蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

あんじゅう

2020年09月26日 | 本の感想
あんじゅう(宮部みゆき 角川文庫)

三島屋変調百物語シリーズの2作目。

「逃げ水」は、山奥の社に棲んでいた洪水をおさめる土地神様?が江戸に出て来て・・という話。この神様の見た目が幼子でお茶目?な性格なので、怪談というより、ほのぼのとした昔話みたいな内容。神様と神様が取りついた子供のキャラが立っていて面白く読めた。

「藪から千本」は、三島屋の隣の商家の双子の娘の数奇な運命を母親が語る内容。こちらは現代心理ミステリーという感じ。ちょっと前にはやった言葉でいうと「イヤミス」というやつだろうか。

「暗獣」は、本巻から登場して主人公おちかのお相手?になりそうな青野利一郎の師の家にひそむ謎の生物?“くろすけ”の話。表紙のイラストとあいまって“くろすけ”がとてもかわいらしく描かれている。他の話に比べて1.5倍くらいあって、話の序盤は別のストーリーだったので、著者も書いているうちに“くろすけ”がいとおしく感じられてきて話が延びてしまったのではないだろうか??

「吼える仏」は、山奥の隠れ里の掟に逆らって幽閉された若者が作った木仏が病を癒すという噂が広がり・・・という話で、唯一怪談らしい怪談。

シリーズ1作目は、全編が組み合わさって1つの屋敷ものの長編怪談という結構になっていたが、本作は各編が独立した話になっていた。ホラー的な怪談より「逃げ水」や「暗獣」みたいなほのぼの系の不思議話の方が、やはり著者の本領という感じがした。
“くろすけ”もかわいいばかりではなくて、切なさを感じさせる設定になっているところがうまいなあ、と思えた。
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ジョジョ・ラビット

2020年09月22日 | 映画の感想
ジョジョ・ラビット

10歳のジョジョ(ヨハネス・ベッツラー/ローマン・グリフィス・デイビス)は、ナチ党の熱心なシンパ。ドイツにとってすでに戦局は傾いていたが、ジョジョはクレンツェドルフ大尉(退役軍人/サム・ロックウエル)が始動するユーゲントのキャンプに行ったりする。そこで兎を殺せと命じられたジョジョは、それに従うことができずいじめられる。
ジョジョの母ロージーは、ナチに忠実な表向きと裏腹に屋敷にユダヤ人の少女(エルサ/トーマシン・マッケンジー)を匿っていた・・・という話。

監督(タイカ・ワイティティ)自身がジョジョの幻想?の中で登場するコミカルなヒトラー役を演じたり、終盤連合軍がジョジョの住む街に攻め込んでくるシーンでもあまり深刻さを感じさせない映像になっているのだが、それがかえってナチに支配された国家の悲惨さを強調しているように思えた。

ロージーが反戦主義者であることが明らかになり、国家警察がジョジョの屋敷の家宅捜索にやってくる。エルサはジョジョの姉のフリをするのだが、このシーンが本作のクライマックス。ここでただの酔っぱらいにでしかなかったクレンツェドルフ大尉が重要な役割を果たす。
いつも酔っぱらって醒めた目で世間を見ていたクレンツェドルフ大尉は、最後のどん詰まりで連合軍に派手な軍装?で突撃していくのもカッコよかった。
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決算!忠臣蔵

2020年09月22日 | 映画の感想
決算!忠臣蔵

大石内蔵助(堤真一)は浅野内匠頭の正室(瑤泉院・石原さとみ)から預かった資金を元にお家再興工作を行い、それがうまく進まないと討ち入りの軍資金として活用する。討ち入りの直前に大石は収支をしたためた「決算書」を瑤泉院に届ける・・・という話。

吉良上野介は登場せず、討ち入りシーンもないという珍しい忠臣蔵。
さらに主役以外のほとんどのキャストがお笑い芸人で、おちゃらけた内容が想像されるが、意外にも?学術的な原作に(多分)忠実で、結果がわかっているのに「これらからどうなる?」という興味が尽きない面白さがあった。

一方で笑わせる場面もいくつかあった。大石が赤穂の屋敷などの資産を処分した時、妻の理玖(竹内結子)が大石の側室3人用に手切れ金を用意するのだが、大石が「もう一つええか?」とお願いするシーンが特に笑えた。

大石と藩の経理担当の矢頭長助(岡本隆史)は社長と経理課長くらいの関係性のはずなのだが、幼い頃からの知り合いで、ほとんどタメ口。しかし大石の年収が(現代の貨幣価値で)6000万円くらいなのに矢頭は180万円くらいでしかないというのが、身分社会の厳しさと同時に現代のサラリーマンの出世競争の哀感みたいなのを感じさせてくれた。

大石が瑤泉院から預かった資金は1億円くらいらしいのだが、それでお家再興の工作費(賄賂)や50人くらいの江戸滞在費、さらには武具の準備まで行うというのはちょっと無理がありそう。赤穂藩は塩田開発などで豊かで、累代の家老で、藩主に次ぐくらいの資産を持っていたはずの大石の懐からかなり持ち出していたんだろうなあ、と思えた(映画では大石は茶屋遊びなどで自身の財産は使い果たしたことになっていた)。
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ランニングする前に読む本

2020年09月19日 | 本の感想
ランニングする前に読む本(田中浩暁 講談社ブルーバックス)

にこにこ笑って会話できるくらいのペースで走り続けるスロージョギングを提唱する内容。

・踵から着地するストライド走法ではなく、足裏の前の方の部分(フォアフット)から着地するピッチ走法が膝や踵を傷めるリスクが少ない。

・同じくらいのスピードでもウォーキングよりジョギングの方がエネルギー消費量が少ない。

・スロージョギングは脂肪を消費しやすい方法(ミトコンドリアの作用を説明した部分が面白い)

・早朝、空腹時の運動が(脂肪を消費しやすい体にするために)有効
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【新釈】走れメロス他四篇

2020年09月19日 | 本の感想
【新釈】走れメロス他四篇(森見登美彦 祥伝社)

「山月記」、「藪の中」、「走れメロス」、「桜の森の満開の下」、「百物語」の筋で京都の大学生の生活や恋愛を描いた短編集。

森見さんは現代を代表するベストセラー作家だが、どうも私の好みにはあってなくて、いくつか読んだものは、どれもどこが面白いのか全くわからなかった。
特にユーモアとかペーソスを強調した作品(本書だと、「走れメロス」や「百物語」)は、読み進むのが苦痛なほどだ。(失礼)

ストーリー漫画よりギャグ漫画を創作する方がはるかに大変らしいのと同様、ふざけた調子のユーモア小説の方が普通の小説よりも書くのが難しいらしい(と、確か森博嗣さんがどこかで書いていた。水柿君シリーズを書くのが一番難度が高かった、と)ので、そういう小説を理解し楽しめる読者レベルに(私が)達していないのかもしれない。

本書の中ではシリアス調の「藪の中」と「桜の森の満開の下」がよかった。前者は映画製作者の、後者は小説家の創作意欲がうまく描かれていたように思えた。
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