Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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シャルコー・マリー・トゥース病は妊娠・出産のハイリスクグループと考えたほうが良い

2005年03月14日 | 末梢神経疾患
 シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)は遺伝学的にheterogeneousな疾患群であるが,末梢神経障害を主徴とするため,一般に妊娠・出産における異常は生じないと考えられてきた.今回,NorwayよりCMTにおける妊娠・出産に関して多数例を調査したretrospective studyが報告された.
 対象は1967年から2002年にかけてNorwayのMedical Birth Registryに登録した妊婦で(登録は強制),このなかで108名のCMTを基礎疾患として有する妊婦を見出した(診断は臨床所見と遺伝歴の確認にて行っており,2001年からは遺伝子診断も導入している;完全に他の疾患を除外できているかはやや不安).対照としてはその他の210万人の妊婦のデータを使った.結果としては,両群間で妊婦の年齢,妊娠期間,子供の性別,出生時体重等に有意差なし.しかし,新生児の奇形合併はCMT群で有意に高く(9.3 vs 4.5%;p = 0.04;奇形の詳細についての記載なし),分娩後出血もCMT群で有意に高頻度であった(12.0 vs 5.8%;p = 0.02). 手術分娩の頻度もCMT群で2倍高頻度であり(29.6 vs 15.3%; p = 0.002),鉗子分娩は3倍の頻度であった(9.3 vs 2.7;p <0.001).帝王切開はNorwayでは他の欧米諸国と比較し行われていないが,CMTを伴う妊婦では行われる傾向にあり,かつ緊急帝王切開として行われていた.子供のCMTの罹患との関係については,追跡調査は行われておらず不明.以上の結果より,CMTは妊娠・出産のハイリスクグループに加えるべきと思われる.Norwayのデータではあるが,CMTの妊娠・出産は注意を要することを,本人・家族,および産婦人科医に伝え,緊密な連絡をとりながら出産の準備を進めるべきであろう. Neurology 64; 459-462, 2005
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