どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

ウサギのライオンたいじ

2020年08月31日 | 昔話(アフリカ)

    大人と子どものための世界のむかし話13/タンザニアのむかし話/宮本正興:編訳/偕成社/1991年

 

 ある村で、ライオンが小さな動物たちを一ぴきづつ食べていました。

 村の動物の数がめだってへってきて、ライオンのせいというのがみんなにわかりました。

 そこで動物たちは集会をひらき、いろいろ議論したあげく、ひとつの結論をまとめました。

 まず野原に出かけハイエナをつかまえると、ライオンに火で焼いた肉料理のほうがおいしいともちかけます。

 さらに「焼き肉を賞味するため、ライオンが深い穴を掘ってその中に入り、頭だけが地面からそとにでているようにしたら、あなたさまの口に焼き肉をいれてさしあげます。このようにして焼き肉を食べると、したたるあぶらをこぼして無駄にすることがありません」とウサギがいいます。

 ウサギは、それから大きな石をさがしてきて、かまどのなかにおき、あつくなってくると、その石にすこしばかり水をかけます。ジューン、ピューと激しい音をたてて水がたちまちかわくと、またその石に水をかけます。つまり肉を焼く演出をしたのです。

 一方、焼き肉の小さな塊をライオンの口に入れてあげると、ライオンは大喜び。もっと大きいのをくれというと、動物たちは、すっかりあつくなっている大きな石をライオンの口にほうりこんでしまいます。ライオンの口の中は大やけど。深い穴からでることもできず死んでしまいます。 

 ウサギは、ここでもトリックスターのようです


ニニのゆめのたび

2020年08月30日 | 絵本(外国)

      ニニのゆめのたび/アニタ・ローベル・作 まつかわまゆみ・訳/評論社/2012年

 

 街の中に住むニニでしたが、部屋の中のいっぱいの荷物をみて、みんなでかけるみたいで「あら、いやだ」と独り言。

 荷物のバッグのうえに すわりこんだり、靴の間でねそべったり、ギターの上に すわったり。

 つかまって入れられたのはバッグの中。はじめ ないていましたが こえはだんだん小さくなって・・・。

 夢の中で雲に乗って夜空をただよい、気球で空をとび 舟で海を渡り、象の背中に乗ったり、木馬の上でゆられたり。

 夢から覚めると、そこは木々がいっぱいで、小鳥が羽ばたき、蝶が舞う風景。新しい生活のスタートです。

 家族は一切えががれていません、どんな飼い主だったのでしょうか。


こめぶき・あわぶき

2020年08月29日 | 絵本(昔話・日本)

       こめぶき・あわぶき/川村たかし・文 梶山俊夫・画/教育画劇/2000年

 

 こめぶきは、亡くなった前の母さんの子。あわぶきは、今の母さんの子とはじまると、よくあるパターンですが、以外にもこのタイプの昔話は日本ではあまり目にしません。

 ある日、母親にいわれ、こめぶきは穴の開いた袋、あわぶきは穴を繕った袋をもって村祭り用の栗拾いに出かけました。

 当たり前ですが、あわぶきの袋はじきにいっぱいになりますが、こめぶきの袋はちっとも たまりません。

 こめぶきだけ取り残されるかと思うと、二人とも道に迷い、明かりが見える家に宿を乞うと、そこはやまんばの家。

 やまんばにはふたりのせがれがいました。せがれはオニで、人間の匂いを嗅ぎつけますが、やまんばは、ふたりをいいくるめます。そして、せがれが食い物をさがすにでかけると背中のしらみをとってくれるよう二人にたのみます。あわぶきは、しらみのおおきさに驚いて逃げ出しますが、こめぶきは、おっかないのをがまんして、ひばしで つまみあげて いろりの 火の上に なげます。

 すると、せいせいしたやまんばは、こめぶきには小さな箱、あわぶきには鍋をくれました。あわぶきは何もしなかったのですが・・。

 朝になり家をでてしばらくすると、二匹のオニが追っかけてきます。けれども三枚のお札よろしく、鍋を投げて山を出し、川を出して逃げ出します。

 しばらくして、村祭りの日、あわぶきは うつくしいきものをきてうきうきとでかけますが、こめぶきは、継母からいわれ、どっさり仕事をこなすことに。ざるで水をくむので、くんでもくんでも風呂桶はいっぱいにならず、やまのようなあわつぶは とてもつけません。

 そこへ親切なぼうさま、空が暗くなるほどのすずめがあらわれ仕事があっというまにかたづきます。

 やがて村祭りに出かけたこめぶきは、やまんばからもらった箱のことを思い出し、中を開けるとなかには、着物や帯が。

 やがてこめぶきは、ちょうじゃどんのせがれのよめに、あわぶきは たんぼにポチャンとおちて、うらつぶがいになってしまいます。

 川村さん、姉妹をあたたかく見守っているようです。ぼうさん、すずめがでてきて こめぶきを助けるあたりが きゅうにでてくるので 展開についていくのが大変です。


わたしのふうせん

2020年08月28日 | 絵本(外国)

       わたしのふうせん/マリオ・ラモ:絵・文 原小枝・訳/平凡社/2020年

 

 赤ずきんちゃんはお母さんからもらったすてきな赤い風船をもって、森のおくのおばあちゃんのところに会いに行きました。

 赤ずきんとおばあさん、そしてオオカミがでてきて、赤ずきんちゃんが食べられる?

 森の中で出会ったのは、大急ぎで走るライオン、花束をつくってねずみに贈り物をしようとしていた象さん、目立つキリン、三日三晩隠れているサイ、ピンクのフラミンゴ、森の中で海を探しているワニ、そしてオオカミも登場です。

 襲い掛かりました、襲い掛かりました。赤ずきんちゃんはどうなる?

 ところが、大事な赤い風船がやぶれて、赤ずきんちゃんが特大の大声で、風船返してよー!というと、おやおやオオカミは逃げて行ってしまいましたよ。

 登場する動物たち、とってもユニークです。


おおきな はてな

2020年08月27日 | 絵本(外国)


       おおきなはてな/ヴォルフ・エァルブルッフ:作 上野陽子・訳/朝日学生新聞社/2012年

 

「なぜ わたしは うまれてきたの?」

こんな疑問に答えるのは

弟、姉ちゃん、ママ、パパ

パイロット、船乗り、庭師、パン屋さん、ボクサー

ネコや小鳥、イヌ、ウサギ、アヒル

もっともっと

数字の3、石

そして死神のこたえは?

 

納得いくかは、人によって違いそうです。


アブヌワスの話・・タンザニア

2020年08月26日 | 昔話(アフリカ)

      大人と子どものための世界のむかし話13/タンザニアのむかし話/宮本正興:編訳/偕成社/1991年

 

 どこの国にもトリックスターがいて、アブヌワスというのはスワヒリ昔話に登場します。

 

むち打ちのやまわけ

 なかなか王さまにあえないアブヌワスが門番長に「王さまからなにかいただきものがあれば、やまわけしよう」と約束し、王さまにおめどおりします。

 アブヌワスは王さまの前で、あいさつもできない不作法者なので、百回のむち打ち刑で、しかるようにお願いします。

 きのりがしない王さまでしたが、しかたなく、それはそれはお手やわらかな やさしいむち打ちでした。

 五十回のむち打ちをおえたとき、アブヌワスは門番長ととりかわした証文をとりだし、半分の五十回は、門番長にむち打ちするようにいいます。

 おかげで、門番長はよくばり者として、ひどくむちで打たれ、アブヌアスと、やまわけの約束したことを後悔します。

 

生きているものは死に、死んでいた者は生きかえる

 金欠病のアブヌワスが、王さまにお目通りして、妻が死んだと伝え、そのあとに妻がお妃さまのところに出かけ、アブヌワスが死んだとつたえ、とむらいの金をもらうことにします。

 目論見どおり白い綿布とお金を手にいれた夫妻でした。

 ところが、王さまが疑問に思って、使者をアブヌワスのところにやると、妻が埋葬用の白い綿布でおおったアブヌワスの体をあらっていました。そのときアブヌワスが大きなくしゃみをしてしまいます。アブヌワスは「慈悲深く、慈愛あまねきアッラーのみ名において。生きているものは死に、死んでいた者は生きかえる、これ万物流転のことわりよ」と、つぶやきます。

 そして、王さまがなぜだましたかと問うと「今朝、妻が本当に死んで、わたしが埋葬しました。しかし、そのあとで妻は生きえったのです。たったいま、わたしも死んだのですが、妻が埋葬しようとしたところ、こうして生きかえったのでございます。」

 なにかこじつけのような話。

 

九百九十九リアルのもうけ話

 アブヌワスは「たとえ神さまから、九百九十九リアルいただけることになっても、わたしはちょっきり一千リアルでなければ いただかない」という。

 ものずきなお金持ちが本当にそうか九百九十九リアルをアブヌワスの家の前庭にそっとおいておきます。

 アブヌワスは、お金を数え九百九十九リアルしかないが、それでも結構なことだと自分のものにしてしまいます。

 お金持ちが、いうことがちがうというと、アブヌワスは、一リアル神さまにお貸ししておけば、ちかいうちにくださるだろうといいかえします。

 ペテンにひっかかった金持ちが、王さまに訴えようとすると、アブヌワスは、貧乏なため宮殿にいく服やターバン、のっていくロバもだしてくれといいます。

 そして宮殿につくと、服もロバもお金持ちのものだという証拠はなにもないと、自分のものにしてしまいます。

 アブヌワス、やや やりすぎです。

 

二階売ります

 アブヌワスが二階建ての家を建て、買い手を探しますが、なかなか見つかりません。

 あるお金持ちに、そのいえの二階だけを安く売ることに成功しますが、一階もなんとか売りつけようとします。

 法外な値段なので、金持ちは買う気持ちはまったくありません。ところがアブヌワスは、人夫を連れてくると、一階の空き部屋を取り壊そうとします。

 人夫たちが柱を倒したり、ドアをこわしはじめたので、金持ちはアブヌワスのたくらみにまけて、法外な値段でその家をまるごと買うことになりました。

 

こどもをうんだなべ

 ロバのためにとなりから大きな鍋をかりたアブヌワスは、鍋を三日後にかえすとき、大きな鍋の内側に小さな鍋をいれておきました。隣の男が、小さな鍋はわたしもものでないというと、鍋が子どもを産んだのだから、おまえさんのものだといいます。

 それから三日後、隣の男は、大きな鍋をアブヌワスに貸しますが、こんどはいつまでたっても鍋をかえしてくれません。鍋を返してくれというと、アブヌワスは、「鍋はかわいそうに死んでしまった」といいます。そして「子どもをうむものは、なんだって最後には死んじまうってこと、お前さんは知らないのか」とこじつけ、小さな鍋と大きな鍋の交換に成功します。


うんめぇめぇし・・のはらのごはん

2020年08月25日 | 絵本(日本)

       うんめぇめぇし・・のはらのごはん/おくはらゆめ/ほるぷ出版/2020年

 

 ふたごの やぎ あんちゃんともなちゃんが、うんめぇたべものを探しにいきます。

 「うんめぇ めぇしが まっている!!」と、包丁、フライパン、塩やお砂糖の調味料を準備して野原に。

 青虫のごはんの葉っぱをわけてもらい、みみずさんからは「つちふうみそ」、お花の蜜、小川の綺麗な水で料理開始。

 そのまま食べるかとおもったら、持ち帰ってレストランの開店です。

 「きょうの めぇにゅうは のはらのごはん」

 おはなばたけサラダにおがわドレッシング、つちふうみそ、はらっぱポテト、ぴかぴかはっぱロール、ゆうやけおにぎり、そしてはちみつぶるるん

 おきゃくさんは だいまんぞく。

 あらら あんちゃん、もなちゃんも「うんめぇー」と 大満足です。

 のはらごはんレシピも のっています。


おいてけぼり

2020年08月24日 | 絵本(昔話・日本)

       おいてけぼり/さねとうあきら・文 いのうえようすけ・画/教育画劇/1998年

 

 子どもたちにとって今年の夏休みはコロナの影響で例年の半分。おまけに感染を警戒して出かける機会も少なかったようですが、夏はやっぱり怖い話でしょうか。

 まちはずれに だれもよりつかない 気味の悪い堀があって、だれがいいだしたのか「おいてけぼり」とよばれていました。

 噂を聞いて火事と喧嘩が三度の飯より好きといういせいのいい 大工のきんじが きめだめしに でかけました。

 おてんとうさまが 頭の上にいるあいだは 魚がつれず はらをたてたきんじでしたが、夕方「ごーん、ぐわーん」と、お寺の鐘がなりだすと、きゅうに魚がつれはじめました。魚籠がいっぱいになり、帰り支度をはじめると、堀の底から「おいてけー、おいてけー・・」と、不気味な声。魚籠の魚が嬉しそうに暴れること、あばれること。

 きんじが力任せに魚籠をだきしめると「おいてけー、おいてけー・・」という叫び声。

 それも聞こえなくなって、ほっとひといきいれると「もうし もうし、おまえさん・・」と よびとめる声。おんなが あたまからかぶった てぬぐいを、するする はずすと・・。

 のっぺらぼうにびっくりして、家にかえり、「ばけもんがでた・・」というと、きんじの かかあが「おまえさん、そのばけもんは・・ こんな かおをしてなかったかね?」とふりむくと・・。

 

 堀のようす、うなぎやなまずの大きさににびっくりの絵です。

 「おいてけー、おいてけー・・・」は、読むときや語るときの工夫のしどころです。


にわとりとたまご

2020年08月23日 | 絵本(外国)

      にわとりとたまご/イエラ・マリ エンゾ・マリ・さく/ほるぷ出版/2015年

 

 表紙のにわとりの黄色の足にひかれました。

 卵の中を描いているとき背景が黒。それ以外の背景は真っ白。にわとりの羽根が丁寧に描かれています。

 はじめみたとき訳者の名前がないので、はてなと思いましたが、それもそのはず文字がいっさいありません。ストーリーは自分でつくれそうです。

 裏表紙の見返しにおおきなにわとりがミミズをついばんでいますが、とさかがありません。一番前のページではとさかがありますから、ひながおおきくなったのでしょう。

 原著は1969年で、夫妻の合作です。

 それにしても、いまの子がにわとりを家で飼うというのは、まれでしょう。


きつねと小さな白いメンドリのおはなし・・アリソン・アトリー

2020年08月22日 | 創作(外国)
    ラベンンダーのくつ/アリソン・アトリーおはなし集/松野生子・訳 大島英太郎・絵/福音館1998年
 
 
 表題作のほか4編。
 
 一羽の小さい白いメンドリが、狭くてうるさいところはごめんと、農場の鶏小屋を抜け出し、黄色い干し草の山のところに小さい家をつくりました。
 
 そこで茶色いウサギとノネズミが同居し、暮らしはじめました。働き者の白いメンドリはてきぱきと家の仕事をかたずけます。床を掃いたり、ノネズミがはこんできたコムギのつぶでパンを作る用意をしたり、いい匂いの干し草でみんなのベッドをつくったり。
ところがウサギはあそぶのがすきで、メンドリのやっかいもの。
 
 ある日、大きなあかいキツネがやってきて、干し草の山のかげに、小さな白いメンドリをみつけます。
 メンドリがそとにでてみると、そこにはキツネ。キツネは「もうだめだ。わたしは死にそうだ」というので、クロスグリのお茶を口に入れてやったメンドリ。
 すぐにもメンドリを食べようとしたキツネでしたが、気が変わってもっといいことをおもいつきました。メンドリに家政婦として働いてもらおうとあれこれ、話しかけるとメンドリはキツネの家にいくことになりました。
 やせたメンドリがもっとふとってから食べようとしたキツネは、ウサギもいると聞いて大喜び。
 
 メンドリはキツネの家をすっかりきれいにします。
 ところが、棚の上にあるみどり色の本を見つけ、よんでみてびっくり。
 <キジをたぶらかして木からさそいだすには><アヒルがおよいでいるところをおそうには><ねむっているウサギをつかまえるには>、さらにページをめくると<うまいことをいってメンドリをさそいだすには>。
 本の一番うしろの2ページは、めくれないようにくっつけてありましたが、メンドリはするどいくちばしをつっこんで中にかいていることを読みました。
 そこには<つみたてのカウスリップで花わをあみなさい。その花わを首にかけなさい。そうすれば、どんなきけんもまぬがれるでしょう>と、ありました。この花わを首にかけると姿が見えなくなるのです。
 やがて、ウサギがもってきたカウスリップの花で、無事キツネのところから脱出することに成功したメンドリでしたが・・・。
 
 小さい白いメンドリは働き者で、キツネにあったときは、恐ろしさを知らなかったのですが、キツネのところでだんだん正体がわかってくるあたりは、どきどきです。

こうまのマハバット

2020年08月21日 | 絵本(日本)

    こうまのマハバット/市川里美/BL出版/2020年

 

 世界各地を旅し、その土地の子どもとの交流や暮らしから絵本を作り続けているという作者。

 大草原に暮らすおじいちゃんとおばあちゃんのすむキルギスの村で夏を過ごためやってきた少女のジャミーラ。

 そこで、ひとりででかけていった こうまが 足をけがしてしまいました。

 ななめよこからやさしく話しかけながら、ちかずくようにおじいちゃんからいわれたジャミーラ。包帯を巻き、山の水をくんできて、まいにち こうまのきずをあらってあげました。

 名前がなかったこうまにマハバットという名前をつけました。キルギスの言葉で「愛」という意味です。

 ゆっくり、少しづつ歩く訓練をつづけながら、やがてマハバットは歩けるようになって・・・。

 ジャミーラの両親は都会暮らしでしょうか。おじいちゃん、おばあちゃんはユルタ(モンゴルのゲル)ぐらし。ここにはゆったりと時間が流れているようでした。

 見返しにある花がひとつひとつ丁寧に描かれています。


ネコとネズミの魚つり・・タンザニア

2020年08月20日 | 昔話(アフリカ)

    大人と子どものための世界のむかし話13/タンザニアのむかし話/宮本正興:編訳/偕成社/1991年

 

 まだネコとネズミが仲良かったころ。

 ある日、ネコが一緒に魚つりにいこうとネズミをさそいました。

 まず舟をつくることにし、ネコはパパイヤの木でつくろうとしましたが、ネズミはパパイヤが気に入らず ふたりはキャッサバの舟を作りました。

 つりは順調で次から次へとつりました。

 正午近くになって、はらがすいてきたネコは、こっそりとふたりがつった小魚を食べはじめました。ネコはどんどん食べ続け、ネズミは一生懸命魚を釣っていて、ネコのようすにはまったく気がつきませんでした。

 二時ごろになって、ネズミもはらがへってきて、舟の中をみましたが、つりあげたはずの魚が一匹もみあたりません。

 ネコは舟の中で昼寝。とうとうネズミはキャッサバの舟をかじることにしました。そのうち舟底に穴が開いて、舟が沈没してしまいました。

 ふたりはすさまじいいきおいでけんかをはじめましたが、ネズミは「ああ、もう疲れた。ぼくが悪かったよ。お金を払ってきみに弁償するよ」といって、木のほら穴にはいっていきました。そしてネズミは家財道具をぜんぶとりまとめて、どこかほかの町ににげていってしまいました。

 そうとはしらないネコは、木のほら穴の前でネズミをまっていました。いまでも木の前にすわっているネコをよくみかけるのは、ネコがネズミをまっているのです。

 

 魚を独り占めしたネコの方が、どうにも分が悪い話。


ぼくがいちばん!すごいでしょ

2020年08月19日 | 絵本(日本)

      ぼくが いちばん!すごいでしょ/作・サトシン 絵・山村浩二/PHP研究所/2018年

 

なにやら動物たちが「ぼくが いちばん! すごいでしょ!」といいあっています。

ゾウさんは、「からだのおおきさなら、ぼくがいちばん!」

チーターは、「はしる はやさなら わたしが いちばん!」

モグラは、「トンネルを ほるなら ぼくが いちばん!」

カメレオンは、「かくれんぼなら わたしが いちばん!」

スカンクは、「くさいにおいなら ぼくが いちばん!」

ナマケモノは、「うごきの おそさなら ぼくが いちばん!」

さてさて、いちばん すごいのは だれかな?

じつは動物の名前がでてきませんから、絵で動物の特徴を知ることができるという一石二鳥です。

多様性を大事にする第一歩は、違いを認め合うことからはじまるものなのかも。


おいせまいり わんころう

2020年08月18日 | 長谷川善史

      おいせまいり わんころう/あおきひろえ・文 長谷川善史・絵/ブロンズ新社/2019年

 

 すごろくじたての わんころうの伊勢参り。

 ふりだしは、大阪船場の米問屋「すごろくや」。

 米俵をかついだまんま しりもち ついて腰を痛めただんなさんの回復祈願のため、娘のこいちゃんにたのまれて、わんころうは ほな、いてさんじますと伊勢へと出発。

 おいせまいりのめじるしは ひしゃく。首には銅銭、巾着の中には、こいちゃんのつくってくれたおまもりと準備万端。

 くらがりとおげをこえ、ふるいちのやど青銅屋で一息。

 お伊勢参りの一行と歩いて歩いて・・・。

 森の中で わんこうのおしっこが しちどぎつねの あたまにかかったから、さあたいへん。肥溜めに落ちるわ、がいこつにおわれるわ、うわばみ、ろくろ首、大入道がでてるわとえらいめにあいながらも こいちゃんのためにと 先を急ぐわんころう。

 くしだがわでは、川に落っこちた備前屋のぼんを ひっしのパッチで助け、ごちそうやおどりでもてなしをうけた わんころう。

 やっと伊勢神宮についたとおもったら、犬畜生は通せないと門番にとおせんぼされたわんころうの前に、あまてらすおおみのかみがあらあれ、やっと、参詣ができ・・・。

 舟で大阪に着くと、こいちゃんのにおい。みんながそろって おでむかえ。米問屋「すごろくや」の だんなさんも わんころうのげんきなすがたをみたくて、すっくとたちあがりましたから、腰もよくなっていました。

 表と裏の見返しの、出発前とお伊勢参りから帰ったわんころうの姿にも注目です。

 いくまえ「そんなこといわれても・・」「なんぎやなあー」

 かえってきたとき「あー やれやれ」「はー しんど」

 こっちが本音かな?


よるのさかなやさん

2020年08月16日 | 絵本(日本)

      よるのさかなやさん/穂高順也・文 山口マオ・絵/文溪堂/2016年

 

 魚屋の「魚正」のさかなは いつも新鮮でピチピチ。お客さんから大評判。

 なにか秘密がありそう。

 お店のシャッターが閉まって夜になると、「さあ、 しんだふりを やめるじかんが  きたようだ」「ひょっこり ひょこ ひょこ ぬーるぬる ひょっこり ひょこ ひょこ ぬーるぬる」と、魚たちが 動き出しました。

 野球やかくれんぼも楽しいけれど、一番いいのは夜空を泳ぐこと。

 タコ、イカ.カニは、天の川で 釣りです。

 やがて、魚の匂いを嗅ぎつけて、ネコたちがよってきました。

 おいかけっこのあとは、みんな合体して怪獣に変身。こんどは、さかなたちが、ネコを追いかけます。

 遊んでいるうち、ゆっくりと おひさまが のぼってくると 「さあ、 しんだふりを はじめるじかんが  きたようだ」と、魚たちは、お店のなかに もどっていきました。

 

 マダイ、タコ、イカの合体怪獣もなかなかです。

 食べられるまでの間、自由な時間を過ごしている魚さんたちは新鮮でしょうね。