蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

春の海

2024年03月10日 | 本の感想
春の海(宮城道雄 岩波文庫)

箏などの和楽器の演奏家で作曲も描けた宮城道雄の随筆集。

著者は、幼い頃に視力を失い、以来、箏や三味線などの修行を積み、当代一の演奏家となって、「春の海」などの作曲でも名を馳せた(そうである)。

視力に障害があることを嘆くような記述は一切なく、聴覚と触覚などの残された感覚を使って、音楽や生活、内田百閒や水谷八重子などとの華やかな交際をこなしていく。
筆致はどこまでも軽快で、戦中に疎開した経験を記したような箇所においても、どこかユーモラスな雰囲気を帯びている。

出色は「四季の趣」で、聴覚で季節の味わいを表現した内容は、何度読み返しても、ふんわりと気分を高揚させてくれる。

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