八国山だより

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裁判員裁判で初めての死刑判決

2010-11-17 10:40:03 | 司法

異例「控訴の勧め」、裁判員の負担軽減図る?


 裁判員裁判で初めてとなる死刑判決が16日、横浜地裁で言い渡された。

 強盗殺人罪などに問われた池田容之(ひろゆき)被告(32)に対して極刑が選択された裏で、市民らはどのような苦悩や迷いと向き合ったのだろうか。

 ◆異例の付言◆

 死刑の言い渡し後、記者会見に出席したのは50歳代の男性裁判員一人。3日間の評議時間が十分だったかを問われ、「難しいですね」と明言を避けた。

 これまで、死刑が求刑された事件の審理は1年以上を要するのが通例だった。安広文夫・元東京高裁部総括判事(66)は「被告の顔を繰り返し見て、『本当に死刑でいいのか』と考え続けた。裁判員は短い審理で重い決断を下さなければならず、大変だ」と語る。

 朝山芳史裁判長は、判決を終えて閉廷する直前、被告に対し「控訴を勧めます」と異例の付言をした。被告は公判中に「どんな刑にも服する」と発言しており、この付言は、自分たちだけの判断で死刑を確定させたくないという裁判員の意向を受けたものだった可能性もある。

 「協議を重ねて出した結論には責任を持つべきだ」と、付言に批判的な検察幹部もいるが、安広氏は「裁判員にとっては控訴審の存在が負担の軽減になる。同様の言及は今後もありうるのではないか」と推測する。

 ◆マニュアル化◆

 米国では12人の陪審員が有罪・無罪だけを判断するのが原則だが、死刑が求刑された場合は多くの州で量刑も陪審員が担う。1990年代の調査では、死刑の評決を出した陪審員が心的外傷後ストレス障害(PTSD)にかかり、不眠や頭痛に悩まされる深刻なケースが少数ながら報告された。

 米国では死刑の量刑判断のポイントや手順を細かく定めている。特にテキサス州では、「被告は社会にとって継続的な脅威か」などの三つの問いに答えを出せば、死刑かどうかの結論が出るよう単純化されている。岩田太・上智大教授(英米法)は「悩む余地を少なくする狙いがある」と解説するが、「本来は市民が悩んで結論を出してこそ、死刑の正当性が保たれる。マニュアル化すればいいというものではない」とデメリットも指摘する。

 ◆評決の方法◆

 日本弁護士連合会は16日の判決を受け、「死刑事件の評決の在り方について検討するべきだ」とのコメントを出した。裁判員制度では、6人の裁判員と3人の裁判官のうち、裁判官を含む5人以上の多数で死刑が決まる。米国では全員一致でなければ死刑にできない制度を採用しており、こうした方式の方が個々の裁判員の心理的負担は軽くなるという意見もある。

 ただ、あるベテラン裁判官は、評議の進め方が重要だとする。「判決後の負担を減らすには、全員が納得するまで議論を尽くすことだ。自分なら、意見が割れているのに死刑を言い渡すことは極力避ける」と話す。

 政府の検討会委員として裁判員制度の立案に携わった清原慶子・三鷹市長(東京都)は当初、「裁判員のストレスなどを考慮し、刑の軽い事件から対象にするべきだ」と主張した。しかし議論が進む中で「人の生死がかかる重大な犯罪の裁判にこそ国民の感覚を反映させる必要がある」との考えに変わったという。

 男性裁判員は会見で、「裁判員になっていろいろ教わった。量刑を公平に考える意味で、(裁判員が死刑事件にかかわるのは)いいのでは」と語った。(社会部 田中史生、横浜支局 加地永治)
(2010年11月17日10時04分 読売新聞)

 このニュースを見聞きした第一印象は、「それなら初めから裁判員なんかを入れずに裁判すればええやん」だった。

 「裁判員の負担軽減図る?」と読売新聞の記事タイトルでは疑問符付きだが、素人目から見ても明らかに裁判員が加わった上での判決なので裁判長は控訴を勧めたのだろう。

 「死刑判断 心のケア課題に」とも言われているが、それを覚悟して裁判官になったものならともかく、一般国民になぜそのようなおそらくは一生の重荷を押しつけるのか。苦役からの自由、日本国憲法はそれを保証しているのに国や裁判所は憲法を破っても平然と、自分を棚に上げて国民を裁いている。日本のタブー「法曹マフィア」といわれる所以か。