いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

米国大統領選のユーモア。 humour of a presidential election of u.s.a

2016-10-24 19:46:11 | 日記
 (1)近年は民主主義、資本主義国から民主主義、資本主義の危機あるいは終えんを伝える声が聞かれる。議会制民主主義発祥の英国では当時EUとの関係を維持して相互利益をはかるEU残留を主張するキャメロン首相に対して、国民投票で英国利益第一のEU離脱派が多数を占めて首相辞任に追い込まれた。

 米国ではTPPで環太平洋地域の貿易、経済新規準化を進めて、中国経済に対抗する保護主義の動きも見られる。民主主義、資本主義も国際協調主義、グローバリゼーションから自国、領域内の利益第一主義に立ち返っての保護主義(protectionism)が台頭しており、国際政治、経済、社会は変動期を迎えているように思う。

 (2)日本でも安倍政権の重要政策にはことごとく国民の過半数が反対(世論調査)しながら安倍内閣の支持率は比較安定するという政治現象があらわれており、経済、生活第一の小市民的国民意識(the petite bourgeoisie)の保護主義傾向が強く背景にある。

 そうした国際情勢を最もあらわしたものとして米国大統領選でのトランプ現象があげられる。政治経験もなく、富豪として名をはせた共和党トランプ候補は極端な保護主義でイスラム移民の排斥、メキシコ国境沿いの壁建設などの過激発言で注目を集め、当初はその過激性から泡沫候補と見られていたが、次から次と共和党主流候補を退けてついには共和党の大統領候補までに登りつめてしまった。

 (3)そのはっきりした極端な保護主義発言は既成政治に不満な若者層、貧困層からのかえって変革への高い支持を受けている。
 いよいよ来月8日に迫った米大統領選投票決着に向けては、終盤での女性べっ視問題によりトランプ候補はさすがに勢いを失ったようにも見られるが、それでも民主党クリントン候補とはどちらがより大統領にふさわしくないかの低次元での争いで絶望的な開きにもなっていないともいわれている。

 (4)その両候補が今月恒例の大統領候補者の夕食会に出席した。この夕食会はユーモアを交えた演説をすることが習わしになっており、まずトランプ候補が演壇に登場した。

 トランプ候補の夫人は予備選中にトランプ候補の応援演説で、かってオバマ大統領のミシェル夫人がやはり当時の大統領選でのオバマ候補の応援演説で、弁護士としての識見の高い演説を行い評価を受けていたその演説内容をほとんどそっくり引用した演説を行い、これはひんしゅくを買って批判された。

 (5)トランプ候補は夕食会ではこれを取り上げて「私の妻は(評価の高かった)ミシェル夫人と同じ演説をしたのに、批判された。I don't know. I don't know.」(ニュース映像趣旨発言)とくり返して、さすがにこれには会場もクリントン候補も笑うしかないという表情だった。

 トランプ候補はいかにも原稿に目を落とすような仕草で読みあげて笑いを誘ってみせた。スタッフが一生懸命に考えたユーモアなのかもしれないが、トランプ候補にこんなユーモア精神があったとすればこれまでの選挙戦でそれが発揮されれば、また印象も違ったのではないのかと思わせる自虐的なユーモア精神であった。

 (6)そのあと演壇に登場したクリントン候補は「トランプ候補の民主的な手続きで後を引き継ぐことが出来た」(ニュース映像趣旨発言)と日ごろのトランプ候補の排他的強硬姿勢をとらえてユーモアで返した。

 米大統領選の本質論議とは関係ないが、こうしたユーモア精神、ムードこそが米国社会の懐の大きさであり、こんなムードの中での本格的な政策論議を戦わせるべきであった。

 

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