蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

七王国の玉座

2021年07月18日 | 本の感想
七王国の玉座 (ジョージ・RR・マーティン ハヤカワ文庫)

角川映画のコピー(読んでから見るか、見てから読むか)じゃないけど、映像化作品の原作と映画のどちらを先に鑑賞するべきかは、かなり悩ましい。
本作の場合、私は長大なテレビシリーズの半分くらいをみたところで、原作を読み始めた。結果、原作を先に読むべきだった、と後悔した。
著者があとがきで、細部を重視している旨のことを書いているが、おそらく本作は、事前に設定を相当に細かく作っていると思われ、その設定がまた複雑なので、映像(それでもかなり原作に忠実だと思ったが)だけでは全貌を理解するのに無理がある。

例えば、筋書き上超重要な、
ロバートとスタニス、レンリーとの関係とか、
ベイリッシュ公とキャトリンの過去のいきさつ(狡猾そのもののベイリッシュの動機が実はピュアすぎることは原作を読まないと(私には)わからなかった)
などは映像からはわかりにくかった。

映像と原作でズレているところもいろいろあって、
(大変失礼ながら)映像ではキャトリンはおばさんなんだけど、原作ではまだ若い魅力にあふれた女性となっている、
映像では主役にみえるロブが、原作では(重要な役割ながらも)端役程度、
何より、原作に比べて、映像の方は登場人物の年齢が10歳くらいは進んでいる(これは致し方ないとは思うが)等々

原作では出番が少なめだが、タイウィン・ラニスターは、原作でも映像でも冷血ぶりがカッコよかった。
ジョンの出番(ナイトウォッチの場面)は原作でも映像でも退屈だった(でも、きっとジョンが最後の勝者になるんだろうなあ??)
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その犬の名を誰も知らない

2021年07月18日 | 本の感想
その犬の名を誰も知らない(嘉悦洋 北村泰一監修 小学館集英社プロダクション)

1957年〜58年の第一次南極観測隊には、ソリを引くためのカラフト犬がいた。当時は雪上車の信頼性が低く、犬ぞりが重要な運搬手段だったためだ。
第一次越冬が終わり、カラフト犬たちは第二次越冬隊に引き継がれるはずだったが、状況が悪化し、そのまま基地のに置き去りになった。1959年ふたたび組織された観測隊が基地を訪れると、タロとジロの2頭のカラフト犬が生き延びていた。その他の犬の半分くらいは基地付近で繋がれたまま死んでいるのがみつかり、その他の犬は(首輪を外して)逃散していた。

タロとジロの話は誰もがよく知っているところ。どうも基地付近の備蓄食料を食べていたようだが、後にもう1頭の(繋がれていない)犬の遺体が基地付近で発見された。もう一頭の犬がタロとジロとともに基地付近で生きていたようで、その犬はどの犬だったのかを、当時の犬の世話係だった北村泰一さん(犬係といっても本職は地球物理学者なんだが)に聞き書きした内容。

ミステリ風の構成になっていて、北村さんの叙述をよく読むとその犬の名前がわかるようになっている。ただ、結論は誰もがそうあってほしいというものになっているのだが。

カラフト犬の頭のよさ、勤勉性・社会性(ボスが決まるとボスのもと統率のとれた行動ができる)の豊かさなどは驚異的。
そのカラフト犬の同行を観測隊にすすめた犬飼教授(北大の応用動物学)がまたすごくて、獣医を連れて行かないと困ることになる等の助言や置き去りにされた犬は何頭かは生きているという予言?はことごとく正確だったらしい。
この犬飼教授、終戦間際においてもカラフトで犬の研究をしていたというのが、研究者というものの本質を見たようで、また凄いと思った。
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この世の春

2021年07月16日 | 本の感想
この世の春(宮部みゆき 新潮社)

北見藩の当主:重興の父:成興は名君として知られていた。重興は子飼いの家臣:伊東成孝に藩政を壟断されているとみられて主君押込にあって遠隔地にある藩主の別荘に軟禁される。主人公の各務多紀は父とともに藩主の身の回りの世話をすることになるが・・という話。

ほのぼのとした表向きのストーリーとは裏腹に真っ黒な悪意がすぐそばに潜んでいて主人公を苦しめるという構図は、著者の得意パターンだと思う。
本書もこのパターンの典型。
闇の部分のイヤらしさは相当なものではあるけど、まあ、よくある話でもあって、達者なストーリーテリングですいすい読み進められるものの、ちょっと新鮮さ、斬新さに欠けるかなあ、と思った。
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軍師二人

2021年07月16日 | 本の感想
軍師二人(司馬遼太郎 講談社文庫)

表題作は、後藤又兵衛基次と真田幸村の微妙な人間関係を描く。ごく短い掌篇なのだけど、大長編を圧縮したような面白さが感じられる。司馬さんは、他の作品でも又兵衛びいきが感じられるけど、本作でもそれは露骨なまでに表現されている。

「雑賀の舟鉄砲」は秀吉軍に包囲された三木城と別所長治を、顕如の命で派遣された雑賀党の市兵衛の視点で描く。この舞台設定だけでもひどく斬新な気がする。飢餓地獄の城内にあっても終始とぼけた感じの市兵衛のキャラもいい。

「割って、城を」は古田織部に侍大将として招かれた歴戦の勇士:鎌田刑部左衛門の話。トリッキーな展開が面白い。

「女は遊べ物語」はコミカルな感じで、「めかけ守り」「雨おんな」「一夜官女」「侍大将の胸毛」は司馬さんとしては珍しい女性が主人公の恋物語。
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イリスの炎

2021年07月16日 | 本の感想
イリスの炎(宵野ゆめ ハヤカワ文庫)
グイン・サーガ136 続編6
シルヴィアの子シリウスが匿われているナタール川流域のブレーンが氾濫に襲われる。世捨て人ルカはヴァルーサがグインの子(双子)を生んだことを知る。
オクタヴィアは、アキレウス大帝の葬儀で皇帝就位を宣言する。

と、激動の展開なんだけど、激動部分はト書き程度で、突然出現したベルデラント選帝候ユリアスの生涯が延々と語られたりして、焦点が定まらない感じ。
シルヴィアの乗った馬車が謎の生物(トカゲ犬?)に追い回される場面が面白く読めた。
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