向田邦子との二十年 久世光彦著
「触れもせで」というタイトルにひかれて読んでみた。描かれている向田邦子の作品には人を引き付ける妙な魅力がある。彼女の作品にはある種の「毒気」を含んでいるようだ。
「思いでトランプ」を短編小説と言っていいか、エッセイ集に分類するかを問わず、「毒気」をこっそり仕掛けてある。
最初に読んだときはヒッチコックの一連の作品のような気がした。彼特有のサプライズエンディングを彷彿させる。とかくエッセイ集と言えば読んでいる間、生ぬるい湯に浸かっているような気がしていた。「誰でも書ける」というイメージが先行しているせいか、あまり興味を持たなかった。彼女の作品にみられる「毒気」はスパイス以上の効果を持っている。
この作品の著者も、彼女と接する職業柄というよりも、彼女への「レスペクト」が本からあふれ出ている。「仕事上の付き合い」がいつか「男女の関係」を連想しないほうがおかしい。しかし著者は「レスペクト」という「国境線」を自ら引き、超えることなく時には冷静に彼女を見つめ続けた。恋愛小説としてもレベルは高い。
二十年間「触れもせで」彼女を見つめ・添い続けた著者の「熱」が行間に潜む。
誘拐されたCIA女性工作員の救出劇。戦闘シーンがどっしりと思い感じがする。実際の隊員を出演させたとか、実際の武器を使用したとかの効果が出ているようだ。
救出する舟艇との銃撃シーンは圧巻だ。曳航弾が行きかうシーンは新しい。『ブラックホークダウン』を思い出した。両作品とも地味だが丁寧に作られている。劇中、隊員側に投げられた手榴弾に自分の体をかぶせて他の隊員を爆発から救う場面には感動した。しかし、全体的に二つの事件を扱うことには無理があるようだ。どちらかに絞るほうがインパクトは強いはずだ。惜しい。
評価 B
救出する舟艇との銃撃シーンは圧巻だ。曳航弾が行きかうシーンは新しい。『ブラックホークダウン』を思い出した。両作品とも地味だが丁寧に作られている。劇中、隊員側に投げられた手榴弾に自分の体をかぶせて他の隊員を爆発から救う場面には感動した。しかし、全体的に二つの事件を扱うことには無理があるようだ。どちらかに絞るほうがインパクトは強いはずだ。惜しい。
評価 B