Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

裸の付き合いの友愛社会

2009-12-06 | 
オペラの音楽的構造に触れたが、それは同時に劇的構造であって、実は大変に興味深い構造論議だと思っている。現在パリでは、ウンベルト・エコー企画の音楽会や映画や芝居などの展示会が開かれているというが、そこでは「世界構造の未開拓域を切り開く、限りない加算による目眩やその目録の現象」が扱われているというのである。

それに劣らず未開拓な印象を得たのは先日明け方にみた夢である。ある女性と仲間の男達と山から降りて来て、水浸しで泥だらけになりながら立ちすくむ暇もなく先ずは身体を洗おうということになった。胸毛を出した殆ど裸の男どもが、汚く汚れた野外の風呂桶を洗ったりしているが、こちらは雨の中頭までびしょびしょで気持ち悪く、「どうせ完璧に綺麗にするのは難しいから適当にして早くお湯を張って入ろう」と急がせる。そして湯がなみなみと張られたところで、殆ど各々がドラム缶のような風呂に一斉に皆で飛ぶ込む。ふとずっと傍にいた彼女を見ると、既に何ひとつ身につけていない。これはと一瞥するのだが、自分だけが汚れたブリーフを履いてお湯に浸かろうとしているのに気がついた。これは拙いと思ったが、今更ここで脱ぐのも具合が悪いと、そのままお湯に身体を沈める。そこで隣り合わせのドラム缶から裸の肩を此方に向けて彼女は親しげに小声でそれも日本語で語り出すのである。「私、あなたの引越しのお蔭で仕事を止めなくちゃいけなくなったのよ。」と、此方が彼女を追い出すようにしてその住居に移り住み込むことを責めるでもなしに物語るのである。続いて、いろいろと大変落ち着いた喋り方で「迫られる」だが、要するに求婚を求められたのである。

この妙に現実的であり、エロティズムから懸け離れた写実的で且つ言語的な夢は一体何処から来たのか?どうも一つは、ジャン・アントワーヌ・ウードン展を開いているフランクフルトのリービークハウスでの批評を読んだからのようである。其処では「震える少女」と呼ばれる冬を暗喩した彫刻が、モンペリエの美術館からやってきて展示されている。その写真をみれば分かるように典型的なアカデミーもしくはアクトクンストと呼ばれるもので、ローティーンのあどけない表情の素っ裸の少女が頭から頬かむりして両手で胸をしっかりと下腹部まで下がる生地で包みこんでいるのである。要するにこのモデルの少女が自然に其処で取った姿勢がこうして永遠の芸術化されているのだが、新聞ではそれをして同じアクトを描いて年老いた好色なルイ15世に思春期の少女の裸像を提供したフランソワ・ブシェーの卑猥さはそこには無いと断言する。その差異こそが興味深いもので、現在であればペドフィリー論争に繋がる議論に扱われるものであろう。

さらに先日展示会で鑑賞したボッティチェッリの裸体像の特徴へと思いを馳せれば、そこで特徴となっていたロフェルネスの首を掻き切るユーディットなどの肉体の描き方に容易に古代を模倣したのではないそれをみる。ユーディット自体はその行為をして父性権力を掻き切るとされているが、なにも男色のオスカー・ワイルドやビアズリーを待つまでもなく「サロメ」となると大分事情は変わってくる。ボッティチェッリのそれは、美男子像にしてもそこには権力の枠組みが社会一般に渡って張り巡らされている構造に深く関係していると理解出来る。

当然のことながら上のブリーフはそのもの社会の拘束を示しており、それはなにも難しい学問を修得しないでも直観的に分かるであろう。同時に、ウードンの作品には、社会が「自由、平等、兄弟愛」が裏返されて彫塑されているのだろう。新聞批評は、この恥じらいにナチの親衛隊がユダヤ人女性を裸にして並べて銃殺にした風景を想い浮かべて、啓蒙としている。


今日の音楽:アルバン・ベルク作曲オペラ「ルル」全曲未完成版



参照:
多義的ではない多様性の焦燥 2009-11-22 | 女
改革に釣合う平板な色気 2008-01-18 | マスメディア批評
用心深い行為に隠されたもの 2009-11-08 | 文化一般
出もの腫れもの処嫌わず 2009-06-13 | 文学・思想
循環する裏返しの感興 2009-04-27 | 雑感
サウナに入って飲みたい 2009-01-13 | アウトドーア・環境
知的エリートの啓蒙芸術 2008-03-17 | 音
エロスがめらめらと燃える 2007-11-02 | 暦
固いものと柔らかいもの 2005-07-27 | 文学・思想
蛇が逃れる所-モーゼとアロン(2) 2005-05-03 | 音
立ち入り放題のユートピア 2005-04-22 | アウトドーア・環境
素裸が雄弁に語らないもの 2005-04-21 | 文化一般
人情味溢れる冷たい秩序 2009-06-23 | 雑感

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