馬追虫(うまおい)の髭(ひげ)のそよろに来る秋はまなこを閉じて想い見るべし
長塚節(1879~1915)
ウマオイムシは、バッタ目ウマオイ科の昆虫。秋になると「スイッチョ」と鳴く。触角が長い。体長の二倍、6センチもあるらしい。作者は茨城の地主農家を継いだ人だから馬追をよく耳にしていたのかもしれない。虫の暮らしにも馴染みが深いのかも知れない。
馬追虫の長く細い髭がそよろそよろと秋風に揺れている。それを草原まで行って見たわけではないだろう。思いやって見たのだろう。そのように「そよろそよろに」秋の気配が我が家の中にまで忍び寄ってきている。それが目を閉じているとよくよく偲ばれる。彼はこの頃すでに我が身の行く末を案じていたのかもしれない。そよろそよろに近づいてくる死を思い見ていたのかもしれない。病弱の彼は35歳で夭折した。
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