映画の話でコーヒーブレイク

映画の話を中心に、TVドラマや旅行の話などを綴ります

イン・ハー・シューズ

2007-12-06 | 映画 あ行


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「イン・ハー・シューズ」 In Her Shoes  2005
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キャメロン・ディアス主演というだけで、セクシーな軽~いラブコメというイメージがあるのは何故だろう?
「メリーに首ったけ」や「チャーリーズ・エンジェル」のイメージが強いのかしら?

              

「イン・ハー・シューズ」はそんなキャメロン・ディアスと、オーストラリア出身で「シックスセンス」「アバウト・ア・ボーイ」「リトル・ミス・サンシャイン」などで存在感をアピールしているトニ・コレット主演で、姉妹の葛藤と仲直りを描くシリアスドラマです。

                        

弁護士としてキャリアを積んでいるが外見が良くないとコンプレックスをもつ姉と、スタイル抜群、セクシーで美人だが難読症でお馬鹿さん、仕事も無く家族のお荷物である妹(勿論こっちがディアスです)を軸に、フロリダで一人余生を送る祖母、再婚した父、継母、姉の恋人がからんで、話が展開する。
ここで元気でしっかり者の祖母を演じているのは、あのキュートでセクシーだったシャーリー・マクレーンです。登場したときは、手のしみに少なからず驚いたが、そんなことすぐに気にならなくなる。新たな恋にときめくチャーミングなおばあちゃんです。

前半は雪の降る寒いフィラデルフィア、後半は光溢れる暖かいフロリダの「活動的高齢者の為の退職後のコミュニティー retirement community for active seniors」が舞台です。

フィラデルフィアが舞台といって思い出すのはもちろん「ロッキー」。
ロッキーが駆け上がってバンザイのポーズをとる、あのフィラデルフィア美術館前庭の階段を、この映画でもぼろぼろに傷ついた姉がわんこ連れて駆け上がりロッキー同様どん底からの立ち直りをアピールする。

            

「ロッキー」のあのシーンは復活の象徴ですものね。
その後、買うだけで履かなかった高価なハイヒールを、取り出して履きデートに行くのです。

タイトルは put oneself in ~'s shoes「人の立場になって考える」という意味の英語のイディオムから来ています。
フィラデルフィアからフロリダに舞台が移ると共に、対照的な姉妹の立場も逆転し、思いもよらなかった相手の立場に変わっていく。

姉は弁護士をやめ犬の散歩のアルバイターに、妹は困ったチャンのプータローから施設のボランティアで介護をした盲目の元大学教授の手助けで難読症を少しずつ克服、祖母の助けを得て自分の得意な分野で自立する道を見つける。(どんなビジネスかは見てのお楽しみ)

最初よく判らなかったこのタイトルが、ストーリーにピッタリであることに気付いた。
この元大学教授とのやり取りが良いんだなぁ。自分に自信が持てなかった彼女の頑なな心を開き、前向きに導いていく。

各人が母の、妻の、そして娘の死について真実を明らかにせず、それぞれの思いを抱いているなかで、「ハニーバン」という犬が死の真相を知る鍵となる。
すべてを知りながら幼い妹をかばい重荷を背負い込む姉、
何も知らない無邪気な妹、
自分が死に追いやったと負い目を感じる夫(姉妹の父)、
娘を助けようとしたが理解されず孫娘たちからも遠ざけられた母(姉妹の祖母)、
二人がフロリダに行き祖母と暮らす中で真実が明らかになっていく。

そんな彼らを温かく、時にはおせっかいを焼くコミュニティーの老人たち。全員本当にこのコミュニティーに住む方々がエキストラとして出演したとか。
なかなかどうして、うまい!

妹とのことが原因で別れた元恋人、同じ法律事務所で働く弁護士仲間の新たな恋人との関係も丁寧に描かれている。徐々に彼のよさに気付き引かれていく過程(私もサイモンに惹かれました)、妹のことを話したら彼を失うのではと心配し悩み心を開かない彼女、そんな彼女にいつ悩みを打ち明け心を開いてくれるのかと悩む彼。
母の、妻の、娘の死の秘密が明らかになり、皆が長年抱えてきたものから解放され、お互いを赦せるようになる。
見終わった後、胸が篤くなるお奨め映画です。


落ち込んだ時、日本の女性は食に走るか、買い物に走るか、と相場はだいたい決まっている。一方、西洋の映画やテレビドラマの中には靴のコレクションに走る女性がよく登場する。
この映画でも「こんな素敵な靴は、押入れに仕舞いこんじゃだめ。」と言う妹に、「落ち込んだとき、慰めに靴を買うの。私に服は映えないし、食に走ると太るでしょ。靴ならサイズは変わらないでしょ」と言っている。

決まって出てくるブランドは香港のデザイナー「ジミー・チュー」だ。
「プラダを着た悪魔」にも、「アグリー・ベティー」「セックス・アンド・ザ・シティー」にも「ジミー・チュー」の名前が出る。そんなに素敵な靴なのかしら。
マルコス大統領夫人イメルダじゃないが、クローゼットの扉を開けると靴コレクションがギッシリだったりする。
最近では日本でも、ワイドショーなんかで「箱にポラロイドで取った写真をつけて管理しています」などと、靴コレクションを誇っておられる、いわゆる「セレブ」といわれる方々もお見受けするが、大多数はそんなことしなくても記憶できるくらいの数でしょう。

前々から「どうして靴なんだろう?」疑問に思っていたが、この映画をきっかけにカナダ人のある方に聞いてみました。

彼女曰く、
欧米の食事は前菜に始まりデザートで締める。
デザートが無かったり、美味しくないといくらメインデッシュが素晴らしくても失敗ということになるらしい。
ファッションにおける靴がコース料理のデザートにあたるらしい。
いくらヘアスタイルやメイクが完璧で、ドレス・アクセサリーがきまっていても靴がダメならぶち壊しということになるようだ。つまり、頭の先から足元までトータルでコーディネートしているのに、公民館なんかで自前の靴を脱がされ、緑や茶のビニールのスリッパに履き替えさせられるのは我慢がならないということらしいのです。
それほど「靴」に対する思い入れが強いということなのでしょう。

日本人庶民は、食後にデザートは必須とは思わないし、靴がコーディネートの鍵を握るという意識は低いような気がするのですが、そんな風に考えるのは私だけでしょうか。
もともと一日中靴を履き、ベッドでも机に足を上げても靴のままで平気な文化と、玄関で靴を脱ぐ日本の文化では、靴の持つ意味が違うのでしょうね。

この映画の中で面白い表現を見つけました。
We are in like Flynn.です。大文字FのFlynnって?不倫じゃないですよ。
何と「海賊ブラッド」主演、往年の美男子エロール・フリンなのです。大富豪ハワード・ヒューズの半生を描いた「アビエイター」でジュード・ロウが演じていました。この方、私生活ではかなり問題があったようです。

                   

で、意味はと言うと、in like Flynnで「運がいい」「受け入れられて」「進んでいる」ということです。「エロール・フリンが未成年少女と関係した容疑で起訴されたにもかかわらず、無罪となり人気も落ちなかったというところから来ている」と辞書にも出ているんだなぁ。
1943年の流行語大賞てなところなんだろうけど、こんな不名誉なことで名前が残るってまったくもってお気の毒です。ブラッド船長ファンとしてもまことに遺憾でございます。

   **** お ま け ****

 「ジミー・チュー」のお店は表参道ヒルズにあるそうです。
  華奢なピンヒールのオシャレ~な靴、でも最低7~8万はするそうですよ。
  デザートがこのお値段って、メインディッシュは一体…?
  



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4 コメント

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Unknown (クレオパトラ)
2007-12-08 14:52:15
 お姉ちゃんが犬を連れて駆け上がる階段のシーンがロッキーの復活シーンとダブってるなんていう見方がびっくり! ロッキーも観たし、この映画も観たけど、ぜんぜん気がつかなかった。深いねぇ。映画を観るにも映画の教養があるとより楽しめるってことね。
そこんとこ、これからも期待してます。よろしく。
 それにしても家族って難しい。無意識のところで影響し合って、縛りあってるのかも。家族に愛されるために無理するのをやめて、自分をあるがまま受け入れることって難しいのだね。自分らしく生きるために勇気がいるってねぇ、全く。最近、家族の殺人や事件が多いけど、家族が幸せに生きるためには、この映画のおばあちゃんが住んでいたコミュニティーの交流みたいな社会が必要なのよ。きっと。
クレオパトラさんへ (nryoko1220)
2007-12-09 23:16:09
コメント、いつもありがとうございます。
近過ぎて、遠慮がなく、逃げ場がなくなるということでしょうか。難しい~ですね。
自分勝手なマギー、人生の大切さを学んだマギー どっちもマギー(^^) (zebra)
2012-03-25 10:17:15
インハーシューズ・・・年末年始の休みにレンタルVDでみました。


キャメロン演じた マギー 最初 いらつきっぱなしでした。

 姉さんの家に居候させてもらっていて 姉さんの恋人を留守をいいことに 寝取る(怒り)(`Щ´)
  マギー・・・ てめえ~ ふざけんな(爆発!)

 姉さん「今なんて言った?(悲)・・・あんた 妹よね・・・(悲) 言えることは そんなこと・・・(悲)(怒り)・・・・・メス○・・わたしの家から出てってぇ~(激怒)(TдT)」

 姉さんに対して 大暴言!!! あまりに 身勝手!!! 姉さんの 女友達も
「その涙は 誰のせいで泣いてるの? 下半身に節操のない彼氏のため?それとも 男なら誰でもいい妹のため?? どっちもどっちよ ふたりとも 何の価値もなかったのよ・・・」←う~ん あまりに 的確すぎる・・・


 けれど、祖母の 老人ホームでの入居している老人たちとのふれあいで改心していくマギーは 見直しました(゜〇゜)

  目の見えない教授に詩を朗読するマギーは 自分の人生を真剣に見つめなおし 姉さんと和解。教授は亡くなっけどマギーに 人生の大切さを 教えたことに 感動しましたよ(^ー^)

 "靴"と"朗読"を通して 姉さんと姉さんのフィアンセとの結婚を盛り上げ、一世一代のイベントの立役者になったマギー・・・りっぱでした(涙)


Unknown (zebraさんへ(ryoko))
2012-03-26 00:01:36

コメントありがとうございます。
前半のマギーは本当に困ったちゃんでしたが、フロリダでホームで気骨のある老人たちとのふれあいで、自信をつけ本来の優しいマギーに変貌していく過程が良かったですね。盲目の教授にA+の評価をもらうシーンでは涙がこぼれます。
お母さんの死に対する父と祖母の苦悩、姉が幼いマギーに事実を知らせないようにしていたいじらしい行為、姉が母の病気を受け継いでいるのではと心配する父、一連の事実が明らかになっていくシーンでも
とても良いストーリーでした
人は誰かに認められることで自信をつけ、羽ばたくことができるんやなぁ~と今さらながら痛感しました。

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