どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

そらまめとわらとすみ

2020年09月30日 | 絵本(昔話・日本)

 この絵本はグリムとそっくりですが、東北地方につたわる昔話がもとになっているとありました。

 おばあさんのところからにげだした、そらまめとわらとすみが、だんだんいくと、川があってわたれません。

 わらが橋になり、じゃんけんに勝った炭がさきにわたることに。

 途中で、下を見た炭が、みずがこわくて すすめなくなると わらがもえだし、わらがぷつんときれ、炭も藁も川の中へ。

 それをみたそらまめは おかしくなって おおわらい。あんまりわらったので、おなかのかわが ぱちんと さけて しまいます。

 とおりかかった むすめさんが ないている そらまめをみて、黒い糸で そらまめの おなかを ぬってやります。それで、いまでも そらまめの おなかには 黒い すじが あるという話。

 グリムでは仕立て屋の職人が、そらまめのおなかを ぬってやります。

 子どもたちが、そらまめを食べるとき、すじに注目するのは間違いありません。

 グリムの話を聞いているだけでは、わら・すみ・そらまめのイメージがわかなかったのですが、擬人化された面白さがあり、今度聞く機会があったら楽しさが倍増しそうです。


いもさいばん

2020年09月29日 | 田島征三

    いもさいばん/文・きむらゆういち 絵・たじまゆきひこ/講談社/2016年

 

 おじいさんが丹精込めてそだてた さつまいもが、夜の間にだれかがこっそり盗まれてしまいました。
 畑にこわい顔のかかしをたてても、次の朝、かかしはどろんこだらけ、わなをしかけても、かかったのは まごたち、落とし穴をつくっても落ちたのは おばあさん。

 おいもはどんどん減っていきます。

 じいさんが畑に穴を掘り、寝ずの番をしていて、いつのまにか うとうと。

 真夜中に 変な音で 目を覚ますと、びっくりぎょうてん イノシシとウリボウが おいももかかえて 走っています。

 じいさん穴から飛び出すと、イノシシは困った顔で「どろぼうなんて とんでもない。みつけた おいもを はこんでいるだけです」といいます。

 「みつけた いもだと? なにをいっている どろぼうめ! このいもは わしの 畑の わしのいもじゃ」

 すると、キツネ、ノネズミ、ウサギ、リスもいっせいにさけびます。

 「わしの 畑? そんなこと だれが きめたの?」「そうだ そうだ にんげんが かってに きめただけ」「この じめんも やまも かわも そらも にんげんだけのもんじゃ ねえ」

 じいさんが「わしが たんせい こめて つくった いもじゃ。だから わしの いもじゃ」と反論すると、サル キツネ モグラも

 「いもは つちの なかで じぶんで そだったんじゃ ないのけ」「そう、あめふって たいよう あびて そだったはずや」「それとも あめや たいようも にんげんが つくったって いうのけ?」

 動物たちとじいさんの論争はまだまだ続きます。

 タヌキが、じいさんの味方をしますが・・・。

 にんげんと どうぶつたち どろぼうは いったい どっちだろう?と、結論は読者にまかせます。

 長いスパンで見ると、動物たちは人間より先に地球に存在していました。あとからやってきた人間が、ここは人間のものだと囲いをして土地を広げていきました。その裏には、そこから追い払われた大勢の動物たちがいました。ですから泥棒はどっち?というなげかけには、すぐには答えはでません。

 泥臭い感じの絵は、とても迫力がありました。


ピエールくんは  黒がすき

2020年09月28日 | 絵本(外国)

       ピエールくんは黒がすき/ミシェル・バストゥロー・文 ローランス・ル・ショー・絵 松村恵理・訳/白水社/2018年

 

 「黒がすき」とあって、表紙も黒が基調なので、全ページ黒が多いのかと思ったらそうでもありませんでした。

 夜おそくベッドのなかでピエールくんはおびえています。だってあたりは まっくろだから。夢の中では、黒い凶暴なオオカミにおいかけられ悲鳴をあげました。

 パパは黒が一番すてきな色と考えている人もいるといいますが、ピエールくんは、きれいじゃないし、本当の色じゃないとおもっています。

 おじいちゃんはカラスの羽や尾っぽをよくみてごらん、とっても黒くてかがやいているから、ところどころ紺色に見えるよ と教えてくれます。ピエールくんは茶色より黒のほうがきれいだ と答えます。

 パパがピエールくんを美術館につれていって、黒の画家が描いたという絵を案内してくれます。

 ピエールくんが黒の絵にちかづいてみると、そこには青や白や灰色、ときには金色や黄色のときがあるのに気がつきます。

 パパは、絵につけられたすじが作りだした光の反射で、光が絵の上にふりそそぐと、色あいや色のむきを変えて、新しいいろになることを説明してくれます。

 ピエールくんは、黒が大好きになります。だって黒ってほかの色ぜんぶになれる、青とか茶色、黄色、赤、白にだって! と。

 黒というと、なんとなくこわいイメージですが、一方では、あらたまった席やおしゃれなパーテイーやでは黒い服がかかせません。

 黒や白が本物の色っていわれるようになったのは最近のことといわれて、びっくりしました。

 黒が全部の色になれるといわれてもぴんときませんが、同じ黒でもなにもかも隠してしまったり、輝いてみえたり、うすぼんやりしたりと、さまざまです。色は音楽のようにひびきあうのかもしれません。

 そんなことに気づかされる絵本でしょうか。


はぶらしくんです。

2020年09月28日 | 絵本(日本)

       

    はぶらしくんです。/とよたかずひこ/童心社/2020年

 

 「はぶらしくん かっこいい それじゃ おしごと おねがいね」

 あーん してもらったら、うえの歯さ~ん こんにちは~。

 しゅしゅしゅしゅしゅっしゅっ しゅしゅしゅしゅしゅっしゅっ しゅしゅしゅしゅしゅっしゅっ

 下の歯も、奥歯も、歯の裏もも。

 はみがきさん 大活躍です。

 でも、こんどは じぶんでね!。


はなくん

2020年09月27日 | 紙芝居

       はなくん/脚本・絵 五味太郎/童心社/2015年/12場面

 

 登場人物は、はなくんと まいちゃん。

 まいちゃんが はなくんから なにかわすれていない?といわれ おみずあげるのを おもいだしました。

 まいちゃんが あわてて おみずを はなくんにあげると 「みずはひつようさ。食事みたいなものさ。いやちがうな、おやつみたいなものかもな」

 そこで まいちゃんもおやつをいただきます。オレンジジュースです。

 どんなあじといわれ すこしだけ ジュースを はなくんにあげると

 「わっはっはっ!いいね これ!」と きにいったようす。

 はなくん こんどは ミルクをみつけ のんでみることに

 ドーナッツと リンゴとバナナを みつけ ぼくにも 口があるんだよ たべたいなと はなくん。

 まいちゃんは ドーナッツをたべる はななんて きいたことありません。

 はなくん クッキー、チョコレート、おまんじゅうもたべると ちょっと ふとめのはなに。

 むくむく ぼこぼこ ぶわぶわ・・ からだぜんたいが うごいて

 「ごちそうさまあー! ごきげんよおー! さようならあー!」はなくん どこかへ いってしまいました。

 はなくんが きえた 植木鉢を そのまま ほうっておくと おやおや またあたらしい はなの めが でてきましたよ。

 のむ はな? たべる はな? それとも べつのことする はな。

 わくわくどきどき ま とりあえず おみずを わすれなよう しましょっと。


 常識にとらわれない あっとおどろく五味さんの紙芝居です。ありそうで、これまでなかったシチュエーションでしょうか。


丘の上のおばけやしき・・モロッコ

2020年09月26日 | 昔話(アフリカ)

    大人と子どものための世界のむかし話11 モロッコのむかし話/クナッパート・編 さくまゆみこ・訳/偕成社/1990年初版

 

 最初の妻のむすめは六人、二番目の妻にも六人のむすめがうまれました。

 最初の妻のむすめは、すなおでよく働きましたが、二番目の妻の子はなまけもの。

 まま母は、上のむすめを憎み、追い出そうと考えていました。まま母が、丘の上に不思議な家が一軒あり、その家にはいったがさいご、出てきた者が一人もいないという話を聞きます。

 ある考えがうかんだ二番目の妻は、父母や兄弟を家に呼びたいからと、上の六人のむすめを丘の上の家で泊まってもらうよう夫にいいます。

 ほうきやバケツ、食べ物をもって丘の上の家にでかけた六人は、掃除をし、こわれた家具まで直すと、夕ご飯の支度にとりかかりました。

 フライパンで魚を焼いていると手首だけがやってきて「食べ物をおくれ。腹がへって、死にそうだ」という声。手がひどく痩せて、ひもじい思いをしているようなので、むすめはなんだか かわいそうになりました

 むすめが「この魚はまだあつすぎて、指にやけどをしてしまうので、さめるまで、しんぼうして おまちくださいな」といい、しばらくたってから「あなたにさしあげましょう」というと、手は魚をつかみ、そのまま壁をとおりぬけ、どこかへ消えてしまいます。

 やがて六人のむすめたちが食卓をかこむと、鼻がふたつあるみどり色の男、鼻が三つある青い色の男、四つある赤い色の男、五つある黄色い色の男、六つあるむらさき色の男が次々にあらわれ、お腹が空いてどうしようもないと、訴えます。

 むすめたちが、食べ物をわけげると、みどり色の男は二番目のむすめにエメラルドの金の指輪、青い色の男は三番目のむすめにサファイアのついた金の指輪、赤い色の男はルビーのついた金の指輪、黄色い男はダイヤモンドのついたきんのゆびわ、むらさき色の男はアメジストのついた金の指輪を、それぞれ、四番目、五番目、六番目のむすめの右手の薬指にはめてくれたのです。男たちは、この世のことはだれにもいわないように口どめし、こんどは父親もつれてくるように話すと、ふっと姿をけしてしまいます。

 突然「たすけてくれえ! たすけてくれえ!」という叫び声がし、一番上のむすめが庭に出てみると、大きなコガネムシがあおむけにひっくりかえって、あるくことも、とぶこともできずにいました。

 むすめがコガネムシを助けると、コガネムシは白い雪のように白いハトに姿を変え、大きな真珠のついた金色の指輪を、一番上の娘の指にはめてあげます。

 翌朝、むすめたちが家に帰ると、まま母は、むすめたちがはめている指輪にめをとめました。どの指輪もたいへん高価なものに違いありません。

 不思議に思ったまま母がいろいろたずねても、むすめたちは、どこで指輪を手に入れたのか、ひとこともしゃべりませんでした。

 まま母は、自分の生んだむすめたちに、丘の上の家にいって、すみからすみまでさがすようにいいます。というわけで、こんどは下の六人のむすめがでかけていきますが・・・・。

 

 昔話で姉妹が出てくると、多くても三人どまりが相場ですが、ここでは十二人。高価な指輪がひとつというのが物足りなかったのか、六つもでてくる大判振る舞い。

 指輪をもらうのは二番目のむすめからはじまるので、一番上のむすめには何もないのかと思っているとコガネムシがでてきました。


ナピとニップ・・アメリカ

2020年09月25日 | 昔話(北アメリカ)

       ナピとニップ/オクスフォード 世界の民話と伝説3 アメリカ編/渡辺 茂雄・訳/講談社/1973年改訂

 

 大平原のバッファローがとつぜん姿を消してしまいました。

 酋長がみんなにバッファローを探させますが、一ぴきも見つかりません。

 バッファローは食料になるばかりでなく、皮で きものとテントを作り、食事に使う器や矢じり、針などをつくる大切なもの。

 酋長の息子ナピは、酋長に一生懸命たのみこんで一人でバッファローを捜しに出かけます。

 大平原のはしで、ニップはひとりの男にであいます。男のなまえはナビといいましたが、器の水にうつる様子でバッファローの群れが走っていったのを知っていました。

 ナビは、バッファローの群れをさらっていったのは魔法の力を持ったオニで、力が強いだけでなく、矢もナイフも役にたたないといいます。しかし知恵でバファローを取り戻すことができるかもしれないと、ナビは白い子イヌ、ニップは一本の杖にかわってバッファローの群れをさがしにいきます。

 やがて白イヌはバッファロー泥棒のおかみさんと男の子の家につきます。子どもが犬を飼いたいといいだし、杖は木の根っこを掘り出すのに便利だと、おかみさんが家に入れると、バッファロー泥棒は、犬を追い出せと怒鳴ります。

 しかし、おかみさんはイヌの毛で帽子を作るまでといい、ほっぽりださせません。

 バッファローの肉で晩ごはんをたべはじめると、子どもは白イヌにも肉を食べさせました。するとバッファロー泥棒は杖を白イヌをふりおろし、追い出そうとします。ここでも、おかみさんは毛を切ってからにしておくれと、とりなしました。

 次の日、おかみさんは木の根っこを掘って、グツグツにようと、杖をもって森のなかにでかけていきました。子どもも白イヌといっしょについていきました。

 山の中腹にあるほら穴にさしかかると、白イヌはバッファローの角がでているのに気がつきます。おかみさんと子どもが野イチゴを摘むのに夢中になっているとき、白イヌと杖は、元の姿になりほら穴にはいってみました。そこには何百頭、何千頭というバッファローがいました。ナビは今度は大イヌにすがたをかえ、バッファローの群れをほら穴のおくに誘導します。ほら穴をすすむと、反対側の出口にやってきました。そこは大平原の真ん中でした。

 バッファロー泥棒の大男が、バッファローと白い小イヌを追いかけますが、暴れまわったバッファローの角につっかけられて、気が遠くなってしまいます。

 もどってきたバッファローを見たニップの村の人が盛大なお祭りをしているところに、大きな灰色の鳥にすがたをかえたバッファロー泥棒が復讐にやってきます。灰色の鳥が翼をばたつかせ、気味の悪い声でなくと、バッファローたちは、囲いにはいろうとせず、さらにインディアンたちに向かってきました。インディアンたちが灰色の鳥に矢を射かけてもナイフで切りつけても、はがたちません。

 ナビはカワウソにすがたをかえ、おなかをすかした灰色の鳥がカワウソをつつくと、ナビは灰色の鳥の足を捕まえ、酋長のテントのけむりあなに逆さにつりさげます。

 けむりが、バッファロー泥棒の目に、遠慮なくしみこむと、のどがむせ、羽は黒くなりさんざんなめにあいます。ののしり声がだんだん小さくなり、しまいには泣き声にかわって「はなしてくれ、おねがいだ。おねがいです。はなしてください。うちのおかみさん、むすこが飢え死にしてしまう。」と、大声でなきだしました。

 ナビは、おかみさんのために灰色の鳥の足を縛ったつなをとき、二度とバッファロー泥棒をしないように約束させて、解放します。

 この話では誰も死ぬことはありません。

 「いったい、どこへ行って、なにをしてきたんだい?」とおかみさんからきかれ「べつに、なんていうこともないさ」と、つまらなそうにこたえるバッファロー泥棒が気の毒になりました。

 ところで、このバッファロー泥棒は、はじめオニとされていますが、そのごオニという表現は出てきません。魔法の力をもっているのに、灰色の鳥に姿を変えるため、わざわざ魔法使いのおばさんに頼むところがでてきたりするので、つかみどころがありません。

 酋長の息子ニップが、杖になって泥棒を追いかけるというのは、これまであまりないパターンです。


ボルカの冒険

2020年09月24日 | 創作(外国)

     おはなしのろうそく29/E・M・アルメディンゲン・作 小林いづみ:編訳/東京子ども図書館/2013年

 

 古いバラッドをもとにした創作とありました。「ロシアのキエフの東」とはじまりますからウクライナが舞台です。

 母マーサ、息子のポルカはふたり暮らし。とても貧しい暮らしでしたが、ポルカは森の中を歩き回っては、いつもなにかしら食べられるものを袋に入れて持って帰ってきましたし、また釣りも上手でした。ボルカはキエフの王さまにお仕えして黄金のテーブルの騎士になることが望みでしたが、宮仕に必要な支度を整える余裕などはありあせんでした。

 そんなボルカが湖に落ちていた年とった巡礼を助けたことから運命が一変します。

 巡礼が、すばらしい鎖かたびら、美しい白い麻のズボン、銀のふさのついた緑のブーツ、短いやりと斧を残してくれたのです。もう一つは羊皮紙で、文字の読めないボルカが教区の書記に読んでもらうと「願いがかなう。全部で九つ。ボルカの願いは六つ。ダニロ王子のためには三つ。それっきり」とありました。

 小さいダニロ王子の願いは何かきいてこなくちゃと考えたボルカでしたが、自分のところの馬ではキエフまでいけそうにありません。

 ボルカが「ぼくをあっというまに、キエフの城壁の真ん前につれていってくれる馬があればなあ!」と叫ぶと、目の前にはキエフの城壁が。一つ目の願いでした。

 ところがダニロ王子は、はるかかなたの国からきた敵にとらえられ、身代金に真白な牡牛一万頭を要求されていました。そして黄金の騎士は、一人残らず牡牛をさがしにでかけて、まだだれも戻っていなかったのです。

 王子を助けにいったボルカは、すぐに金のかごにいれられていた王子に会いますが、そこには大きな猟犬がニ匹いて、ちかずくものをかみ殺していました。ボルカが「二匹ともすぐ倒れて死ぬように」と願うと、犬は倒れてしまいます。

 ボルカに残された願いはあと三つになりました。金のかごをあけるためにひとつ、食べ物をだしてもらうのにひとつ使うと残りはひとつです。

 ところがダニロ王子が、異国の服と異国風の帽子をいつもの青い小さな上着と、ふさのついた緑のブーツがほしといいだし、ボルカが「おっしゃったような服があればいいのですが」と同意すると、王子の装いは王子にふさわしいものになりますが、ボルカは最後の願いを使ったことに気がつきます。

 王子とボルカは馬で逃げ出しますが、すぐに追っ手に追いかけられますボルカは自分たちがキエフとは逆の方向に進んでいることを知っていました。途中ものすごい疲れを感じたボルカが一時間でも眠れたらと思っていると、王子は「きみがそんなに疲れてなきゃいいんだけど」と、声をかけました。王子がそういったとたんボルカは自分の疲れがすっかりとけたのを感じました。王子の願いは、だれかほかの人のことを願ったときだけかなうのでした。

 キエフがそんなに遠いはずがないと、ボルカが馬に乗ろうとしたとき、王子は「きみがそんなに悲しそうに見えなきゃいいのに」というと、絶体絶命にもかかわらず、ボルカは、今まで感じたことがなかったほど幸せを感じます。王子のふたつめの願いがかなったのです。

 王子がさらに「きみのお母さんが、キエフの町で、馬に乗っているきみを見ることができたらいいのにね」と願うと、ふたりはキエフの町の広場にいるマーサの顔を、目のすみにとらえることができました。王宮についたボルカは黄金のテーブルの騎士にくわえられることになりました。

 次から次へとストーリーが展開し、ボルカが願いを使い果たし、キエフにつけるか心配になるところですが、最後王子の願いでキエフにたどり着けるまでハラハラです。

 男ふたりが主人公というのは、これまであまりみられませんでしたし、協力し合うというのも さわやかな終わり方です。


すばらしい夢・・インド

2020年09月23日 | 昔話(アジア)

          語りつぐ人々 インドの民話/長弘毅・訳/福音館文庫/2003年

 

 あれこれ いいわけもさまざまです。

 三人の男が連れ立って帰る途中、日が暮れて野宿することになり、夕食にキール(乳粥)をつくり、あらそって貪り食いました。それでも多すぎて、残りは明日の朝食べることに。

 ひとりの男の提案で、一番すばらしい夢を見た者が食べることに。

 一人の男は、どうしてもねむれません。これまで夢をみたことがなかったのです。

 夢を見なければキールは食べられません。じっとしておれなくなり、男は残ったキールをのこらず食べてしまいます。

 次の朝、自分の見た夢を話し出します。一人は天国に行った夢。もう一人は王さまになった夢。三人目は悪魔とあった夢。そして悪魔から「キールを食え、キールを食うんだ。さもないとお前の命はないぞ」と、驚かされたというのです。そこまで聞くと、ふたりの男は「それでおまえ、キールを食ったのか?」と尋ねます。「食ったよ。食わずにおいてみろ。なにせおれは殺されるところだったんだ」。

 ほかの二人が「どうして、おれたちをよばなかったんだ」と責めると、「どうしてよばなかったかだと? よべるわけがないじゃないか! おまえたちは天国にいったり、王さまになっていたじゃないか」と男は こたえます。

 キールはお祝いごとやもてなし料理には、欠かせないといいますから、どうしても食べたかったのでしょう。

 この三人、まだ旅は続きますから、無事に帰りついたのでしょうか?


ピッグル・ウイッグルおばさんの農場

2020年09月22日 | 創作(外国)
    ピッグル・ウイッグルおばさんの農場/ベティ・マクドナルド・作 モーリス・センダック・絵  小宮 由・訳/岩波少年文庫/2011年
 
 
 原作は1954年。
 
  うそつきフェットロック、 ペットの世話をわすれるレベッカ、 分解好きジェフィ、 こわがりやフィービー、 さがしものが下手なモートンの五人のこどもが登場します。
 
 フェットロックは、自分の父親を泥棒だ、列車泥棒、詐欺師、贋金づくりなど、あちこちに吹聴しています。
 
 レベッカは、動物好き。チャボのおんどり、モルモット2ひき、うさぎ一羽、コマドリのあかちゃん、白ねずみ、猫、犬、さらにカメ、カメレオン、金魚などなど。
 世話をするのはレベッカですが、よく忘れるので、朝から晩まで動物の鳴き声が近所迷惑。
 
 ジェフィは芝刈り機からミキサー、レコードプレイヤーまで、なんでも分解してしまいます。
 
 フィービーは、極端なこわがりで、魔女がくる、人殺しがやってくると夜もよく眠れません。
 
 モートンは、探し物がにがて。さがしものをしていると、周囲にきをとられ、肝心の探しものを忘れてしまいます。
 
 こんなちょっとわけありの子どもを、ホームステイさせるおばさん。
 
 おばさんは子どもをありがまま受け入れ、余裕をもって、子ども自身に気づかせていきます。
 
 電気もとおっていないおばさんの農場のイヌのワグ、馬のトロッキー、雌牛のアーバス、母ぶたのファニー、オウムのペネロペ仔牛のヘザー、アヒル、ガチョウ、めんどりの動物たちの活躍も見どころです。
 
 子どもたちはみんな根はまじめ。
 
 分解好きのジェフィは、なんでも修理屋さんに。分解は組み立てを理解できること。
 
 こわがりのフィービーは、地下室にたおれているピックル・ウイッグルおばさんを助けようと、にがてだった馬のトロッキーのとびのります。いざというとき勇気が出るのは「花さきやま」そのもの。
 
 初期の頃のセンダックの挿絵(モノクロ)もお話とぴったり。
 
 ピッグル・ウィッグルおばさんしかでてきませんが、なくなった夫は元海賊だそうですから、波瀾万丈の人生のようです。
 
 作者のお姉さんが「あなたは なんだってできるのよ」と励ましたエピソードも心あたたまります。

うりのつるくるくる

2020年09月20日 | 田島征三

     うりのつるくるくる/田島征三/光村教育図書/2020年

 

 うりのつるが、つるつる つるりん と のびて くるくる くるりん るんるるりん とのびますが、虫がやってきて 悲鳴をあげています。

 つるで、くるくる くるりん りん! りん!りん!

 虫の大群で茎が食いちぎられますが まけないぞ。

 もう だめだ・・・と あきらめかけていると 小鳥がやってきて 虫をパクパク。

 おや実をつけてきましたよ。

 ところが こんどはヘビが小鳥の卵をねらっています。これは大変と つるは ヘビに巻きつき、鳥さんに おんがえしです。

 小鳥の卵がかえり、うりも いいかんじ。

 おじいさんとまご?がならんで ガブリ。

 裏表紙では おじいさんとまごが「ぺっ!」と出したうりの種が芽をだしています。

 茎が食いちぎられても ぐんぐんのびる うりの生命力です。


やさいのおなか

2020年09月19日 | 絵本(日本)

       やさいのおなか/きうち かつ/福音館書店/1997年

 

 「これ なあに」といいながら、おはなし会で盛り上がっています。

 というのも、はじめにモノクロの不思議な模様が出てきて「なに?」という感じ。

 そのあとに色がついて わかる仕組み。

 表紙の絵は何かわかるでしょうか。

 「やさいのおなか」というのは、野菜の断面図。

 モノクロだと、意外にわかりにくいところがあります。

 でてくるの、ねぎやレンコン、ピーマン、たけのこ、キュウリ、トマト、かぼちゃなど、身近なものばかり。

 この絵本を見たら、他の野菜の断面もきになります。野菜入門としてもおすすめです。


まひるのけっとう

2020年09月18日 | 絵本(外国)
 
    まひるのけっとう/マヌエル・マルソル・作 中川ひろたか・やく/光村教育図書/2020年
 
 
 足元、顔のアップに続いて、矢を構えるネイティブアメリカンと銃を持つカウボーイ。川を挟んでいざ、けっとうです。
 
 ところがカウボーイの銃にカモがのって、ちょとごめん。
 
 仕切りなおして、もういちどにらみ合うと、空の雲がきになり、サボテンだ フォークだ と いいあい、もういちど仕切り直し。
 
 鉄の馬、馬、へび、でっけえおと!! 次々と邪魔が入り そのたびに けっとうは 中止。
 
 バイソン、ハゲワシと にらみあっていると いつしか夜。
 
 また、明日、けっとうとわかれていって エンド。
 
 映画のエンドロールよろしく、主演、準主演、特別出演、ロケ地の文字。
 
 題名が「真昼の決闘」、ロケ地が「リオ・ブラボー」となれば、オールド世代にとっては なつかしい西部劇そのもの。
 
 おまけのページがあって、ふたりとも熊からのがれて屋根の上。それも冬。 決闘にならない西部劇。
 
 二人が乗ってきた馬は、いい仲になってどこかへ立ち去っていきます。
 
 絵本としては長めですが、長さは気になりません。

からすのかーすけ

2020年09月18日 | 紙芝居

       からすのかーすけ/畑アカラ:作・画/教育画劇/1998年

 

なきまねじょうずの、からすのかーすけが 

ワン ワン

ニャーオ ニャーオ

ブー ブー ブー

いぬのわんたも、ねこのにゃんたちゃんも、ぶたのぶーちゃんもだまされてしまいました。

でもみんなが、からすって どう なくの?ときくと、かーすけは どうやら からすのなきごえを わすれてしまったようですよ。

だまされた みんなの かおが みどころ。

幼児向けでしょうか。8場面です。


美しいおとめ・・アメリカ

2020年09月17日 | 昔話(北アメリカ)

    美しいおとめ/オクスフォード 世界の民話と伝説3 アメリカ編/渡辺 茂雄・訳/講談社/1973年改訂

 題名からイメージされる話とは大分異なっています。

 そして、解説によるとインディアンの話がもとになっています。ヨーロッパによる見られるパターンで、移住者が伝えたものであれば不思議はないが、先住民の話とあるので、いまさらながら昔話の共通性に驚かされます。


 魔法使いにつれさられた美しい娘。大勢の若者が娘を助け出そうとするが、魔法使いが出す三つの問題ができずに、みんな石像にされてしまいます。

 話のパターンで、ねえさんとふたりですんでいた「うすのろ」と呼ばれる若者が、美しい娘を助け出すまでの冒険。

 途中、とてつもない力をもった男とであい、助けを借りて最後はハッピーエンドになります。

 旅の道ずれになるのは、大男、いっそくとび、のどかわき、弓の名人、じごく耳といったメンバー。
 名前からして、これだけのメンバーがそろっていればなんでもできそう。

 魔法使いがだす第一の問題は、空にそびえたつ岩山を動かすこと。大男が岩山を動かすと石にされていた男たちの首から上だけに命がかよいはじめます。

 第二の問題は、川の水をなくすこと。のどかわきが水を飲みほすと、石にされた男たちの腰から上に、命がかよいはじめ、拍手をします。

 第三の問題は、むすめに姿を変えた魔法使いとの競争です。途中、魔法使いに眠り込まされますが、弓の名人の矢で、目を覚ましたいっそくとびが、魔法使いをおいこします。

 すると石にされていた若者たちの足にも命がかよい、うすのろと美しいおとめのまわりを踊りだします。

 

 この「美しいおとめ」は、東京子ども図書館の「おはなしのろうそく28」に松岡享子編訳でものっています。2011年発行のものですが、主人公が「うすのろ」とよばれていますので「うすのろ」がどう訳されているか興味がありました。松岡訳でも「うすのろ」は、おなじようにつかわれていました。個人的には違和感があるのですが・・・。

 はじめ若者(渡辺訳では少年)とされていますが、そのごはうすのろとされています。

 松岡訳では、力持ち、はや足、のどかわき、弓の名人、聞き耳です。