どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

やまのかいしゃ

2019年10月31日 | 絵本(日本)

    やまのかいしゃ/スズキコージ・作 かたやまけん・絵/福音館書店/2018年

 

 ほげたさんは、朝起きるのがとても苦手。奥さんが布団をめくっても、ぐうすうぴい。

 今日も会社に出かけていくのが昼過ぎになってしまいました。

 駅までの道をペタペタあるきながら、歯を磨き、顔を洋服のそででみがいて、すぐきた電車にとびのります。

 すいた電車の中で、奥さんが作ってくれたおむすびを食べようとすると、トイレのスリッパはいていたことに気がつきます。おまけにおむすびのなかから腕時計がでてきて。

 ほげたさんもほげたさんなら、奥さんもそそっかしい。

 ほげたさんの会社はビルがぎっしりつまった町の中にあるのに、電車がむかったさきは、山。

 やまの素晴らしい景色を見ようにもメガネを忘れがっかりのほげたさん。

 電車の終着駅は、“やまのあなた駅”。
 ほげたさんは、こうなったら、今日は、山の会社へ行こうと思い、駅員さんにおねがいしてスリッパを長靴にかえ、山の道をのぼっていきます。

 つりばしをわたって、むこうからくる人をみると、同じ会社のほいさくん。ほいくさん、こんなやまのなかから会社にかよっていたんでしょうか。会社につくのは、どうみても夕方。それとも夜勤だったのかな。

 ふたりで山をのぼって、頂上へ。

 やまのかいしゃと思い込んだ二人は、仕事をはじめます。(何もなさそうです)

 空気のおいしい山の頂上で、仕事をしようと会社の社長に電話すると、社長はみんなをつれて山の会社にやってきます。

 やまでは、動物たちも総出でおむかえ。

 会社の面々は、寝転んで仕事をしたり、酒盛りしたり、バイオリン伴奏で歌をうたったり、社長は自転車遊びと楽しそう。

 でも、山の会社がぜんぜんもうからないので、社長はみんなをつれて町にかえっていきます。

 のこったのはほげたさんとほいさくくんでした。

 子どもには、なに?といわれそうですが、会社に遅刻できないし、都会のゴミゴミした雑踏ですごさなければならない大人には、ユートピアの山の会社でしょう。あくせく働く大人へのメッセージなのかも。

 山の頂上の場面、動物たちが楽しそうで人もいきいきとしています。

 他の方の受け売りですが、絵本の主人公の名前は、「エンソくんきしゃにのる」の駅名だそうです。

 やまのかいしゃ = エンソくんきしゃにのる
  ほげたさん = ほげた駅
  ほいさくん = ほいさ駅

 頭をかしげたのが、この絵本は、1991年に架空社から発行されているということ。きいたことのない出版社でした。


まどから★おくりもの

2019年10月29日 | 五味太郎

     まどから★おくりもの/五味太郎/偕成社/1983年

 

 おっと!ヘリコプタでやってきたのは サンタクロースさん

 五味さん、”たぶん”と注釈つけてます。

 まどから、みえたのは ねずみさん しゃれた ながぐつをプレゼント。

 つぎに みえたのは ねこさん。かわいいリボンをプレゼント。

 ここから楽しい仕掛け。

 絵の窓に穴があいているのですが、次のページをめくると ねことおもったのは ぶたさんのパジャマの絵。

 窓から しまうまに みえたのは だちょう。

 だれもいないと思ったのは、くまさん。

 きつねとおもったのは わに。

 わにさんと 思ったのは、八匹が なかよく ねている うさぎの耳。

 次に何に騙されるか楽しんでみていけます。

 ”たぶん”小さい子が対象ですが、”どうやら”大人が見ても楽しい。

 圧倒的に人気の絵本ですが、これまで知らなくて残念でした。

 といっても、おそいということに がっかりすることは なさそうです。

 サンタさんが、勘違いであげたプレゼント 動物たちは ちゃんと 使いこなしています。


ゆきとどいた生活

2019年10月28日 | 星 新一

         ゆきとどいた生活/星新一YAセレクション/和田誠・絵/理論社/2008年

 

 生活のすべてが、自動化された未来。

 朝になると、音楽がわき、大輪の花弁のような銀色のスピーカーから、目覚ましコール。

 マジックハンドのようなものが、テール氏を抱き起し、浴室へ。シャワーも自動。その間に洗濯も。

 服もきせてくれ、朝食も自動的にでてくるので、テール氏がやることはない。

 会社へは、都市のいたるところにはりめぐらされたパイプをとおって出勤です。

 テール氏の乗り物がパイプ道路をとおって、会社につくと、他の社員が「おはよう。テール君。どうしたんだい、ばかに顔色が悪いじゃないか」と、声を掛けます。しかし反応がありません。医者にみせると、「テール氏は前から心臓が弱かったので、その発作を起こしたのです」「いつでしょうか」「そうですね。死後、約十時間ですから、昨晩というところでしょう」。

 未来も会社に出勤するというのがあるのでしょうか。やはり、出勤しないと死んだのがわからないので、これからも会社に通う必要がありか?

 途中まで、おお便利な生活と感心していると、オチで背筋が寒くなります。


ぼくの ねこは どこ?

2019年10月28日 | 絵本(外国)

    ぼくのねこはどこ?/ヘンリー・コール/岩崎書店/2017年

 

 訳者のかたのお名前がありません。それもそのはず、最初から最後まで文字が一切ありません。

 ねこがいつの間にか外へいってしまいます。

 小さな男の子が、ねこをさがしに街へ。男の子、まよいねこの張り紙を、電柱、バス停などあちこちはります。

 街の風景は線画で、ところどころの空が青ですが、それ以外は色がありません。最近の絵本ですが、めずらしい。

 街を俯瞰したり、建物の高さのそろった街並み、観光船がとおる川、公園、市場、博物館、壮大なアーチ式の柱が特長の駅が丁寧に描かれています。

 男の子がしょんぼり家に帰ると、まどには、ねこが・・。

 各ページに、さがしているねこがいますが、さがすのはちょっと大変。子ども方がすぐにみつけるかもしれません。


桶屋の源五郎の天上り

2019年10月27日 | 昔話(日本)

      桶屋の源五郎の天上り/日本の民話11 民衆の笑い話/瀬川拓男 松谷みよ子:編集・再話/角川書店/1973年

 

 昔話では天までのぼるのもいろいろですが、源五郎という桶屋が、酒屋の五尺桶の輪替をしていて、たがががはじれ、その勢いで天の上まではじきとばされてしまいます。

 そこであったのは、からだはまっ裸で、虎の皮の褌をつけ、頭に角が二本、口は耳まで裂けた雷神。

 雷神にいわれて、雨をふらせて、雨不足でなやんでいた自分の村に来ると、桶の水をぶちまけると、水の重みで雲がやぶれ、そのまままっさかさにころげおちていったさきは、海の中。

 どげんなるとじゃと思って海の中を歩いていると立派な御殿の前にでた。竜宮城でした。

 乙姫さまは、源五郎が、たがねにはねられたと聞くとおかしがり、天から足すべらして落ちたというと、またころころ笑い、「竜宮の庭はきでもしてくらすがええ。しかし天から降りてくるものは、どんなことがあっても食べてはなりません」といいます。

 天からおりてきたものを食べてはならないというと、次にでてくるのは、天から下がってくるもの。

 うまそうだったので食いつくと、力いっぱいひきあげられて舟の上につりあげられてしまいます。

 つりあげたのは、同じ村の者。源五郎さん、それでやっと家に帰ることができたと。

 天から落ちるという話は、ほかにもあるが、竜宮城につくというのはなさそうです。庭掃きというからには、竜宮に落ち葉でもあったのでしょうか?


どうぶつ うります

2019年10月26日 | 絵本(外国)

   どうぶつ うります/ブルーノ・ムナーリ・作 谷川俊太郎・訳/フレーベル館/2011年

 

 山高帽をかぶった長い髭の男が 売りこむのは、フラミンゴ、やまあらし、アルマジロ、こうもり、やすで。

 「バルコニーで かえますよ、ゆきが ふると みばえがします」と やまあらしをうりこみますが、「やめておこう、ぶつぶつ もんくばかり いうからね」

 セールストークと、客の”いや”というのがつづきますが、掛け合いがすんなりはいってきませんでした。

 動物たちが、ひもでつながれていて違和感があり、蝶がでてくるのも意味不明でした。オチも飛躍しすぎです。

 谷川さんの訳でも、絵本の魅力を引き出せなかったようです。

 原著は1945年、仕掛けもあって楽しい絵本なのですが、現在では首をかしげざるを得ませんでした。いまさまざまな規制があります。ここででてくる動物がどうなっているかは調べていませんが、個人に売るというのが通用するかどうか?。


がいこつさん

2019年10月24日 | 五味太郎

    がいこつさん/五味太郎/文化出版局/1982年

 

がいこつさん、「なにか」忘れていることがあると、椅子に腰かけて 思い出そうとしています。

目覚まし時計をかけ忘れたのかな?

今度は、歩きながら考えます。

洗濯かな?

電話をかけ忘れたのかな?

手紙をだすのを 忘れていたのかな?

次々と探していきますが、どうしても思い出せません。

?のあとには、「それは ないでしょう」と合いの手が入り

「それも そうだな」と、また歩いていくと・・・。

一回気になりだすと どうしても落ち着きません。たしかに 眠れませんよね。

トイレで思い出したのは?

「それも そうだな」と、ちょっと とぼけた感じの がいこつさん。なかなか存在感があります。


ぶん ぶん ぶるるん

2019年10月23日 | 絵本(外国)

    ぶん ぶん ぶるるん/バイロン・バートン・作 てじまゆうすけ・訳/ほるぷ出版/1975年(2018年改訂新版) 

 

 ミツバチが雄牛のお尻をちくり

 おかげで牝牛はごきげんななめ。ミルク絞りのおばさんを ミルクと一緒にけとばし

 おばさんは、おじさんに やつあたり。

 おじさんは ラバのお尻をひっぱたたき

 つぎつぎにやつあたりして、ことりが ミツバチをみつけて とびかかると

 ミツバチは ぶーんと 逃げ出して、また おうしの おしりに。

 最後のページは、最初のページと同じです。

 なにが原因かわからず、急に つきとばされたり、かみつかれたりしたら そりゃ びっくりです。八つ当たりの連鎖。どこかでだれかが おさえられたらよかったのに!

 すっきりした色合いで見やすい絵本です。


ぬすまれた月

2019年10月23日 | 絵本(日本)

ぬすまれた月

    盗まれた月/和田誠/岩崎書店/2017年(1963年復刻版) 

 楽しませていただいていた和田誠さんが亡くなられたというニュースがながれていました。今後新しい作品がみれないという実感がわきません。しかし多くの絵本などを残してくれていることに感謝です。

 「ぬすまれた月」は和田さんが20代のころ、1963年に発行されています。

 それから54年たって、製本、用紙、文字、色味、等、なるべく当時の風合いを再現して復刊したものとありました。

 ある男が夜空から月をぬすみ、毎日変わる形を見て楽しんでいましたが、ある日、泥棒にぬすまれてしまいます。泥棒が箱をあけてみると、箱はからっぽ。泥棒は箱をすててしまいます。

 じつは、新月で月はみえなかったのです。

 このあたりから、満月、日食、月食と月、地球、太陽の関係がわかりやすく説明されています。

 それから月の誕生や潮の満ち引きも。

 ここからすてられた月の続きがはじまります。泥棒が捨てた箱をみつけたのはひとりの女の人。三日月だったので、女の人は、竪琴をこしらえました。素敵な音、歌で、女の人と音楽は大評判。 ところが演奏旅行に船に乗ると、竪琴はすっかりだめになっていて、女の人はヒステリーをおこして海に投げ込んでしまいます。

 月が再び出てきたのは魚の中。二つの国の二つの船が同時にいっぴきのさかなをつりあげ、公平をきすため半分にきったときのことでした。

 二つの国はお互いに自分のものと主張しあいますが、とりあえず、ふたつの国のまんなかにおかれ、兵隊が相手をみはっていました。いつ戦争になるかわからない状況。

 ここで子どもたちが相談して、とっときの方法を考えます。月を気球にのせ、小鳥に空に返すようにおねがいしたのでした。

 それにしても一ページ一ページの厚さ。いつもみている絵本の三倍ほどの厚さでしょうか。

 古来から人間が見上げてきた月。さまざまな空想がありました。さまざまな物語を紡いできました。科学で解明していくのもありでしょうが、すこし夢ものこしてほしいと願うところです。


かぜひきたちが聖ゲルリュションさまへおまいりにいく・・フランス

2019年10月22日 | 昔話(ヨーロッパ)

         なぞとき名人のお姫さま/フランスの昔話/山口智子:編・訳/福音館書店/1995年初版

 

 長いタイトルですが「ブレーメンの音楽隊」と似ています。

 かぜをひいて聖ゲルリュションさまにおいのりにいこうとねこが途中であったのは、おんどり、がちょうのおばさん、やぎのおばさん、ひつじ、やましぎ。みんなかぜでした。

 しっかり、おまいりをして家路につき、日が暮れてみつけたのが、小さな家。おおかみの家でしたが留守でした。

 炉のそばにジャガイモをみつけ、皮つきのまま大鍋でにて、おなかがいっぱいになったみんなは、それぞれすきなところで、寝ることに。

 どこにねむったのかは、おおかみの証言が。

 「じゃがいもをくおうとしたら、のこっていたのは皮だけ。わらの切れっぱしに火をつけようとしたら料理女がフォークで鼻先をに二へんもひっかき(ねこがひっかいたのです)、おまけに炉に左官がおって目に何やらべたっとしたものをおとした(おんどりが糞をおとしたのです)。ベッドへ寝にいきゃ、洗濯女が布うちべらでひっぱたくわ(ベッドにはがちょうがいてひっぱたたいたのです)、テーブルのほうへいきゃ、木こりが大槌でぶんなぐるわ(羊が頭でぶつかったのです)、干し草かき女が熊手でつくわ(やぎが角でついたのです)、流しのほうへ行きゃ、くつ屋が錐の先で突っつくわ(やまぎしがながい嘴でおしりをつついたのです)、戸の方へ行きゃ、なんと鍛冶屋がおって、尻をもぎとるときたもんだ。わしは家から飛んで逃げてきた。もうあそこには二度ともどるもんか。」

 暗闇でしたから、勘違いするのもわかりますが、ここまでくると、なんともいいようがありません。しかし動物の特徴がよくあらわれています。

 夜明け、すっかり元気になった動物たちは家をでていきます。


若返り

2019年10月21日 | 昔話(日本)

    日本昔話記録4/新潟県南蒲原郡昔話集/柳田國男編 岩倉市郎採録/三省堂/2006年

 

 若返りというと水が多いが、団子で若返るという昔話。

 兵々とよばれる22の若者が、せめて兵六とよばれたいと、鎮守様に三七、二十一日の願掛けをします。

 満願の日、神様から二つの団子を授かります。一つ飲めば年の十若くなる団子。

 同じ時期に、村の旦那が、子どもが授かるよう鎮守様に願掛けをしていて、お告げがあったら、中身を話しようと約束していました。

 兵々が団子のことをはなすと、旦那様は「一つ分けてくれ」といいますが、兵々はあげられないと二つの団子を飲んでしまいます。すると兵々はたちまち二つの赤ん坊に。

 しかし旦那様は、その子をつれかえり、自分のこどもとして大事に育て、やがて兵々は「兵六様兵六様」と呼ばれるように。

 この昔話集の初版は1943年で2006年に復刊されたもの。話し手のお名前も記載されています。昔話集といっても、どこかで脚色されているような話が多いのですが、記録とあって昔話の原型を知ることができるようです。


エリック・カールの絵本

2019年10月21日 | 絵本(外国)

 特定の作者の絵本をえらんでいるわけではありませんが、ここ何年かふれた絵本リック・カールさんの絵本。ここにあげたもの以外にもたくさんあるのですが、個人的に読んだものをまとめてみました。

 エリック・カールさんの絵は、手作り感があって、どの絵本も温かみがあります。薄紙をつかって特製の色紙をつくり、それを切り貼りして描かれているのですが、時代をへても古さを感じさせず、楽しい仕掛けもあって、子どもの気持ちをつかんでいます。

 

  

    ごちゃまぜカメレオン/やぎた よしこ・訳/ほるぷ出版/1978年

 ときどきCG風の絵本もありますが、無機質的でどうにもすきになれません。

 全部を塗りつぶすことなく、白い部分が残っている感じがなんともいえない味わいです。

 動物園の動物を見て、いいなと思うのに変身していったカメレオンですが、フラミンゴをみるとピンクの翼と長い足、キツネみたいにスマートになれたらとおもうと、しっぽがはえて、シカのように速く走れたらと思うと、頭にツノが・・。

 いろんなものがくっついて、だんだんごちゃまぜになっていくカメレオン。最後はどうなる?

 出版社の紹介に、この絵本誕生のいきさつがのせられています。あるとき子どもたちが「動物の絵を描いて」と作者にせがみ、いろんな動物の絵の注文をするので、動物たちの特徴ある部分を描きつないでいくと、できあがっていったのは複雑な生き物。複雑になればなるほど子どもたちは喜び、この絵本誕生のきっかけになったといいます。

 絵本だけではなく紙芝居もあります。紙芝居の方がひとまわりおおきいので、複雑な様子と色使いが楽しめそうです。

    たんじょうびのふしぎなてがみ/偕成社/1978年初版

ワクワク感がいっぱいです。

チムの誕生日は明日。

枕の下から、とこどころ△☆□がある謎の手紙が。行き先を示すような手紙。

ページが山、石、階段の形に切り取られています。そのほかページに丸い穴があいていたり、まどがあったり。

こどもの興味をひきつける簡単な仕掛け。それだけ次に”なにが”あるか引き込んでいきます。

まるで宝探し。誕生日にこんな手紙をもらったらうれしくなります。

 

はらぺこあおむし  

     はらぺこ あおむし/もり ひさし やく/偕成社/1988年初版

 今年、50cmほどの山椒の木から10匹以上のナミアゲハが育っていきました。青虫のころ毎日楽しみで観察していました。青虫がいつのまにかいなくなり、どこでさなぎになるのか見たいと思っていましたが、最後の青虫が玄関のタイルの上を散歩?しているのを見ていると、土台のコンクリートと外壁の間に姿を隠し、茶色に変身。誕生が楽しみです。

 2年ほど前は、モンシロチョウの青虫をみつけ、部屋の中においておいたら、部屋の中を飛び回っていたので、外にだしてあげたことも。そのときの抜け殻は今もおいてある。

ということで、久しぶりにこの絵本を取り出してみた。

 手元にあるのは、手のひらサイズの小型本。子どもが小さいころ何度も読んであげた記憶が。どんな反応だったか忘れてしまう昔のこと。

 この絵本の魅力は絵本の作り方とリズム感。そして大きくなっても年齢に応じて楽しめることにありそう。

 我が家の20倍はありそうな超大型版が図書館にあって、借りてきました。読んであげるなら二人がかりの絵本です。今の印刷技術では、大きさも自由自在にできそうです。

 ユウチューブで様々な動画が見られるのも、この絵本のもつ魅力をあらわしています。

 ところで「はらぺこあおむし」は、アメリカでこの本を印刷・製本してくれる印刷所がみつけられずにいたとき、偕成社の当時の社長が印刷所をみつけたというエピソードがありました。


     さびしがりやのほたる《光る絵本》/訳:もり ひさし・訳/偕成社/1996年

 ホタルが光るラストの仕掛けに感動でした。

 十八匹のホタルがでてきて、順番に光っています(全部ではありませんが)。

 絵には物足りなさをかんじている方もいますが、光を効果的に表現するための工夫だったのではないかと思いました。

 図書館から借りてきたのですが、仕掛けは電池式のようで、ホタルの光をみることもできなかった方もいました。

 ストーリーはいたってシンプル。ひとりぼっちのホタルが 電球や、ろうそく、懐中電灯やちょうちん、動物の目、車のヘッドライトや花火を、仲間と見間違えながら、結びで、ホタルの群れに合流します。

 ホタルは世界で二千種類、ホタルの光は熱をださないに冷たい光で、まだすっかり解明できていないとありました。

 川の護岸がコンクリートになって、ホタルをみたことがない子が圧倒的というのも、さびしい限りです。

    できるかな?あたまからつまさきまで/くどうなおこ・訳/偕成社/1997年

 ペンギンさんが、頭をくるんとまわして

キリンさんは くびを ぐいんとまげて

アザラシは 両手を ばんばんして

ゴリラは むねを どどんと たたいて

ワニは おしりを くいくい ゆすって

ほかにもラクダ、ロバ、ゾウ、ねこが

「できるかな?」

といって挑発?

そういわれたら、だまっていられません。

ついつい 体をうごかしてしまいそう。

そうです。読むというより動きをまねしたくなる絵本です。 

   
10このちいさなおもちゃのあひる  

    10このちいさなおもちゃのあひる/訳:くどう なおこ/偕成社/2005年初版


 おもちゃのアヒルがのった船が嵐にあって、10このアヒルが海に投げ出されてしまいます。

 アヒルたちの冒険を通じて、豊かな海の表情がつたわってきます。
 アヒルのうえを飛び越えるいるか。
 あざらし、しろくま、フラミンゴ、ペリカン、かめ、たこ、かもめ、くじら。
 10番目のおもちゃのアヒルは、本当のアヒルの家族と出会い、そのあとをついていきます。

 お月さまが、みんなに声をかけると、アヒルのかあさんも、こどもも”くっわくっわくっわくっわ”と返事。

 最後に子どもが喜びそうな仕掛けがあって、おもちゃのアヒルのおなかをおすと、返事をします。 

 
    ホットケーキできあがり!/アーサー・ビナード/偕成社/2009年初版


 朝一番に「きょうは、でっかいホットケーキがたべたいなぁ」と思ったジャック。でも、すぐには食べられません。

 小麦を刈り取り、ロバに乗せて水車小屋へ。もみ殻と小麦をわけ、製粉し・・・

 卵を用意し、牛乳をしぼり、バターをつくり、イチゴジャムを用意し、ようやくホットケーキをつくりはじめます。

 いまは、スーパーにいけば、なんでも簡単に手に入るように見えますが、口に入るまでは、じつは、ながーい過程があって、さまざまな人のかかわりがあり、材料が必要なことをさりげなく教えてくれます。

 ジャックがかるがると仕事をこなし、水車小屋で製粉するのですが、なぜかジャックは裸足です。

 それにしてもエリック・カールさんの絵には、いつも驚かされます。
 
 牛がでてくるのですが、まるでパッチワークのようです。

えを かく かく かく  

     えを かく かく かく/アーサー・ビナード/偕成社/2014年初版

  画面いっぱいの

 あおいうま あかいわに きいろいうし ピンクのうさぎ
 みどりのライオン オレンジいろのぞう くろいしろくま みずたまもようのろば

 とにかく圧倒されます。

 まちがった いろ?
 そんなものはない

 既成概念をうちやぶってくれます。解説をよまなくても、絵だけで楽しめます。

 読み聞かせをされたかたの子どもの反応もなるほどとうなずけます。


水の絵本

2019年10月20日 | 絵本(日本)

    水の絵本/作・長田弘 絵・荒井良二/講談社/2019年

 

 長田さんの詩をじっくりかみしめてもいいし、荒井さんのキャンバスにえがかれたような絵をゆっくりながめても、どちらも楽しめます。

 ははのように いのちを つくり

 ちのように からだを めぐり

 たましいを ぬぐってくれる いのちの

 おしっこ

 こどもたちが いった みずは

 かみさまたちの おしっこなの?

 そうだよ と わたしはこたえ 

 そうして 

 この しを かいた

 

 そして森、大河、山間を流れる川、透明な川にみえる魚、夜の山、無数の星を流れる流星、まるで天の川をくだるような船、山になかに点々と見える家のあかりと、自然を感じる風景が続いています。


おかえし

2019年10月20日 | 絵本(日本)

おかえし

    おかえし/村山桂子・作 織茂恭子・絵/福音館書店/1989年(1985年初出)

 

 たぬきの家の隣にきつねが引っ越してきました。引っ越しの荷物が かたづくと、きつねのおくさんが、さっそくたぬきのおくさんのところへ、あいさつに。

 「ほんのつまらないものですが」とさしだしたのは、かごいっぱいのイチゴ。

 それじゃ、わたしも、なにかおかえしをしなくちゃと、たぬきのおくさんは、タケノコをもって、きつねのおくさんのところへ。

 するとこんどは、きつねのおくさんが、花と花瓶を。

 「つまらないもですが・・」と、おかえしのおかえしのおかえしを、繰り返していきます。

 おかえしの品物がどんどんエスカレートして、家のものがそっくり、隣の家に。

 それでも、おかえしはまだまだ続きます。なんと ぼうやも おかえし。そして自分もおかえし。

 きつねとたぬきの家のものがそっくり隣の家に。

 おとうさんが、かえってきたらびっくりだったでしょう。

 織茂さんの絵はこまかく、さいしょにもらったイチゴを、たぬきの子が食べているのですが、イチゴがだんだん減っていきます。ちょうど食べ終わったところで、きつねのところの おかえしになるのには、笑えました。そして、ぼうやがおかあさんと再会すると、互いに にっこりする場面でほっとします。

 「おかえし」という言葉が何度もでてきますから、読み聞かせでは相当の覚悟がいります。


お百姓トロメと悪魔・・フランス

2019年10月19日 | 昔話(ヨーロッパ)

        なぞとき名人のお姫さま/フランスの昔話/山口智子:編・訳/福音館書店/1995年初版

 

 悪魔がほしがったのはトロメというお百姓の長男の魂。ただひきかえにりっぱな百姓家、小麦や干し草のつまった大きな納屋をいくつも、畑仕事むきの牛や馬もほしいだけやろうというもの。

 トロメは災難続きで、不作が続き、牛や馬が病気で次々に倒れ、その上おかみさんや子どもたちまで病気になって、にっちもさっちもいかなくなっていたのです。おもわず「こんなおれを助けてくれるのは、悪魔だけだろうな!」とさけんだのです。

 トロメは小さなみどりの悪魔に、オンドリが夜明けの歌をうたうちょうどそのとき、すっかりできていればと条件をだします。

 契約書に血のサインをし、家に帰ってみれば、小さな悪魔たちがすでに仕事をしていました。

 トロメはおくさんが、悪魔をたぶらかすようにできると思っていたのです。

 おかみさんは「自分の息子の魂を悪魔にわたすなんて、それじゃ、あんたも悪魔だよ」といいながらも、目をつけたのは五時までには、仕事をすませなければということ。とてもシンプルに、オンドリをつっついて、五時前に鳴かせると悪魔は逃げ出してしまいます。

 悪魔といっても、かぞえきれないほどの小さな悪魔です。イラストの悪魔は、とてもかわいく描かれています。