映画の話でコーヒーブレイク

映画の話を中心に、TVドラマや旅行の話などを綴ります

沈まぬ太陽

2009-11-02 | 映画 さ行
先週金曜日、ムービル横浜のレディースデイに駆けつけました。
映画館に着いた時はほぼ満席、予告編が今まさに始まろうとしていました。
しか~し、年齢層高いなぁ~。
以前ここで「剣岳 点の記」を見た時も年齢層高かったっけ。
週末興行ランキングでは2位、観客は30代以上の男性が多いそうです。
(因みに、1位は「僕の初恋をキミに捧ぐ」・・・。)
やはり、リアルタイムで同じ時代を走った方々や、
私のような、一世代二世代下で日航機事故は知っているが、子供の頃高度成長期だった人たちが
多いようです。
全く知らない世代には、ちょっと敷居が高いかも?ですね。


                       

        沈 ま ぬ 太 陽

                          

 < ストーリー >
国民航空の労働組合委員長・恩地(渡辺謙)は職場環境の改善に奔走した結果、懲罰人事で
カラチ・テヘラン・ナイロビ行きを命じられる。10年におよぶ孤独な海外生活に耐え、本社に戻るが
ジャンボ機墜落事故が起き、御遺族お世話係として現地に赴き献身的に対応する。
そして、会社の建て直しを図るため首相に請われ就任した国見新会長(石坂浩二)のもと、
会社の腐敗に立ち向かうが道半ばで会長が辞任。恩地は……。


原作を読んでいないので、ちょっとネットで調べてみたら・・・
あらまぁ、原作発表当時から、この作品はかなりの物議をかもしたようですね。
山崎豊子氏は「ノンフィクションともフィクションともどちらに取ってもらっても構わない」と
仰っているようですが、ここまで実在の人物、実際に起こった事故や出来事と酷似すると
観ている観客も、「これって中曽根首相?」とか「金丸信?」「瀬島龍三だ!」などと実在の人物と
マッチングさせながら見てしまい、全てのことが事実であると思ってしまう危険性がありますね。
そうなると「小説なんだから」とか「フィクションです」といっても、
単純化された「善悪」「信念を貫く社員腐敗した日本航空」見たいな図式になり、
傷つく方々が出てくるのは否めません。
以前柳美里さんの小説「石に泳ぐ魚」でも、モデルになった方が名誉毀損で訴えを起こし裁判になりましたが
小説って、どこまで個人のプライバシーに踏み込んで書いちゃっていいものなのでしょう?
難しいですね。


主人公は、労働組合の委員長を勤めたことから会社に疎まれ懲罰人事で、10年間僻地に追いやられる。
それでも会社を辞めず、家族を犠牲にしても懸命に働く高度成長期のサラリーマン。
会社ってこういう陰湿なことするんでしょうか?
香川照之氏演じる組合員に至っては、何の仕事も与えられず大手町支店の入り口に晒し者って・・・
見せしめとして有能な人材を飼い殺しにするのは、企業としても損失だと思うけれど。
学校で子供まで苛められるって・・・いくらなんでも、これは無いやろ?

アフリカでのハンティングで巨大な象を仕留めるシーン、
この象が会社を象徴し、戦う恩地を表しているのかもしれないけれど、象に取っちゃぁいい迷惑。
家には立派な象牙が飾ってあり、家族と離れ離れで長年の孤独な海外暮らしで精神的に追い詰められているというのが、いま一つ伝わってきませんでした。

一方、政・官・業の癒着振りは、埋蔵金だの居酒屋タクシーだの、なんたらしゃぶしゃぶだのの報道を聞くにつけリアリティーがあります。
「お国のため」「会社のため」なんて言いながらやってることは何やねん?!
会社のお金をちょろまかして、政治家に賄賂を送り、女を抱かせ、たかり屋ジャーナリストを使って
あること無いこと書き立てさせる。ただのポン引き?公的資金詐取?
それを当然のように受け取り便宜を図るって・・・
これがエリートといわれる御偉い方々のすることなのか?と悲しくなります。
「英雄」でなくとも色を好み金に弱いのは世の常ですが、権力って怖いなぁ。

28日の日経夕刊に、渡辺謙氏のこの映画に賭ける意気込みが載ってました。
「会社って何だろう。仕事とは何だろう」と改めて問い直す今、
伝えなければならない何か、失いかけている何かとは「矜持」だと、
山崎豊子氏がその小説の中で描いてこられた「必死で生きている人々の温度やエネルギー」だと言っておられます。
最近自分でもやっと思えるようになった「きちんと仕事をしたら、必ず自分に戻ってくる」ということを
若い人に伝えたいそうです。
   

実は、私、日航機事故の2日後の日本航空羽田発大阪伊丹行の予約を入れておりました。
あの事故の直後、飛行機に乗る気になれず、予約をキャンセルし新幹線で実家に帰ったのでした。
映画の中でもでてくるように、あの123便は整備前福岡発羽田着で飛んでおり、
当時の運輸大臣や多くの新聞記者が乗っていたそうな。
人の運命を分けるものは一体何なんだろう?と思わずにはいられません。


今、日本航空の経営危機が連日ニュースを賑わすこの時期、この映画を公開するって
何か意図があるんでしょうか?
日本航空にとっては益々イメージダウンになるだろうし、「脱官僚」を掲げる民主党が与党になった今、
こういう過去は官僚にもマイナスでしょう。

今年の夏、民主党が選挙で大勝する前にTBSで唐突に放映された「官僚たちの夏」。
高度成長期に「お国のために」と頑張った通産官僚にスポットを当てたこの番組の放映にも
何らかの意図・誰かの思惑があったのでしょうか?
そこにこそ、興味を引かれます。  


初日の舞台挨拶で涙で声を詰まらせたという渡辺謙氏。
篤い思いはわかるんだけれど・・・力が入りすぎてちょっと引いてしまいます。
終始一貫「矜持」を胸に、逆境に耐え抜き思いやりのある恩地を篤く演じる
渡辺謙氏による、謙氏の為の、謙氏の映画って感じでした。


ラストの夕日のシーン、大地を駆ける動物の群れを見て、アフリカに行きたい!と思いました。


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  ***** 見た 映画 *****

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 10月30日 「沈まぬ太陽」@ムービル横浜

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