どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

世の中のお返しなんて似たようなもの・・ノルウエー

2023年06月30日 | 昔話(北欧)

      ノルウエーの昔話/アスビョルンセンとモー編 大塚勇三・訳/福音館書店/2003年

 

 一枚の大きな板石に身動きできなかった竜を、一本の木を梃子にして助けた一人の男。竜はすぐに男を呑み込もうとします。「恥も恩も知らないやりかただ」と男はいい、はじめにここをとおりかかるものに、さばき手になってもらおうと竜と決めます。

 いちばんはじめにやってきたのは、年とった犬。犬は、「長い間、主人に真心こめてつくしてきたのに、目も見えなく、耳も聞こえなくなったら、鉄砲で撃とうとする。わたしは逃げ出すしかなくなった。なんとか食べ物をもらって歩き回り、しまいにはうえ死するのさ。世の中のお返しなんて似たようなもの! つめたいもんだよ!」

 竜は、すぐに男を呑み込もうとしますが、男は、なんとか、ご機嫌どりし、このつぎにやってくるひとを、さばき手にしようと話をつけます。

 年とった馬がとぼとぼと とおりかかりました。馬は、「長い間、車をひっぱたり、荷をはこんできたのに、年とって、動けなくなると、ものを食わせる値打ちもない。それだから弾を一発、ぶちこんでやるというのさ。世の中のお返しなんて似たようなもの! つめたいもんだよ!」

 竜は、すぐに男を呑み込もうとしますが、男は、「良いものはみんな、三つ揃い」というだろう。あそこにやってくるキツネが、ほかのふたりと、おなじ裁きをつけたら、あんたは、その場で、私を食っていいいよ」と、話をつけます。

 キツネがやってくると、男は、「毎週、木曜日の晩ごとに、うちのニワトリとガチョウを自分のものにすればいいよ。」と持ち掛けます。

 キツネは、「あんたのように大きくて、がっしりた獣が、この板石の下にいたというのが、よくのみこめない。」と竜に話しかけ、竜がもとの穴に入るようにさそい、竜が穴にはいると、梃子にしていた木を引き抜いたので、板石は、ドーンと、また竜の上にかぶさりました。

男とキツネは、「助けてくれ!」と、叫ぶ竜をそのままにして、めいめいのうちに帰ってしまいました。

 キツネが、男と約束したように、最初の木曜日、ニワトリとガチョウを食べに食べて、そこに寝転がり、いびきをかいていると、そこのおかみさんやむすめたちが、棒をもってキツネをさんざん叩きのめしました。みんながキツネは死んだだろうと思い込んでいたとき、キツネは 床の穴をひとつみつけ、やっとのことで逃げ出しました。

 キツネも、「ああ、ああ、まったく、世の中のお返しなんて似たようなもの! まったく、そのとおりだよ!」

 

 三人目が決着をつけるところでおわることがおおいのですが、男を救ったキツネも、同じような目にあうという おまけつきです。


あらよ、小助さん‥鹿児島

2023年06月29日 | 昔話(九州・沖縄)

        鹿児島のむかし話/鹿児島のむかし話研究会編/日本標準/1975年

 

 タイトルが楽しい話。

 

 うでききの大工の小助どん。ひとりもんで三度の飯よりも酒が好きだった。

 名主どんの新築祝いで、小助どんが、しょうちゅうをたらふく飲んで、上機嫌で、一本松の近くにきたとき、「あらよ、小助さん、よか晩な」と、よびとめる声がする。千鳥足の小助どんが、まわる目でじっとみつめ、びっくり。よかおなごが立っている。よめをとるより、しょうちゅうをとる小助どんも、こんどばかりは、「よめにするなら、こげなおなごなら、よめにしてもよか。」と、思った。

 にっこりわらうおなごの手をぎゅっとにぎると、なんだかおかしい。逆手でなでてみておどろいた。毛がいっぱいはえておっとじゃ。「こいつ、古ぎつねめ、よくもばかにしたな。おもいしらせてやる。」と、大工で鍛えた腕力で、きつねの片腕をしっかりつかみ、ぐるぐるふりまわした。さすがの古ぎつねも、とうとう正体をあらわし、命だけは、たすけてこださいと懇願する。きつねを逃がしてやった小助どん。あっちの普請、こっちの新築と走り回っていると、きつねのことは、それっきり、忘れておった。

 ある晩、鼻歌まじりのほろよいきげんで、橋を渡ろうと足を踏み出した途端、いまあった橋が、ぱっと消えて、小助どんは、あっという間もなく、ドボーンと、川の中へ落ちた。そうしたら、橋にばけていた古きつねが、「あらよ、小助さん、よか晩なー。」、大きなしっぽで地べたをたたいて笑ったとよ。

 

 「あらよ、」のニュアンスがわかると、もっと楽しそう。


クレヨンからのおねがい、かえってきたクレヨン

2023年06月28日 | 絵本(外国)


   クレヨンからのおねがい/ドリュー・デイウオルト・文 オリヴァー・ジェファーズ・絵 木坂 涼・訳/ほるぷ出版/2014年初版

 いつものように、絵をかこうとしたケビンは、クレヨンのはこのうえに、”ケビンへ”とかかれた手紙を見つけます。
 クレヨンからの手紙でした。

 「あかい」クレヨンからは、はたらきすぎ
 「むらさきいろ」からは、せんからはみでるようなぬりかたは、やめてください
 「おうどいろ」からは、」もっとつかってほしい

 はいいろ、しろ、くろ、みどり、きいろ、だいだいいろ、あお、ももいろ、うすだいだいからの12枚の手紙。

 ケビン君、「うすだいだい」の紙をはがしてしまったようで、すっぽんぽんで、箱から出られないと悩みがかかれていて思わず笑ってしまいました。


 クレヨンのきもちをくんだケビンがえがいた絵は?

 左に手紙、右に絵、手紙は手書き文字で、その色で書かれています。白は下地が黒。

 白はなかなかわかってもらえないと悩みを打ち明けていましたが、下地が黒で白の居ぬきというのは、よくめだったよ!

   かえってきたクレヨン/ドリュー・デイウオルト・文 オリヴァー・ジェファーズ・絵 中川ひろたか・訳/WAVE出版/2016年

 「クレヨンからのおねがい」の続編。出版社も訳者も別です。

 ダンカンにきたクレヨンからの手紙。どうやら行方不明のクレヨンからの悲痛な叫びです。

 ソファの隙間でくらしていて、パパに どっこいしょと すわられ、まっぷたつになった えびちゃクレヨンは、はやく うちにかえりたい。

 プールサイドに おっことされたネオンレッドクレヨンは、もう8かげつたったから あるいて かえるよ

 地下室の壁に お化けの絵 いっぱいかいたあと、きみは 部屋に残したまま と嘆くのは けいこうみどり。

 ズボンのポケットに いれられ、ママが それを知らないで 洗濯してしまい 靴下にくっつてしまった そらいろクレヨンは、靴下を ひきはがしてクレヨンと嘆きます。

 ダンカンくん はがきを読んで 反省。素敵な クレヨンたちの 居場所を つくってあげました。段ボールでね!

 

 ネオンレッドクレヨン 旅で 「あたし、にっぽんで ナイアガラの たきを みてきたの。すごい はくりょくだったのよお」と、自慢していますが、これは?


ライラックどおりのおひるごはん、フレールヴィルのいちねん

2023年06月27日 | 絵本(外国)

    ライラックどおりのおひるごはん/フエリシタ・サラ・作 石津ちひろ・訳/BL出版/2022年

 

表紙の建物(ライラック通り10番地)から、何やら漂っています。

そう、各部屋で料理中のにおいです。

「みんなで たべたい せかいの レシピ」を、見開きに1つずつ、15種類。右に料理名と材料、レシピ。

サルモレホ(トマトの冷製スープ)は、イタリア

ワカモレ(アポガドのディップ)は、メキシコ

トマト・スパゲッテイは、イタリア

日本の親子どんぶりもあります。

この建物には、世界各国の住人が。年齢はさまざま。部屋の様子も興味深い。日本人のイシダさんは、背中に赤ちゃんをおぶって料理中。

最後に庭の大テーブルに料理をならべ、みんなでいただきます。料理で国際交流ができれば、争いはなくなります。

気になったのはライラック。この建物のとおりには、ライラックがありそうですが、それについてふれられていないのが残念。

 

  フレールヴィルのいちねん/フェリスタ・サラ・作 石津ちひろ・訳/BL出版/2023年

 

 フレールヴィルの町の中では、狭いながらも 各家庭で野菜や果物を育てています。

 各月ごとの野菜と、個人的はなじみのない各国の野菜のレシピも。

 四月はアスパラガス、レシピは、フランスのキッシュ。

 六月はサクランボ、フランスのクラフテイ。

 十一月は、カボチャ。レシピは、アメリカのバターナッツのケーキ。

 各家庭が、季節の野菜を楽しく育てながら おいしく調理しています。

 ベランダでのプランター栽培で、工夫すれば季節に合わせた野菜を育てることができます。

 

 「世界のレシピ」とありますが、ページの関係なのか 国が限定的なのは物足りません。

 季節のくだものと野菜、庭仕事のあれこれ、いろんな種、庭の道具なども紹介され自分もやってみたいと思わせます。

 前作同様、よくみるとさまざまな国の住人が、さりげなく描かれています。


自分よっかおそろしかもん・・鹿児島

2023年06月26日 | 昔話(九州・沖縄)

         鹿児島のむかし話/鹿児島のむかし話研究会編/日本標準/1975年

 

 日本の昔話では、オオカミより雨漏りが怖いというのが一般的ですが、イノシシがでてきて、イノシシより 雷さまが怖いという話。

 

 ある晩、いなびかりがして、かみなりがどんどんなりだし、じさんとばさんは、ふとんのなかにくるまって、小さくなっておった。さらに、カヤでつくった家の壁にガサッ ガサッとつかかるもんがあった。ばさんが雨戸の隙間から、そーっと見るとイノシシの親子が、壁をやぶって家の中に入ろうとしているので、ばさんは 大慌て。ところが、じさんは、「おれは、イノシシより、雷さまが何倍もおそろしかが。」と、ふとか声で答えると、イノシシのほうが驚いて、逃げていってしまった。

 ばさんがじさんに、「じいさんのひとことでイノシシがにげていったが、じさんな頭がよかかなあ。あたや、みなおしもしたがお」というと、じさんは、「それほどでもなかど、ばあさん」と、こたえるあたりが ほほえましい。


男の子と悪魔・・ノルウエー

2023年06月25日 | 昔話(北欧)

     ノルウエーの昔話/アスビョルンセンとモー編 大塚勇三・訳/福音館書店/2003年

 

 ひとりの男の子が道を歩きながらクルミを割っていると、虫が食ったクルミを一つみつけました。そのとたん悪魔に出会いました。

 男の子が、「ねえ、ほんとうなの? 悪魔は、すきなだけ小さくなれて、針の穴でも通れるんだって?」ときくと、「そうとも!」と悪魔が答えました。

 男の子が、虫食いの穴に、悪魔をもぐりこませると、その穴に細い棒をきっちり差し込み、鍛冶屋のそばを通りかかると、クルミをわってくれるよう、頼みました。

 お安い御用と、鍛冶屋がいちばん小さなハンマーで、クルミをたたきましたが、クルミはこわれません。そこで、鍛冶屋はもうすこし大きいハンマーをつかいましたが、それでも、どうにもなりません。鍛冶屋はかっかと怒って、両手で使う大ハンマーをひっつかみ、あらんかぎりの力で、クルミにたたきつけると、クルミは粉みじんに砕け散って、鍛冶屋の屋根も半分ふっとびました。

 鍛冶屋が、「まるで、このクルミの中にゃ、悪魔がいるみたいな気がするぜ!」と、叫ぶと、男の子は 「ああ、ほんとうに、いたんだよ。」と答えます。

 

 あまり怖くない悪魔でした。


旅するわたしたち On the Move

2023年06月24日 | 絵本(外国)

   旅するわたしたち On the Move/ロマナ・ロマニーシン アンドリー・レシヴ・作/広松由希子・訳/ブロンズ新社/2023年

 

 人類のふるさとアフリカからさまざまな理由で旅に出た人類

 歩くのが疲れたら車輪(およそ6000年前)、自転車、馬車など乗り物に乗って

 三蔵法師やクリストファー・コロンブス、さらにニール・アームストロング(月面におりたった)など さまざまな探検をした人物

 船に乗って、飛行機に乗って、ときには、ホテルにとまって

 地球で最も深い海溝にもぐり、世界のてっぺんのエベレストにのぼり、そして宇宙の先まで

 コロシアムや万里の長城、ピラミッドなどの建造物

 エルサレム、メッカ、ブッダガヤーなど巡礼者がめざした土地。

 興味深いのは国境。アメリカのダービーラインとカナダのスタンステッドという町にまたがって、ハスケル図書館とオペラハウスが建っていて、床の上が国境線ということ。図書館の入り口はアメリカで、本があるのはカナダ側。オペラハウスの舞台はカナダで、観客席はアメリカ。

 100万㎞も飛びながら、一生のほとんどを空中で過ごし、食べるときや眠るときも飛んでいるというヨーロッパアマツバメなどの鳥の移動、最長2万㎞も泳ぐといわれるクジラや、サケ、イワシ、マグロなどの移動も。

 人間は地図もコンパスも手にいれたが、動物たちは そんなものがなくても移動する。

 ひとつひとつが、一冊の本になってもおかしくない内容ばかり。入門書として見る絵本なのかも。

 原著は2020年とつい最近。作者は、ウクライナの方です。


つきのこうえん

2023年06月23日 | 絵本(日本)

   つきのこうえん/文・竹下文子 絵・島野雫/バイ インターナショナル/2023年

 

 いつもは、寝る前におかあさんから本を読んでもらう るなちゃん。けれど、今夜はおかあさんがなかなかきてくれません。

 ネコのミモがまどをひっかいて、「にゃー」となくので、るなちゃんが まどをあけてみると、男の子が ふわんと うかんで わらっています。

 「ぼくは、ナール。今夜は満月だよ。つきのこうえんに あそびにこない?」

 ナールと 手をつなぐと るなちゃんも ふわんと 空に うかびました。

 ネコのミモといっしょについたのは つきのこうえん。そこでは、パジャマ姿の 子どもたちが、おおぜいあそんでいました。

 つきのこうえんは 地面の砂も木の枝も、花壇の花も みんな すきとおってみえます。

 ボール、ブランコで遊び、ふしぎなものたちの 行列を見学。船で川下り、お城を見学。さくらんぼの種を ぷっ、ぷっと とばすと、流れ星になって、きらきら 光りながら 空に消えていきました。

 「るなちゃーん」とおくで よんでいる声。おかあさんの声です。

 帰りは、長いー長い 滑り台で、家に帰ると、朝でした。

 

 透明感あふれ幻想的な絵。ほかの子も、こんな夢をみているのかも。


さかなのおんがえし

2023年06月22日 | 紙芝居

   さかなのおんがえし/ブンルート・作画 チャンタソン やべみつのり 長野ひで子・監修/汐文社/1998年(12画面)

 

 小さな小さな二ひきのアリが、水にこまっている大きなサカナさんを、みんなの協力で、川の中へもどしてあげます。ゾロゾロ アリがあつまってくるようすは壮観です。

 大雨でおぼれそうになったアリをたすけてくれたのはサカナさんでした。

 

 シンプルな構成ですが、興味深いのは、この紙芝居の成り立ち。作者はラオスのかた。97ASPB主催ビエンチャンかみしばいセミナー参加者共同制作とありました。

 注記が多いのもほかの紙芝居にはみられない特徴。セリフがラオ語で併記され、アリやサカナなどのラオ語訳もあります。

 1990年代にはいって日本の紙芝居がラオスに紹介され、幼稚園や学校の先生などが作品を作り、子どもたちにきかせているといいます。ラオスの町では本屋さんがほとんどなく、教科書もいきわたらない小学校もあるが、昔話はたくさんあるといいます。(現在はどうなっているかはわかりませんが・・)

 ところで、ラオスという国についてどれだけ知っているでしょうか。この紙芝居をみて、はじめてラオスの実情にふれることができました。


猫の足・・インド

2023年06月21日 | 昔話(アジア)

        語りつぐ人びと*インドの民話/長弘毅/福音館文庫/2003年

 

 冤罪事件で有罪とされると、その人の人生は、それで翻弄される。時間がたってから無罪とされてもその人の人生は取り戻すことができない。裁判で一審と二審の判決がまったく正反対になることも多い。ただ、昔話で裁判?になると 明快な判決がでる。

 

 商売物の綿がネズミにかじられないように、四人の商人が共同で猫を一匹かっていました。四人は猫の足を一本ずつ自分の持ち物とし、思い思いの飾りを猫の足につけていました。

 あるとき、その猫が一本の足に大けがをしてしまい、その足の持ち主は、傷の手当てをし、油にひたした布を傷の上にまいてやりました。ある日のこと、商人たちが商いに出かけたとき、猫がかまどのそばで、じゃれはじめました。そのうち運悪く、足に巻いた布に火がついて、綿のしまっている倉庫に逃げ込み、猫は助かりましたが、倉庫にあった綿は全部灰になってしまいました。

 商人たちは、綿が灰になっているのをみると、けがをした足の持ち主が、損害をつぐなうようよう法廷に持ち込みました。けがをした足の持ち主は、猫は畜生で、分別がない、猫もやけどで苦しんでいる、損害は四人が力を合わせれば、もとどおりにすることができると、申し立てます。裁判長が、この男の言う通り四人で力を合わせ、受けた損害をうめる気はないか、尋ねますが、三人はあくまで責任をとるよう声をそろえて申し立てます。

 裁判長は、けがをしていた足が一本だけだったことを確認すると、次のように判断をくだします。猫は、残りの三本の足で、かまどのそばに歩いていき、それで布に火がついたことになる。じょうぶな三本の足の持ち主のほうが損害をつぐなう責任がある。したがって三人が、けがをした足の持ち主に損害を支払うように。

 

 猫の足を一本ずつ持ち合うのは理解しがたいのですが、それだけネズミの被害に悩まされることが多かったことを思わせます。


ビール樽をもっている若者・・ノルウエー

2023年06月20日 | 昔話(北欧)

   ノルウエーの昔話/アスビョルンセンとモー編 大塚勇三・訳/福音館書店/2003年

 

 グリムの死神がでてくる話(「死神の名付け親」または「名づけ親の死神」)とパターンは同じです。

 

 若者が、ビールづくりのところでの奉公がおわり、給金の代わりに小さいビール樽をもらって旅に出ます。

 歩けば歩くほど、樽は重たくなってきます。そこでビールをいっしょに飲めるような人がだれか来ないかと、探しはじめます。

 はじめにやってきたのは神さま。神さまと聞いた若者は、「あなたは、この世の人たちの間に、大きな差別をつけて、いろいろ変えるから、ある人は、とても金持ちになるのに、ある人は、ひどく貧乏になっている。いやです。あなたとは、いっしょに飲みたくありませんよ」と断ります。

 次に会ったのは悪魔。「あんたは、みんなをいじめたり、ひどい目にあわせたりするばっかりだ。どこかで、なにか、不幸があると、いつでも、みんなは、あんたのせいだ、って話している。いやだよ、あんたといっしょになんか飲みたくありませんよ」、若者は断ります。

 若者が死神にであうと「あなたは、りっぱなかたです。なにそろ、あなたは、貧乏人も金持ちも、みんな、おなじにあつかうんですから」と、いっしょにビールを飲みます。

  これまで、これほどおいしい飲み物を飲んだことがなかった死神は、ビールをなんでも治せる飲み物にし、病人のところにいって自分が、病人の足元に座っているときは、この樽からついだ飲み薬で治すことができる。ただ、病人のベッドの頭のほうに座っていたら、死ぬのをとめるような、どんな治療法も、薬もない、と話しました。

 ということで、それから若者は、もう助からないといわれた病人をたくさん助けて元気にしてやり、金もあり力のある人になっていきました。

 やがて、遠い国の死にそうなくらい重い病気のお姫さまをすくうため、若者がお姫さまの部屋に行ってみると、死神が、頭のほうにすわっていました。なんとか死神をだまそうと、死神が居眠りしている間に、ベッドの向きを反対にかえて、飲み薬を飲ませ、お姫さまの命は、救われますが・・・。

 若者が、アーメンと唱えない限り、命は助かるのですが、そこは死神、「主の祈り」を書きつけた大きな板を、若者のベッドの上にかけておき、若者に「アーメン」と、唱えさせたので、若者の時間は、永久におわりました。

 

 頭と足を反対側にするのは、グリムは、一度は大目にみてくれます。が、ノルウエー版では 大目にみてくれません。


まいちゃん こんにちわ

2023年06月19日 | 紙芝居

   まいちゃん こんにちわ/脚本・徳田之久 絵・武田美穂/童心社/2018年(8画面)

 
 きょうは いい天気。まいちゃんが にこにこ さんぽしていると リスくんにあい にぎにぎ 握手
 
 パンダの おばさんとあい おばさんが まいちゃんを ぎゅっ ぎゅっ ぎゅっと ハグ
 
 こんどは おおきな こわそうなゴリラの おにいさん
 
 ゴリラさん なにやら もぞもぞ
 
 すると まいちゃんを コチョ コチョ コチョ コチョ はじめました。まいちゃんも おかえしの ゴチョ ゴチョ
 
 
 ちょっとちいさい子むけでしょうか。親しみやすい絵です。

ごんちゃんとぞうさん

2023年06月18日 | 絵本(日本)

    ごんちゃんとぞうさん/馬場のぼる/PHP研究所/1986年

 

 ごりらのごんちゃんが草原で大きな鍋を拾い、どんどこ どんどん どどんが どんどん。

 寝転がって足の上で、鍋を くるり くるり くる くる くる。

 玉乗りのように乗って 木に 衝突。

 鍋を お面がわりにして みんなを おどろかしたり。

 ぞうさんを おどろかそうとすると ぞうさんの 水鉄砲で ガッシャーン。

 鍋の取っ手にヒモをつけて木の枝からつるすと ブランコです。

 ふたりのりしたら ヒモが切れて ざぶーん 池の中。

 今度は鍋は、船がわり。

 たっぷりあそんだ鍋を、ベッドの代わりにして、お休みです

 

 鍋一つで とことん 楽しむ ごんちゃん。恐るべし 遊びの天才です。

 馬場さんのほのぼのした絵に癒されました。


シッカとマルガレータ・・戦争の国からきたきょうだい

2023年06月17日 | 絵本(社会)

   シッカとマルガレータ/ウルフ・スタルク・作 スティーナ・ヴィルセン・絵 きただい えりこ・訳/子どもの未来社/2023年

 

 海の東側に住むシッカは、戦争がはじまり、両親と別れ、犬のぬいぐるみのトイボをだきしめ、船で平和な国へ。

 海の向こうの西側でシッカをむかえてくれたのは、同じ年ごろのマルガレータという女の子がいる家庭。

 言葉が違うふたり。マルガレータの両親は、シッカのことをおもい、遊園地へつれていきますが、シッカとマルガレータの距離はちぢまりません。

 シッカが、マルガレータのドールハウスの家具にさわったとき、ハエがブーンととんできて、いきなりドールハウスをハエに投げつけたので なかの テーブル、いす、お皿、コップは 床に散らばってしまいます。それをみたマルガレータは、「あんたなんか出ていって!」と 叫びます。ハエを見たとき、シッカは爆弾が空からふってきたと思ったのです。

 なにかとシッカにはやさしい両親。マルガレータは、お母さんから言われ、シッカを公園につれていきますが、わざといろんな道を通り、「あんたなんか、どこか めんどうみてもらえば」と、ひとり家に帰ってしまいます。まもなく雨がふりはじめてもシッカはかえってきません。

 両親から聞かれ「しらない。かってにいなくなっちゃった」と、マルガレータ。

 「きっとまよっているんだわ」「道をたずねることだって、できないだろうに」、両親が、でかける準備をしますが、マルガレータは、それより先に公園に向かって走り出しました。シッカは、遊び小屋のなかで、トイボをかかえてうずくまり両手で耳をふさいでいました。帰ろうと声をかけると、シッカはマルガレータを小屋になかにひっぱり、「きをつけて 戦闘機がくる。爆弾がふってくるよ」といいます。それはかみなりがゴロゴロ鳴る音でした。

 一人取り残されたことをマルガレータの両親にはだまっていたことから、距離がつかずいた二人。シッカが大事な家族の写真を海に落としたとき、泳げないシッカの代わりに海に入って写真をもってきてくれたのはマルガレータでした。自転車にのる練習も、マルガレータが手伝ってくれます。

 やがて戦争が終わって、無事に家に帰ることになったシッカは、別れのとき、マルガレータにトイボをさしだし、トイボは”希望”という意味だとつげます。

 「うれいしいでしょ?」マルガレータ

 「うん。あんたは?」シッカ

 「あんまり」マルガレータ

 「うれしいけど、かなしいな」シッカ

 最後の会話が、すべてを 物語っています。

 

 さまざまな事情で難民になった子がいれば、ウクライナのように、戦火から避難せざるをえない子どもたち。この子たちの将来に、希望はあるのでしょうか。そんなことを考えさせてくれる絵本でした。

 

 作者はスウェーデンの代表的な児童文学作家のかた。


石屋がいちばん・・宮崎

2023年06月16日 | 昔話(九州・沖縄)

        宮崎のむかし話/宮崎民話研究会編/日本標準/1975年

 

 「ネズミの嫁入り」の石屋版。

 

 石屋の三代目を期待されていた子が、どうしても石屋にはならないというので、心配した爺さんが、孫をつれて和尚さんのところに出かけます。

 和尚さんが、何になるつもりか孫にたずねると、「武士になりたい」。

 和尚さんが、「武士の上には、殿様がいて、すこしも頭が上がらない」というと、孫は殿様になるという。

 「殿様の上には、てんが(宮殿にすんでいるえらい人がおるぞ」

 「てんがの上には、お日さまという人がおるが」

 「お日さまが 藁をほしていると、雲がでてきて、かわかない」

 「雲は、風に吹かれて、自分の思うように動かれない」

 「風には、東にも西にも大きな岩があって、西へ行けば 頭をこずき、東へ行けばおでこをうたれる」

 「岩になってみよ。石屋というえらいやつがおって、まいにちまいにち、コッチン、コッチンと きられるがよ」

 ここで、孫が、石屋になるというと、和尚さんは、「それみよ。やっぱり石屋がいちばんいいじゃろがな」といい、孫は親ゆずりの石屋に。

 

 説教でなく、本人が納得できるようもっていくのは 一つの 技術です。