アフリカの民話集 しあわせのなる木/島岡由美子・文/未来社/2017年
ある年、厳しい乾季がやってきて、雨が降らない日が長く続き、川や池が干上がり木や草も枯れ、飲み水や食べる草や木の実もなくなって、死んでしまう動物もではじめた動物の国。
いつでも水が飲めるように井戸を掘ることにした王さまライオン。
さっそく井戸掘り名人のウサギとカメとヤマアラシが、井戸をほりはじめますが、何週間たっても、水は出ませんでした。
ワニは井戸掘り名人のところへ弟子入りをおねがいしていましたが、からだの横っちょにはりだした短い手足じゃ地面をほることができないから、ひっこんでなといわれ、しょんぼり。
ある日、ワニがたまごを産み落とす場所をさがしていると、ウサギとカメとヤマアラシが、井戸を掘ろうとして、とちゅうであきらめた場所にあいた穴の中に入ります。
穴は浅すぎましたが、もう産まれそうで、お腹が痛く手足をバタバタうごかします。するとワニのするどいつめと強い手足の力で、穴が深く深くえぐられます。そのあともおなかが痛くて手足をバタバタ動かすと・・・。
由来話ですが、ワニはもともとは、陸上にすんでいたという前提でしょうか。
このほかにも、水をめぐる戦いや水泥棒のお話が多いというのも、おかれた状況を示しています。
この民話集は、はじまりが「ハポ ザマニザカレ(むかしむかし、あるところに)」とはじまり、結びは、「きょうの話は、これでおしまい。ほしけりゃもってきな、いらなきゃ海にすてとくれ。」と統一されています。
中を そうぞうしてみよう/作:佐藤 雅彦 ユーフラテス/福音館書店/2008年
いつも手の込んだ動きのピタゴラスイッチを楽しませていただいているのですが、この制作スタッフもくわわった絵本。
テレビのほうは、地味なのであまり見る人がいないかもしれません。
椅子、針刺し、貯金箱、作り物の花、包丁などなどの中をエックス線で透かしてみます。
あまり手の込んだものはでてこないので、子どもと一緒に話してみるのも楽しそうです。
想像力を刺激してくれそうです。
人くい鬼/原作:グリム こみね ゆら:文・絵/あすなろ書房/2016年
パステル画風のやさしい絵が特徴的です。
知られざるグリム童話の一編を再話したとありました。
どんな事情があったのか、お妃が、生まれたばかりの赤ん坊を乗せた金のゆりかごをうみにそっと流すところからはじまります。
赤ん坊がついたのは人くい鬼が住む島。鬼のおかみさんは、この子を育て、大きくなったら息子の嫁にしようきめます。
女の子はすっかり大きくなって美しいむすめになり、人くい鬼の息子との結婚式がちかずいてきます。
おりよく海をおよいできたのは、わかく美しい王子(王子が、なぜ海をおよいできたかはわかりません)。
王子は人くい鬼に食べられそうになりますが、女の子の機転で難をのがれ、人くい鬼の三つの宝、一足で1km歩ける魔法のくつ、願い事がなんでもかなう魔法の杖、どんなときにも返事をして、助けてくれる魔法の豆をもって島をにげだすことに。
ここからは「三枚のお札」のパターンですが、自らが姿をかえます。
女の子は白鳥に、王子は大きな池にかわり変わり、砂煙をまきおこし、女の子はバラの木に、王子は小さなハチに変わり、ついたのはお妃の花園。
お妃は魔女をよびよせます。魔女がバラに呪文をとなえると女の子があらわれ、王子の魔法もとかれます。
もちろん最後はハッピーエンドです。
人食い鬼の三つの宝や王子との出会いが、あまりにも都合よすぎてややもの足りません。
人くい鬼の息子の金のかんむりを王子にかぶせ、難をのがれるのは、ほかの昔話に出てくるパターンです。
グーテンベルクのふしぎな機械/作:ジェームス・ランフォード:作・絵 千葉 茂樹・訳/あすなろ書房/2013年
グーテンベルクといえば活版印刷を最初に作り上げた人。
1400年なかばのことです。
本への愛情と職人的技術への思いをこめて、2年の歳月をついやして制作されたというこの絵本は、こまかく手の込んだ絵もみごたえがあります。
活版印刷で、本は世の中に普及するようになり、人類の知識が広く共有されるようになりました。
普及がなければその後の歴史も大分かわってきたはずです。
デジタル技術の進歩で活版印刷は忘れられそうですが、インクの臭いや手触り感は、電子書籍では味わえそうもありません。
ぼくの影をさがして/飯沢耕太郎・文 minim++・絵/福音館書店・たくさんのふしぎ傑作集/2017年
ある日突然影をなくしてしまった”ぼく”が、自分の影を探して、迷いこんだのは「影の町」。
影があるのが、あたりまえと思っていると、たしかに影がなくなってしまうとびっくりです。
ただこれは導入で、普段考えたこともない影。
さまざまに形を変える影や、影絵遊び、影絵芝居、影で描いた絵などがでてきます。
影は、増えたり、曲がったり、ゆがんだり、切れたり、折れ曲がったり自在にかわります。シルエットや光の当て方で、いろんなものになる影。
うーん、たしかに面白い。ひさしぶりに影絵遊びを思い出しました。ただ障子がないと準備も大変そうです。
ギョレメ村でじゅうたんを織る/新藤悦子:写真・文 西山晶・絵/福音館書店/1993年
イスラム社会の人びと、とくに女の人の素顔やどんな暮らしをしているか、どうしても知りたくなった作者がトルコのギョメレ村に住み込んで取った写真が中心です。
ギョレメ村は、とんがり帽子の形の岩が一面に広がる、カッパドキア地方にあります。
トルコ語を習い、村の人と同じ生活をしようと、余分なものは持参せず、ぼうず頭にしたという作者。
じゅうたん織は、村人も化学染料をつかうなかで、村のハリメさんを説得して草木染に挑戦です。
染色に苦労し、かべにかけた織機をつかい、たて糸、よこ糸を、ナイフ、くし、はさみをつかって。
三か月後には、たて180㎝、よこ120㎝のじゅうたんができあがります。
できあがりまで、食事や結婚式のもよう、畑の様子、いけにえの羊を神にささげる犠牲祭のようすなど。
結婚式は四日も続き、男は花婿の家に、女は花嫁の家にあつまって祝うといいます。
暦は太陰暦といいますが、いまでもそうなのでしょうか。
トルコというとイスラム教と思ったら、岩の洞穴には、かってキリスト教徒がフレスコ画を壁に描いた教会や修道院ものこっているといいます。
イスラム教徒の礼拝の動作は簡単ではなく、アラビア語も覚えなくなくてはならず大変そうです。
美女と野獣/ローズマリー・ハリス・再話 エロール・ル・カイン・絵 矢川 澄子・訳/ほるぷ出版/1984年
「美女と野獣」を絵本ナビで検索すると20冊以上のものがありました。
「美女と野獣」といえば、ディズニー映画ですが、かすかに記憶に残る程度で、ストーリは思い浮かびません。
「美女と野獣」は、1740年にフランスのガブリエル=シュザンヌ・ド・ヴィルヌーヴによって最初に書かれ、現在広く知られているのはそれを短縮して1756年に出版された、ジャンヌ=マリー・ルプランス・ド・ボーモン版といいます。
ほるぷ出版版は、中世ヨーロッパ風の女性の衣装がなんとも優雅です。
商人がとった一輪のバラは、ケダモノのバラ。
娘とひきかえに、お前の命は助けてやる。ただし、それも娘が自分からすすんでくるのが条件。だめならおまえ自身が戻ってこいといわれた商人。
商人には三人の娘がいて、派手な生活をしていました。見栄っ張りのツント、欲ばりのケチイ。末娘は気だても器量もかがやくばかりでキレイさんとよばれていました。
ところが、商人の船が海賊に襲われ、財産をのこらず失う羽目に。ところが一年たって船が2せきもどってくることになり、商人が出かけていきますが、嵐に遭遇し、御殿のようなところに迷い込みます。
そこにあったのがバラでした。
商人がでかけるとき、上の二人は「扇に、香水に、ダイヤモンドに、ルビイのペンダント!」をおみやげにたのんだのですが、キレイはバラを一輪ほしいといったのでした。
父親のことをおもい、ケダモノのところにでかけた末娘でしたが、ケダモノは恐ろしい顔とは裏腹に、大変やさしく、末娘はいつかうちとけていきます。
ただ結婚の話がでてきても末娘はうんといいません。
家の様子を再現する魔法の鏡で、父親が病気であることを知った末娘は一週間でかならずかえってくるからと約束し、父親のところへ帰ります。
上の姉二人にひきとめられていたある日、末娘は花園のバラがみんなしおれ、ケダモノがのたうちまわっている夢をみます。
末娘が、飢え死にすることにしたというケダモノに、「だめ、生きるのよ。そして結婚しましょう」「あなたなしでは あたし、とても生きていかれません。はじめは おそろしい獣だた思っていたの。でもいまでは世界にかけがいのないおかた。あなたが死ぬと思っただけで、あたしも死にそうよ」とさけんだとたん、ケダモノは王子に、バラの花園も美しく輝くのは、昔話の世界そのものです。
ヴィルヌーヴ版では、3人の娘のほかに3人の息子がでてくるようですが、物語の進行には影響しません。
矢川訳では、野獣が「ケダモノ」、末娘が「キレイ」となっていますが、人によって好き嫌いがでそうです。
ル・カインの描く野獣に興味があったのですが、表情がわかるのは一ページだけ。顔はたしかに醜いのですが、恐怖を感じるものではありませんでした。
ハエをのみこんだおばあさん/シムズ・タバック・作 木坂 涼・訳/フレーベル館/2002年
おばあさんがハエを飲み込み、ハエを捕まえようとクモを飲み込み、クモをつかまえようとトリを飲み込み、ネコ、イヌ、ウシ、ウマを次々に飲み込んで、どんどん体がおおきくなったおばあさんの運命は?
似たような話がいっぱいあって驚かないのですが、こまかな仕掛けと動物たちの独白があって、さらに週刊誌や新聞がでてきたりと見どころ満載です。
「おばあさん、しんじゃうのかも しれないね」というフレーズがくりかえされるのですが、動物たちの反応。表情も抜群です。
・ハエ いっぴきで・・コトリ
・なけちゃうわね・・ウシ
・そんなこと ないよね・・イヌ
・わたしたちを おいて いってしまうの・・ウシ,犬
「クモのおすすめ むし料理のつくりかた」、雑誌
「おばあちゃんへ」、エアメール
「老人とネコ」、タイムの記事
「おばあさん、ごくん! イヌをのみこむ」、週間スキャンダル
「おばあさん 夕食に ウマを のみこむ」、ウオール・ストリート・ジャーナル
本文とは別の仕掛けが小さくて、大勢に読み聞かせるのは、この絵本の良さがつたわらないかもしれません。
びっくりどっきり寄生虫/ニコラ・デイビス・文 ニール・レイトン・絵 唐沢則幸・訳/フレーベル館/2008年
昨年の11月に韓国に亡命した兵士の体内からでた寄生虫の大きさにびっくりさせられたが、当時の記事をみてもよくその正体がわからなかった。
寄生虫といってもその種類は数えきれないほど多く、科学者によっては、動物より多いと考えている人もいるというから驚き。
人間に住む可能性のある寄生虫の数は400種類を超えるというから、また驚き。しかし、現代の人は清潔にしているからほとんどいないとあって、やや安心。
人間だけでなく、動物に住む寄生虫にもふれられています。
なにしろボリューム(60ページ)があって、読み込むのも大変ですが、それだけいろいろあるということ。
・人間の体の中には、サナダ虫(なんと20メートルちかくにもなるという)、鞭虫、ギョウ虫、鉤虫など。体の表面にすんでいる寄生虫には、アタマジラミ、コロモジラミ、ノミなど。
・害はないというが、ニキビダニは、老化した皮ふや皮脂をこのむ。
・世界で一番危険な動物はマラリア原虫。マラリアで死ぬ人は年間100万人。
・「科学者が、新しい薬を発明してきたが、寄生虫はすぐにその薬に慣れてしまう。だからアタマジラミは今でも元気に生きているし、毎年多くの人びとがマラリアで亡くなっている」とも。
・メジナ虫は60cmぐらいの寄生虫で多くの人びとが感染していたが、今や絶滅寸前とあって、ほっと一息。
・人間には免疫システムがあって、寄生虫がいないか見回っているとあって、一安心。
・アレルギーや腸の病気は、適度に加減した寄生虫を飲ませることで軽くすることができる!
びっくり、どっきりですが、ユーモアのあるイラストには、すくわれます。
毛皮ひめ/シャーロット・ハック・文 アニタ・ローベル・絵 松井るり子・訳/セーラー出版/1991年
料理番の下働きをしていた娘が、王さまの舞踏会に3回でて、めでたく結ばれるシンデレラスートリです。
といっても身分違いではなく、娘はもともとお姫さまでした。母親が早く亡くなりますが、お姫さまをわが子のように思っていた乳母が料理や、読み書き、作法を習わせてくれ、強く賢い何でもできるお姫さまに育ちます。
乳母も亡くなって、ひとりぼっちになったお姫さまは、荷車50台分の銀貨をよこすという鬼のような王さまにお嫁にいくように父親からいわれます。
ぞっとしたお姫さまは、気持ちをかえてくれるように頼みますが、父親はきいてくれません。
そこで姫は「太陽のような金と、月のような銀と、星のようにかがやくような三枚のドレス。国中の千種類のけものの毛皮でつくった上着」をそろえてくれるよういいます。こんな無理な願いは、かなうはずがないと、思ったのですが、父親の王は、すぐにドレスも千まい皮の上着を用意します。
あしたは婚礼の日という前日に、お姫さまは、一つ目のクルミの殻に、三枚のドレス、二つ目のクルミの殻に、母の形見の金のゆびわ、指ぬき、金のつむぎぐるまを、三つ目のクルミの殻には、だいすきなスープの香味料を入れて、城をでていきます。
千まい皮の上着を着た毛皮むすめは、城の料理番の下働きをするようになりますが・・・。
ドレスが三枚で舞踏会も三回でますが、毛皮むすめは、金のゆびわを、王さまの器にいれたり、特製のスープでおいしいスープを作ったりと、いかにも自分にきがついてくれといわんばかりの振舞い。
幸せをつかむためには、やっぱり知恵も必要のようです。
最初のページに、悲しみに満ちた母親の葬式の様子があって、最後は三人の子どもを抱いた毛皮ひめのしあわせそうな姿があって対照的です。
世界むかし話 中近東/こだま ともこ・訳/ほるぷ出版/1988年初版
昔話では、生まれたとき、とびっきりの贈り物をするのが妖精です。
三人の妖精が、木こり夫婦の赤ちゃんにおくったもの。一つは娘が悲しむとき涙のかわりに真珠がこぼれるというもの。二つ目は、娘がほほえむと、あたりにはバラの花がさきみだれ、三つ目は、娘が歩くと、足元にはみどりの若草がもえでるというもの。妖精は名付け親にもなり、バラ姫という名前もおくります。
月日がたち、バラ姫のうわさを聞いた、ある国のお妃が、ぜひとも息子の王子と結婚させたいと思います。
王子は夢の中で、バラ姫とあっていました。
王子は、バラ姫と結婚させてくれるよう木こり夫婦にいうと、夫婦は、ふってわいた幸運に喜んで、お嫁にやる約束をします。
結婚式の日に、バラ姫をむかえにいったのは、バラ姫と、にていた娘がいる貴婦人。貴婦人は、みんなをだまして、自分の娘と王子を結婚するよう悪だくみを考えます。
貴婦人は朝からバラ姫に塩からいものしか食べさせず、花嫁の馬車には水差しと、人が一人入れるくらいの大きなバスケットを積み込みます。
宮殿にいくとちゅうで、バラ姫は、喉が渇き、水差しの水を飲ませてくれるよう貴婦人にいいます。すると水一杯の代償は目玉です。
しばらくいくと、また喉が渇いて、水一杯の代償も目玉。そして貴婦人はバスケットにバラ姫を押し込み、高い山のてっぺんにはこんで、捨ててしまいます。
やがて貴婦人の娘と王子は結婚しますが、王子は、真珠のなみだも、バラも咲かず、みどりの草もはえないことに疑問をもちます。
一方、バラ姫は、バスケットの中から聞こえる泣き声をききつけたごみそうじのおじいさん(急にごみそうじのおじいさんがでてきて、とまどうのですが、山の上でごみを拾っていたのでしょうか?)にすくわれます。
悲しくて泣いてばかりしていたバラ姫でしたが、楽しかったころを思い出して、微笑むとバラが一輪さきます。
娘のために季節外れのバラを買うことにした貴婦人は、バラ姫の目玉とひきかえにバラを手に入れます。もういちどおなじことがあって、バラ姫は、両方の目玉をとりもどします。
(目玉をとりもどすというのは、いかにも昔話です)
物語はまだまだ続くのですが・・・・。
この物語には、やや長い前段があります。バラ姫の母親は、じつは王さまの末娘でした。上の姉は40歳と30歳の姉。一番上の姉にいわれて「わたしは、およめにいくのを、もうそんなにまっていられないのです。どうぞおわすれなく」と、王さまに手紙を書きます。
王さまは、矢を放つようにいい、「矢が落ちたところにいる男が、おまえたちの夫じゃ」といいます。
その結果、一番上は大臣の息子、二番目は大僧正の息子、三番目は木こりと結婚することになったのでした。
手紙を読んだ王さまが、姉がじっと我慢してたのに、末娘が辛抱できないというのは罰があたったのだといって、宮殿を追われ、木こりと結婚したのでした。
昔話にはあまり登場人物の年齢がでてこないと思っていると、思いがけず年齢がでてくるものがありました。姉妹が40歳、30歳というのもびっくり。
前段が長く、後半も長いという構成は、アラビアンナイトの世界を思わせます。
野生のチューリップ 月刊「たくさんのふしぎ」/前嶋昭:文・写真/福音館書店/2017年5月
目を楽しませてくれたチューリップも咲き終わり、やがて来年に向けて、休眠へ。
いま見ているチューリップは、人間が畑でつくってきたもの。
作者は、野生のチューリップをもとめて、カザフスタンへ。
チューリップの祖先は、今から1000万年から2000万年!前に、この付近の山麓や砂漠地帯で発生したといいます。
人間の歴史にくらべても、はるか昔のこと。
1600mほどの高地のチューリップもふくめ、いくつものチューリップの写真をみているだけで、楽しくなります。
チューリップイコール球根というイメージですが、自然のチューリップは、たねでふえます。ハチやバッタなどたくさんの虫が、受粉の手助け。球根が大きくなって花を咲かせるようになるためには、10年以上もかかるといいます。
チューリップのあざやかな色は、受粉を手助けする虫を引き寄せるため。
チューリップ一つとっても、知らないことだらけです。
ついでに、チューリップの花言葉全体としては「思いやり」
色ごとにそれぞれあって
赤:愛の告白
黄:望みのない恋、名声
白:失われた愛
紫:不滅の愛
ピンク:愛の芽生え、誠実な愛
チューリップの可憐な姿は、”愛”にからむものが多い。
ジェイミー・オルークとなぞのプーカ/トミー・デ・パオラ:再話・絵 福本友美子・訳/光村教育図書/2007年
おかみさんのアイリーンが、出産した妹のキャスリーンを手伝うため家を留守にします。
そこにやってきたは、アイリーンが留守の時には、ごちそうがたくさん置いてあると知っているジェイミーとなかよしの三人。さっそく宴会です。
次の日も次の日も宴会です。
宴会のあとにはよごれものがたくさん。
アイルランド一怠け者のジェイミー・オルークは、ちらかりようをみただけで、くたびれて、そのままベッドにはいって寝てしまいます。
ところが、不思議なことに、宴会の翌日には、いつも綺麗に片付いています。
宴会の二日目、ベッドに入ったジェイミーがねむらず、毛布をかぶって、じっとみていると、人間か?ロバか? なんだかわからないけれど、そこにいるのは、長い耳としっぽのあるふしぎなものが、そこにたっていました。ふしぎなものは、あっというまに片づけてでていきます。
これはらくちんと宴会を続けて、アイリーンがかえってくる前の日に、ジェイミーは、ふしぎな生き物に、ご親切に毎晩片付けてくれるのは、どういうわけか、声をかけます。
ふしぎな生き物は、人間の時にちっとも働かないなまけものだったため、あの世へ行ってからその罰として毎晩どこかの家で、働かなければればなくなったんだといいます。
ジェイミーは、仕事がおわると、また寒空にでていかなければならないというふしぎな生き物に同情して、自分の古いコートをきせてあげます。
気分よく後片付けしてくれると思ったら、ふしぎな生き物は、「だれか、おれの仕事ぶりをみとめて、ほうびをくれれば、それでおわりなんだ」と、後片付けもせず、姿を消してしまいます。
このふしぎな生き物はブーカ。ひとりぐらしをする動物の妖精で、ウマ、ヤギ、ロバ、ウシのほか、ワシになることもあるといいます。
ジェイミーはとってもなまけものですが、アイリーンは愛想もつかさず、よくできたおくさんです。
このままでは、ジェイミーが第二のブーカになりそう。
はじめブーカがロバに見えましたが、よくみれば前足は手。手がないと後片付けはできません。
ところで、「ハリーポッターと秘密の部屋」で、ドビーが自由になれるのも、主人から靴下をもらったのが原因。
ハリーポッターシリーズには、昔話のキャラクターやシュチエーションが多く出てきます。
巨人の花よめ スウェーデン・サーメのむかしばなし/菱木 晃子・文 平澤 朋子・絵/BL出版/2018年
副題に「スウェーデン・サーメのむかしばなし」とありますが、サーメとよばれる先住民はスカンジナビア半島北部を中心とした地域に住んでいるといいます。
寒くて厳しい大地で、大きな川のそばにネイネ・パッゲというサーメ人がたくさんのトナカイを飼っていました。ネイネ・パッゲには、ひとりむすめのチャルミという一人娘がいました。
チャルミはとても美しく、かしこい女の子で、あちらこちらから結婚を申し込む男がたずねてきましたが、チャルミは、いつもことわっていました。
ある日、チャルミは、トナカイの群れをおそったり、サーメ人のもっているものを力ずくでうばったりする山の上の巨人に目をつけられます。
巨人は、ときに容赦なく人々の命やくらしをおびやかす存在という意味で、自然の脅威の象徴ととらえることができるとあとがきにありました。
美しく賢いチャルミと巨人の知恵比べがはじまります。(といっても巨人は翻弄されるだけ!)
ネイネ・パッゲとチャルミ、結婚を申し込みにくる男たちの衣装の赤が鮮やかですが、コルトと呼ばれる民族衣装のようです。チャルミは金と銀をトナカイの荷にして10頭分もってくることを結婚の条件に出しますが、金銀の輝きも幻想的です。
大きく描かれた巨人は一つ目で迫力満点。北欧の昔話ではトロルがでてくるのが一般的ですが、この絵本では巨人です。
サーミ人と思われる民族のことが初めて文献上に現れたのは、紀元1世紀に古代ローマの歴史家タキトゥスによって著された『ゲルマーニア』においてで、ここではサーミという名前ではなく、フェンニーという名前で呼ばれているという。
もともと狩猟・遊牧を行なう民族であるが、チェルノブイリ原発事故以降、トナカイの汚染が進み、伝統的な放牧生活を送る事はいっそう難しくなってきて、いまは、ほとんどが定住生活を営んでいるといいます。
トナカイの主食が、放射性物質を吸収しやすいキノコや地衣類などであることから、特に汚染が進んだようだ。原発事故の影響がこんなところにも!
みんなで うどんづくり/菊池 日出夫:作・絵/福音館書店/2009年
タイトル通り、みんなでうどんをつくり、野外で薪ストーブのスープで食べている最後は、とてもうまそうです。
麦の種をまくところから、麦踏、とり入れ、脱穀まで、コマ割りの数ページを使いながら、うどんを作るまでの過程が丁寧に説明されています。
普段食べているものの、できるまでの過程を知ることで、食育にもつながりそうです。
おじいさん、おばあさん、お父さん、お母さん、ひでちゃん、おきちゃん、きぬちゃんと一家総出で、そろって麦踏。みんなでつくるのも見かけなくなりました。
牛がいて、ニワトリがいて、井戸があってと、日本の原風景がひろがっています。