どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

だれのおとしもの

2019年11月30日 | 絵本(日本)

           だれのおとしもの/種村有希子/PHP研究所/2016年

 

 雪がふった朝。「おとしもの、みーっけ!」
 まほちゃんが拾ったのは、“ゆり”と名前がついた手袋です。
 大きさは、まほちゃんの手を同じくらいです。
 「どんな子かなぁ? 足跡たどったら、届けられるかな」
 まほちゃんは、落し物のそばにあった足跡をたどって、その落し物を届けることにしました。

 しばらく行くと、「マフラー、みーっけ!」
 マフラーにも名前がありました。ひとつだけではありません。てぶくろもありました。

 こんどは、セーター、王冠、風船、リンゴ、バナナも。

 林を抜け、湖のそばまでくると、だれかがいました。

 「ゆりちゃんですかー?」

 

 つぎつぎにでてくる落とし物。次は何かなと、ワクワクします。

 雪国ならではのかわいい絵本です。

 ゆりちゃん、こんなに落とし物をして気がつかなかったのかな?


ひみつのビクビク

2019年11月29日 | 絵本(外国)

            ひみつのビクビク/フランチェスカ・サンナ・作 なかがわちひろ・訳/廣済堂あかつき/2019年

 

 異国の土地へすむことになった女の子。言葉が通じません。

 昨日も今日も独りぼっち。

 ところが男の子が描いた絵をみせてくれ、かわりばんこに絵をかいたら楽しい。

 ようやくともだちができて、すこしづつ みんなのことがわかってきて、新しい環境にもなれて・・・。

 女の子のゆれうごく気持ちが ひみつのビクビクというのにあらわされているようです。

 ビクビクは、いつも女の子のそばにいて、見守ってくれる存在。異国に引っ越ししてきたら、きゅうに大きくなってガードしてくれます。

 女の子だけでなく、だれでにでもビクビクは いるというのですが。

 ビクビクは、象徴的存在でわかりにくそうです。


ちいさなワニのおうさま

2019年11月29日 | 絵本(外国)

           ちいさなワニのおうさま/イアン・リュック・アングルベール・作 ゆづきかやこ・訳/小峰書店/2008年

 

 はじめからおわりまで、一ページ4コマ漫画風でキャラクターも女の子とワニだけです。
 女の子が、絵のモデルに選んだのはムーミン風のワニ。
 でもうごかないでといっても、ちっともじっとしません。
 ワニちゃんが絵をかきはじめました。でも体中が絵の具だらけになって、お風呂へ。
 ここでもバシャバシャして、お風呂のお湯がなくなってしまいます。
 女の子が、もう面倒を見れないというと ワニちゃんは外に遊びにいきます。
 ワニちゃんはお花を摘んでいます。
 それをみた女の子が花を頂戴というと一本。それも茎がおれていました。
 ワニちゃんはお花の冠をかぶっています。
 女の子は王さま風のワニちゃんにジュースをもってきたり、音楽を用意しますが、ワニちゃんはいつのまにかどこかへ。
 寝転んで本を読んでいました。
 ワニちゃん、女の子の思いどおりにはなりません。まったくのマイペースです。でも女の子が、ワニを突き放すわけでもなく、ちょうどいい距離感が保たれています。
 このあと、どうなるかちょっと気になります。

どうぶつしんちょうそくてい

2019年11月28日 | 絵本(日本)

  どうぶつしんちょうそくてい/文・聞かせ屋。けいたろう 絵・高畑純/アリス館/2014年

 

 今日は、動物園の身長測定の日。動物たちはみんな順番を待っています。

 ウサギは耳をピンとのばして身長を高くみせようとしています。

 カンガルーはジャンプばっかりしています。 

 ワニたちは積み重なって 大きくみせようとしているし

 キリンは身長計の長さがたりません。

 コウモリは身長計をひっくりかえさないといけないし、

 コアラは身長計にのぼってねてしまうし、

 動物の身長測定もなかなか大変です

 作者が「聞かせ屋。けいたろう」とあったので、どんな方だろうと思ったら、元保育士さんであり、講演会や子どもたちの絵本の読み聞かせライブのため全国を駆けめぐっているとありました。

 実際に動物園の協力をえて測ったという数字は、ウサギが40cm、キリンは520センチ、ワニは50センチ、シロクマは210センチとありました。

 測定役はゴリラ。でてくる動物たちは愛嬌たっぷりです。


長くなった鼻・・・中国

2019年11月27日 | 昔話(アジア)

      銀のかんざし/世界むかし話 中国/エド・ヤング・絵 なたぎりすすむ・訳/ほるぷ出版/1979年

 

 鼻が長くなるといえば、空に上るというイメージですが、ここでは、二人の兄弟がでてきて、兄が大金持ちになり、弟も同じように試みるが、ひどい目に合うという昔話のパターンです。

 年とった母親と暮らす二人の兄弟。とても貧乏で食べるものにも困るほど。隣の家から十両を借り、二両の金は、兄弟がいないあいだにつかう分として母親の手元にのこしておき、八両を八千文の銅貨にかえ、兄弟は世間にでてみることに。

 銅貨の入った巾着が重いだろうと、兄が持っている巾着と風呂敷づつみの荷物をとりかえて、旅を続けます。そして弟は病気をよそおって、よくなったらすぐに追いつくよといいますが、心配した兄が、お前えを置いていけないというので熱い湯をもらってくるようたのみます。

 ところが兄が村でお湯をもらってかえってくると、弟がいません。もちろん荷物もありませんでした。弟は良心のかけらもない悪いやつで、銅貨を独り占めしていなくなったのでした。

 兄の方は性格が素直で、弟がいないのは、腹痛がなおっても、おれが戻らないから、先に行ったんだろうと独り合点して、がむしゃらに先をいそぎます。

 夜になって遊仙亭というあずまやに泊まることにした兄。うとうととねむりかけたとき、ふいに何人かで話す声が聞こえてきました。このあずまやは、毎年8月15日には、仙人がよりあつまって宴会をひらくのでした。

 仙人の一人が、たたけばごちそうがでてくるこん棒で、ごちそうをだし、酒をのんだり、楽し気な笑い声がしました。

 もう一人の仙人は、東の村にある苦泉の苦い水は、泉のそばのマツの木を掘り起こして、下にいる青ヘビを殺せば、泉の水は真水に変わることを話します。

 もう一人の仙人も、西の村の橋がつくりはじめてから12年にもなるのにできあがらないのは、橋の下に金貨のつまったかめが4つに銀貨のつまったかめが4つもあるからだと話します。

 翌日、仙人が忘れていったこん棒をみつけ、ごちそうを食べた後、兄は東の村で、泉の水を真水に変える方法を、西の村では、橋を完成させるため橋の下を掘るように言って、家にもどります。この際、兄は名前と住所を村人にのこしておきます。

 二か月たったころ、 東の村の苦泉が真水に変わり、西の村の橋が完成したのを知った皇帝が、金銀財宝を兄におくります。さらに東の村、西の村からも、たくさんの金銀財宝がおくられてきました。

 ある日、こじきが家の前をとおりかかりますが、それは弟でした。兄の話を聞いた弟は、自分もと遊仙亭にでかけますが、仙人に見つかってめちゃくちゃになぐられ、さらに鼻が二尺もの長さにされてしまいます。

 兄がもういちど遊仙亭にでかけ、こん棒をひとうちして、名前をよび、それに「はい」と返事するのを12回繰り返せば、鼻がもとどおりになることを知って、弟の名前を12回よび、弟は12回「はい」とこたえます。ところが弟がもう一度たたいてくれといったことから、弟の鼻は顔の中にへこんでしまいます。

 兄弟がでてくると、だいたい悪いのは兄で、弟が活躍するパターンが多いのですが、長子である兄が善良というのが中国の昔話らしいところです。 


ぼくの おおじいじ

2019年11月26日 | 絵本(外国)

    ぼくのおおじいじ/ステイバンヌ・さく ふしみみさを・やく/岩崎書店/2013年

 

 「もうすぐ死ぬの?」とひ孫にきかれて「そうかもしれんな」「だけど、死んだあともずっと おまえの そばにいるよ。やくそくだ」と、こたえる おおじいじ。

 おおじいじは おやつの てんさい。チョコがたっぷり かかった とびっきりのワッフルをつくってくれます。

 おおじいじは、ときどき、男の子を学校に迎えにいきますが、いつも授業が終わる前にきて、先生に「これから いしゃに いかなきゃならんもんで・・」とか なんとか いいわけ。でも、男の子に 一分でも早く あいたいだけ。

 庭で一緒に星をながめていたとき、いきなり おおじいじが「ブルルルッ!」って おならを して「おや、雷だ。雨がふるまえに、いえに はいろうか」と、とりつくろうおおじいじと、おなかをかかえて わらったことが なんども。 

 男の子は、おおじいじと いると、たまらなく たのしいから すごく としとっていることを すっかり わすれていました。

 ところが、ある日、「おおじいじが ねむっているあいだに しんじゃった」って ママとじいじに聞かされます。

 二度とおおじいじに会えないのがわかって、すごくへんな気持ち。でも、泣きませんでした。

 その晩、ぼくは、庭に出て、ひとりぼっちで 夜空を見上げます。
 お月さまをみあげていると、きゅうに「ブルルルッ!」っておならが。そして ぴっかと いなずまが はしり、かみなりが とどろきました。

 わーい、おおじいじだ! やっほー!、ぼくを見ててくれるんだ、そう思った瞬間、男の子は空にむかって手をふっていました。

 おおじいじが、いつまでも思い出に残っていて、おならで、繋がりを確認できるというのも、湿っぽくなくて、いいですね。

 絵はマンガ風で、やさしさがにじみでています。


ゆめみるどうぶつたち

2019年11月25日 | 絵本(外国)

        ゆめみるどうぶつたち/イザベル・シムレール:文・絵 石津ちひろ・訳/岩波書店/2019年

 

 陸(ライオン、ゾウ、キリン、コアラ,オオカミ、リス、ウサギウマ、イノイシ)で、

 海(クジラ、エイ、イルカ、タツノオトシゴ、タコ)で、

 空(コマドリ、コウモリ、ツバメ、フラミンゴ、ライチョウ)で、

 さまざまな場所で、気持ちよさそうに眠る生き物の姿と表情が、線画で綿密に描かれ、息をのむ美しさ。

 うっそうとした森のページの次には、木の枝にぶらさがったままのナマケモノ。月明かりの山のふもとにはハリネズミ。夜の湖面にはカエル。フラミンゴやタコのピンク色があざやかです。

 そしてクモ、アリ、カタツムリ、ホタルも。ホタルってこんな姿だった? 新しい発見もあります。

 さかだちして、さかさのまま、からだをまるめて、とびながらと、眠るすがたもさまざま。時間もほんのひとときだったりです。

 生き物たちは、どんな夢をみているでしょう。


しりとりするもの よっといで

2019年11月24日 | 紙芝居

       しりとりするものよっといで/脚本・都丸つやこ 画・にいみひでとし/童心社/1995年

 

 「しりとりするもの よっといで」と、ねこくんが、ひとさしゆびを だして いうと

 「いれて」とやってきたのは、こぶたくん。

 つぎにやってきたのは、たぬきくん。

 ねこ~こぶた~たぬき もうしりとりは、はじまっていました。

 ねずみさんはだめ。

 きつねを さそいますが、ことわられて、しりとりが おわりかと思ったら、きつねさんがはいると、ねずみさんに つながるというので、それからは 歩きながら しりとりです。

 しりとりのルールをおぼえながら、子どもたちの語彙やものの認識がわかりそうです。


やまが あるいたよ

2019年11月24日 | 絵本(日本)

    やまがあるいたよ/長新太・作/亜紀書房/2018年

 

 ある朝、タヌキのオジサンが散歩していると、きもちのわるいわらいごえが(ここで8コマ漫画にかわりオジサンがいろいろ空想)。

 おじさんは笑い声の主が山であることを知ってポンポコやまから、ころげおちてしまいます。

 オジサンがやまをくすぐると、どしんどしんと、あるきはじめます。

 ここでまた8コマ漫画で、山についていくオジサンの苦労が続きます。

 山は、「ちょっと、おなかがすいた」と、手を海の方にのばし、くじらをつかまえ、むしゃむしゃ。

 夜にはねむり、翌朝になると、元気いっぱい。どんどんあるいていくと、トンガリやまがみえてきます。

 ポンポコやまがやってきたのはトンガリやまとプロレス勝負することでした。見事に勝利したポンポコ山は、また元の場所にもどっていきます。

 タヌキのオジサンさんが、「プロレスはこれからもやるの?」ときくと、山は「やりますよ」と、いいます。それも、「たかい、たかい ビルと、プロレスをやりたい」といいます。

 タヌキのオジサンは、そんなことになったら、人間たちは大変ですねえ とひとごとのようです。

 

 「ようちえんがばけますよ」と、幼稚園がばける絵本にであったばかりですから、山に足があって、手があり、口があるというのも不思議ではありません。

 山と山が争う昔話絵本もありますから、トンガリ山とプロレスするあたりも違和感はないのですが、何を目的にしたのか?と考えるとややこしくなります(というか、考えても無理です)。

 さすがに山がクジラをむしゃむしゃ食べるのには!

 これだけ奇想天外の絵本が、子どもの想像力をどう刺激するでしょうか。

 2018年の発行ですが、「長新太 幻の絵本・復刻第2弾!」とありますから、初版はもっと前。 


ようちえんがばけますよ

2019年11月23日 | 絵本(日本)

 

    ようちえんがばけますよ/文・内田麟太郎 絵・西村繁男/くもん出版/2012年

 

 みどころがありすぎ。おまけに行きつ戻りつみていくことになるので、取り合いになるというのもわかります。

 キツネの子が「ようちえんがばけますよ」と呪文を唱えると、幼稚園の建物だけでなく、窓、靴箱、門、そして先生も子どもも動物に変身。それだけでなく昆虫、魚、おばけ、恐竜、骸骨風まで。

 構図が一環していて、園舎、園庭、園庭の遊具、園庭にある三本の木。

 これが昆虫風にばけると、門が蝶に、人間がトンボ、セミ、カマキリ、クワガタにばけます。

 これがつぎつぎにかわっていきますから、前ページとの比較をしたくなります。いったん比較し始めたらなかなか前に進みそうにありません。

 読み聞かせでは、こまかいところがわかりにくいので、手元に置いてさがすことになりますから、絵本の取り合いになるのはまちがいありません。

 突然、下書きの絵がでてきて、びっくりすると、これは、キツネくんちょっとつかれて、変身が終了しなかったみたい。大人には、制作の過程を知ることができる貴重なページです。

 ようちえんの名前は、「いかたこようちえん」。最初から気になったのですが、期待にたがわず、イカとタコのバトルもあります。

 ラストは「だれでもどうぞのようちえんです。」「みんなおいでのようちえんです。」と、動物、昆虫、魚、お化け、骸骨風の面々が大集合です。


さんねん峠

2019年11月22日 | 絵本(昔話・外国)

    さんねん峠/李錦玉・作 朴民宜・絵/岩崎書店/1981年

 

 朝鮮の昔話ですが、少し前に語りで聞きました。1981年の発行ですから、もっと聞く機会があってもおかしくありません。

 さんねん峠には、「ころんだならば三年きりしか生きられぬ」という、いいつたえがありました。

 みんなころばないようにおそるおそる歩いていましたが、あるおじいさんが、夕焼け空がくらくなったとき、石につまづいて ころんでしまいました。「わしの寿命は、あと三年だ」と寝込んでしまったおじいさん。

 ごはんも食べず、薬を飲んでも、病気はおもくなるばかり。

 そこへ水車屋のトルトリがやってきて、もういちどさんねん峠でころぶようにいいます。

 はやく、しねというのかというおじいさんに、「一度転ぶと、三年いきるんだろ。二度ころべば六年、三度ころべば九年・・・」というトルトリ。

 そこでおじいさんは、さんねん峠にいき、わざと ひっくりかえり、ころびました。

 するとどこからか歌がきこえてきます。

 ”一ぺんころべば三年で、十ぺんころべば三十年、百ぺんころべば三百年 こけて ころんで ひざついて しりもちついて でんぐりがえり 長生きするとはこりゃ めでたい”

 おじいさんは すっかりうれしくなって、ころりんところんで、すっかりげんきになりました。

 話はシンプルですが、歌にリズムがあって情景がうかんできました。

 さんねん峠からのながめは、すみれや、たんぽぽ、ふでりんどう、れんげつつじのさく頃は、ためいきがでるほどでした。

 最後、おじいさん、おばあさん、それにねこやおんどりが踊っていて、おまけにもぐらまで顔を出しているのは絵本ならではです。

 小学校3年生の教科書にのっているようですが、絵本を見るともっと興味がわくかもしれません。


かたあしの母すずめ

2019年11月20日 | 絵本(日本)

    かたあしの母すずめ/榁鳩十・作 大島妙子・絵/理論社/2018年

 

 ”わたし”の家のかやぶきのひさしに、すずめが 巣を作っていました。

 毎日眺めているうちに、下宿人の区別がつくようになりました。西のはしに住んでいるすずめは、ひとめで わかりました。それは一本足だったからです。

 ある日、いつものように、かたあしさんの巣をのぞいてみると、中には小指くらいの小さな卵が一つ。ところが次の日の夕方、黒っぽいものが穴からはいだしてきました。割合に体の細いくろずんだ蛇でした。うつくしいたまごは、影も形もありませんでした。

 やがて、かたあしすずめが かえってきますが、穴の入り口から身をひるがえして、屋根も上にまい上がり、首をかしげて たっていました。

 三日目の朝、かたあしすずめは、空き家の煙突に巣をつくりました。日に十度も二十度も煙突にではいりしています。

 ところが、空き家に新しい人がうつってきて、そこから煙が。けむりに巻かれて煙突からとびだしたかたあしすずめは、そのまま高く高く飛びあがり、夕べの空に消えて行ってしまいます。

 それだけではおわりません。二、三日、みえなかったかたあしすずめが、戸袋とひさしの隙間からかわいらしい頭をのぞかせていました。また新しく巣を作りつくりはじめていたのです。今度は三つのたまご。

 やがてひながかえり、ひなたちはジュクジュクジュクと、さわぎたてながら、お母さんにえさを ねだっています。

 ある朝、けたたましいすずめの声で、外に出てみると、あの黒い蛇が また かま首を もたげていたのでした。

 こんどは、蛇の匂いをかいだだけでふるえあがるような かたあしすずめではありませんでした。火の玉となって、蛇の頭めがけて、全身を ぶっつけます。かたあしすずめは戦い続けます。

 このシーンは圧巻です。

 かなしみが なんどもおとずれようと、最後に蛇に立ち向かう母親の強さをえがいていて、思わずジーンとします。

 書かれたのが昭和16年。この前から中国大陸では戦争がつづいていましたが、このあと日本はもっと大規模な戦争になだれこんでいきます。


ヒルダさんと3びきのこざる

2019年11月19日 | 絵本(外国)

            ヒルダさんと3びきのこざる/クエンテイン・ブレイク・文 エマ・チェスター・クラーク・絵 むらおか みえ・訳/徳間書店/2017年 

 

 ヒルダさんがかっているのは、こざる。それも3びきです。こざるたちの健康のために、食事にも気を使い、大事にかわいがっていました。
 ある日、ヒルダさんがでかけると、こざるたちはきょろきょろ あるきまわり、玄関にある傘をでたらめに ひらいてとじて、靴ひもは かたっぱしから ぬきとって、ヒルダさんの 一番上等な 帽子の羽を ぜんぶむしりとってしまいます。

 次の日、ヒルダさんが新しい帽子をかうために、でかけると、3びきのこざるは、なにかおもしろいことはないかなと、応接間のくずかごを ひっくりかえし、ヒルダさんのあみかけのマフラーを ぐちゃぐちゃにし、新聞もひきつぎってしまいます。

 台所、お風呂場もめちゃくちゃ。「わたしの しずかなくらしを かえしてちょうだい。こんな にくたらしい こざるなんて もう いらないわ!」と叫んだビルダさんでしたが、ほんとうに追い出すことはありませんでした。

 ヒルダさんが、お母さんのお見舞いに行くとき 「こんどこそ おとなしく おるすばんしているのよ ぜったいぜったいよ。いいわね?わすれたら ただじゃおさまりませんからね」と最後通牒をのこしていきます。

 その夜帰ってみると、玄関も応接間も台所も どこもかしこも きれいで ぴかぴか。こざるたちがみあたりません。

 さんざん、いたずらばかりするこざるたちでしたが、いざ いなくなると、ヒルダさんは、目の前が真っ暗になり、涙が止まりません。

 ハンカチがびしょびしょになったので、タオルを出そうと、戸棚をあけると、そこには3びきのこざる。

 「こんなに 心配させて…。全く世話の焼けるいたずらっこね。でもすきよ」と、こざるをだきしめるとヒルダさんでしたが。でも、これだけではおわりではありませんでしたよ。

 さんざん散らかっていても、ヒルダさんは一向にどうじません。ペットをかうためには、少々のことで驚いてはいられません。

 またでかけるビルダさんを、窓で みおくる3びきのこざる、今度は、どんな騒動がまっているのでしょう。


ちいさなヒッポ

2019年11月18日 | 絵本(外国)

    ちいさなホッポ/マーシャ・ブラウン:作・絵 うちだりさこ・訳/偕成社/1984年初版

 

 絵本の中でも版画の絵を見ると とても落ち着きます。

 それほど色はつかわれていませんが、そのことで逆にゆったりと受けめることができます。そして輪郭線がくっきり。

 子カバのヒッポはいつも おかあさんと一緒。おかあさんといれば、こわいものなし。

 昼は砂地にかさなりあって、ひなた水に うかんだりして、とろとろと ねむってすごします。すすずしい ひぐれになると 草地で 夜が明けるまで 草をたべつづけます。

 言葉を覚える時期になって、おかあさんは大切な言葉をヒッポに教えます。「グァオ」。「こんにちは」は「おんにちは」、「たすけて」は「たっけて」とうまくいきません。。ヒッポは なんども練習します。

 ある日、みんなが眠っているとき、ヒッポはひとりで、うえのあかるいほうに いってみました。水めんに かかっている 木のはと あそびたくなたのです。そこへ、波一つたてずに、金みどりの目がすべりよってきます。ヒッポが 岸によじ登ろうとしたとき、おおきなワニがヒッポのしっぽに かみつき水の底へ引っ張りはじめます。

 「グッ グッ グァオ! たすけて!」さけぶヒッポのさけびごえを ききつけて お母さんカバはワニにおおきなくちにくわえ、ふりまわし、ほうりなげてしまいます。

 カバのお母さんが大きな口をあけているのは迫力満点。

 危機になったとき「グッ グッ グァオ! たすけて!」とちゃんと いえたヒッポでした。

 人間でも、動物でも母さんが子どもを思う気持ちは一緒です。でも子どもを助けたあとに、おこごとを言うのは、自然界の厳しさをおしえているようです。

 カバって、ひぐれから夜が明けるまで草を食べるというのを、はじめて知りました。


おかしのまち

2019年11月17日 | 絵本(日本)

    おかしのまち/作・絵 青山邦彦/フレーベル館/2015年

 

 お菓子屋さんに住みついているてつだいこびとのブラウニーが、お店の材料を全部使ってお菓子の家やお城をつくりはじめました。美味しそうな家とお城ができあがりました。

 いざ、食べようとすると、突然ドアが開いて、ブラウニーたちは あわてて 逃げ出しました。

 なぜブブラウニーは、お菓子のまちをつくることになったのでしょうか?

 それは、腕自慢の店のご主人がでていくように、ブラウニー用のきれいな服をならべてあったのです。

 誇り高いブラウニーたちは、かわそうに思われるのが大嫌い。ご主人をこまらせてやろうとお菓子の家をつくることにしたのでした。

 前にも絵本を見て、お菓子の家を作ろうとしたのですが、主人が戸棚という戸棚にかぎをかけ、毎晩寝ないで 見張りをしてブラウニーにお菓子作りをさせないようにしていました。

 ブラウニーたちは、こっそりお菓子を作るところはみていましたから、おてのものでした。

 主人が寝ずの番で熱を出し、材料が全部なくなったので、お店を休もうとしますが、娘のメグは、お店に並べようと言い出します。

 お菓子は大評判。お店はそれまでにない にぎわいになりました。

 ご主人はお菓子の道具や材料を窓際においてから寝るようになりました、腕比べをしたくなったようです。

 ブラウニーはもどってこないと、おくさんはいいますが、せっかくつくったお菓子の家を食べなかったんだもの、きっともどってくるわとメグはいって、窓をじっとみつめます。

 その窓からのぞいていたのは?

 12ページにわたって、お菓子の家をつくる様子がつづいていて、まあ美味しそうなこと。

 絵も俯瞰したり、みあげたり。

 ブラウニーには、二つの意味があって、ひとつはチョコレートケーキ、もうひとつはスコットランドや北部イングランドで伝承されている伝説上の妖精のことで、民家に住み着いてその家を栄えさせるなど、日本の座敷童子にちかい存在といいます。

 絵本では、ブラウニーに対する礼として衣類を与えてしまうと、働かなくなり家を去ってしまうという伝説がいかされているようです。

 ブラウニーの帽子は糸巻きがあったり、頭の布も個性的な巻き方に描かれています。