僕の顔を描いた似顔絵がある。似ているような、似ていないような!
ぽつんと真ん中に帽子をかぶった顔があって、バックの左手に五重塔、右には黄色でさっと塗った(刷毛で刷いたといったほうがよさそう)山並みにのなかに、「大」の字を白く塗り残して京都旅の記念になっている絵だ。タワーの展望台で、似顔絵の絵描きさんに描いてもらった。
京都にくるといやでも目に入る「京都タワー」。山田守が1964年に建て、景観論争が湧き上がった問題作である。「古都に似合わない」というだけでなく、古都の景観を壊している、僕もそう思った。しかし其のタワーも既に建ってから46年にもなる。夜になるとイルミネーションによって浮かび上がり、それはそれでなんともいえない美しさ。
誰かがどこかに書いていた。京都の人だ。
『京都タワーなんて、と否定をしていたが、いつの間にか、乗っていた新幹線が京都駅に近づき光り輝いている京都タワーが見えると「ああ京都に帰ってきた」とホッとするようになった・・』と。
其の京都タワーに上ったことがなかった。ぶらり歩きの京都の最後にのぼってみた。
このタワーは、技術の塊だ。9階建てのビルの上に建てるような塔はどこにもない。前例がないのだ。ビルの構造強度の問題もある。足元を細くして、軽くしないと乗せられない。そこで鋼板によるモノコック工法(専門的には「応力外被構造」という)によって軽量化を図り、展望台は細くてカーブをつけた鉄骨で組み立て、アルミによるカーテンウォールにガラスを組み込んだ。
断面詳細図を見ると其の組み立て方と微妙なバランスに惚れ惚れとする。とはいえ、擬宝珠を屋根の頂点に乗せた武道館(1964・そうかこの建築と同い年だ)とともに、山田守の問題作という位置付けは、何年経っても変わらない。
僕は展望台からの京都の風景を見るよりも、建築の大胆な収まりや細かいディテールに目が行った。
そして穏やかな笑顔の似顔を書く絵描きさんと目が合った。そしてさっと描いてくれた水彩の似顔絵。勢いがありどこかに品のある(モデルが僕だから?)筆さばき。すっかり気に入った。
<ああ!やっと「ぶらり歩きの京都」が終わった。お付き合いくださってありがとう>