脳は、なぜあなたをだますのか③

もう一つ『脳は、なぜあなたをだますのか: 知覚心理学入門』 (ちくま新書・2016/8/4妹尾 武治著)の続きです。次は「高級車と安い車、どちらが道を譲のか？」というテーマです。

　お金持ちと貧乏人、優しいのはどちらなのだろうか、モラルが高いのはどちらなのか？この問いに、おもしろいアイディアで取り組んだ論文を紹介しよう。（「ＰＮＡＳ」2012年カリフォルニア大学バークレー校のポールービフら）
信号のない横断歩道で車が向かってくるタイミングでサクラの歩行者を渡らせようとした。…車がサクラに横断を譲ったか、それとち、譲らずにそのまま直進したかの割合のデータをとった。サクラに道を譲った割合から、モラルの高さを数値化できると、ピフらは考えたのである。
　この実験の肝になるのだが、ピフらは車種と手入れの状態から車を五段階にランク付けした。例えば、ＢＭＷやベンツ、ジャガーなどの高級車は上位ランクの車になり、手入れされていないぼろぼろの軽四のような車は下位にランクづけられた。…実際に車のランクをＩから５に分け（Ｉが安く５が高い）、それぞれが道を譲らなかった割合をグラフにした。
…車のランクが高いほど、歩行者に道を譲らなかったのである。ランクが最も低い車が、歩行者に道を譲らなかった確率は○パーセントで皆無であり。最もランクが高い車では45パーセントも譲らなかったのである。
　…これはかなり驚きの結果であった。お金持ちの方がいやなやつになるのである。悲しいけれども、これが実験から導きだされた結論なのである。ピフらはこの結果の原因は、お金持ちは様々な場で「優先的」に扱われることと関係があると考えている。エコノミークラスよりも、ビジネスクラス、ファーストクラスの方が「人事に」「優先的に」扱われるのが良い例である。そのため、お金持らは普段から「優先的」であることを意識するため、道を譲るべき場面でもそうしなかったのではないか、と推察しているのである。（以上）

この実験結果は、桑原桑原です