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②リボルバー

2017年09月07日 | TV・ラジオ・CM・映画

高校生の時に藤田敏八監督の「炎の肖像」を姫路の大きな映画館でみましたが、客はパラパラ・・ いや、ポツポツ 程度でした。その監督の作品を今はシニア割引で見に行く年齢になり、ちょっと感慨深いものがあります

シネヌーヴォの待合は映画ファンとおぼしき中年やシニア男性達が中心で、我々のようなジュリーファン女性は少数派でした。座席はほぼ満員(60数席)に近く、この上映後に脚本家のトークショーが開催されるせいかもしれません。 


たまたまだけど、「リボルバー」は先日直木賞を受賞したばかりの 佐藤正午さんの原作です。

映画あら筋→ 巡査部長の清水はある日、公園で自分のリボルバーを奪われます。奪った男・阿久根は愛人の女を殺そうとしましたが果たせず、その拳銃をゴミ箱へ。進という高校生がそれを偶然見つけて拾うことになります。阿久根同様、進は恨みに思う相手を殺そうと札幌へ。警察を辞職していた清水は自分の拳銃を取り戻そうと、進のあとを追うのですが……。


始まってすぐから、小さなエピソードにけっこう男性達の大きな笑い声があがり、ビビッドな反応です。昔見た時は ダーレも笑っていなかったわ。

「リボルバー」の舞台背景は製作当時のバブル時代。女性たちの肩パットの入った派手なスーツや、当時のクルンと前髪を巻き上げたロングヘアスタイルは、今やダサイとしか思えないのだけど。ジュリー演じる警察官はどこでも煙草を吸い、禁煙車両の無い夜行列車に、30年前はすでに大昔なのだと 時の流れの速さを感じました。

冒頭、警察官という職業に特別な思いいれがあるようでもなく、覇気も見えず、結婚もしたくなさそうなジュリー演じる巡査部長の顔が、スクリーンに大写しになりました。いかにもジュリーの、大きな目の甘い顔立ち。でもそこには歌っている時の研ぎ澄ましたようなジュリーの鋭さが微塵もなくて、丸くてボヨン・・ まさに芒洋としたジュリーの顔が。 この顔、これから10年後の「大阪物語」の漫才師の龍介そのままやん。1988年頃のジュリーって、こんなに太っていたっけ?と焦りました~💦 

海辺で見合い相手とのデートでは、隠すことなくさらけ出され、映し出される水着の腹のタルミを見ていたら、タイガースで登場した時からずっと美紳であり続けたジュリーでも歳をとるという、時の流れの残酷さを実感させられました。

巡査部長は情けなくも拳銃を奪われて職を辞し、手塚里美演じるホステスのヒモ同然に・・ 女の部屋に転がり込み だらしなく寝転ぶステテコ姿に、またまた汗がっ💦 けっこう衝撃的だった「大阪物語」のステテコ姿の もう10年も前に、ステテコファッションをしてたのね 全く覚えていなかったわ いえ、哀愁漂うダメ親父の「大阪物語」は大大好きなの ただ、40歳になったとはいえ まだまだファッションリーダーだったはずのジュリーが、とっくに親父丸出しのステテコファッションをしていたなんて・・・ 全く覚えていなかったのよ。

カッコイイ自分のイメージに囚われる事なく、柔軟に、ずーっとジュリーは挑戦していたんだねと 今頃気がつきました。実際、映画の中には歌手ジュリーの姿やイメージは全くない、拳銃を奪われた情けない巡査部長の役がとても似あっている・・

物語は、小林克也演じる不倫オヤジから、男に暴行されて復讐をしたい高校生へと拳銃が渡ってゆき、鹿児島から北海道へと舞台も変ってゆきます。そこに柄本・尾美の気ままなコンビが思いがけず絡んでゆく。少女に、巡査部長の見合い相手と、全員が北海道に集結した時に起こった、思いもかけない出来事。札幌まで拳銃を追いかけてのクライマックスで、拳銃を取り戻そうとする元警官 ここだけはジュリー、カッコよかったです

しかし思いがけない結末に、え?あんたが まさかそんな事を? 1丁の奪われた拳銃から巻き起こった様々な人間模様は絡みあい、人間たちの運命を夫々に変えてゆき、見事に北海道の地で終結したのでした。

ラスト、別れを告げた元警官のジュリーに対して その後ろ姿に向けて、バーンと指鉄砲を撃つ泣き笑いの女。撃たれた胸に倒れそうな衝撃を受けながらも、ちょっと歪んだ笑顔で微笑んで 女から去ってゆくラストシーンが心に残り、観客の大きな拍手がおこりました。もちろん私達も 複雑な人間模様の群像劇を描き切った、脚本家と監督、演技陣に大拍手です。

全体を見て、映画の内容を殆ど覚えていなかった事がよくわかりました。

疑問は何故、このショボくれた警官の役をジュリーにオファーしたのでしょうか? 80年代末のジュリーは、スーパースターの名前を欲しいままにした頃から歳を取ったとはいえ、まだカッコイイ男の代名詞であったはず。70年代の藤田監督の「炎の肖像」は、ジュリー本人だからこその映画でした。 

でもこの「リボルバー」は別にジュリーじゃなくてもいいよね・・ そう思いつつも、スクリーンの40歳の甘さの有るジュリーの顔に それまでの辿った人生の深みが 確かに加味されているのを感じました。昔は絶対に感じなかったであろう、警官の制服を着たその身体から漂う哀愁と、人間の「おかしみ」を感じられた作品となりました。

まだ続く

 

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