蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

オペレーション・ミンスミート(映画)

2023年02月25日 | 映画の感想

オペレーション・ミンスミート(映画)


第二次大戦中、ヨーロッパの第二戦線はどこになるのか(連合軍はヨーロッパのどこに上陸するのか)が諜報戦の最大の課題となっていた。連合軍はシチリア上陸を目論んでいたのだが、イギリス海軍情報部は欺瞞作戦を計画する。チームのリーダーに指名されたのは元弁護士のユーエン(コリン・ファース)で、ニセの機密文書をもたせた諜報員の溺死体をスペインの海浜に打ち上げさせ、ドイツ側にそれを読ませるという作戦を立案する・・・という話。

映画の中でユーエンの上司は、この作戦があまりに空想的だと批判する。私もこの上司の気持ちがよく理解できた。
まさに架空のできの悪いドラマのシナリオのような内容なのだが、これが実話で、かつ、完全な成功をおさめてしまうのだから世の中はわからない。

諜報作戦が失敗した後、その内容が漏洩するとあまりの杜撰さや突拍子のなさに驚くことがある。
スパイ小説や映画が荒唐無稽なのではなくて、現実そのものがハチャメチャなのかもしれない。

実際、この作戦にはイアン・フレミング(当時ユーエンと同格の少佐)も重要メンバーとして参加している(映画にも登場する)。ありえねー、みたいな007の話ももしかして多くが実話なんだったりして・・・

ユーエンは妻と不仲で、妻子を疎開させているうちに作戦事務局の職員(ケリー)と相思相愛になる(と示唆される)。それを見てみぬふりをする?秘書ヘスター(やや高齢女性)は、一方でユーエンの妻と長年の友情を育む。
えーと、このあたりも実話みたいで、「そんなこと(諜報作戦の本筋と関係ないプライバシー領域)まで描写しちゃって大丈夫なの?と変な心配をしてしまった。
その辺は制作側も配慮していたのか??エンドロールで、現実世界ではユーエンは戦後も妻と添い遂げたことが知らされて、観客としては一安心できるのだった。

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リコリス・ピザ

2023年02月23日 | 映画の感想

リコリス・ピザ


1970年代前半、売れない俳優のゲイリー(15歳)は、10も年上のアラナと知り合い、マネージャー役をやってもらったり、ウォータベッドを売るビジネスを手伝ってもらったりして親交を深めていくが・・・という話。

とても評価が高い映画と聞いて見てみたのだけど、どうもどこが面白いのか、あるいは映画として出来がいいといえるのか、よくわからなかった。

15歳で、後ろ盾に恵まれているとも思えないゲイリーが、たくさんの資本が要りそうなウォーターベッド販売やピンボールマシンのビジネスを始められる理由がよくわからない。
アラナが突如政治活動に打ち込むのはなぜなのだろう?
タイトルの由来は映画を見ただけではわかなかったが、ウィキによると昔アメリカではやったレコード店の名前とのこと。

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優等生は探偵に向かない

2023年02月23日 | 本の感想

優等生は探偵に向かない(ホリー・ジャクソン 創元推理文庫)


「自由研究には向かない殺人」の続編。続編といっても主要登場人物が同じでエピソードは別物、というシリーズが多いが、本書は本当に前作と繋がっていて(前作の直後から話が始まる)、なおかつ本書では物語は収束していない。もともと3部作の予定で、3冊目も出版されるとのこと。
ピップは高校3年生のままで、友人コナーの兄ジェイミーの行方を探すことになる。

前作は謎解きミステリになっていて、それなりに伏線が用意されていたが、本作は重要な手がかりが終盤まで明かされないなど、どんなに丹念に読んでも(本文からだけでは)真相にたどり着くことはできない(と思う)。

それでも、ピップの揺れ動く心理や複雑な事件の構造を追っていくのは、けっこう楽しかった。

前作ではひたすら優等生だったピップは、本作の後半ではキャラ変したかのようにワイルドな行動にでる(だから邦題は反語的表現なのかも)。しかし読む方としてもその行動に必然性を感じて共感できたのは、ストリー展開がうまいからだろう。

さて、今や悪の権化と化したかのようなマックスは3作目ではどうなるのだろう。この著者なら単純な勧善懲悪に陥ることなく、ピップの倍返し?を実現してくれると期待したい。

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とんこつQ&A

2023年02月19日 | 本の感想

とんこつQ&A(今村夏子 講談社)


とんこつという中華食堂でバイトする主人公(今川)は、接客の経験がなく、客相手にしゃべることが一切できなかったが、ある時、紙に書いたものを読むことならできる事に気づき、想定されるセリフをメモしたQ&Aを作り始める。やがて別のバイト(丘崎)が雇われて、やっぱり一切しゃべれない彼女のためにもQ&Aを作る・・・というのが表題作。
「嘘の道」は、おばあさんに公民館への裏道を教えた姉弟の話。
「良夫婦」は、庭先にいつもやってくる小学生(タム)と仲良くしたいと思った主婦の主人公には介護職をしていた時に思い出したくない記憶があった、という話。
「冷たい大根の煮物」は、一人暮らしを始めて菓子パンや弁当ばかりを食べてい主人公に、職場のおばさんが料理を作ってくれるようになるが、そのおばさんは同僚の評判がよくなかった、という話。

著者は、純文学という枠を超えて新刊がたくさん売れる作家の一人らしい。虚構性が強くてちょっと気味が悪い話(本書でいうと表題作と「嘘の道」)が多いので、あまり大衆好み?ではなさそうなのだけれど。

今どき文芸書というジャンルは、エンタメとしてはかなり小さな分野になってしまった。読書ということをする人自体が珍しくなったし、昔は本屋の真ん中にあるのは文芸書だったけれど、今は実用本ばかりで、小説はすみっコに追いやられている。

だから、そんな時代にあっても小説の新刊を買う人というのは、かなり変わった趣味の人か、万巻の書を読み尽くしてありきたりなストーリーでは満足できない人ばかりなのかも。だから、以前ならベストセラーとは縁がなさそうな風変わりな内容の小説が(相対的には)よく売れるのかもしれない。

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踏切の幽霊

2023年02月19日 | 本の感想

踏切の幽霊(高野和明 文藝春秋)


新聞社をやめて週刊女性誌の記者になった松田は、雑誌の企画で幽霊話を取材する。その中に下北沢駅の下り方面の踏切に長い髪の女の幽霊が出る、というものがあった。踏切の近くでは暴力団の構成員がホステスを殺す事件が起きていた・・・という話。

出す本ごとに趣向を変える主義という著者の作品。11年ぶりの満を持した?長編で、前作はスケールが超巨大で筋も相当に凝った「ジェノサイド」だったので、本作は私としては珍しく発売間もない頃に買った。

 

幽霊話(著者によるとホラーではなくてゴーストストーリー)の正統OR王道といった内容で、読みやすくて楽しめるのだが、正直「え、これで終わり?」みたいな筋立てで、複雑な展開と意外なエンディングを期待したいた私としては、ちょっと残念だった

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