蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

どうで死ぬ身の一踊り

2012年07月01日 | 本の感想
どうで死ぬ身の一踊り(西村賢太 講談社文庫)

さほど有名とは言えない大正時代の私小説作家藤澤清造の小説に魅了された主人公は、遠隔地にある菩提寺をたずねたり、法要を営んだり、昔使われていた木造の墓標をもらいうけて自宅で保存するなどマニアックな趣味を持っている。短気ですぐ手をあげるので、同居する女性はたびたび家でしてしまうが、主人公は未練があって・・・という話。

西村さんというと(といっても芥川賞のインタビューを見たくらいなのだけれど)無頼派で破滅型の私小説家という感じだけれど、私小説であるはずの本書を読むと、(確かにこんな人と同居はしたくないくらいにはひどいが)さほど浮世離れしているわけでも生活が破たんしているというほどでもないという感じがした。

例えば、伊集院静さんとか白川道さんとかの方がよっぽどひどいというかろくでないというか(失礼)無頼さのレベルがはるかに高いような気がする。

無頼派というと、やっぱり、飲む、打つ、買うの三拍子が充実しないといけないと思うが、飲酒のシーンが少し出てくるものの、内容のほとんどが藤澤清造リスペクトと同居女性とのいさかいなので、そう思えてしまうのだろう。

著者が藤澤清造の小説が好きなのは、どのダメさかげんが自分を似ているから、ということみたいだけれど、本書が評判なのも、著者のダメさ加減が赤裸々に語られるのを読むと妙にほっとするということなのだろうか。

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