北京オリンピック、スノーボード男子ハーフパイプで金メダルを獲得した平野歩夢選手。
決勝直後のインタビューで、「2本目の点数はちょっと納得いってなかったが、怒りが自分の気持ちの中でうまく最後に表現できた」と語った。
日本では「怒り」はご法度。「アンガーコントロール」とか「アンガーマネジメント」とか言って、とかく「怒り」という感情を抑える傾向にある。「怒り」に任せるような行為はIQの低い人、「金持ちはけんかをしない」
のが日本のスタンス。
米国の小説家スタインベックの作品に「怒りの葡萄」がある。1930年代・恐慌中の疲弊した中西部の農家の悲惨な実態を描いている。
男たちが集まって善後策を講じている状況を、女や子供たちが見守っている。男たちの顔に「怒り」が残っているのを確認すると、女は洗濯に子供は遊びに行く。男たちの顔から「怒り」が消えたときこそ心配しなければならない、ということを女たちは知っている。
平野歩夢選手が「怒りの気持ちを 最後に表現」と言ったことで、随分前に読んだ作品の一節が思い出された。
こういう若者が登場したことは、従来型の日本人に多くの教訓を残した。不条理に対する「怒り」をエネルギーに、結果を出すことはすばらしいという教訓だ。
ともすれば日本人は多くの場合「泣き寝入り」を選んできたからだ。