入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’20年「秋」(11)

2020年08月31日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など
 きょうで8月が終わる。来たと思ったら、もう、足早に去っていく呆気ない今年の夏だった。まだキャンプ場には3人ほど残っているが、きょうで全員が帰る。この広い牧場には牛たちと管理人1名だけになり、当分はまた牛守に専念することになる。気温18度、今朝は霧が深い。いい秋の朝だ。


                 Photo by Ume氏

 キャンプ場から撤収を始めた人たちの声がする。何もせずに横になって、彼らが忙しく立ち回る様子を見るともなく見て、聞くともなく聞いている。牧場の管理、キャンプ場や小屋の管理と、彼らが団欒しているときには働いてばかりいたから、今は少し呆けて、ただ無為の時を過ごしている。
 先ほどまで見えていた青空が消えて、ここから見える空はすっかり灰色の雲に覆われてしまった。入笠泊まりが4日続く。ここの生活にさしたる不便はないが、空き家になっている里の家のことがやはり気になる。
 以前あの家が長いこと空き家だったころ、雪が降っても誰も雪掻きをする人がいないから、雪の上に郵便配達の人の足跡らしきがいつまでも残っていると知らせてくれた人がいた。訪れる人もいない陋屋が、病身を持て余しながら一人寂しく暮らし、逝った老父の面影と重なった。父はすでにいなかったが、遅ればせながらそのことが東京を去るという重い決断の後押しをしたと思っている。
 雑草の生い茂る今は冬のような侘しさはなくても、それでもHALがいつも帰りを待っていたようにあの家が、そろそろ帰って来てきてくれと言っているような気がする。青空の消えた空を眺めていたら、そんなことを思い出し、考えた。

 3人の撤収作業がほぼ終わったようだ。二人は愛知方面へ、一人は大門峠を越えて長野方面へ行くという。この人たちは30年来の自動車愛好者たちで、毎年8月の最終の土日曜日を集まる日と決めている。昨年は40人を超えた大世帯も、今年は10人前後と大幅に減った。もちろんそれでも結構で、また家族、夫婦、またはそれに準じた人たち以外とはテントを共用しない、という条件は彼らにも守って貰った。

 かんとさん、K山君、通信ありがとう。久しぶりだ。かんとさんの「行きたくて、行きたくて」の気持、
伝わってきます。望遠鏡や関連部品の手入れをしながら、星の狩人になれる日を楽しみにしていてください。K山君お気付きの通り、山奥氏とはまた復活しました。今年の越年には呼びますか?きょう、13万円もするチェーンソーを買ったという連絡がありました。それについて何か言うと、また立腹されてはいけないので黙っていましたが、樵にでもなるのでしょうかね。クク。
 本日はこの辺で。









 
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     ’20年「秋」(10)

2020年08月29日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

Photo by Nzaki氏

 睡眠の時間が大幅に狂いだした。昨夜からまた牧場の小屋に泊まるようになり、午前1時におかしな夢から覚め、それからもうすぐ4時になる。昨夜寝たのは8時前で、前夜は里に帰り充分に寝たと思ったのに、それが何故か無性に眠くなり、面倒だとばかりに寝てしまった。後もう少し眠るつもりでいるが、こんなふうに夜中に目が覚め起きていることも、しかしあまり気にはならない。
 こんな真夜中、管理人部屋の1年中片付けたことのない炬燵(電機は入っていない)の中に足を突っ込み、上伊那郷土研究会発行の「伊那路」を面白く読んでいた。この40ページほどの小冊子は毎月発行で、内容は濃く、また郷土のことであっても、知らずにいたことがたくさん書かれている。伊那谷には、郷土史の研究に熱心な人たちがいることは聞いていたが、手許の何冊かに目を通しただけでもそれが伝わってきた。良書とともにいい時間が過ぎていく。同誌の定期購読者になることにした。

 朝が来た。あれから少し眠った。それでも6時半と、寝不足気味で頭の中がスッキリとしない。朝飯を済ませ、洗濯機を回している。そしてそれが終われば、牛さんたちの機嫌を伺いに行くつもりでいるが、草は日毎に乏しくなるばかり、牧区を移すことを考えている。もう一度第4牧区へ戻すつもりだが、今度は放牧地Aばかりでなく入笠山登山道からも見えるBも開放するつもりで、そうでないと、とても1ヶ月は無理だ。その前に第4牧区の全域を見回り、牧柵の点検と修理をしなければならない。
 それと、足を痛めている36番が、追い上げや追い落としに使っているあの急坂を降ろせるのかが最大の懸案となる。最近は他の牛とも打ち解けたようだが、警戒心は相変わらず強く、入牧時のように捕縛して作業道を引っ張てくるなんてことは難しいかも知れない。そうならば、36番を含めて幾頭かは第1に残すということも考えられる。
 朝一番で頭数確認を済ませた。気になっている36番は沢の流れる森の中で、群れから離れ35番といた。他の牛たちに気付かれないように塩を持っていってやると、きょうは2頭が積極的に舐めた。
 トイレの掃除、露天風呂の掃除、キャンパーの対応などで午前が呆気なく終わる。

 昨日呟いた山奥氏、好人物であることは間違いないが、実際の人物を多少加工してあり、必ずしもあの呟きから受ける印象とは違うと本人は言うかも知れない。その点をご承知おきください。
 Nzaki君の天体写真に添えるに相応しい呟きができずも、ここでの星空の見事なことは充分に伝わっていると確信している。かんとさんやT井さんの自粛は当分続きそうですか?
 本日はこの辺で。明日は沈黙します。
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     ’20年「秋」(9)

2020年08月28日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

Photo by Ume氏

 ここは本当にもう秋だ。用事があって高遠まで行ってきた。標高差で7,800㍍はあるから、気温差は5度くらいはあるだろう。やはり、少し暑さの違いを感じた。現在午後3時、ここの気温は丁度20度で、霧が出て青空が隠れてしまったから、その分余計に涼しさを感じ、それでつい、冒頭のような言葉が口をついて出た。
 昨夜は5張りのテントが4か所のテント場にあったが、今は3張りになっている。明日増えてもせいぜい2,3張りだろう。日曜には映画の撮影の下見があり、詳しいことが決まる。それが済めば来週は週末まで大した予定はない。折角の秋を、少しは落ち着いて静かに過ごせると思っている。

 芝平の集落へ下っていく途中で、たくさんの丸太を軽トラに積んで上がってきた山奥氏と出会った。氏は早くも冬に備えての薪作りに励んでいるようで、口癖の「忙しい」を連発した。相変わらずチェーンソーの調子について不満を洩らし、新品の買い替えも思案していたらしく、知っている店があるかと聞いてきた。彼のはここで使っている物よりか余程新しいから、扱い方が悪いのじゃないかと言ったら、フグのように膨れ出した。それで、1軒知っている店の略図を書いて、早々に話を切り上げた。昔ほど酒を飲まなくなったのか体調はまずまずのようで、機嫌も良い方だった。
 山の中の一人暮らし、傍から伺う限り、何かやることよりもそれを探すことの方が大変に思えるが、見付かれば熱中する人だから今はいいのだろう。最も熱心な竿づくりと漁労の仕事は只今自粛中かも知れない。
 考えてみるまでもなく、お互いに残り時間はあまりない。しかも氏は2歳年上だ。二人とも山にこもり、日々の明け暮れの中で乏しい時間を増々失っていく。その失い方はめいめいだが、ボケ方にはあまり違いはないのか、地図上に「伊那北駅」と書こうとした氏は、「駅」の字を失念していた。強度計算などお手の物のあの優秀な頭脳の持ち主でもそうだ。笑う。
 本日はこの辺で。
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     ’20年「秋」(8)

2020年08月27日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 Nzaki君の天体写真の取り込みに手間取っていたら、旧暦の七夕(確か今年は24日)が3日も過ぎてしまった。この日に合わせて紹介させてもらうつもりだったが、不手際をお詫びしたい。

 昨夜は里の家で寝た。そのせいだとも思えないが、今朝目が覚めたら7時半を回っていた。夜中に一度起きたが9時間以上も寝たことになる。朝の早い牧場では考えられないことだ。昨日、帰りが遅くなりできなかった用事を今朝一番で済ませ、上がってきた。
 程なく、予約のキャンパー2名が来た。中年の夫婦でテントは山用、大型テントにタープが一般的な昨今には珍しい。高座岩からテイ沢へ行くと言って、出掛けていった。きょうは平日なのに他にも予約が3組入っている。新型コロナの影響もあり、宿泊まり、小屋泊まりよりかもキャンプに人気があると聞いているが、ここににもそうした影響があるのだろうか。普段から予約制で、利用者の人数は調整している。これはcovid-19とは関係ない。
 政府の「GO TO トラベル」、まるで厳冬期、雪崩の危険の高い山へ登れと勧めているように思えなくもないが、この譬えが適切ではないことを祈る。確かに宿や山小屋は大変だと思うが、もう少し先行きが見えてから大々的にやった方がいいのではないか、中途半端な感じが拭えない。高級ホテルや高級旅館の救済策で終わるなら、どうする?
 ここの山小屋をどう捉えているのか、キャンペーンの宿泊所になるための登録用紙が送られてきた。1泊1名4000円(昨年度実績のある人は旧料金据え置き)のここは全くの対象外のはずだ。こんな調子で全国に送られたのだろうと思うと、その費用も馬鹿にはならない。マスクの時と似たような感想を持った。巷間伝えられている政権の様々な問題、疑惑も含めて、何だかやっていることが悉く素人ぽくないか。
 つい、この独り言にはあまり適さないことを呟いてしまった。

 O澤さん、通信多謝。とにかく、世に出すことです。そのために令和の忠敬として、苦労を重ねてきたのだから。そのうち、来なはれ。
 本日はこの辺で。
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     ’20年「秋」(7)

2020年08月26日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

Photo by Ume氏

 上に泊まって5日目、いつもと変わらない牧の朝、早くから鳥の声がしていた。気温14度、夕立はあっても、きょうも一日好天だろう。
 昨日はいろいろなことが重なり、早朝から慌ただしかった。一応予定していたことは終わり、また牧場にいつもの平穏が帰ってきた。きょうは小屋の風呂の修理に上がってくる人をを待ち、それへの対応や、いつもやっている一連の仕事を終えたら、早目に里へ下る。牧場関連のことだが、里にも用事ができた。
 それにしても小屋の風呂がまた使えるようになれば、ますます里へ帰ることが少なくなるかも知れない。それでも、どちらかに生活の比重をかけないと、無駄ばかりが増える。特に上と下の冷蔵庫の中身はそうだった。
 まだ決めかねているが、恐らくは段々と山に生活の中心を移すようになるだろう。ここで暮らしていても、格別に不便、不自由はないし、また里に下っても、そこでの暮らし向きがここと比べ大きく変わるわけではない。

 早朝の森の中は適度な湿り気を帯びた大気が清々しい。そこへ朝日が光の帯となって射し込み、明と暗を巧みに区切る。濡れたクマササの中を歩いていたら、沢を下る水の音も遠くの方から聞こえてきた。見慣れた風景だが、いつも異なった印象を味あわせてくれる好きな場所だ。
 朝飯前に気になることを片付けてしまうことにして、第1牧区へ上がった。小屋の裏の第2牧区は普段なら100頭以上もの鹿の群れがいるが、今朝は2,3頭しかいなかった。一昨日別な用件できたK氏が抜かりなくライフルも持参していて、2頭ほど片付けたその影響だろう。
 電牧の一部を張り直し、それから頭数確認を始めた。足を痛めている36番の様子は最大の懸念で、その姿を雷電様の南の放牧地で他の牛の群れの中に見付け、一安堵した。まだ、他の牛に気を遣っているのか、群れの端に35番と遠慮がちに横臥していた。
 その後未確認の10頭ほどの牛を探すのに手間取り、それで車を捨て、森の中を歩いて探すことにしたのだった。ところが森ばかりか御所平にも、舞台にも、どん底にも牛の姿はなかった。草が少なくなると、脱柵の可能性が高くなる。そろそろそういう状況になりつつあって注意が必要だ。
 最後に念押しの為、もう一度最初に行った雷電様の放牧地へ行き、一番奥の小高い丘に向かって歩いていったところ、ホルスの角と頭らしきが目に留まった。有難いことにそこに、未確認の牛全頭がいた。

 風呂のガス工事も始まった。きょうはこの辺で。

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