Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

解消されるまでの創造力

2008-06-18 | 文化一般
バイロイト音楽祭のヴォルフガンク・ヴァーグナー監督辞任を受けて次期監督の候補者募集が期限付きでなされている。特に候補となるヴァーグナー家の跡継ぎは、孫の二兄弟ヴィーラント筋とヴォルフガンク筋との間で候補者が一致しなければ、スポンサーであるバイエルン州、連邦などの代表がそれを支持することはなさそうで、代替案が考慮されている。

専門家の代表として、ドイツ語圏の三大歌劇上の支配人が大きな発言力を持っている。西ドイツ時代の有限会社バイロイト音楽祭の法制化に従って、ヴィーンの国立歌劇場、ミュンヘンの歌劇場の支配人に続いて、ベルリンのウンターリンデンの劇場ではなくベルリンドイツオパーの支配人がここに挙がると、現支配人がイドメネオ騒動を起こした張本人であることを見落とせない。

そのような理由から、識者・同業者達にフランクフルター・アルゲマイネー新聞が「ヴィジョン」を挙げてもらっている。

現在連載中の記事であるが、一番新しいものでは今度ライプチッィヒの歌劇場に里帰りする有名な演出家のコンヴィチニーの意見が載っている。

「先ずは僕がバイロイトの監督になってから、あなた方は一体何をすべきか出来るかを聞くことが出来るでしょう。」

得意の一発ギャグは放っておいて、また仔細な他の同業者の希望リストもみるまでもなく、作曲家ヴォルフガンク・リームの意見を読む。

「リヒャルト・ヴァーグナーのアイデアが解消されるまで、まだ実現化する可能性がある」と、アイデアを以って築かれたバイロイトになにも他のアイデアを持ちこむ必要はないと主張する。

25年前の「パルシファル」の唯一の公演体験にて知識や熱意を持ち合わせた知り合った人々と同じほど表面だけの何処にでもいる訪問者達を振り返りつつ、リヒャルト・ヴァーグナーへの集中を何よりもとする。

そして、追伸として、如何にこの管弦楽が埋められた劇場が「パルシファル」の上演のためにこそ存在して、反対に室内楽的な「マイスタージンガー」の上演などにはどうしようもなく不向きかを語っている。

ここで殆ど同じ意見の指揮者ヴィルヘルム・フルトヴェングラーがヴァーグナーについて語ったものを読んでみると、そこでは主に「ニーチェのヴァーグナー」が痛烈に批判されている:

ニイチェは、すべての「ワグネリアーナー」がそうであったように、ただ素材的なものの中にとらわれていたのです。しかし、私たちはそれをこそ、のり越えてゆかねばならぬと思います。そののり越える道は真のワーグナー、すなわち「芸術家」ワーグナーを知ること以外にはありません。そのときはじめて、私たちはワーグナーに対する真の創造的な関係に立つことができるでしょう。そのときこそこの国において、この芸術家は何ものであったかを、はっきりと知ることになりましょう。

この指揮者は、ヴァーグナー芸術におけるマテリアルの高度で尚且つ大衆性に再三触れているのだが、作曲家が「トリスタン」との鮮やかな対照を築いたとする「マイスタージンガー」の演奏実践においてこの指揮者は実際にはナチスに利用されており、戦後のイタリアやレコーディングにおけるその実践は同じような対照を見せている。

先日から流しているLPにおいても、録音に聞くヴァーグナー指揮者ハンス・クナッパーツブッシュとは比較するまでもないが当時としては現代的で、その録音の手法の恩恵を得て、後のカール・ベームの戦後を代表するバイロイトでの演奏実践よりも遥かに多彩で、またより精緻で雄弁なフォン・カラヤンのそれに比べても遥かに創造力豊かな演奏実践となっている。



参照:
民主主義レギムへの抵抗 [ 文化一般 ] / 2007-08-25
妻フリッカの急逝とその娘 [ 女 ] / 2007-12-01
下馬評に至難な金科玉条 [ 文化一般 ] / 2007-09-30
オーラを創造する子供達 [ 文化一般 ] / 2007-09-24
次から次へ皹の入る芸術 [ マスメディア批評 ] / 2007-07-28
襲い掛かる教養の欠落 [ 雑感 ] / 2007-07-27
アトリエのビッグシスター [ 女 ] / 2007-07-26
栄枯盛衰に耳を傾ける [ 雑感 ] / 2007-07-08
骨肉の争いの経験と記憶 [ 生活 ] / 2007-06-10
臨場のデジタルステレオ [ 音 ] / 2006-12-02
前に広がる無限の想像力 [ 音 ] / 2008-06-17

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