入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’18年「秋」 (62)

2018年10月31日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

          Photo by Ume氏
 霜の降りた朝の牧場。上空から眺めると、普段と全く印象の異なる景色が広がる。
 ほぼ中央に3棟の屋根が見える。ここが牧場の管理棟であり、また時代遅れを売る山小屋「農協ハウス」でもある。手前の森は後に述べる「アラスカの森」で、その上は第4牧区になる。ポツンと見えてる島のような一叢の林を中心に、柵が見えるが、これが囲い罠である。元来は、入牧、検査、下牧の際に、いったんここに牛を集め、それから次の段取りに進む場所であった。それを12年前、つまりここで働くようになった年の冬から、大型の囲い罠として強化し、兼用するようになった。しかし、捕獲に成功するようになったのは、翌々年からである。
 遠くにも山腹が縞状となったなだらかな山が見えるが、この山を中心とした一帯がこの牧場最大の第3牧区で、ここに撮影でよく使われる「貴婦人の丘」もある。中央左手の日の当たっている林は第2牧区の一部で、近年最も重要な牧区となっている第1牧区は、さらにこの上になる。


          Photo by Ume
「アラスカの森」の秋を、上空より空撮。色付いた森の中を細い川が流れているのが分かるだろうか。小黒川の源である。 
 この森に初めて足を踏み入れた時、森相のあまりの美しさに驚いた。サルオガセが垂れるモミや落葉松などの針葉樹の深い森は、神秘的な雰囲気に溢れていた。何本かの立ち枯れた木がまとまって残る一角があり、そこを迂回するようにして澄んだ水の流れる川があった。すぐ、野外スタジオを連想し、あるクラシックを歌う歌手の名が浮かんだ。どこかで目にしたことのある風景だと思っているうちに、それがアラスカの森と繋がった。以来、勝手に「アラスカの森」とあだ名を付け、呼んでいる。
 森は国有林だが、共用林野の扱いで入笠牧場が国から借地している牧区(第5牧区)である。

 今冬の小屋の営業を希望される方は、今から連絡いただけるとさいわいです。営業内容についてはカテゴリー別「冬季営業のお知らせ(29年度)」を参考にしてください。

 枯れ葉の積もった山道を歩きに来ませんか。小屋もキャンプ場も充分に余裕があります。FAXでも予約や問い合わせに対応できます。ご利用ください。入笠牧場の営業案内は「入笠牧場の山小屋&キャンプ場(1)」
「同(2)」をご覧ください。



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     ’18年「秋」 (61)

2018年10月30日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

                    Photo by Ume氏

 青空も見えてはいるもののここには日は射さず、周囲の雰囲気はすでに晩秋と言うに相応しい。11月までにはまだきょうと明日を残しているが、そろそろタイトルを変える時季が近付いてきたと感じている。
 
 罠の中にいる鹿の様子を愛用の双眼鏡カールツアイスで見ようとしたら、背後の落葉松が視界に飛び込んできた。灰色の樹幹、横に伸びる何本もの枝、灰色よりも黒色が目立ち、その周りを淡いあわい黄色に着色された葉が、霞のように全体を覆っている。肉眼では気付かなかったもっと柔らかさのある明るい黄色で、そのはっとする美しさにしばらく目を奪われた。
 落葉松の林の下方に広がる、緑の色をまだ大分残した草地に、鹿が3頭登場した。主役の座はそこで鹿が奪ったが、それでも巨匠が丹念に幾日もかけて描いた背景の美しさ、重要さはいささかも変わらない。鹿がいなくても充分にこの風景は成り立つが、鹿だけでは趣もなければ味わいもない。
 2頭は立派な角を生やした雄で、1頭は雌。あの"湖畔の向こうの白い馬"よりも、今双眼鏡の中にある現実の方が遥かに虚構を超えている。望遠レンズと三脚があればと思ったが、これはこうして見ているから味わえる感動で、たとえどんな敏腕なカメラマンが動画にしてみても、それでは伝わりそうにない何かが、この現実の中にはある。
 鹿たちは、しばらくここで暮らそうと決めたのか、罠の中の緊張が少し薄れたように思える。先程までは草を食む姿が見えていたが、今は確認できない。午睡を貪ってでもいるのだろうか、双眼鏡で高台の草原に焦点を合わせたら、2本の角が草の間から覗いていた。

 AKKENさま、通信は届いて、読んでます。多謝。また、面白い話があったら、伝えてください。「あん」さまも、通信ありがとうございました。

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     ’18年「秋」 (60)

2018年10月29日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

Photo by Ume氏
 午前6時、気温0度。夜が明けようとしている。囲い罠の中に1頭の雄鹿らしきが見える。他にもいるのかまだ分からない。ゲートは完全に落ちている。あっ、もう1頭、これも立派な角を持った雄鹿、それに雌鹿が1頭付いている。少なくも3頭は間違いない。罠の中に陽が当たるようになれば、脱出を試みようとして鹿たちの行動はより活発になるだろうが、現時点では捕獲した鹿の数はよく分からない。
 どうやら、雄鹿が3頭に雌鹿2頭、計5頭の捕獲で、そのうちの1頭の雄は前足を痛めている。それにしてもこの罠で、これまでに何回となく鹿の捕獲に成功してきたが、今回のような組み合わせは初めてのことだ。繁殖力の旺盛な雄を3頭ということは、将来的にはその何倍かの鹿を捕獲したことに相当するだろう。
 足の悪い雄鹿がしばらく、事態を飲み込めないままゲートの前にいたが、諦めて高台の方へ戻っていった。侵入時には開いていたゲートが、なぜ閉じられてしまったかを知ることはない。それでもそこから出ようとするのは、本能だろう。足の悪い雄の鹿に1頭の雌鹿、そして遅れてもう1頭の雄鹿が後を追う。どういう関係かと空想が膨らむ。
 捕らわれの身となったことに少しづつ気付き始めたのかも知れない。1頭の雌の鹿は活発に動き始めたが、他の鹿のような慎重な動作とは違い奔放で、一緒にはならない。罠に入る前の群れの構成が一体どんなふうだったのか気になる。捕獲を免れた鹿がいたかも知れない。
 遠くの森から、鹿の鳴く声がしている。雲の間から射す朝の日がまぶしい。

 久しぶりにUme氏から、佳作5点を送ってもらった。昨日の早朝、マイナス2度の中で撮った渾身の作。順次掲載させてもらいます。お楽しみに!Umeさんには深甚なる感謝の気持をお伝えします。

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     ’18年「秋」 (59)

2018年10月28日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 きょうはまた、昨日の呟きに反論するかのようなアッケラカとした快晴。奥穂は山頂だけが薄く雪が付いているように見えたが、ここから見たらそれほど離れていない槍辺りは、かなり積雪しているようだった。
 テイ沢や高座岩へ行く人たちだろう、伊那側にも幾組もの登山者の姿を目にした。そんな中、戸台方面から上ってきた20台ほどのバイク、その騒音が去ってようやくまた静けさが戻った。大勢で走ることに何か意味があるのだろうが、あれでは登山者や普通の車はしばらく騒音に耐えて、彼らの通過するのを避(よ)けているしかないだろう。

 第3牧区の電牧が、電圧計に全く反応しない。倒木ぐらいなら、電圧は落ちても多少の通電を感知する。こういう場合は、電気を通すリボンワイヤーと有刺鉄線がどこかで接触しているからで、その犯人はまず、鹿である。もうすぐ降雪のため、電牧は冬対策をしなければならないが、ここで鹿の侵入を許すわけにはいかない。牧柵の長さは2キロあるのか3キロあるのか、順次点検して不良個所を見付けるしかない。
 今春は見事としか言いようのないような白い花を咲かせたコナシだが、この性悪の木と、鹿さえいなければ、どれほど牧場管理は楽か分からい。電牧の不良個所もだが、その隙に牧区内に立ち入ろうとする鹿によって、通常の牧柵まで切断されている所が随所にある。牛はいなくても、牧柵の修理は続けるしかない。

 ここに使わせてもらっている撮影者名の入った写真は、どれもその本人にとっては大切な作品である。その努力、苦労を知っている者からすれば、例え撮影者の承諾を得た上の利用ではあっても、一言撮影者に「ありがとう」ぐらいは伝えてほしかった。

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     ’18年「秋」 (58)

2018年10月27日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 昨日の帰り際、あんなことを呟いて外に出てみたら、西の空は今にも泣きだしそうな冬の雨雲が広がっていた。そして、昨夜は雨。
 
 こんな天気の日に、牛もいないのに上がってくる必要があるのかと聞かれることがある。きょうが土曜日でなかったら、来なかったかも知れない。予約は入っていないが、稀に飛び込みで来る人がいる。営業的に考えれば、そういう人たちにも対応することがどうかは別にして、ここも山小屋を謳う以上は、営業期間の週末は小屋やキャンプ場を開けておくことが使命だと考えている。
 そのことに関して付け加えれば、予約がないからといって受け入れを拒否したりするわけではない。ただ、予約者を優先するということであり、それはできるだけ余裕をもって過ごしてもらいたいからだ。確かに、前触れなしの家族に検査場の草地にテントを張ってもらったこともある。あるが、そんなことは盆の休みに一度か二度あったに過ぎない。因みに明日は、小屋に予約が入っている。



「ド日陰の曲がり」は毎年のように、仕事始めのころ残雪で最も通行に苦労する場所だが、昨夜帰る途中、道路に散りばめられた落葉がヘッドライトに照らしだされた瞬間、自然のその見事な演出に感服した。
 多くの人は、紅葉狩りには好天を選ぼうとする。しかしそういう人たちに、きょうのような森の渋みとか深み、晩秋の物寂しさを識ることはできまい。夏よりも秋、それも色付いた森が華やかさの中にも次第に翳りとか、衰えを見せ始めた今のころが特にいい。それが、日本人の美意識に通ずると、ある人が書いていた。そうかも知れない。巨匠の筆がここまで延びてきた。

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