ねこのお客 かめのシェルオーバーのお話1/ルース・エインワース・作 河本祥子・訳/岩波少年文庫/1996年初版
胴体はまるまるふとっていて、鱗がはえ、歯は長くて棒飴のようにまがっているアグサムというかいぶつ。
アグサムが誰かを怒らせると、その怒った人は、召使になって、その命令にしたがわなければなりませんでした。
アグサムが怒らせた人を召使として、無給で城の掃除や食事の支度、羊や馬の世話などをさせていました、
このアグサムがほしかったのが、洗濯を上手にする召使でした。近くの村で見たこともないほどまっしろな洗濯物をほしている家の庭先をとおります。さっそくこの家のおばあさんをおこらせ、自分の召使にしようと画策します。
まず、月曜日おばあさんがほしていた洗濯物のひもを切り、雪のように白い洗濯物を汚れた草の上に落とします。
火曜日、鍋にはいっていたミルクをすっぱくしてしまいます。
水曜日、庭のタチアオイをアザミにしてしまいます。
木曜日、階段にひもを張り渡し、おばあさんをころがすことに成功します。
金曜日、たまごをかかえたおばあさんを驚かし、たまごを全部わってしまいます。
アグサムが何度も何度も、おばあさんをおこらせようとしますが、おばあさんは、なにごとも前向きにとらえる陽気なおばあさんです。
あれもこれも失敗したアグサムは、土曜日、ついには、おばあさんの家に火をつけてしまいます。
どこまでも前向きなおばあさん。
「家は好きだったけど、壁も崩れ落ち、屋根からは雨が漏り、床には穴があいていたからねえ」と平然。
おばあさんは熱い灰にジャガイモを入れて焼き、これを村の子どもに手渡すのに大忙し。
家がなくなって、おばあさんどうするのか心配になっていると、焼きジャガイモをもらおうとやってきた村中の人が、おばあさんを助けようと、あっという間に新しい家をつくる約束をしてくれます。
五回も「わたしはなんて運がいいだろう!」と続きます。
運が悪いと考えるより、運がいいと考える方が、人生何倍も楽しくなります。