どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

能登の又次・・石川

2022年03月31日 | 昔話(北信越)

           石川のむかし話/石川県児童文化協会編/日本標準/1977年

 

 能登では、嘘の上手な人を「千の浦の能登の又次か」というのですが、嘘にまつわる話が又次をとおして語られていたのでしょうか。クスリと笑えます。

<その1>

 あるとき、船頭が又次に、「卯(東)の方角に向けて、かじをとっとれや」というて、かじをとらせたが、船頭が甲板に上がってみると、とんでもないとこを走っているので、「又次や、わりゃ、どこむけてかじとっとるがい」ときくと、又次が言うには「うのほうにむけて行けちゅうさけ、おらウの飛んでるところにむけて、走らしとるわいね」という。船頭が海を見ると、なるほどやまほどのウが とんどったそうな。

<その2>

 海がひどく荒れた日のこと、浜へでっかいクジラがあがったというので、村のものが包丁や切れもんさげて、浜に出ると、海が荒れているだけ。ふれまわった又次も、包丁持って真剣な顔をしているので、みんな苦笑いするだけ。

<その3>

 薬屋に仕えていた又次が、だんなから薬を買ってくるようにいわれるが、又次は浜でひるねして、クスリやったか、ヤスリかわからんようになった。

 ヤスリを買ってもどると、だんなは目玉ひんむいておこる。しかし、又次の言い訳。「クスリもヤスリも、考えてみりゃそうかわらんぞね。ヤスリとクスリでは八(ヤ)と九(ク)のちがい。なんのひとすりのちがいだけで、ヤスリもクスリも親類みたいもんや」

<その4>

 小倉屋のだんなが、又次をこらしめてやろうと、腰をぬかすほどの嘘はこけんやろと持ちかけます。

 又次は、いっときたってから、外から飛び込んできて、「おら、めずらしいもん見てきた。ツルガタケ山にツルのすをみてきた。」というので、旦那も見たくなり、案内するよう又次にいいます。又次と旦那が山に登ると、又次はでっかい木によじのぼって、火事がみえるといい、小倉屋にも火がまわったと叫びます。小手をかざし、ほんとうらしくいうので、旦那はびっくりして、腰がぬけてすわってしまいます。又次が旦那を背負って、小倉屋に帰っても、もちろん火事ではありませんでした。「約束した腰をぬかす嘘」はこれでした。


くろねこトミイ

2022年03月30日 | 絵本(日本)

    くろねこトミイ/神沢利子・作 林明子・絵/復刊ドットコム/2017年(1978年初版)

 

 「お人形を買ってあげる」という甘言で連れ去られたまこちゃんを、くろねこトミイが、みるみるおおきくなって救出に向かいます。

 トミイは、まこちゃんといつもいっしょ。あかちゃんといわれ、ひそをまげたトミイが ひとりで遊ぼうと はなれていきましたが、やっぱり まこちゃんとは 仲良くしたいと むかえにくるのを待っていると・・・。

 くろねこが、車をおいかけるところが見どころです。

 リアルではないので、知らない人には どんなことがあっても ついていかないでねと 話し合っていけたらいいですね。


ゆうかんな3びきと こわいこわいかいぶつ

2022年03月29日 | 絵本(外国)

     ゆうかんな3びきと こわいこわいかいぶつ/スティーブ・アントニー・作 野口絵美・訳/徳間書店/2017年

 

 壁にでっかく「きけん! フードをかぶった かいぶつに ちゅうい!」の張り紙。

 おそろしいっていう怪物は どんなやつか みてみたいという 好奇心は 誰も同じ。

 リスのニックと、ハリネズミのハリー、ハツカネズミのハックが フードをかぶった 怪物をさがすにいきました。

 「どこに いるんだ、でてこい、でてこい! ぼくらは ぜんぜん こわくない!」

 ドブネズミの大群が 逃げ出してきました。

 コウモリの大群が 逃げ出してきました。

 ネコの大群が 逃げ出してきました。

 「どこに いるんだ、でてこい、でてこい! ドブネズミたちが こわがっても コウモリたちが こわがっても ネコたちが こわがっても ぼくらは ぜんぜん こわくない!」

 あらわれたのは オレンジいろの ひとつめ でっかい けむくらじゃの手 おっきな おそろしい口の 巨大な怪物。

 三びきと 怪物の とっくみあいか 食べられてしまうかと思うと・・・。

 

 ともだちがいないという 怪物と シーソー 滑り台 ブランコで遊んで  

 おなかがすいたー! という怪物と 食べ放題の店に むかいました。

 

 こわそうですが ともだちがいないっていうのは さびしい。

 見た目で判断しないって ことかな。  

 

 三びきと 怪物が 遠くから 近くまで だんだん 距離をちぢめてくる ドキドキ感もみのがせません。


仕立て屋と妖精・・イギリス

2022年03月28日 | 昔話(ヨーロッパ)

     むかしばなし イギリスの旅/アイリーン・コールウエル・再話 アンソニー・コルバート・絵 室の会・訳/新読書社/1985年

 

 むかし、仕立て屋が、自分の方から、あっちの農場、こっちの村と出かけていって、洋服をつくったり、なおしてしていたころ。

 ある百姓のおかみさんが、妖精を信じてるというのに、仕立て屋は、「妖精をみつけたら、ビンのなかに閉じ込めてしまう、そうすれば悪さもできないってもんですよ」と、いいます。

 おかみさんから、「ばかなことをいわないでくださいよ。もしも妖精の耳にはいったら、たいへんなことになりますよ。そりゃあもう、ひどい仕返しをされてしまいますからね」と、忠告されますが、仕事を終えると、とびきりおいしいポークパイをお土産にもらい、おかみさんに別れをつげ、家路を急ぎました。

 近道をしようと思って、柵をこえ広い牧草地にはいって、袋を反対の手に持ち帰ると、ハサミが落ちてしまいます。ハサミがないと仕事になりません。ところがいくらさがしてもハサミは見つかりません。あしたの朝に探そうと、袋とポークパイを手に持つと、おやアイロン台がありません。いくらあたりが暗いといっても、見つからないほど小さなものではありません。袋とパイを下においてアイロン台をさがしますが、やっぱり見つかりません。パイが冷めないうちにおくさんと食べようとすると、こんどはパイがありません。さらに袋までも失くしてしまいます。

 仕立て屋が家の方にむかって歩き出すと、自分では家に向かっているつもりなのに、自分がどっちの方向にむかっているか、まったくわからなくなっていました。

 闇夜にあかりが一つぽつんとみえ「ここまでおいで、ここまでおいで」という声がしました。あかりの方に向って、歩き出しますが、あかりもおなじように動きます。もうちょっとで手が届きそうになると、そのたびに逃げてしまいます。仕立て屋は、溝に落ちて、ひざまでどろだらけ、いばらの中に、迷い込んで、顔は傷だらけ、服もビリビリです。

 やっと夜が明けてみると、仕立て屋は牧草地の入り口近くにいて、なくなったものは、全部草の上にありました。

 へとへとになった仕立て屋は家まで帰る元気はなく、昨日の百姓家にひかえし、おかみさんの好意で、朝ご飯を食べました。

 おかみさんから「あんた、きっと妖精にあったんでしょう。とっつかまえて、ビンの中に閉じ込めたんですか」ときかれた仕立て屋の返事は?

 

 もし、妖精がいると思うか?と聞かれたら、妖精はいるといっておいた方が無難です。


カタクリ

2022年03月27日 | 日記

カタクリとニリンソウの時期、後一週間でしょうか。


とりあえず ありがとう、とりあえず ごめんなさい

2022年03月27日 | 五味太郎

     とりあえず ありがとう/五味太郎/絵本館/2020年

「とりあえず ありがとう」といっておけば、人間関係に角は立ちません。

「ありがとう」というのはいいにくくても、そこで「とりあえず」を念頭におくと いいやすいかも。

見開きのページで、ひとつのシチュエーション。

ワニの背中で、向こう岸に渡った少年、「とりあえず ありがとう! かえりもよろしく!」

断崖絶壁の雪だるまに車が突っ込み、命拾い。雪だるまに「とりあえず ありがとうございます」

強い風で、帽子とマフラーが吹き飛ばされ 案山子がキャッチ。「ナイス キャッチ! とりあえず ありがとう!!」

雪だるまも、案山子もありがとうと言われても、なんのこっちゃと なるはずですが・・。

まだまだ 盛だくさんです。

 

     とりあえず ごめんなさい/五味太郎/絵本館/2019年

 「とりあえず」は、シリーズなんですね。こちらは2019年の発行。

 「とりあえず」もさまざまなシチュエーション。

 床屋さんで、髪を切っているのは 植木屋さん
 運動会の万国旗のあいだには、洗濯物を干しています

 お母さんの自転車には 子ども9人 ちょっとたくさんでごめんなさい

 鬼が島が高級リゾートで ごめんなさい

 むずかしい 本が好きで ごめんなさい といっているのは、あかちゃん

 「とりあえず ごめんなさい」といわれたら 怒るきもなくなります。まさに、潤滑油の言葉です。


図書館定例おはなし会(土曜日)2015.1~

2022年03月27日 | お話し会

 利用している図書館では、毎週土曜日30分ほどの定例お話し会を開催しています。グループと職員の方が担当する週がありますが、ときどきのぞいています。

2022.3.26

 春休み版で、いつもより10分延長。雨が心配されましたが、なんとか降ることがありませんでした。開架図書部分を広く利用しての感染対策でした。

 1 いちばんどりないた
 2 ねこがごはんのあとでかおをあらうわけ(語り)
 3 ブレーメンのおんがくたい(エプロンシアター)
 4 なんのあしおと(絵本)
 5 にんじん、ごぼう、だいこんさん(語り)
 6 はらぺこあおむし(絵本)
 7 うぐいすの ホー(紙芝居)

 手遊びのほか、語りのなかにも身振り手振りがはいってのおはなし会でした。

 こども 七人 大人 六人

2022.2.26

 1 おおきくなったら(紙芝居)
 2 「あ」(谷川俊太郎の詩を人形で)
 3 おおきなかぶ(絵本)
 4 まるぱんころころ(紙芝居)

 子ども四人人 大人四人

 人形の詩、楽しかったです。

2022.2.19

 1 ゆき(絵本)
 2 あらまっ!(絵本)
 3 おばあさんとマンガス(紙芝居)
 4 ふしぎなはこ(絵本)

 子ども五人 大人三人

2021.12.25

 1 かさじぞう(語り)
 2 ふしぎな部屋(絵本)
 3 こぶたきつねねこ(手遊び)
 4 ふしぎなはこ(絵本)
 5 かわうそときつね(紙芝居)

 子ども四人、大人三人

 「ふしぎなはこ」はクリスマス絵本。「かさじぞう」はこの時期に欠かせません。

 最後に箱の中からサンタさんが十人でてくる仕掛けがありました。

 やっと再開したおはなし会ですが、変異株が拡大しそうでこのさきどうなるか心配。

2021.10.30

 1 屋根がチーズでできた家(語り)
 2 どんぐり(絵本)
 3 どんぐりころちゃん(手遊び)
 4 まつぼっくり、どんぐりころころ(パネルシアター)

 親子一組でした。どんぐりがはいっている手をあてる遊び。はじめ遠慮がちの子に何回かやってもらったら、うれしそうでした。お母さんも挑戦しました。人数が少なければ、別の楽しみもあります。

2021.7.17

 1 にているね!?(絵本 五味太郎)
 2 やまのかいしゃ(絵本 スズキコージ)
 3 おばあさんとマンガス(紙芝居)

 梅雨明け。子ども五人。子どもたちは、今年の夏休みも出かけられない感染状況。

2021.5.22

 1 えんどうまめのおひめさま(語り)
 2 そらまめくんのベッド(大型絵本)
 3 貝の火(紙芝居)

 図書館は、コロナ禍で閉館していたり、利用制限をしたりと、市町村によってさまざま。

 本当に久しぶりでした。換気と、距離をだいぶ開けての開催なので、紙芝居の絵は少し見ずらい感じでした。子ども七人。

 今日はボランティアの方のみでしたが、マスクごしでも、生の声はやっぱり聴きごたえがありました。

2020.12.26

 1 十二のつきのおくりもの(語り)
 2 どんぶりどんぶり七福神(絵本)
 3 おとうさん(紙芝居)

 「おとうさん」(作・与田準一絵・田畑精一/童心社)は、スマトラ民話。本当のおとうさんが、子どもをさらった魔物と対決。

 両方からこどもの手をひきあい、さきに離したほうが、実の親というのがパターンが多いのですが、ちょっと違った展開でした。

 子ども四人、大人三人。

   

2017.2.4

 1 なら梨とり(朗読)
 2 はなたれこぞう(紙芝居)
 3 みんなおいでよ(絵本)

 朗読グループのかたでしたが、紙芝居では「しっているよ」との声もありました。

 朗読も紙芝居もメリハリあるお声でした。子ども7人、大人3人。
  

2016.11.12

 4人のおともだちとお母さん二人。

 1 おおかみと七ひきのこやぎ(語り)
 2 手遊び
 3 パネルシアター
 4 大型絵本 もりのかくれんぼう

 いろいろ動き回る子がいましたが、聞いていないようでよく聞いています。
 こやぎが一匹助かるよと、事前に小声でいっていました。

 「もりのかくれんぼう」は、かくれているのを探す楽しみがあったようです。

 たぬきのぬいぐるみを持っていったのですが、大分振り回されてしっぽがとれそう。

2016.4.23

 4月23日は何の日と聞かれて、答えられる人は少ないかもしれません。シェークスピアとセルバンテスの命日で、ユネスコが「世界・本と著作権の日」と宣言していることにちなんで、「子どもの読書活動の推進に関する法律」で「子ども読書の日」とされているようです。

 今日はたまたま土曜日定期的に開かれている図書館のおはなし会と「子ども読書の日」が重なり、それを記念したおはなし会でした。

 年少・年中さんぐらいのお友だち5人。

 1 口の大きな蛙の子(おはなし)
 2 うさぎかあさんのつなひき(おはなし)
 3 たんぽぽ(絵本・わらべうた)
 4 ちびくろさんぽ(絵本)
 5 おおきなかぶ(大型絵本)

 いつもより時間がのびましたが、おわりまでよく聞いてくれました。

 少し動き回る子もいるのですが、ちゃんと話を聞いています。

 「うさぎかあさんのつなひき」を話しました。

(シェークスピア、セルバンテスの命日は同じで、いずれも没後400年です。ドン・キホーテの作者とシェークスピアがおなじ世代だとはじめてしりました。)

2015.11.1

 子ども5人、大人2人でした。

 この時期にふさわしくドングリをつかった手遊び。そして、まつぼっくりが瓶のなかにはいっているのですが、どうして大きなまつぼっくりを瓶のなかに入れることができたか、絵本でその秘密がわかりました。

 三匹のクマのお話と「えをかくかくかく」の絵本をよみました。エリックカールさんの独特の絵を感じてもらえたと思うのですが・・・。

2015.1.31

 今日は子ども10人と大人6人の方の参加。

 当日の天候に左右されたり、どんな年齢層の方が参加するかわからない中で、プログラムの組み方はむずかしいところです。

 これまで幼児が中心だったので、藤田浩子さんのお話の小道具セットをつかい、「コートのはなし」「おばあさんとこぶた」の二つを話させてもらいました。(そのほか絵本2冊)

 それと手作りクラッカーとロケットおもちゃを用意しました。


こがねのつぼ・・石川

2022年03月26日 | 昔話(北信越)

      石川のむかし話/石川県児童文化協会編/日本標準/1977年

 

 羽咋のある村に、村の誰も知らないうちに、庄助という若者が、地蔵さんのそばに小屋をたててすんどったい。

 酒もたばこも道楽もせんいいあんさ。うわさがひろがって、うちのむすめをよめにもろうてくれんかいという話が、あっちの村、こっちの村からきたが、庄助はすべてことわってしまう。

 庄助は、毎日よく働き、人の倍も稼ぎ、おまけに無駄遣いはすこしもしない。毎晩遅く帰ってくると、その日に稼いだ銭を、縁の下の土に埋めてあった壺のなかに、チャリンチャリンとおさめていた。

 庄助の楽しみは、お金をかぞえることだけ。

 壺の半分ほど銭がたまったとき、庄助は壺のことが気が気でならん。仕事をしながらも壺のことが気になって、壺の中を、なんどもなんども確かめていた。

 ある夜、庄助は「もしだれかきて、この壺をあけたら、かならずカエルにばけてくだされ。おねがいでごぜえますぞ。ぜにさま、ぜにさま」と、頭を床にこすりつけて、なんべんもたのんだとい。

 つぎの晩、いつものように壺のなかをみると、ちいさなカエルが、一匹、二匹、三匹と、壺からはいだしてきては、小屋じゅうにとびまわったとい。

 庄助が「ぜにさま。おらじゃ、おらじゃ。おらがふたをあけたときには、カエルにならんでもいいがやわけ。はよう壺のなかに帰ってくだされ。」と、手を合わせてたのんだけれど、カエルは、壺に帰るどころか、だんだん大きくなった。

 庄助がなんどもなんども、なきなきたのみ、涙がひとつぶ壺のなかにおちたとたん、でっかいカエルが、みるみるうちに小さくなり、しまいに、もとのピカピカした銭になったというこっちゃ。

 

 「かえるになったぼたもち」に にていますが、一人しかでてきません。銭は、なければ困りますが、使い方も重要です。庄助はためることが目的で、使い道はどうでもよかったようです。

 口能登の昔話で、カエルはギャットと表現されています。


雨で散る前に‥今年の桜

2022年03月26日 | 日記

  午後からは雨という予報。陽光桜が3~4分咲きです。


どうぐはなくても

2022年03月25日 | 絵本(外国)

     どうぐはなくても/ビアンキ・原作 N・チャルーシナ・絵 田中友子・文/福音館書店/2007年

 

 「道具をつかわないで たてられた 家もあるんです」と はじまるので、どんな家かとおもったら?

 鳥の巣でした。

 カササギ、ヨタカ、ツリスガラ、ツバメ、ウタツグミ、キツツキ、ワシの巣が 枝のいっぽんいっぽん、綿毛、草の細部まで 丁寧にえがかれています。

 写真や図鑑と違った 鳥の描き方も興味深い。

 ワシの巣に、ノコギリ、ハンマー、カンナなどが描かれ 道具はこんな使い方もあるというのは、人間に対する皮肉でしょうか。

 

 鳥は自然のもので巣作りし、人間は自然を壊して家を作ります。

 人間が人間となったのは、火や道具をつかうということですが、自然を破壊するというのは、人間の おごりでしょうか。

    
 V・ビアンキ(1894-1959)はロシアの作家。第一次世界大戦、第二次世界大戦を経験されてスターリンの死後、6年後に亡くなっています。スターリンの時代も大変だったと思いますが、いまのウクライナへの侵攻で、街がめちゃめちゃに破壊されているのを見たら何を考えるでしょうか。


おはいんなさい えりまきに

2022年03月24日 | 絵本(日本)

     おはいんなさい えりまきに/角野栄子・作 牧野鈴子・絵/金の星社/1984年初版2021年改訂初版

 

 元気な りっちゃんが 雨の日お母さんに 編み物を教えてもらい ああして こうして えりまきを 編みました。
 雨がどんどん ふって せっせこ せっせこ 編んでいくと すっごく 長い 長い えりまきができました

 寒い日寒い日、りっちゃんは、えりまきを ぐるぐるまいて めだけだして・・

 長い長い えりまきに いれてあげたのは

  さむい さむいと ないていた ふたごのぼうや

  なみだが こおった なきむしさん

  手が かじかんだペンキ屋さん

  おなかが しもやけになった おすもうさん

  さむい ところは いやと べそをかいていた インド人の おじさん

 さむくと さむくて こおおてしまった 交通整理の おまわりさん

 これだけ みんなつながっても 「まださむい」

 そこで みんなが つながって 縄跳びです

 

 寒い季節にぴったり。縄跳びしているみんなは 服を ぬいで いますよ。

 よくあるシチュエーションです。よく見ると 人だけでなく いつの間にか 白ネコ、茶色のネコも襟巻に入っていました。

 いま、なわとびのとき「おじょうさん おはいんなさい さあどうぞ」の歌は うたわれているでしょうか。また「襟巻」というのは? 


ほしのおんがくかい

2022年03月23日 | 絵本(日本)

     ほしのおんがくかい/齋藤 槙/世界文化社/2022年

 

 空に星がどんどん増えていくころ、はりねずみがお茶を 飲んでいると もぐらくんがやってきました。いっしょに お茶を飲みながら星を眺めていると、とつぜん、流れ星が いきおいよくふってきました。音がしたところに行ってみると、きらきらひかる いきものがいました。

 それは、星の子ポッチで、音楽会のために、楽器の練習をしていて、うっかり 落ちてきたのでした。

 空にもどれないと 泣き出したポッチ。はりねずみくんともぐらくんは ポッチが空にもどる 手伝いをすることに きめました。

 山のてっぺんからなら 空に もどれるかもしれないと思いましたが、山の入り口には川があって わたれそうにありません。

 もぐらくんが 地面の下をほって、山に行くことを提案し、みんなで どんどん 先に進んでいきました。

 山登りをはじめようとするところで、ポッチが 音楽会で うまくできるか心配と いいだします。

 もぐらくんは「ぼくはね、めがみえないから みんなの おとを よーく きくんだ。ポッチも そうしてみたら どうかな? めを つむってごらん。きっと みんなのおとがよくきこえるよ」とアドバイスします。

 地中を掘り進み、山の頂上につくと、大きな月が いました。ポッチは お月さまに空に戻してもらい空中にうかびました。

 それから、お月さまが、空の明かりをひとつ残らず消し 音楽会のはじまりを 宣言すると 暗闇から 音楽隊が 登場し 指揮者の星が 指揮棒をふります。

 「なんて きれいな おとなんだろう。もぐらくん、ぼくにも ほしの おとが きこえるよ!」

 ポッチも 目をつむって みんなの 音を聞き、おなかいっぱいに いきをすって じゃーん!! じゃじゃじゃーん! と シンバルを ひびかせます。それを合図に星のバレリーナたちが おどりだしました。

 太陽が 顔を出すころ、星はみえなくなっていきました。

 

 夜空一ぱいの星たちの音楽会という幻想的な光景がひろがっています。よーく空を眺めて、目を閉じ、耳をすますと、音楽がきこえてくるのかも。見えるものだけがすべてではありません。


ぜったいひとつだからね

2022年03月22日 | 絵本(外国)

     ぜったいひとつだからね/ローレン・チャイルド・作 木坂涼・訳/フレーベル館/2016年

 

 足し算、引き算もでてきますが、それ自体を表現するのではなく、チャーリーと妹ローラの あれこれのやりとりが 楽しめます。

 「10分したら、かいものにいくわよー」と、ママの声がすると、チャーリーは、歯磨き3分、朝ご飯を食べていないことにきづくのに1分、ご飯を4分で食べ、また歯磨き3分、妹の片方のの靴をさがすのに8分かかって、9分も すぎたことに きづきます。

 チャーリーがローラに声をかけ、「一分まって。1秒の 半分も かからないの」といいながら、服の水玉をかぞえていて どこまで かぞえたか わからなくなった」というローラに、「12のつぎは、かいものに つれてって もらえないって ことさ」と、チャーリー。

 ママから なにかひとつ えらんでいいよ といわれ、ローラは「3つよね?えらんで いいのは」「いいえ ひとつ」とママが言うと「2つじゃなかった?」とローラ。

 「では、なんにも なしって」 いうのは どうかしら?」とママ。ローラーは「では、ひとつでは どうでしょう?」ときりかえし、ひとつで決着。

 数を数えていくローラのボケぶり。でも、ちゃっかりしているところも。

 買い物にいくローラは、道のテントウムシ、鳥、木の葉を数えたり、天真爛漫。何か見ると数えたくなるのかな?

 ローラが家に帰る途中、シールを 木や靴、服に貼ってしまい 家に着いたときゼロになり チャーリーに バッチを ねだる場面。とぼけて 3つもねだり チャーリーから「なんにもなしって いうのはどう?」と切り返され、ここでも ひとつで 決着です。 

 チャーリーと妹ローラ、それにママの 絶妙な会話のテンポが 楽しい。


犬とねことうろこ玉・・岩手、黄金のえび・・ベトナム、パーベルじいさんの光る石・・ブルガリア  ほか

2022年03月21日 | 昔話(日本・外国)

 日本、ベトナム、ブルガリア、韓国とまったく違った地域で、同じような構成の昔話です。

 ねこ、ねずみがでてきて、宝物?が行方不明になり、みつけだすと、それを川に落としてしまい、魚の中からでてくるという構成です。ただしブルガリア版では、アヒルとネコという組み合わせです。

 「犬とねことうろこ玉」では貧しいおじいさま、「黄金のえび」では金持ち。
          
犬とねことうろこ玉(子どもに語る日本の昔話1/稲田和子・筒井悦子/こぐま社/1995年初版)

 じいさまは三毛ねこと子どもにいじめられていた犬を買いとって大切に飼っていました。
 ある時、たきもの置き場をこわしていたときでてきた白いヘビを世話して、ひとり立ちするほど大きくなったので、家をでていくように話すと、白いヘビは庭の五葉の松の根方の穴にするすると入っていきます。じいさまは、その穴の中にうろこ玉を見つけます。
  
 このうろこ玉をからは、毎日黄金のつぶがわき、じいさまは金持ちになり、その金で呉服屋商売をはじめると、これも大繁盛。
 
 ある日、上方から一人の若者が番頭に使ってくれと頼むので、雇ってみるとりこう者ですっかり、じいさまに気に入られ、たちまち店のことをまかされるようになります。
 
 ところが、ある日、番頭は、たんすの鍵をあずかったのをこれさいわいと うろこ玉を盗み出し、消え失せてしまいます。するとじいさまは日に日に貧乏になってしまいます。
 じいさまが犬と三毛ねこに貧乏で飼えなくなったことを言い聞かせると、2匹は家を出て、番頭を探しに行きます。
 
 とくいの鼻で番頭の足あとをかぎながら上方で見つけたのは、おぼえのある番頭の店。
 ここで、ねずみをおどし、うろこ玉をもってじいさまの家をめざして行きますが、途中、きつねとあそんでいるうち、うろこ玉を川に落としてしまいます。

 あちこち探してもうろこ玉はみつかりません。手ぶらでじいさまのところに帰るわけにはいかないと、一軒の魚屋の魚をさらってじいさまのところにかえります。じいさまが喜んで魚に包丁を入れるとなかからでてきたのはうろこ玉でした。

 それからは一家はまた昔のように栄えます。


・イヌとネコと青い玉(新潟のむかし話/新潟県小学校図書館協議会編/日本標準/1976年)

 うろこ玉が青い玉。それも、一日に、にぎりめしを三つずつ青い玉にあげれば、のぞみしだいのものがでるというもの。(玉が食べるというのも昔話らしい)

 助けたヘビからもらった青い玉で、おじが立派な家を作り、きれいなよめさんを もらったのはよかったが、そのよめさんが宝物の青い玉を盗んで家に帰ってしまいます。

 ネズミに、倉を七日七晩かじってもらい、青い玉を取り戻します。ネコがイヌの背中におぶさって川をわたっているとき、イヌが深いところにはまり、ネコの耳に水が入ったとき、口にくわえていた青い玉が、川のなかに落ちてしまいます。

 そのとき、おじが 子どもたちからいじめられていたのを助けてやったカメが、青い玉をくわえて あがってきます。

      

黄金のえび(ベトナム)(世界の民話10 ベトナム・タイ・インドネシア/小澤俊夫・編/ぎょうせい/1999年新装版)

 黄金のえびといううろこ玉に似たものがでてきます。

 美しいねこを飼っていた金持ちの男が金細工師の親方に黄金のえびを作ってくれるよう頼み、できあがったえびを大切にしていました。

 ところが急な用事ででかけてえびをもっていくのを忘れ、帰ってみるとえびはどこを捜してもみつかりません。
 ねこに聞いてもわからず、ねこがねずみに尋ねると、どうも盗んでいったのは金細工師です。
 ねずみが黄金のえびをみつけ、帰る途中、ねこが黄金のえびを川に落としてしまいます。

 ねことねずみが、あれこれ相談しているとき川の水面を泳いでいた魚をみつけ、魚を捕まえると、魚は、あまり固すぎるので吐き出してしまった言います。

 魚をおどして、川底に落ちていた黄金のえびを持ち帰る途中、今度はカラスにとられてしまいます。ねこは死んだふりをして、黄金のえびを取り戻すのですが・・・。


パーペルじいさんの光る石(吸血鬼の花よめ ブルガリアの昔話/八百板洋子:/編・訳/福音館文庫/2005年)

 ブルガリア版を段落ごとにみてみます。
 <羊飼いのおじいさんが、トカゲを助け、お礼に光る石を手に入れます>
 <おじいさんは、光る石で立派な屋敷を手に入れます>
 <隣に住んでいるイワンが、光る石をもっていってしまいます>
 <アヒルとネコが、光る石をとりかえすためにでかけますが>
 <ネコとアヒルが光る石を取り戻しますが、川に落ちてしまいます>
 <漁師が魚を釣って、それをアヒルとネコにあたえると、魚のなかから光る石が出てきます>

 このおじいさん、欲はなく、光る石に、なにか特別なことを頼むわけでもなく、やがておじいさんが亡くなると、どこからトカゲがやってきて、石をくわえて立ち去るという余韻の残るおわりです。


男の子と指輪(西アフリカおはなし村/文・江口一久 画・アキノイサム 編集・国立民族学博物館/梨の木舎/2003年)

 「犬と猫とうろこ玉」のうろこ玉が指輪になっているちがいはありますが、構造はおなじです。”うろこ玉”は日本の昔話では比較的長い方ですが、この話はその三倍以上の長さになっています。

 子どもが生まれるとき、父親は五フラン硬貨七枚を残し亡くなります。

 男の子が15歳になったとき、硬貨をもって遊びにいき、虐待されているネコ、イヌ、ヘビ、そして小鳥を、いずれも五フランでもらいうけ、残っていた硬貨で、動物たちに食べ物を用意します。

 さて、この町の王さまにはきれいな娘があって、男たちはみんな結婚させてくれとおねがいしますが、その条件というのが、牢屋で七日間絶食して死んでいないこと。

 何人も挑戦しますがうまくいきません。もちろん男の子も挑戦し一旦は、牢屋にはいりますが、急に王さまが心変わりし牢屋から出ます。

 男の家にはヘビがいましたが、殺されかけたとき命を救ったお礼に、ヘビの父親から不思議な指輪を手に入れます。男の子がほしいものはすべて指輪がくれます。
 
 男の子はもういちど王さまのところへでかけ、牢屋の中で七日間の絶食を行います。
 指輪が食べ物と水をもってきますから、七日後に元気で牢からでてきます。

 娘との結婚が許されますが、そのためには黄金でできた何階もある家をもってくるのが次の条件でした。
 黄金の家も指輪がもってきてくれて、娘と結婚します。おそろしいほど娘が好きだった男の子は、指輪を娘にはめさせます。

 王さまの娘と結婚したいと思っていたもう一人の男がいました。この男は、この家の隣にすむおばあさんが、娘とよく話をしている間柄を知って、おばあさんに指輪を手に入れてほしいと頼み込みます。

 ほしいものはなんでもやるという男につられて、おばあさんは指輪を手に入れ、もう一人の男にわたします。もう一人の男は、指輪の力で、娘の住んでいる屋敷ごと、自分のものにしてしまいます。

 王さまは、娘が消えてしまった男の子に、三日間のうちに、娘がかえってこなかったら、首を切ってしまうといい、牢屋に入れてしまいます。

 これから、ネコ、イヌ、小鳥が川を七つこえて、もうひとりの男から、指輪を取り戻します。ネコが指輪をとりもどしたのですが、イヌがこんなに苦労した指輪を川に投げ込んでしまいます。

 漁師が魚をとっているところで、ネコは魚のはらわたを手に入れ、はらわたのなかを探ってみると、そこには指輪がはいっていました。

 この指輪は男の手にもどり、王さまの娘も屋敷ももとどおりに。最後は因果応報で、男もお婆さんも殺されてしまうと結末。

 かなり長い昔話で、1995年にアラビア語で語られたとありました。

 発端は「慈悲ふかき 信じるものに慈悲ふかき アッラーのみ名によって」とイスラム風です。


       いぬとねこ/再話:ソ・ジョンオ 絵:シン・ミンジェ 訳:おおたけ きよみ/光村教育図書/2007年

 おばあさんが漁師にとらえられていたすっぽんを助けことから、おばあさんは竜宮にいきます。
 竜宮には、乙姫ならぬ竜王がいました。
 楽しく暮らし、竜王の杖に埋め込まれている玉をもらって、家に帰ります。

 でだしはスッーと進んでいきます。

 竜王の玉は、大きな家に住みたいと思えば、立派な家が、新しい着物が着たいなあと思うときれいな着物が、おいしいものを食べたいと思うと、ごちそうが、パッとあらわれる魔法の玉。

 やがて噂を聞いたよくばりばあさんが、小間物売りに変装しておばあさんのところへやってきて、魔法の玉をにせものの玉にかえてしまいます。

 おばあさんのくらしはもとどおり。
 そこでいぬとねこが、玉をとりもどすべくでかけます。
 よくばりばあさんのところへいくには、川をわたらなければなりません。

 ねこは、王さまねずみをつかまえて脅し、玉を見つけてくれるように頼みます。

 やがてねこが玉をくわえ、いぬがねこをおぶって川を泳いでいきますが、ねこは玉をくわえているので、いぬから「玉はあるか?」と聞かれても、返事ができません。いぬが大きくからだをゆすると、ふりおとされては大変と、ねこはおもわず「玉は口にあるとも」とこたえると、その瞬間、玉は川にポチャンと落ちてしまいます。

 いぬはそそくさとかえりますが、ねこは川辺をさがしまわります。

 おなかがすいたねこが、こいをみつけガブリとかみつくと、こいのおなかから探していた玉がポロリと転げ落ちます。

 ねこがいえのなかで、いぬは家の外で暮らすようになったのは、こうしたわけがあるというオチ。

 国が違えば、表現もちがいます。ネコは「ヤオン!」、イヌは「モンモン!」、後記には、ぶたが「クルクル!」、とらは「オフーン!」とありました。

 竜宮がでてきたり、よくばりばあさんがでてくるなど、より昔話の特徴がつまった再話でしょうか。

 絵は色鉛筆とコラージュ技法で描かれたとありましたが、色鉛筆でここまで表現できるのにはビックリ。ねずみや船の窓からみえる海の様子も注目です。

 

     ねこといぬとたからの玉/藤かおる・文 梶山俊夫・絵/太平出版社/2001年

 韓国・朝鮮の昔話がもとになっていますが、日本人コンビによる絵本です。イェンナル(むかし)、イェンナレ(むかし)ではじまり、最後はクー(おしまい)でおわる

 じいがやっと釣りあげたのは、でっかいでっかい金の魚。

 金の魚から「わたしは、竜宮の王子で、いのちを たすけてくれたら 竜宮の たからの玉を あげます」といわれ、じいは にどと はりにかからないようにいい、海に はなしてやります。

 次の日、一人の立派な若者が、じいの小屋を訪ねてきて、ほしいものが手に入るという たからの玉をおいて かえっていきます。

 それから、大きな屋敷、米、味噌、小判を出して村一番の長者どんになったじい、ばあは、川の向こうにすんでいるよくばりばあに騙され、たからの玉を 失くしてしまいます。すると、たからの玉をなくしたじいの屋敷は、もとの藁ぶき小屋にもどってしまいます。

 じいと いっしょにくらしていた いぬとねこが これは いちだいじ たからの玉をとりもどそうと よくばりばあの 屋敷に のりこみます。

 ねずみの協力で、たからの玉をとりもどし、小屋にかえるとちゅう 川の中で いぬの せなかにのったねこが 口をきいたとたん くわえていた たからの玉が川のなかに 沈んでしまいます。

 二匹が川下にはしっていくと、川下の漁師が つりあげた大きな鯉の口から、たからの玉が ころっと とびだしました。その玉をもちかえり、またみんな仲良く暮らします。

 

 展開がスムーズで、シンプルにまとめられています。ねずみの おおぜいのかぞくに びっくり。最後は、いぬ、ねこ、ねずみが、じいとばあの 餅のつきあがりを待っています。


てんさらばさら てんさらばさら

2022年03月20日 | 絵本(日本)

    てんさらばさら てんさらばさら/わたりむつこ・ぶん ましませつこ・え/福音館書店/1983年初出2009年

 

 おばあちゃんと海岸で遊んでいたまゆ。おばあちゃんが「ゆきふってこい」と歌をうたうと、本当に空から 雪のようなものが。
 それを見たおばあちゃん、「これは てんさらばさらだ。これに おしろいをふりかけると、すこしずつふえてね。そのたびに いいことが おこるんだよ。でも、いいかい。だれにも みせちゃだめだよ。せっかくのいいことが にげてしまうからね」と言いました。

 まゆは、おばあちゃんのいうとおり、「てんさらばさら」を ちいさなうるしぬりの はこにいれ、おしろいこを ふりかけ、こっそりと ひみつのばしょに しまいました。

 それからは、本当に つぎつぎ いいことがおこりました。

 まゆが、18歳になってまもなく、漁師のかざたろうと 結婚し、5人の子どもも さずかります。

 「てんさらばさら」は ふえつづけ 行李に移されましたが、あふれるほどになっていました。まゆは 夜になると屋根裏部屋で おおきな袋をつくりだしました。

 毎日、屋根裏部屋にいく まゆを 子どもたちが みつけ、「おかあちゃん、やねうらべやには なにがあるの」と聞きます。かざたろうも まゆのようすが へんだぞと きがつきます。

 つぎの日、まゆが 「てんさらばさら」で いっぱいになった袋を 背負うと、そっと 家を抜け出します。子どもたちとかざたろうが いそいで あとをおいました。おいついたかざたろうが、袋にとびつくと、そのひょうしに 「てんさらばさら」が 袋からあふれ出し、あたり一面に まいあがりました。

 まゆから、話を聞いたかざたろうは「そんものがなくたって、おれたち いくらでも しあわせになれるさ。これまでだって そうだったんだ。それこそ ほんものの しあわせじゃないか」といいます。まゆも 自分の力で やってみようと、勇気がわいてきます。

 

 「てんさらばさら」を守り抜こうと思っていたまゆが、幸せは自分でつかむものと気がつくラストに考えさせられました。

 まゆの作ったの袋が、小さいころきていた着物のパッチワークだと、ほかの方の感想にあり、もういちど見直しました。 

 

 やはり きになったのは「てんさらばさら」。手に入れると幸福をもたらすという東北の民間伝承で、古事記にも出てくるという「ケサランパサラン」のことのよう。

#絵本(日本)