ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

2024年4月26日。ウクライナ侵攻から794日目

2024-04-26 | ベラルーシ旅行・長期滞在・留学注意情報
 2024年4月26日。
 チェルノブイリ原発事故発生から今日で38年です。
 昨今はコロナに戦争と心配なことが次々と目の前に起こるので、ベラルーシ人もチェルノブイリの放射能被曝ことは忘れがちになっています。
 しかし、ベラルーシ政府は毎年調査を続けており、その結果が今日までに発表されました。
 簡単に訳して投稿します。

 ベラルーシでは現在も国家予算を使って汚染地域の土壌の除染作業を行なっています。その効果が出ているのか、最近の農作物の放射能汚染度は低くなっています。
 事故から38 年が経過し、セシウムとストロンチウム90の半減期はすでに過ぎました。このことも影響していると思われます。
 一方で国の調査では事故前の放射能レベルに戻るには150年かかるという試算でいるそうです。
 土地の除染に関して言えば、例えば同じゴメリ州内でも、汚染の濃度にばらつきがあり、また汚染している放射性核種もセシウムとストロンチウムのちがいがあり、除染作業の内容も細かく分かれています。

 畜産物に関しては、放射能汚染されていない飼料を家畜に与えることがいい方法であるとベラルーシでは考えられており、「きれいな」飼料が畜産企業に無料で支給されています。

 ベラルーシでは主食のジャガイモとパンとその原料である穀物類を特に測定を詳しく行なっているのですが、2006年(事故から20年後)の時点で800から900のサンプルを測定したところ、そのうちの30%から35%が基準値を超える放射能を含んでいましたが、2023年(事故から37年後)の測定では、基準値を超えたものは5%から8%だけでした。
 主食のジャガイモとパンはほとんど汚染されていない状態に回復したと言っていいでしょう。

 ちなみにアブラナと豆類には放射能が蓄積しやすく、オーツ麦と大麦は蓄積しにくい。一方で、小麦とライ麦は、汚染度は低いもののセシウムとストロンチウム90の両方を蓄積しやすいことが調査によって分かりました。
(ストロンチウムの計測は難しいのですが、ベラルーシ政府はちゃんと測定をしているようですね。)

 ジャガイモは放射能の蓄積はあまり進まない部類のようです。
 ベラルーシはジャガイモが主食なので、基準を厳しく設定しています。他の国、例えばロシアや西側ヨーロッパの国々は基準が甘く、それに比べて我が国は厳しいから国民の安全を守っていると胸を張っているのです。でも実際にはベラルーシ人のジャガイモを食べる量が多いので、基準値を低く設定しておかないと、放射能が体内に溜まりやすくなるからです。

 森の中で自然に生えているベリー類ですが、今でも1キログラム当たり2万ベクレルの測定結果が出た森もあり、非常に危険です。絶対食べない方がいいのですが、ベラルーシ人はベリーを集めて(つまりただで食料調達)するので心配です。
 日本で山菜採りをする人がいるのと同じ感覚です。
 ちなみに今でもひどく汚染されているゴメリ州の地区はホイニキ、ブラーギン、ナロヴリャ、ヴェトカなどで、やはり事故直後から汚染地域としてある意味有名になった地区が多いですね・・・。

 事故が起きてから避難することを拒否して、汚染地域に残って自給自足をしていた人たち(通称サマショール)は高齢化が進み、どんどん少なくなっています。
 代わりに人のいなくなった村に野生動物が棲みつくようになり、その調査も行われています。
 それによると・・・
 汚染地域に棲むクマの数が増えている。ただし避難地域なので、人がおらず、クマによる被害はない。

 ウクライナのほうから移動してきたモウコノウマがベラルーシ領内の汚染地域で繁殖し始めた。(野生の馬です。この馬、サラブレッドのように走るのは早くない、つまりスマートな感じではないのですが、外見が絵本に出てくるお馬さんみたいでかわいいといつも思います。)

 事故が起きたとき、置き去りにされたペット(数日後に避難命令が解かれて、家に帰れるでしょう、などと言われて自宅を離れた人がたくさんいました。)について、ネコはその後野良ネコになったものの、多くが肉食の野生動物に食べられてしまったと予想される。(現場を目撃した人がいるわけではないので、あくまで研究者たちの予想。)

 ペットだった犬は事故後、生き延びたものは野生のオオカミと交配。現在ベラルーシでは、オオカミの数が増えているが、この中にこの交配種が含まれている。

 野生のシカ類よりイノシシのほうが放射能を蓄積している。肉食のオオカミのほうが放射能に汚染されている。

 汚染地域でスズメがいなくなった(放射能にやられた)という噂があるが、スズメは人ともに町へ移動したものと思われる。
 逆にコウノトリの数が減ってきた。
 クロライチョウの放射能汚染度が高い。汚染地域から遠くへ飛んで行こうとせず、地面に近いところで生息している鳥類であるためという予想。

 昆虫の巨大化が見られるが、これは放射能による突然変異(ミュータント)ではなく、地球温暖化により南の地域にいた大型昆虫が北にあるベラルーシへ移動しているかららしい。

 汚染地域に生息する野生のシカ、タヌキ、カワウソなどを解剖してみたが、腫瘍(ガン)ができている個体が見つかった。しかし非常に少数である。これらの動物は高度の被曝を受けているが、全てガンになるわけではない。かと言って、被曝に耐性ができたとは証明できない。

 野生動物は人間より平均寿命が短いので、子孫に被曝の影響がどれぐらい出るのか数代先まで早く見ることができるのですが、ベラルーシの研究者にはこれからも詳しい調査を続けて、世間に広く結果を公表してほしいです。

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