八国山だより

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日向製錬所 公害被害を訴える主婦へのスラップ訴訟問題 その1 - 東海アマ氏のブログより転載

2014-11-18 16:10:52 | ニュース・時事

日向製錬所 公害被害を訴える主婦へのスラップ訴訟問題 その1


「スラグ投棄によって子供のセキが止まらない、何とかして欲しい」
 と公害被害を訴える内容で、気の毒に思ってフォローした。
 
 ツイートが目に入れば必ずリツイートしてきた。
 フォロワーは、わずか数ヶ月で2000を超えたが、そのあたりで加害企業から逆告訴されるスラップ訴訟が起こされたことを知り、これは大変と、力を入れて宣伝することになった。
 
 11月14日、スラップ損害賠償請求裁判までの、わずか半月ほどで、フォロワーは2000台から一気に15000を超えた。
 
 私はいてもたってもいられず、裁判の三日も前から1100キロの道のりを軽自動車に乗って日向市に駆けつけた。
 とりあえず現地調査が不可欠と思ったからだ。
 そうして到着の翌朝、現地に行ってみたら、恐ろしい現実が目に飛び込んできた。
 
 現地の投棄は大方終わっていたが、近傍の山に数カ所の新しい投棄準備地が開墾されているのが目に入った。
 日向精錬所は、黒木さんの実家前の山だけでない、西川内地区全体の山をゴミ捨て場にするつもりだったのだ。
 
 そして、投棄地の下を流れる小川には、まるで布団の綿のような白い汚物が、まったく姿を変えることなく残されていた。
 美しい川なのに魚影が見あたらない。
 これは容易ならざる毒物汚染かもしれないと思った。
http://tokaiama.minim.ne.jp/date1/kuroki1.html
 
 黒木さんの家は数キロ先にあるということだが、投棄地にもっとも近い家が彼女の実家だった。
彼女は実家の両親の代弁者として活動してきたのだ。
 そこは肉牛牧場で、たくさんのサイレージフレコンが積んであった。畜産に使う水は投棄地から50mしか離れていない井戸だ。
 
 スラグ投棄地の厚みは50m以上ある。となれば水頭圧が5気圧あることになり、黒木さん実家どころか、周辺数百メートルの井戸や水田、畑地、西川内の大半の住民の生活用水を汚染することになる。
 私の畑も似た条件なので、浸透水の強さは良く知っているつもりだ。
 あとは投棄物の中味が問題だ。
 
 日向市富高西川内地区の山林に、日向製錬所というステンレス用ニッケル精錬を主業務とする住友金属鉱山の子会社が、サンアイというダンプ会社を使って投棄してきたもの。
 それはフェロニッケルスラグという産業廃棄物である。
 
   https://www.pacific-metals.co.jp/file/news/20100409110217-1.pdf
 
 当然ながら、苛酷で知られる産業廃棄物法の規制対象になり、住民への事前説明会や地元の了承など、たくさんの手続きが必要になる。
(東京都ではフェロニッケルスラグをセメント骨材として使用する場合以外、産業廃棄物として認定するよう通達を出している)
 
 ところが黒木さんの説明や、地元民への聞き取りから、そうした産廃法の手続きが取られた形跡がまったくないのである。
 ならば厳しい罰則のある産廃違法投棄ではないか?
 
  http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S45/S45HO137.html
 
 だが、日向製錬所は、投棄しているものはフェロニッケルスラグから作られた安全無害なグリーンサンドという農業用土壌改良材であって、これをサンアイというダンプ会社に売って、彼らが谷間を埋めているだけという説明をしているのだ。
 だから産廃法の規制対象にならないから、定められた事前アセスメントも地元説明会も、投棄場の汚水侵出防止養生も必要ないという理屈らしい。
 
 もし、それがウソであって、投棄内容がグリーンサンドでなく有害なフェロニッケルスラグであったなら、大変な大問題であって、認可した県も日向製錬所も逮捕者を出すほどになってしまう。
 ましてや、抗議する主婦の口を封じるために卑劣きわまりないスラップ訴訟まで提起しているのだ。
 この極悪さが世間に認知されるなら、やがて親会社である住友金属鉱山のみならず、住友グループ全体に取り返しのつかない悪評を貼り付ける結果になるだろう。
 企業コンプライアンスの倫理問題をはるかに超えて、一大産業犯罪になってしまう。
 
 そうして、黒木睦子さんに初めて面会して、詳しい事情を聞いた。
 その結果、腰を抜かすほどのひどい現実があることを知らされ、これは本当に深刻で恐ろしい大公害問題であるとの理解に至ったのである。
 
 たまげたのはこれだ。
 黒木さんが、投棄物の有害性を調べるために、汚水溜の底からサンプルを採取した際に、「漏れ出た汚水が、球状に丸まってから下に落ちた。その後、フェロニッケルスラグを採取した手が腫れ上がった」
 
 これを聞いて飛び上がった。
ボタボタ漏れた汚水が強烈な表面張力で球状になるものとは何か?
 それは水銀しかありえない。
 
 さらに黒木さんが、この水をサンプル分析依頼した研究施設の報告によれば
 環境基準値の鉛210倍、ヒ素50倍、フッ素20倍、総水銀15倍、カドミウム3倍、セレン3倍
 が検出されている。
 
 これは本当に恐ろしいことだ。手が腫れ上がった原因は、おそらくヒ素の有機化合物だろう。それ以上の問題は、球状になった汚水、水銀である。
 これは現在、腎障害などの毒性で知られる無機水銀であっても、土壌や水中で容易に有機化し、メチル水銀に変わって恐怖の中枢神経障害、すなわち水俣病を引き起こすことは、すでに世界的に広く知られている。
 
 日向製錬所側は、この汚水溜まりを完全に清掃してからサンプルを採取し、それを宮崎県が分析して「無害」のお墨付きを得たようだ。
 だが、そんな甘い屁理屈と隠蔽工作など通用しない。
 どんなに清掃してみても50メートルの厚い堆積層の底から次々に汚水がわき出してくる。
 その中に水銀、ヒ素、鉛などニッケル鉱石に付随する無数の重金属が含まれているのである。
 
 こうなれば黒木さん個人宅の問題をはるかに超えて、西川内地域も飛び越えて、大字富高地区全体の大公害問題に発展することは間違いない。
 それどころか、産廃不法投棄事件ともなれば、日向製錬所の摘発、関係者の逮捕、さらに県の認可の違法性が問題になり逮捕者が続出することも確実だろう。
 
 宮崎県という地域は、産業王国であり、日向製錬所(住友金属鉱山)のような力の強い組織の意向は絶対であって、警察でさえ簡単に手出しできない権力を形作っている。
 だが、それも公害被害が出てしまえば、隠蔽は不可能だ。今は水俣病の時代と違う。
 小さな主婦の声が、ツイッターやソーシャルメディアを通じて、あっという間に全世界に拡散し、世界中が注目するのである。
 
 この投棄は、農業用土壌改良材の投棄であって、産業廃棄物でないという屁理屈を使っているようだが、だとすれば、なおさら深刻な問題がある。
 普通、有毒性のある産廃を山林に投棄する場合、浸出液の毒性を封じるために、厚手の防水シートにアスファルトコーティング防水を行って養生するが、この場合、こうした防護措置は一切取られていないため、浸透水汚染が極めて深刻な事態になることが避けられないのである。
 
 分けても、ヒ素と水銀問題は極めて深刻である。
 水俣病の場合も、最初、猫の恐ろしい中毒症状が人間にまで波及してきた段階で、加害企業チッソは「無機水銀に水溶性はなく、胎児が吸収する可能性はない」と突っぱねた。 ところが、無機水銀が微生物や光化学反応などで有機化、メチル水銀に変化することが明らかにされ、これが水溶性で人間の脳関を容易に通過し、胎児に激しい障害をもたらすことが証明されたのである。
 
 同じことが日向市でも起きるのではないか?
調べてゆく内に、日向製錬所の別の(日向市細島地区)場所で工場を運営し、その跡地から深刻なヒ素やフッ素の猛毒汚染が検出されていたことが分かった。
 
  http://blog.goo.ne.jp/flyhigh_2012/e/53279ace574f099270ca1f3025c52739
 
 つまり、日向製錬所とは、産廃不法投棄の常習犯だったのである。
 
 そして公害被害を素朴に訴える主婦に対して、驚くべき恫喝訴訟(スラップ)を仕掛けてきた極悪下劣ぶりには恐れ入るしかない。
 まさか住友グループや資本金1000億円のモンスター企業、住友金属鉱山が、自社のコンプライアンス評価を極端に滅損する愚かなスラップ訴訟を仕掛けたとは考えにくい。
 おそらく日向精錬所内部の暴力団と結びついた愚劣なチンピラ管理職が、勝手に暴走して仕掛けたのだろう。
 いずれ、刑事告訴によって必ず責任を取らせることになる。
 
 いずれ、投棄場所のサンプル調査は避けられない。
彼らが拒絶することは目に見えているが、裁判所に強制開示命令を出させてサンプルを取得分析するしかないだろう。
 これは黒木さんではなく、支援団体がやることになる。
 
 日向製錬所側は、下の方にフェロニッケルスラグを投棄して、上部のサンプル採取の恐れのある場所にはグリーンサンドで覆っている可能性があるので、ボーリングサンプル取得を行うしかないだろう。
 こうして得たサンプルが、産廃法に規定されたスラグであり、なおかつ激しい毒性を持っているとすれば、日向製錬所が検挙されるのは確実であり、県の担当者や河野知事も無事ではすむまい。
 
 先は長いが、焦らず、前を向いて進むしかない。
 とりあえず、西川内地区の水源、井戸汚染が強く懸念されるため、支援組織が大至急、飲料水分析を行うことになるだろう。
 この分析は、九州内部の機関では信用性が薄いので、東京や大阪の機関に依頼することになる。
 現在、関係者と検査機関について調整中、至急開始したいので、一件1万円程度の費用についてカンパをお願いする予定でいる。
 
 東海アマ 2014年11月16日著  現地調査は11月12日~14日