日々・from an architect

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山陰建築小紀行(4)菊竹清訓の島根県立美術館にて

2015-11-19 17:01:53 | 建築・風景

5年前になる2010年12月、故郷米子に戻った建築家来間直樹に招聘されて、米子公会堂(村野藤吾の設計)の保存のためのシンポジウムに参加した僕は、米子から出雲までの、菊竹や槇文彦の建築を来間に案内して貰った。ところがなぜか、来間は恩師菊竹清訓の島根県立美術館を素通りしてしまう。

彼はそれが気になっていたようで、珈琲でも飲んでいきましょうか!と何も言わせないまま駐車場に車を止める。
そして宍道湖に添って伸びやかな姿を見せる菊竹晩年の作品に誘い込む。写真で見知ってはいるがその伸びやかな空間とともに何よりも穏やかな宍道湖の姿に僕は身を浸した。出雲大社庁の舎や、松江の図書館などとは趣の異なるこの建築は、菊竹晩年の心境を表しているようでふと考え込む。

菊竹は仕事に関しては厳しい人だったと菊竹の所員から聞き及んでいるが、僕が出会ったときは、にこやかで穏やかな風貌、来間は、先生はひと(他人)には優しいのですよというが、そこには師を慕う彼の心情がにじみ出ていて心打たれる。
彼はこの美術館の建つ前に退所して山陰に戻ったが、もう少し居続けたらこの建築の担当をさせてもらったかもしれないと残念がった。

ところで、ロゴデザインと色彩計画は田中一光とのこと、JIAのイベントで田中一光氏の講演を聞いたときに、僕は「一光」というお名前は本名ですか?と馬鹿な質問をしたことを(どこかに記載した)思い出したりしたものだ。

さてこの美術館の閉館は、その日の日没時間の30分後、と伝えられているものの、この日の日没は17時29分、閉館は18時30分と掲示されていて、オヤ!違うじゃないかと思ったりもしたものだ。
秋が過ぎていくと落日が早くなるからだろう。
そして想う。
何時の日かここを再訪し、湖畔の先に沈む真っ赤な陽に向かって瞑目したい。<文中敬称略>


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