入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’23年「冬」(37)

2023年02月16日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など
    Photo by Ume氏(再録)

 古い話になるが20年も前のことで、信州へ帰ってきた最初の秋だったと思う。戸台から林道を見事な紅葉と、白い飛沫を上げる小黒川の急流を眺めながら上がってきて、牧場の南ゲートに行き当たった。牛はすでに里へ下りていなかったが、そこから目にした遠くまで続く緑の草原を目にしながら、ある登山家の言った言葉を思い出していた。
「もし山で死ななかったら、晩年はふる里の谷に帰り、羊を飼って暮らすのだ」。正確ではないかも知れないが、およそこういう意味だった。しかし、この人はそれがかなわず山で死んだ。

 あることのために、この人の名前を思い出す必要があった。しかし、山の本は大概処分してしまったから彼の著書を探しても見付かりそうもなく、ほぼ諦めかけていた。ところが昨夜、床に入り頭を枕に乗せた途端に突然その名前が脈略もなく、それこそ頭の中に飛び込んできた。ルイ・ラッショナル。
 最近でも、元活動家の名前を全く同じようにして思い出したばかりで、これは少し記憶力が回復しつつある兆候かなどと気楽なことを考え、そして寝た。翌朝になっても、忘れずに覚えていた。

 またきょうも「座る」ことについて少しだけ触れると、これまではそのことを「心へのビタミン補給」だと呟いてきたが、どうもそれよりか昨日思い付いた「心のラジオ体操」の方が自分にはぴったりするようだ。で、当分はその呼び方でいきたいが、とにかくそのお蔭で、多少なりとも劣化した記憶力に影響があったのかと考えたりした。
 ところが、それが見事に否定された。バレンタインデイなどというものは、この年齢にならずも縁なき西洋の行事で、貰ったことが無いとは言わないが、それはそれでいい。ただこの日が別な理由で忘れてはいけない日でありながら、14日を24日とを勘違いして、その間違いを昨日になって指摘されるまで、気付かないでいた。この日を忘れず、そのために毎年やって来たことを、初めて間違えた。

 まあ、この「心のラジオ体操」は、何かを期待して始めたわけではないと言った。そう呟いておきながら、はしなくもヨボヨボ老人の色気でも出たようところを見せてしまい、良くない景色だ。
 記憶違いでも、混乱でもこれからはもっと増えるだろうが、あくまでも淡々として「そうか、そうか」と受け入れて、気落ちしたり、自分を叱ったりするのは、難しいができるだけ控えるようにしたい。

 前から言っている、山では大したことは何ひとつできなかった。それでも、ルイ・ラッショナルの言ったあの言葉が牧守の仕事を始めるに当たり、背中を押したのだと思っている。

 本日はこの辺で。
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