八国山だより

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映画「ALWAYS 三丁目の夕日」~ 貧しかったけれど夢や希望があった

2005-11-15 19:49:36 | 映画

原作は小学館ビックコミックオリジナル連載中の西岸良平「三丁目の夕日」
で昭和33年の東京が舞台である。東京タワーの建築が始まり、この年12月23日に完成した。

都会育ちの人には映し出される風景にはタイムスリップしたような懐かしさを覚えるだろうが、田舎育ちの自分には違和感があった。茅葺きの家、田の面影を残す砂浜に松並木の道、車なぞ物珍しく、冷蔵庫も扇風機の存在さえ知らず、クリスマスの風習は昭和40年代に入ってのことだった。

それはともかくストーリーとしては笑いあり涙ありで心温まる物語だった。
この頃は皆貧しいながらも自分の小さな夢に向かって一生懸命生きていた。
夢や希望があった。

ラストシーンで、一平の両親が「きれいな夕日…」というのを受けて
息子の一平がこう継ぐ
「明日だって明後日だって。10年先だって、50年先だって、ずっと夕日はきれいだよ」

はたして今の時代の人間は心からそう思うときがあるのだろうか。

昔を懐古というわけではないが、似たような趣向の映画として
「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」がある。

21世紀の「現実の臭さ」に耐えられないケンとチャコが率いる「イエスタデイ・ワンス・モア」という組織が、日本を20世紀の「古き良き頃」に戻そうとするのに、しんのすけ率いる「かすかべ防衛隊」が戦いを挑むというものだが、「懐かしいって、そんなにいいものなのかなぁ」という言葉が象徴するように、思い出に逃げ込むだけではだめで厳しくても現実をしっかり生きて未来をつかもうというのがこの映画の言わんとしたことなのだろう。

夕日に関して言えば
「夕焼けは人を振り向かせる。だからこの町はずっと夕暮れなんだ」
とのセリフがあった。
あの頃に比べ、21世紀は、何もかもがあるのに、満ち足りることはない。
人々は夕焼けに気が付かない。

現実の我々も夕日の美しさ、夕焼けに気が付いてないのでないだろうか。
「心の貧しさを物で補っている」という言葉のように。