どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

大つごもり長者・・山口

2023年12月31日 | 昔話(中国・四国)

       子どもに贈る昔ばなし19/小澤俊夫・監修/小澤昔ばなし研究所/2023年

 

 この時期、定番の「笠地蔵」の話です。

 大みそかに、笠を売りに出かけたおじいさんが、雪の中で寒そうにたっているお地蔵様に、笠をかぶせて上げると、正月の朝、お地蔵さまからたくさんのお返し?をいただく話。

 歩くたびに地蔵さまがいて、12の笠をかぶせてあげると、売り物がなくなって、家にかえることにしましたが、ほかの話にはでてこない おばあさんが出てきます。はらがひっているというおばあさんに、あわめしのべんとうをわたしてあげると、小さい袋をもらいます。それは、たからぶくろといって、おばあさんは まだ使ったことがないという袋でした。

 正月の朝、軒下には、つきたてのお餅。おじいさんとおばあさんが雨戸をあけてみると、笠をかぶった地蔵様が、雪の中を、静かにかえっていくところでした。「ありがたや」と、ひざまづいておがんだじいさんのふところから、みょうな袋が、落ちました。ふたりで袋を開けてみると、たまげたことに、ぴかぴか光る小判が、一枚はいっていました。これまで小判をみたことがないというおばあさんが、いっぺんしめた袋の口をあけてみると、こんどは小判が二枚になっていました。なにやら気味が悪いのですぐに口をしめますが、どうしても気になるので、またあけてみると小判は四枚になっていました。袋をもらったおばあさんをさがしますが、どうしても見つけることができず、じいさんとばあさんは、ありがたいことじゃといって喜び、大金持ちになって、それからも幸せにくらしたという。

 

 笠地蔵にでてくるおばあさんは、手ぶらで帰ってきたおじいさんを、あたたかくむかえる、なんともできた人。ついつい非難する凡人とは大違いです。また類似の話では、地蔵様が一か所にたっているのがおおいのですが、この話では離れ離れにたっています。

 倍々で増えていく小判は、袋にはいらないので、どうしたのやら!


豆っ子太郎

2023年12月30日 | 紙芝居(昔話)

    豆っ子太郎/作・川崎大治 画・岡野和/童心社/1979年(16画面)

 

 「子どもがひとりほしいもんじゃのう」とはなしあっていたじいさまとばあさまがさずかったのが、丸太から生まれた豆粒ほどの小さな小さな男の子。

 何年たってもちっとも大きくならなかった豆っ子太郎は、馬の耳のなかへのって、山へ じいさまの弁当をとどけにいった。馬が一人で歩いているのを見て、旅の者ふたりが、不思議に思って、あとから こっそりついてきた。

 旅の者は、豆ほどの太郎を見て、見世物にしようと、じいさまに百両で売ってくれるよう頼みます。じいさまは、なんぼ銭もろうても 売ることはできないと断りますが、太郎が、「うんなされ。うんなされ。」と、いうので、思い切って豆っ子太郎を 売ることにしました。

 豆っ子太郎は、村はずれまでくると、草の中へとびおりた。小僧が、急にいなくなったので旅の者は、お互いに独り占めしようとしたと大騒ぎ。そのあいだに藁小屋の藁にもぐりこんだ豆っ子太郎は、いつのまにやら、ぐっすり眠りこんでしまいました。

 ところが、牛が藁を食べたので、豆っ子太郎は 牛のはらのなかへ。牛が次から次へと藁を食べるので、くるしくなった豆っ子太郎が、大声を出すと、家の主人が ばけものじゃと 牛をころしてしまいます。そのはらわたをみつけたオオカミが、ぱくりと食べたので、豆っ子太郎は、こんどは、オオカミのはらのなかへ。

 豆っ子太郎が、おじいさんとおばあさんが、ごちそうをつくって、まっているとオオカミにいうと、おおかみはよろこんで、走っていきますが、じいさまの まきざっぽう、ばあさまの しんばりぼうで、さんざんに ひっぱたたかれて、ひっくりかえってしまいます。と、オオカミのくちのなかから、すぽーんと豆っ子太郎が とんででた。

 

 1979年の発行で、16画面とやや長めですが、話が、次から次へと展開するので、飽きずに見られそうです。


なんにも おきない まほうの いちにち

2023年12月29日 | 絵本(外国)

   なんにも おきない まほうの いちにち/ベアトリーチェ・アレマーニャ・作 関口英子・訳/ポリフォニープレス/2023年

 

 都会の喧騒にいるとつい忘れがちな自然。忘れがちな自然にふれて、こころが解放された少年のお話しです。

 作家?のママと、別荘にやってきたボクは、黙って書き物をしているママの横で毎日何時間もゲーム。

 ある日の午後、いつものとおりママが怒り出した。「いいかげん、ゲームはやめたらどう? 今日も一日中、何にもしないつもり?」 ゲーム機をとりあげられたぼくは、こっそりゲーム機をとりかえし、家を出ると、外は雨。どろだらけの靴で、ゲーム機をぬらさないように、ポケットにしまい、坂をおりていった。

 沼のまあるい石をふみたくなって、石から石へととびうつっていると、ゲーム機が 滑り落ちた。最悪とゲーム機をひろおうとしても、いきができないほど水が冷たい。そこへ、森から大きなカタツムリの行列があらわれ、おもわずさわってみるとゼリーみたいに ぶよぶよ。山道を歩いていると、ちいさかったころのにおいがするキノコ。

 地面がキラキラ輝き、土の中に手を突っ込んでみると、石ころや砂粒、木の実や根っこが、指先で動いていた。そのとき太陽の光が、シャワーのように そそいだ。

 木に登り、風のにおいをかいで、雨水を飲んで、小鳥とおしゃべり・・・。

 こんなに楽しいことを、どうして いままでしてこなかったんだろう?

 びしょ濡れで、家に帰り、急いで、鏡をみると、鏡の中でパパがわらったような気がした。

 今日、みたり、きいたり、あじわったしたことを 残らず ママに 話したくなったぼくでしたが、ママとだまって、ホットチョコレートのかおりをかいだ。

 

 「なんにもおきない」どころか、得難い体験をした「まほうのいちにち」だったでしょう。”ぼく”には豊かな感受性がありました。

 ママの存在感がありませんが、たぶん ぼくが 自然体験できるように、森の家につれていったにちがいありません。


竜王ばあさま・・山口

2023年12月28日 | 昔話(中国・四国)

     子どもに贈る昔ばなし19/小澤俊夫・監修/小澤昔ばなし研究所/2023年

 

 竜宮といえばお土産が気になりますが・・。

 

 竜宮城の乙姫さまの赤ん坊がなかなか生まれず、村でたよりにされていたお産婆さんが、いつものようにお産を助けてあげました。男の子でした。

 ばあさまは乙姫さまが元気になるまで、そのまま竜宮城でふたりの世話をしてすごしました。日がたち、乙姫さまも元気になり、やっと家に帰れる日がくると、竜王は、お礼のしるしに、ばあさまの前に金、銀、珊瑚を山のようにつみあげました。ばあさまは、これらを断り、日照りのときに雨を降らせてくれるようにお願いしました。

 つぎの年、日照りが続くと、村人たちはばあさまのいうとおり、丘の上に祭壇を作って竜王を祭り、村中総出で、豊年踊りを踊りながら、雨ごいをしました。すると、たちまち空がくもって、大雨がふり、かれていた川はごうごうと流れだし、みるみるうちに田んぼや畑に水がゆきわたりました。それからは、日照りのときも水の心配がなくなり、おばあさんは、だれいうことなく「竜王ばあさま」とよばれることになりました。

 

 産婆さんや産屋がでてくるのも昔話だけになるのかも。


みずたまのチワワ

2023年12月27日 | 絵本(日本)

   みずたまのチワワ/井上荒野・作 田中清代・絵/福音館書店/2023年(初出1997年)

 

 ある朝、アームーという女の子が、水玉模様のチワワ(子犬)を見つけました。

 いそいで縁側に出てみると、しろいシーツに 水玉模様がうつっていました。

 花壇に行ってみると、水玉模様のチューリップが咲いていて、じょうろで水をかけると、テントウムシが 一斉に とびたちます。

 テントウムシを追いかけていくと、また水玉のチワワ。

 つつじの垣根をのりこえたチワワをおいかけていくと、そこは水玉の町。道路、川、木、空、家の屋根も塀も水玉模様。チワワが、ふりむいて「くすっ」とわらったので、アームーはこわくなって、いちもくさんに、家にとびこみました。

 お母さんから言われ、鏡を見ると、アームーの顔も 水玉。どろんこが 顔いっぱい はねかえっていたのです。

 

 町の中が、全部水玉模様の光景で、不思議な町です。チワワが水玉に変えたのでしょうか? それともたんに幻想だったのでしょうか?

 町には高い建物がなく、木造家屋がつらなっています。チワワは、どこからきて、どこへ去っていったのか?。疑問符がいっぱいでした。


よるのきらいな ヒルディリド

2023年12月26日 | 絵本(外国)

   よるのきらいな ヒルディリド/チェリ・デュラン・ライアン・文 アーノルド・ノーベル・絵 渡辺茂男・訳/富山房/1975年

 

 夜が嫌いという丘の上に住むヒルディリドおばさんが、夜を追い出そうと悪戦苦闘。

 掃きだしても、袋におしこめても、煮ても、はさみで刈ってみても、井戸に押し込めようとしても、穴掘りしても どうにもならない。

 ぐっすり休んで、元気をつけて 夜が明けたら、目を覚まし ケンカをしようと ベッドで、ねむりにつくと、朝日が のぼってきました。

 

 最後のページをのぞくと、白黒の絵で これでもかこれでもかとヒルディリドおばさんの奮闘が続きます。

 夜更かししないで、夜になったら 眠ればいいものを!

 滑稽と笑っていいものやら。

 1975年の出版です。


おひゃくしょうさんと だんご

2023年12月25日 | 紙芝居(昔話)

   おひゃくしょうさんと だんご/作・こわせ たまみ 絵・村田エミコ/教育画劇/2009年(12画面)

 
 スリランカといわれなければ、日本の昔話と勘違いします。
 
 隣の村で暮らす娘のところで、おいしいだんごをたべたお百姓さんが、帰る途中で石に足をぶつけ、だんごという名前を忘れてしまいました。
 
 おかみさんに だんごをつくってもらおうとしますが、”だんご”がいつのまにか”あいたった”になって、けんかになってしまいます。怪我の功名で、おかみさんの たんこぶのおかげで あまーい こめの だんごっこが 五つできますが こんどは、だんごの分け方で ひともんちゃく。
 
 先に口をきいたほうが負けで、勝ったほうが だんごを 全部ものにする我慢比べがはじまりました。夕方になっても夜になっても ふたりは だまったまま。
 ねずみがでてきて、だんごをさらっていこうとして、お百姓さんのそばにあった棒を押し倒し、その棒が お百姓さんの足にたおれ、たまらず「あー まいった こーりゃ あいたった!」と、さけんでしまい、だんごはすべて、おかみさんが 食べてしまいます。
 
 
 前段だけ、後段だけという話が多いのですが、ふたつ つながっています。
 白黒の版画で、夫婦の大きく描かれた顔が、お話の世界にぴったり。

はみがきさん

2023年12月24日 | せなけいこ

    はみがきさん/せな けいこ/ポプラ社/2013年初版

 

 朝、お日さまでるときに、はみがきさんがやってきて、みんなの歯を磨きます。

 はぶらしで、ライオンさんも、うさぎさんも、しゅっ しゅっ しゅっ

 泣いているのは、虫歯のワニさん。はみがきさんは、応急手当?

 みんなが はみがきするなら あたしだって みがきます!!

 

 くまさん、ライオン、ねずみ、ぞうさんが はみがきしているのは 楽しそうで、わたしも!となりそう。

 

 

 歯磨きしなさい、早く寝なさいというのは、大人の口癖。「肝心なのは、よころんでやること」という、せなさん。然りです。

 おともだちを噛んではいけませんというオチは、大人のいつもの お説教?

 いろいろ、誘惑があって虫歯になる原因もふえています。歯磨きは、転ばぬ先の杖とわかってはいるが・・・。


つきよのくろてん

2023年12月23日 | 絵本(日本)

    つきよのくろてん/手島圭三郎/絵本塾出版/2015年

 

 冬の終わりの満月の夜、森で繰り広げられるクロテンと、ウサギ、モモンガ、シマフクロウなどの狩りの情景が、静かに展開します。

 狩りをするものが、狩りの対象になる生存競争のなかで、いかに獲物をとらえるか、そして狩りから逃げ延びるか、緊張感が漂います。

 版画であらわされた鳥、木の樹皮や枝、雪の下の影などのギザギザ感。夜行性のクロテンがモモンガに飛びかかる場面や、羽を大きく広げたシマフクロウがクロテンに襲い掛かる場面は圧倒的です。

 クロテンの逃げ足は早い。雪の穴に逃げ込み、がれきの向こうから顔を出し、シマフクロウを翻弄する場面はユーモアも。雪が解けたら、逃げのびられるのか?。

 

 ”クロテン”は、イタチ科テン属に属し、猫ほどの大きさ。漢字だと黒貂。文字だけだとわかりにくいのですが、絵本だと明瞭です。


地面に何が?

2023年12月23日 | 日記

 このところ タマネギ以外は なくなったわずかな畑に、スズメが大量に飛来し、地面を年を突っついています。人の目には見えない虫が目当て?。

 すずめだけでなくジョウビタキも。

 いつもは柿をあさりにやってきますが、今年は何故か柿のほうはまだまだ被害?に合わずにいます。今年の柿は豊作で、干し柿もまあまあ。


ねこの おふろや

2023年12月22日 | 絵本(日本)

    ねこの おふろや/くさかみなこ・文 北村裕花・絵/アリス館/2023年

 

 季節外れのあたたかさが去ったと思ったら、今度は寒波で大雪。こんなときは あったかい湯にはいるのが一番。

 よる、人がねしずまった真夜中に ひっそりと ひらく一軒のお風呂屋さん。ネコ専用のお風呂屋さんです。ネコのお風呂屋さんも人間同様。番台、待合室、脱衣所、体重計、飲み物販売機があります。つめとぎは、壁を使って。壁の絵は、おなじみ富士山、

 お風呂は、「まっしろゆ」「まっくろゆ」「もふもふゆ」「またたびゆ」「タワーぶろ」。タワー風呂は飛込自由。ぬるめのお湯です。

 お風呂の楽しみは、ネコ同士のおしゃべり。どこどこで、ネコを欲しがっているとか、食べ物のこととか・・。

 飼い主のわがままや、のらねこの生活に つかれたら、また 来てくださいねと言っているのは、ネコモリさんとネコハラさんの姉妹です。

 たくさんのネコの個性が出ている絵。ネコ好きの方にぴったり。

 

 町中にお風呂屋さんが見られなくなったぶん、新鮮にうけとめられるかも。


ちがうねん、どこいったん、そらから おちてきん、シカクさん

2023年12月21日 | 絵本(外国)

 ジョン・クラッセンと長谷川善史訳のコラボ。これまで拝見したものです。

   ちがうねん/ジョン・クラッセン・作 長谷川善史・訳/クレヨンハウス/2012年初版

 頭にかわいいぼうしをのせた、ちいさなさかな。「この ぼうし ぼくのと ちがうねん。とってきてん。おっきな さかなから とってきてん ねてるまに」

 「とってきてん」つまりは、盗んだのです。

 「ねてるわ。 おきたとして、ぼうしのことなんか きがつけへんわ」と海藻のジャングルを目指して逃げているのです。

 ところが、おおきなさかなはおきていて、「ぼくのことなんか あやしめへんわ。」どころか、にげているちいさなさかなを追いかけているのです。

 いきさきがわからない? いやいや、信用していたカニがはさみで行った先をしめし、ちいさなさかの泡が目印。

 いわしとクジラほどちがう二匹のさかな。

 ちいさなさかなは「おっきな さかなには ちっさすぎる。ぼくに ぴったりやん このぼうし」と やっと、海藻の中に逃げ込みます。

 ところが、最後のページでは、おおきなさかなが ちっちゃいちっちゃい ぼうしをかぶっていますから、海藻の中では何が起きていたのでしょうか?

 長谷川さんの関西弁風の訳が絶妙で、いつの間にか、盗んだ側の小さなさかなを、応援していました。

 大きなさかなは、泰然自若といった感じ。目がでていたり、とじているだけ。自分のものをとりもどしたのはいいが、なんで、こんな小さなぼうしが必要なの?と、突っ込みたくなりました。

 海の中の静寂感は、長谷川さんの作風とは全く違う絵なのですが、訳されたわけも知りたいところです。

 

   どこいったん/ジョン・クラッセン・作 長谷川善史・訳/クレヨンハウス/2011年初版

 「ちがうねん」とおなじ作者と訳者。こちらが一年早く出版されています。

 「ぼくの ぼうし どこいったん? さがしに いこ」
 くまが、なくなってしまったお気に入りの帽子を探しにいきます。
 いろんな動物たちに次々に聞いて回りますが、
「しらんなぁ」 「このへんでは みてへんわ」 「ぼうしってなんや?」
 誰もくまの赤い帽子を知りません。

 茫洋とした くまですが、長谷川さんの関西弁で「そうか おおきに」「ふーん・・さよか」とあると、いきいきした くまになりますから不思議です。

 帽子のことを考えていると、あっ さっき!「ぼうしなんか しらんで」「ぼうしなんか とってへんで」「ぼくに きくのん やめてえな」と、いっていた、うさぎのことを思い出して、うさぎところに。

 最後は、かわいい赤い三角帽子をかぶったくまが、「うさぎなんか しらんで」「うさぎなんか さわったことも ないで」「ぼくに きくのん やめてえな」と、うさぎと同じようなことをいって、とぼけています。

 読者の自由な想像にまかせる、ちょっとミステリアスな結末が、なんともいえません。

 

   そらから おちてきてん/ジョン・グラッセン・作 長谷川善史・訳/クレヨンハウス/2021年

 「THE ROCK FROM THE SKY」が原題ですが、これが「そらから おちてきてん」となると、もう長谷川ワールド。

 ちょっと分厚めの装丁、文章が一ページにあったり、絵の上にあったり。五つのパートにわかれていますが、でてくるのは、なぜか帽子をかぶっているちょっぴりガンコなカメ、おしゃべりなアルマジロ、無口なヘビ。そして宇宙人みたいな得体のしれない目の怪物、そして どこから現れたのか不明の大きな岩。原題のように空からきたのなら、巨大な隕石、またはどこかの火山が爆発して飛来したものか。

(いわ)

 カメが見つけたのは、一輪の花が咲くお気に入りの場所。
 はじめ いっしょにたっていたアルマジロが「なんか いやあな かんじがするねん」と、離れたところへ。遠すぎて声が届かず、もういちどカメのところへ。そこでも「あかん。さっきより ひどなっているで。あっち もどるわ。いっしょに きたら?」と、また離れ、こんどはカメが声がとどかずアルマジロのところへ。

 カメがアルマジロのところへ行ったのは正解。なぜなら カメがいたお気に入りの場所には、大きな岩が音もなく・・。

(おちる)

 岩のそばであおむけに転がっていたカメ。アルマジロが声をかけると、昼寝という。疲れていない、つかれていないといいながら、岩によりかかって昼寝するアルマジロ

(みらい)

 岩の上で、目を閉じて みらいのことを想像するカメとアルマジロ。芽が出て木が生え森を想像していると 奇妙な目の怪物があらわれ、アルマジロは 未来へ行くことを あきらめ・・。

(しずむ)

 暗闇の中で、ただただ 夕陽をみつめるアルマジロとヘビ。カメが 声が遠いと そばへ。

(まんいん)

 「もう もどらんかも しれんで」「もう もどらんかも いうてねん。」と、なんどもひきとめてくれるのをまっているカメ。うしろに目の怪物があらわれ、怪物がいなくなったと思った場所に、大きな岩。

 

 一回読み終え、再度、カメとアルマジロの大阪弁の会話をゆっくり味わいながら、ページをめくっていきたい。

 

   シカクさん/マック・バーネット・文 ジョン・クラッセン・絵 長谷川善史・訳/クレヨンハウス/2018年

 シカクさんはマンマルさんに、「わたしに そっくりなんも つくってほしいわ~。 あした みにくるし たのむわ。てんさいさん!」と、マンマルさんにそっくりな彫刻?を頼まれます。

 シカクさん、天才とおもっていませんから「えらいこっちゃなあ・・」とぶつぶつ。

 それでも、四角い岩を丸くしようと、なんどもなんども鑿をふるい悪戦苦闘しますが、しっぱいの連続。がんばってがんばりますが「あちゃちゃちゃちゃ!」とさけびます。岩はまるどころか ぐちゃぐちゃ。

 しかし、マンマルさんがやってきて、きれいやし、おしゃれやしと 「まんまるやわー」と うっとり。

 なぜかっていうと、砕かれた岩が、ちょうどまーるくおさまって、雨で池ができていたのでした。「シカクさん あんた やっぱり てんさい やわ!」に「うーん・・そやろか?」と、それほどでもない(とおもったかどうか?)というシカクさんでした。

 派手さはありませんが、長谷川さんの大阪弁のリズムにおもわずひきこまれました。

 シカクさん、毎日、ほら穴に行って、四角い岩をひとつえらび、外に運び出して山のてっぺんまで、おしあげています。


三びきのやぎの どんけろり

2023年12月20日 | 絵本(外国)

  三びきのやぎの どんけろり/マック・バーネット・文 ジョン・グラッセン・絵 青山南・訳/化学同人/2023年

 

 「がらがらどん」ならぬ「どんけろり」、「トロル」でなく「トロール」。

 昔話は、語り手がかわるたびに、話もかわりました。ほんの少しづつですが、ときにはものすごく、いろんな話がくっついたり、すれられたりしました。最初は、話に絵はついていませんでした。「ちょっとちがうな、という人もいるかもしれないけど、ぼく、まちがっていませんからね」・・マックバーネット。

 三びきのやぎが、橋を渡るのは、「三びきのやぎのがらがらどん」と同じですが、三番目のヤギは、ド迫力の、どでかい どでかいやぎ。あっというまにトロールを、川に突き落としたので、トロールは、「でかいたき」「どでかいたき」「ばかでかいたき」と、川の流れのままに 流されていきます。

 橋がなる音は、肉がきたぞという音。ナプキンを首にかけ、スプーンとフォークをもって、お出迎え。やぎがやってくると、トロールは、料理法をご披露。しりの肉にハチミツつけてつけてこんがり焼く、燻製、蒸し焼き。バターとたまごの黄身とレモン汁のぶちかけ、ブランディをぶっかけて焼く などなど。

 獲物がないとき食べたのは、皮のくつ(どんな歯やら)、自分のへその ぐじゃぐじゃしたゴマ。それに比べれば、やぎはご馳走、ご馳走。トロールの足元には、ドクロがいっぱい。(表裏表紙の見返しと橋)。

 

 やぎがやってくるのは橋の右から。「三びきのやぎのがらがらどん」は橋の左から。マーシャ・ブラウンの絵を 意識したものやら。

 トロールの後頭部にあるのは なに? 目らしいのがついていますが? ジョン・グラッセさん、この絵本だけではなく、いつも正面を描かないのはどうして?

 青山さんの訳も捨てがたいのですが、ジョン・グラッセの絵ときたら、長谷川善史さんの大阪弁の訳もまたれるところ。

Eddy Bear なんてすてきな日

2023年12月19日 | 絵本(外国)

   Eddy Bear なんてすてきな日/アンドレ・ダーバン・作 角田光代・訳/学研教育出版/2009年

 

 ぴかぴか堂は、町で一番有名なおもちゃやさん。ショーウィンドーには、すてきなおもちゃがならんでいます。

 お店から、人がいなくなると、ぬいぐるみたちは まくらなげをしてあそびます。お月さまは、ぬいぐるみたちが なかよくあそんでいるのをみるのが楽しみで、ショーウィンドーの前にすわります。

 ある日、ふたりの男の子が、くまのエディのとりあいをし、エデイのちいさな耳はとれてしまいました。つぎの日、店長は、売り物にならない耳のとれたエディを すててしまいました。そんなエディを 救ってくれたのは ちいさなねずみ。ねずみは、仕立て屋のトッドさんを 紹介してくれました。エディは、トッドさんから耳をつけてもらいました。また、お店の窓にかざられたエディでしたが、だいすきだった友だちは、いませんでした。

 そのうち、ちいさな男の子が、いつもいつも窓の外をとおるのをみました。エディは男の子がとおるのが 楽しみになり、男の子もエディを見かけると、にっこりと笑いかけます。やがてエディは、エドワードといっしょに くらすことになりました。

 そして、学校の「おもちゃの参観日」に、エドワードにつれられていくと、そこには、ぴかぴか堂の仲間たちが、たくさんいたのです。

 

 優しくやわらかな色使いは落ちついた感じ。

 エディがみんなと遊んでいるのは春、そして再会するのは冬。雪玉合戦です。


おなべと やかんと ふらいぱんのけんか

2023年12月18日 | 紙芝居

   おなべと やかんと ふらいぱんのけんか/原作・村山 籌子  脚本・堀尾青史 画・田畑精一/童心社/1971年

 

 お母さんが、おなべにやさいを入れ、やかんに水を入れ、フライパンにたまごをおとして火をつけると、電話がなりだし、お母さんは電話にでました。

 お母さんが、電話にでているあいだに、お鍋が グツグツ グツグツ グダグダ クダグダ

 やかんが、プープー シュッシュッシュ

 フライパンも、ピチピチ ピチピチ チリチリ チリチリ

 お鍋、やかん、フライパンが 音を立てる様子を ケンカにみたてた 紙芝居。

 お母さんが電話から戻って、一安心です。

 

 見たのは2000年の23刷版。初版は1971年と大分古い紙芝居。いまでは、固定電話から携帯、ガス台もIH、消火機能もあります。三つ同時に火をつけて 台所から離れることはないでしょうから時代を感じさせます。