臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

日暦(5月30日)

2013年05月30日 | 我が歌ども
晩節を少しぐらいは穢しても上田春佳と溺れてみたい   鳥羽省三

 近々我が家の一部をリフォームするために昨日は一日中押入れの整理をしていたのであるが、その際、ふと目に着いたのは、宮城県黒川郡大和町に在る原阿佐緒記念館のA4版のカラーパンフレットである。
 件のパンフレットには1930年前後に撮ったとされる、原家の家族写真が掲載されている。
 向って左前方の椅子に原阿佐緒自身が座っていて、その右の椅子に母親のしげが座っているのであるが、その母の阿佐緒及び祖母のしげを囲むように支えるようにして阿佐緒の二人の息子が立っているが、左側に立っているのは、後年、俳優として名を成した次男の原保美(NHK初期の人気テレビドラマ『事件記者』の長谷部記者役でお馴染みの)であり、右側に立っているのは映画監督になった長男の原千秋である。
 ところで、その女流歌人・原阿佐緒の衰えない容色に溺れて不倫恋愛沙汰を起こし、晩節を大いに穢したのは、東北帝国大学の教授を務めた著名な物理学者にして『アララギ』重鎮の歌人であった石原純であった。
 上掲の拙作中の「上田春佳」とは、北京・ロンドンと過去二回に亘るオリンピックで活躍した我が国の競泳選手(自由形・短距離)である。
 スポーツ選手にして抜群の容姿端麗さを噂されている同選手は、この7月中旬からスペインのバロセロナで行われる「第15回世界水泳選手権大会」の代表選手に選出されると同時に、持ち前の容姿端麗さが世間の人々の認められるところとなってなのか、スポーツ用品メーカーの「ミズノ」と「ブランドアンバサダー契約」を締結したことでも知られております。
 事の序でに説明させて頂きますと、上掲の拙作を鑑賞されるに当たっては、後半の七七句が「上田春佳と溺れてみたい」となっている点に着目しなければなりません。
 即ち、本作の作中主体は、決して「晩節を少しぐらいは穢しても」あの容色麗しき「上田春佳」に「溺れてみたい」と思っている訳では無く、「上田春佳」選手と一緒にバロセロナのプールに入って「溺れてみたい」と思っている、という訳なのであります。
 〔返〕  新緑のしずくプールに満ち溢れ第三泳者の僕は溺れた   鳥羽省三