‘A Bird came down the Walk—’ 「小鳥が道をやって来た――」
A Bird came down the Walk— 小鳥が道をやって来た――
He did not know I saw— 私が見てるのを知らない――
He bit an Angleworm in halves ミミズを二つに噛み切って
And ate the fellow, raw, そしてそいつを食べた、生で
And then he drank a Dew それから小鳥は露を飲んだ
From a convenient Grass— そばにあった草から――
And then hopped sidewise to the Wall それから壁の方に横に跳んだ
To let a Beetle pass— カブトムシを通すために――
He glanced with rapid eyes 小鳥はすばやい目で見た
That hurried all around— 目は周り全部にさっと進む――
They looked like frightened Beads, I thought— 目はおびえたガラス玉のようだと私には思えた――
He stirred his Velvet Head 彼はヴェルヴェットの頭をちょっと動かした
Like one in danger, Cautious, 危険にさらされた者のように、用心深く、
I offered him a Crumb 私は小鳥にパン屑をさしだした
And he unrolled his feathers すると彼は羽根を広げ
And rowed him softer home— そして自らを家に向かってソフトに漕ぎ出した
Than Oars divide the Ocean, 小鳥の羽根は、海をかきわけるオールよりソフトだ
Too silver for a seam— 海はあまりに銀色で継ぎ目も見えない――
Or Butterflies, off Banks of Noon 小鳥の羽根は、正午の土手を離れる蝶たちよりソフトだ
Leap, plashless as they swim. 蝶たちは跳躍し、音もたてず泳ぐ
(1)
《感想1》小鳥は私と無縁に勝手に生きる。また小鳥は残酷で、ミミズを二つに噛み切り生で食べる。小鳥は可愛いというより、実は残酷だ。
《感想2》小鳥は自然の中で、草やカブトムシと共存する。草から露を飲み、歩いてくるカブトムシをよける。
《感想3》小鳥の目はすばやく、周り中をさっと見る。目はおびえたガラス玉のようだ。そして頭をちょっと動かしたりする。小鳥の目と頭部が、彼の存在を証示する。
《感想4》私はおずおずと用心深く、小鳥にパン屑をさしだした。しかし小鳥はパン屑を無視し飛び去る。小鳥は私の意図を理解しない。(小鳥は例えば、飼われた犬と違う。人に馴れていない。)空は海であり、小鳥は空という海に漕ぎだす。
《感想5》空という海に漕ぎ出した小鳥の羽根は、オールよりソフトに海を漕ぐ。また小鳥の羽根の動きは、音もたてず空を泳ぐ蝶たちよりソフトだ。小鳥は自由で、また優雅だ。
(2)
《感想6》詩人は小鳥を、あるがままに、そのものとして見る。「可愛い」生き物などと決めつけない。小鳥は実は残酷だ。また小鳥は私の意図を理解しない。さらに私がパン屑をさしだす好意を、小鳥は無視し飛び去る。
《感想7》かくてまた、小鳥に対する詩人の観察は丁寧だ。小鳥は最小限の欲望or意図しか持たない。例えば、水を飲む、カブトムシとの衝突を避ける等。他方、小鳥の目の動き、頭部の動きが的確に描写される。
《感想8》詩人は、自分の主観(Ex. 小鳥は「可愛い」との臆断)を控え、小鳥をあるがままに、そのものとして見る。その時、詩人の主観に小鳥が感動を与える。空という海を漕ぐ小鳥の羽根のソフトな動き、その自由と優雅さに、詩人は感動する。