アンティマキのいいかげん田舎暮らし

アンティマキは、愛知県北東部の山里にある、草木染めと焼き菓子の工房です。スローライフの忙しい日々を綴ります。

草木染めの会を開きました。

2020-11-25 09:21:47 | 草木染め

  草木染めをぜひ一度やってみたいけれど、平日しかあけられないという方のご要望で、昨日染めの会を開きました。

  染め材料は、アベマキのカクトと高キビの殻。

   アベマキのカクトは、秋らしい色に染まるスグレモノの素材です。稲武ではまず見つからないので、いただきもの。街の公園や神社で友人たちが拾ってくれたものです。

   栗の皮同様のベージュ、グレー、茶色に染まるのですが、栗よりさらに濃い色になります。

  こちらは参加者のお一人が持参した白と黒のボーダー柄のTシャツ。アベマキのカクトの染め液に入れてから鉄媒染したものです。グレーになりました。

   このグレーに染まったシャツを消石灰の上澄み液に入れると、この通りの茶色に変身。このとき上がる皆さんの歓声を聞くのが、楽しみ。この日もちゃんと聞けました。さらに浸し続けて焦げ茶色にしました。

   高キビの殻は入手先がなくなったので貴重なのですが、この独特の鮮やかな色に魅せられると、確実に染めのファンが増えるので、つい使いたくなります。

  色とりどりの布に染め上がりました。この日は旭の竹々木々工房の庄司美穂さんがお手伝いに来てくれました。背の高い彼女が張ってくれたロープが、いつもと違う場所だったこともあって、染め上がった布の美しさがより際立つように思えました。写真撮影も彼女です。

  さて、どんぐり工房での定例の染め講習会は、今週末の11月28日(土)に行います。染める材料は、アベマキのカクトと竹の葉の予定です。なお、年内の定例講習会はこの日が最後。来年3月末までしばらくお休みとなります。

 

 

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今年の醤油を絞りました。

2020-11-22 17:27:14 | 稲武醤友クラブ

  5年めか6年目になる自家製醤油づくり。今年は初めて11月のうちに絞り作業をしました。

   仕込んだのは3月。8か月醸造した醤油です。長野県阿南町のさわんど主宰・井上時満さんにお越しいただいて作業開始。まず、醸造したもろみを適度の濃さにお湯で薄めます。撹拌したものを、袋に入れ、絞り機に積んでいきます。

  出てきたのがこちら。今年の醤油です。

   濃度を測りながら作業続行。このとき、出てきた生醤油をなめるのがこの日の一番の楽しみ。今年は、Covid-19感染拡大が心配だったので、醤油醸造にかかわっている2グループのメンバーだけの会としました。そのため、いつものように、小さな子供たちが醤油がおいしいといってなめ続ける姿をみることはできなかったのが、ちょっと寂しかった。

   最初絞ったのは私たちとは別のグループのもろみ。同じ麹を同じ時期に仕込んでいるのに、毎年私たちとは違う味の醤油に仕上がります。こちらのほうがいつもなんとなくやわらかい味がします。今年もそう。

   塩と水が違うほか、大きく違うのは置き場所。管理の仕方によってももちろん違います。

   去年の私たちの醤油と、麹を分けてくれている麹屋さんの3年醤油、去年同じ麹で別の土地で仕込んだ友人たちの醤油、それに今年の私たちの醤油と、別グループの醤油を舐め比べました。

   今年も私たちの醤油は味が強い。私たちのもろみを見たとき、絞り師の井上さんは、かなり熟成が進んでいる、と思ったそう。カビが出るのを心配して、数年前から早めに冷暗所から外にある蔵に移動し、高温の状態を長く続けているからのようです。

   一方もう一つのグループは、周年半日陰の場所に置いています。味がやわらかく感じるのはそのせいかもしれません。

   別の土地で仕込んだ去年の友人の醤油は、まるでだし醤油のようにおいしい。置いた場所は、初めの数か月風通しのいい軒下、その後夏になってから外に出したそうです。はじめ置いた場所の風通しのよさと、夏になってから急激に高温の環境に変えたことが、私たちの醤油との大きな違いのようです。自分たちの育てた醤油には愛着はありますが、よその醤油と舐め比べると、さらなるおいしい醤油を目指して工夫したくなります。

  お昼ご飯は、地元のうどん屋さんで買ってきた白玉うどんと汁だけ。生醤油と薬味をかけてシンプルにいただきました。汁は鍋に持ち寄り野菜をいれて醤油仕立てにしました。いつものもちよりおかずは中止。なんだかさびしかったけれど、簡素なご飯だからこそなのか、今回はことのほか、醤油のうまさや野菜のうまさをきちんと味わえたような気がしました。

    最後は加熱。88度まであげるのですが、急激な上昇は禁物だそうで、徐々に温度を上げていきます。

   さて、これで数家族の1年分の醤油ができました。しばらくはまず生醤油をあじわい、友人たちにおすそわけ。春になったら、また来年の醤油を仕込みます。

   いつもは冬の寒い時の仕事となる絞り作業ですが、今年は秋の、それも暖かい日の続いているうちに実施できました。気の焦りが少なかったせいか、この日は、しみじみ晩秋の一日を楽しむことができました。

 

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六所山を歩きました。

2020-11-22 11:14:19 | 小さな旅

   ほぼ半年ぶりに山歩きをしました。豊田市松平地区の六所山です。

  標高は600mちょっと。私の家のある場所とほぼ同じです。このところ、暖かすぎるほどの気温なので、薄着にして臨みました。でもふもとの青少年センターの駐車場を降りた途端、空気の冷たさにおどろきました。

   登山口に至るまでの車道の崖には、灌木がいっぱい。香りのいい葉や枝をいくつも見つけました。木や草に詳しい友人の説明を聞きながら歩きます。

   かわいい花はキッコウハグマ。目を凝らさないと見過ごしそうな雑草です。

   六所山は中世以前に山頂近くに神社ができ、その後、このあたり一帯を治めることになる松平氏の初代親氏が東北から新たに神を勧請し、もうひとつの神社を建立。新旧ふたつの神社がいまにのこる山なのだそうです。六所神社 (豊田市) - Wikipedia

   江戸時代までは山全体が神と目され、山は手つかずの原生林となっていたそう。

   ところが、明治以降、所有権の不明の場所ができ、山は荒らされ、今に残る原生林は全山の一部になってしまったのだということです。

   私たちが入った登山口は、その原生林の残っている地域にあるもの。だから、初めてみるような植物があれこれ見られました。

    まるで姫リンゴ。オオウラジロノキという木の実だそうです。豊作だったらしくわんさと落ちていました。渋いそうだから、動物が食べないのかしら。

    通称は百万両という名の真っ赤な大きな実。一両もそこかしこに見られました。

 

   冬イチゴです。稲武では見たことがありません。葉っぱもかわいいので、植えたいのですが、育つのかしら。

   入ってしばらくすると小さな滝が。戦中には戦勝祈願の滝行も行われたそうです。

   こういう葉を見つけるとわくわくします。

   この山は比較的暖地にあるのに、自生したブナの木もあるそう。

   頂上までのコースはいくつかあって、私たちがのぼったのはいのししコース。

   ふたつの神社までの道のりは、わたしにはけっこうきつく、友人の説明を聞くことも写真を撮ることもままならないほど息が上がり、膝が思うように伸びず、滑らないよう注意して歩くのに精一杯でした。

  帰りはキツネコースをたどりました。展望台と書かれた看板立っている場所では何も見えず。ちょっといくと開けた場所があり、恵那山が遠望できました。

   この場所は、樹齢4~500年もありそうな赤樫が何本も切り倒されていました。展望台を作ろうという計画なのでしょうか。

   放置された立派な木々。ここまで成長するのにものすごい時間がかかっているのに、薪にすら利用されることなくこの場所で朽ちる。ああ、もったいない。

   キジョランという蔓草だそうです。アサギマダラの幼虫が好む植物だとか。

   下山も急坂が多くて、意外につらかった。同行した友人の子供(年長組)は遅れがちなわたしと、先を歩いているほかのメンバーとの間を何度も走って行き来していました。すごい脚力! 

  休憩も含めてほぼ3時間あるき、ふもとの駐車場に到着。センター近くのベンチでお昼ごはんにしました。暖かい日差しがうれしかった。途中で拾ったコハウチワカエデ。美しい着物の柄みたい。自然の妙に感心します。

   ふもとの集落にある六所神社。道向かいに明治5年に建てられたという農村舞台があります。茅葺の立派な建物で、立て札には、「建材として使った栗などの木々は、みな村人が六所山から運んだ」と書かれています。運び出す際に材木が石にあたってつっかえて先に進めないときは、石を削って通した、とありました。苦労して建てた建物のようです。

   舞台背後の木々の紅葉がきれい。

   そろそろ秋は終わり。来週は急に冷え込むようです。冬になるとますます運動不足になりそう。次の山歩きまでに、階段上りを日課にして、せめてみんなについて歩けるようにしたいとおもいます。

 

 

    

 

    

 

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岡崎ヘルシーメイトとラカンカに納品しました。

2020-11-19 20:35:09 | アンティマキの焼き菓子とパン

  本日、岡崎のヘルシーメイトと近くの自然食弁当屋さんラカンカに、納品に行ってきました。先週末は焼き菓子が中心。今日は主にパラダイス酵母パンを持っていきました。

  納品したパンは2種。ひとつは全くこねずに仕込んだニンジンパン。もうひとつは有機クルミ入りのライ麦パンです。どちらも砂糖は入れずに、リンゴジュースの酵母のほのかな甘みが効いています。

  なお、ラカンカでのパンの販売は予約制。こちらでは、有塩の普通のパンのほかに、無塩のパンの注文も受け付けています。きょうは、ニンジン入りの無塩パンを納品しました。塩分を控えたほうがいい方のもとに、届くことになっています。

  2軒でのパンの販売は、不定期。ほぼひとつきに1回か2回、お持ちしています。納品日などお知りになりたい方は、アンティマキまでお問い合わせください。

   こちらは、ヘルシーメイトで見つけたアンティマキの商品です。しばらく前にお持ちした草木染めの指なしソックス。残り3足になりました。そろそろ次の準備が必要のようです。

   山里の小さな工房で作ったいろいろな品が、街の皆様の手に渡る。ずいぶん前からやっていることなのに、なぜかきょうは、ひときわうれしく思ったことでした。晩秋だから?

   ところで、アンティマキの乳製品、卵不使用のシュトレンは、今年も製造します。12月半ばころ、暮らしの学校のショップとヘルシーメイトで販売の予定です。ご予約も承ります。できれば、22日の守綱寺の朝市でお渡ししたいと思っています。種々、お問い合わせください。

 

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11月15日、しもやまるしぇに出店します。

2020-11-12 10:05:53 | イベント出店情報とそのほかのお知らせ

  15年ほど前、稲武町は豊田市と合併しました。そのおり同時に合併した町村の中に、下山地区があります。足助と岡崎市額田地区の間にある下山は、稲武・旭・小原の山間地域からちょっと離れていることもあって、知らないことの多い地区です。

   その下山の若いお母さんたちが、このほど自分たちの手でマルシェを企画しました。名前はしもやまるしぇhttps://www.facebook.com/shimoyamarche55/。ほんとは先月中ごろ開催の予定でしたが、台風で中止。マルシェは雨の中規模を縮小して開催する運びになっていましたが、急遽延期と決まり、ようやくしあさっての15日、無事開催の見込みとなりました。彼女たちの奮闘ぶりをFBでしばしば目にしていたので、まずまずのお天気に恵まれそうな予報がほんとうにうれしい。

    アンティマキは、穀物クッキー3種、ブルーチーズクッキー、アニスシード入りオートミールビスケット、乳製品・卵不使用のガレットブルトンヌ、黒ビールケーキ、バナナマフィン(かケーキ)、ニンニククラッカー、タマネギクラッカーなどを販売の予定です。好評のパラダイス酵母で仕込んだパンもお持ちします。

    下山で本格的な藍染め工房を開いているAtorie Sedona の作品を見るのが楽しみ。有機の紅茶やお茶の農家も出店します。私のパンの先生・べーぐる庵の店主の倉橋知栄さんも額田から参加。アトリエチェルシーのワークショップもあります。マルシェは、出るのも楽しいけれど、見て回るのも好きです。 

    場所は、三河湖畔にある香恋の館とすぐそばのふれあい広場。駐車場は周辺の数か所にあります。時間は10時から3時まで。

    

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「あいちの山里Entre Store 2020」開催中。アンティマキの商品も販売。

2020-11-12 09:59:17 | イベント出店情報とそのほかのお知らせ

  10月の終わりから12月の27日まで、名古屋市千種区星が丘にある星が丘テラスにて、奥三河のさまざまな手作り品を一堂に会した、「あいちの山里Entre Store 2020」が開かれています。

   Entre Storeは3年前に始まり、アンティマキは昨年から出店しました。昨年までは数日間だけのイベントでしたが、今年は星が丘テラスの1階の1階一つの店舗をまるまる借りての開催。規模が大きく、しかも期間が長い。名古屋での出店はここしばらく果たしていないので、とても楽しみのイベントです。

   コンセプトは次の通り。

「豊かな自然、森で育まれる清らかな水、そこで暮らす人たちが自然の恩恵を受けながらつくり、育てているものに触れ、三河山間地域の魅力を感じていただきたい…

この想いがアントレストアのはじまりです。
今回で3回目を迎えるアントレストアは、ポップアップストアとして星が丘テラスにて店舗として開催することとなりました。
2ヶ月という限られた期間、山里に流れるときを切りとったような空間で私たちが届けするのは自然のなかからセレクトしたgift。
ひとつひとつ、丁寧につくられたモノには伝えたい想いがあります。
森から街へと流れる水がつながるように、想いもつなぐ。
街とお山と、ゆるくつながるアントレストア。」
 
画像に含まれている可能性があるもの:木、屋外、自然
2020年10月30日(金)-12月27日(日)
11:00-18:00
名古屋市千種区星が丘元町16-50
星が丘テラスWEST 1F
定休日:毎週火•水曜日
撮影:Tomomi Saeki

   先月末まず、草木染め製品を納品。絹の手袋とスカーフ類をお届けしました。

  そして、昨日、焼き菓子を発送。おさめた焼き菓子は、穀物クッキー3種、ブルーチーズのクッキー、アニスシード入りのビスケット、卵・乳製品不使用のガレットブルトンヌ、ニンニクのクラッカーにタマネギのクラッカー、以上8種です。

  出店者は岡崎市額田の藍染めすずき、無農薬栽培の野菜を作っているアッサーナ農園、設楽町の木と革の工房aoyama 、この11月にオープンしたばかりのアウトドアガーデンいなぶそのほか、愛知の山里の手作り品が集まっています。東栄町でハーブを無農薬栽培しているToei Good Witch Project も参加。ハーブティーとグルテンフリーの焼き菓子がおすすめです。

  石窯で遊ぶ会の相棒、オクダキヨミさんの夫君の鍛金の工房Kanade(http://www.kanade-note.com/ )の作品も登場しています。今月22日はワークショップも開催。小さなお皿を作ります。

     久しく訪れていない名古屋の街中。晩秋の街で、紅葉の美しい山里で生まれた品々を  手に取ってご覧ください。 

   

 

 

 

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山地酪農の見学をしました。

2020-11-05 17:58:40 | 小さな旅
  ずっと前「美味しんぼ」で山地酪農という酪農法を知って、感動したことがあります。山地酪農とは簡単に言うと、整備されていない山に牛を放ち、笹や下草を食べさせることで、牛は自然の生活を営むことができ、山は健康状態に帰ることができるという酪農法です。
 
  岩手にある中洞牧場が、この山地酪農を実践している先駆的な牧場です。
 
  このあたりの、間伐の行き届いていない荒れた森も、この酪農法で新しい価値を生み出すことができるのではないかと、ずっと思っていました。だれか、そういう人が現れないかな、とひそかに登場を願っていました。
   そうしたら、いました!
 
   この夏あたらしく知り合った、隣村の長野県根羽村の人たちから、根羽に数年前に移住した酪農家が山地酪農を実践していると聞いたのです。
 
   先日やっと念願かなって、友人たちと一緒に根羽村の農場、ハッピーマウンテンを訪ねることができました。
 
   農場主は、幸山明良さん。ハッピ-マウンテンは、「幸(福な)山」さんのお名前から命名なさいました。農場のふもとで彼と落ち合い、案内していただきました。
   子供たちを集めて自然観察ツアーなども企画している彼から、最初に教わったのはムラサキシキブ。うちにもある木なのですが、この木の実が意外においしい。食べたのは初めてです。
   彼が菌打ちしたなめ茸を収穫。ぷりぷりでぬるぬる。
   道端で見つけたベニバナボロギク。自然状態で見るのははじめてです。この草、雑草料理研究家の前田純さんの草の会で何度かお菓子や料理に使いました。味のあるおいしい草です。
   稲武から行った5人以外は、根羽村と隣の浪合村の方たち。彼らは、Covid-19感染拡大防止のための自粛期間中、毎日のようにこの山にやってきて、牛と親しんだり植物を観察したり木切れや土で遊んだりしたそうです。彼らのおかあさんは、「ほんとにここがあってありがたいことでした。毎日が校外学習でした」と話していました。
 
 こちらは、農場に入ったすぐのあたり。信州大学の学生たちが取り付けた装置があります。
   
     「このあたりは、最初に一頭を放った場所です。当時は笹の原。牛は一年でほぼ食べつくし、植物の生態が変りました。放牧による土に対する圧力も加わって、今はパイオニア植物であるタラやキイチゴ、タケニグサなどが生えています。装置は、豊かな山とは何か、ということをさまざな角度から調べるために取り付けました」
   こちらは、土砂崩れでできた沢に置かれた装置。水量や濁りの度合いを調べているのだそうです。
   地層が3つに分かれている場所を幸山さんが見せてくれました。一番上は腐葉土。その下が黒土。そしてその下は粘土層。粘土層には水は浸透しないので、黒土と粘土の間には、パイプと呼ばれる穴が開いています。木々が育つには黒土が必要なのですが、一年の間に作られる黒土はたった1mm。この場所の黒土は40センチほどあるので、作られるのに400年かかったことになります。気が遠くなるほどの長い年月をかけて、この緑の山ができているのだな、と改めて実感しました。   
   この山の80%の植物は牛の飼料になるものだそうで、幸山さんが支払う餌代はゼロ。ヨーロッパでの酪農はいまも放牧が主流だそうですが、冬になると牛舎に入れざるを得ず、冬場の餌代は必要です。でもここでは、冬でも茂っている笹が豊富にあります。だから年間を通して餌代は不要なのです。
 
   単に餌代だけの問題では、もちろんありません。
   「今は、子供たちを自由に遊ばせておける山というものがなくなりました。根羽村の70%は人工林ですが、うっそうとしていて、下草は伸び放題。気軽に山には入れません。そこに牛を放つことで、山の管理を助けてもらっているのです」
 
   牛は山の保全と食糧生産の二つの柱を担う重要な役割をしているというわけです。彼の農場の広さは12町歩。牛は1頭当たり1町歩あると、食糧自給ができるそうです。
   山というよりなだらか丘の続くこの場所。3年前に幸山さんが来たときは、杉、ヒノキ、カラマツとあとは笹ばかりの人工林でした。それをほぼ一年かかって仲間とともに木を伐り出し、道を作りました。
 
   あちこちに落ちている黒い塊はうんこでした。それと知らず踏んでいましたが、驚いたことに新しいうんこも臭くない。うんこにだけ生えるというキノコを発見。このキノコはワライタケという毒キノコ。名前だけ聞いていましたが、こんなところで目にすることができるとは!  
   肛門内部の壁の襞がそのまま残ったうんこ。牛の糞と言えばべちゃっとしていて臭い、と思っていました。
 
   あれは、下痢便なのだそうです。幸山さんによれば、一般の酪農法で飼われている牛のうんこには、栄養を摂らせるために与えたトウモロコシや麦の粒がそのままの形で便に交じっているそう。高いお金を出して買った飼料の効果が出ていないということです。もったいない。
 
   狭い牛舎で無理な飼い方をされ、目の前にある食べ物だけを食べるよう無理強いされているせいで、あんなうんこになるのでしょう。運動不足もあるし、ストレスもすごいとおもいます。
 
   このうんこを拾って畑に漉き込んだら、いい肥料になりそうです。
 
  「牛は食物繊維をものすごく分解します。胃袋の中にある菌の量がすごい数なのです。そして、その胃袋で炭水化物とたんぱく質を合成する能力もすごい。実の形がそのまま出てくるというのは、胃の中の菌が少ないから分解されていないということです。栄養も摂取できていない」
   牛と幸山さん。彼は自分を酪農家とは言わない、とおっしゃっています。「あえていうなら牛使い」と。ここで出会った牛はみんなおだやかで、幸山さんに教わったやり方で体をなでると、気持ちよさそうにじっとしています。もちろん幸山さんは牛にとっては別格のようで、飼い主を信頼している犬のように彼の周りにたむろします。
 
   一般の酪農家は、牛の角を切るのは当たり前。鹿の角と違って、牛の角は血管が通っているそうなので、切られるときはものすごく痛いはず。それにあるべきものがない、というのは彼らにとっては不自由をかこつことになりそう。
 
   そのうえ日本の酪農家は、牛のしっぽまで切るのだそうです。搾乳の際に邪魔だからという理由で。この牧場にいる牛は幸せ。山も牛も幸せです。だからハッピーマウンテンなのだなと実感しました。
   農場の頂上には東屋が作られていて、おおきないろりが掘られています。幸山さんのフェイスブックには、彼が焚火をすると牛たちが続々集まってくる動画がのせられています。動物が火を怖がる、というのは家畜の場合あたらないのかしら。それともほんとはみんな暖かいのが好き?
   こちらには5頭の牛がいて、雄は一頭だけ。その雄がほかの4頭の雌を妊娠させ、現在彼女たちはみんな妊婦。牛のお産は難産だと聞いていましたが、幸山さんは否定します。たしかに、彼女たちはこのゆったりした生活をいつもどおりしながら、月が満ちたら、うんこと同じように赤ちゃんもすぽっと産み落とすことが出来そう。
   みんな毛並みがきれい。うんこがすぽっと出るから、肛門周りもきれい。人間が洗ってやるとかブラッシングするとかいった世話はたぶんしていないと思います。
   横たわった牛にハグするカウカドリングを一人ずつさせてもらいました。このハグ、ヨーロッパではセラピーに使われているそう。
   牛の呼吸や心臓の音を感じながら、静かに寄りかかるこのセラピー、とてもここちよいものでした。安心感が全身に満ち溢れるような感覚になりました。牛はおとなしくなすがままにさせてくれ、信頼できる保護者の膝や懐に抱かれる、そういう感じなのかな、とおもいました。たぶん包容力に満ちた母親のもとで育った乳幼児は、知らずとこの優しさにいつも包まれているのでしょう。
   この時の感触は、翌日まで続き、なんだかあの時の気持ち良さを逃したくなくて、体中でその心地をなめまわしているような気がしました。
   カラマツの紅葉が美しい頂上付近。幸山さんが、タムシバの木を教えてくれました。クロモジとはまた違った芳香です。いつまでも嗅いでいたくなる香りです。人工林を伐採することで豊かな生態系に戻りつつある山。すがすがしい。
   ふもとの林でみんなでお昼ご飯を食べてその日は解散しましたが、牛のいる山が懐かしく思われて、またすぐにでも訪ねたくなりました。
 
   幸山さんは、子供たちといっしょに山で学ぶツアーなど、さまざまな企画を実施。これからさらにおもしろいことがこの山で実現しそうです。わたしは、あの草だけ食べた牛の乳をおすそわけしてもらえる企画を楽しみに待っています。
 
   
 
   
 
   
  
 
 
   
   
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10月のどんぐり工房草木染め講習会

2020-11-04 11:37:59 | 草木染め
  報告が遅れましたが、どんぐり工房10月の定例講習会は、セイタカアワダチソウと高キビを使いました。

  セイタカアワダチソウはどこにでもあるのですが、さて大量に採取となると、道路脇とかよそさまの土地だとかで、なかなか手に入れにくい。それで今年は、春から、敷地内に出てきたセイタカアワダチソウをなるべく刈らずに残しました。選択的除草をはかったのです。

   黄色い花の部分だけを切り取ってつかうのですが、いざその部分だけを刻んだら意外と少ないので、葉の部分も足しました。

   それでも煮だしてみると、染めたい布の重さに比して染料が少ないので色が薄すぎたため、冷凍庫に入れておいたマーリーゴールドもプラス。

   銅媒染で生まれた色はこんな黄色です。

   ダブルガーゼの大きな布。お洋服にするそうです。

   高キビの殻はいつも間違いなしの染料。

   この日は、お隣の長野県平谷村からお二人が初参加。お二人ともこの9月に平谷にやってきたふるさと協力隊の隊員です。

   この日、染め材料に高キビを選んだのは、彼らが来られると知っていたから。地元でとれる産品での染めを面白がってもらえるだろうと思ったからです。

   案の定、とても興味を持ってくださいました。二人のうちのお一人は、イギリスの方。ことのほか、染めを楽しんでくださいました。平谷では農業も始めていて、いずれ高キビを植えたいとおもっていたとのこと。実は食用に、長い茎はすだれに、穂先は短めの箒に、そして殻は染色に、と、マルチに使える優れた植物、ぜひとも育てて活用していただきたいものです。

   さて、今月の染め講習日は、28日土曜日。アベマキのカクトで濃い茶色を、竹の葉で美しい黄色を染め出す予定です。お申し込みはどんぐり工房までどうぞ。なお、24日火曜日にも特別に染めの会を開きます。こちらのお問い合わせ・お申し込みはアンティマキまでおねがいします。
 
 *カメラのストロボが壊れたため、撮影できないので、写真はすべてどんぐり工房からお借りしました。
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足助のミヤコイチに納品しました

2020-11-01 23:46:09 | アンティマキの焼き菓子とパン
  しばらく間が空いてしまいましたが、本日、足助のミヤコイチに焼き菓子を納品しました。

  ミヤコイチは、ろじうらバンバン堂が運営する、豊田の山里で作られた種々の品々が並ぶお店。場所は、足助旧道の和菓子屋加東家のお隣です。

  本日お持ちしたのは、ニンジンとキビの入った雑穀バー、穀物クッキー3種、ブルーチーズクッキー、アニスシード入りのビスケット、タマネギクラッカー。いずれも数は少なめですが、種類はたくさん。いろいろお選びになりたい方は、お早めに越しください。

  ミヤコイチのお店は、古い呉服屋さん。間口が広くて、りっぱな梁の目立つ古民家です。近隣の自然栽培の野菜や加工品、着物をリフォームした服やおばあさんたちが編んだアームカバー、無添加の調味料など、気になる品々がたくさん。

  今日の私の買い物は、銀杏とむかご。それに昨日のいなかとまちの文化祭でも購入した徳八農園の新ショウガ。むかごに生姜を入れてご飯にしてみようと思います。

  なお、本日、どんぐり横丁にも、ミヤコイチと同じ品と甘夏ミカンのピールのスコーンを納品しました。
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