っている。これは感涙ものだ。

もちろん、巨大な石の空間に鳴り響くような奥深さを持つエイブラムスのピアノも素晴らしい。このメンバーの中でデジョネットの影はどうしても薄くなってしまうが、そうはいっても、硬直化されない自遊空間を作りあげているのは、かれのドラムスに違いない。

何度聴いても捉えきることができない音楽である。熱烈推薦。

●参照
ヘンリー・スレッギル(1)
ヘンリー・スレッギル(2)
ヘンリー・スレッギル(3) デビュー、エイブラムス
ヘンリー・スレッギル(4) チコ・フリーマンと
ヘンリー・スレッギル(5) サーカス音楽の躁と鬱
ヘンリー・スレッギル(6) 純化の行き止まり?
ヘンリー・スレッギル(7) ズォイドの新作と、X-75
ヘンリー・スレッギル(8) ラップ/ヴォイス
ヘンリー・スレッギル(9) 1978年のエアー
ヘンリー・スレッギル(10) メイク・ア・ムーヴ
ヘンリー・スレッギル(11) PI RECORDINGSのズォイド
ワダダ・レオ・スミス『The Great Lakes Suites』(スレッギル、デジョネット参加)
ワダダ・レオ・スミスのゴールデン・カルテットの映像(デジョネット参加)
テリエ・リピダル+ミロスラフ・ヴィトウス+ジャック・デジョネット
キース・ジャレット『Standards Live』(デジョネット参加)
『Tribute to John Coltrane』(デジョネット参加)
アリス・コルトレーン『Universal Consciousness』、『Lord of Lords』(デジョネット参加)
ムハール・リチャード・エイブラムスの最近の作品
『Interpretations of Monk』(エイブラムス参加)
ロスコー・ミッチェル+デイヴィッド・ウェッセル『CONTACT』
アート・アンサンブル・オブ・シカゴの映像『LUGANO 1993』(ミッチェル参加)
アート・アンサンブル・オブ・シカゴ『苦悩の人々』(ミッチェル参加)
アート・アンサンブル・オブ・シカゴ『カミング・ホーム・ジャマイカ』(ミッチェル参加)


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