亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

“風向きの変化”を察知し始めた金市場

2012年08月06日 22時30分58秒 | 金市場
さて米雇用統計。結果を受けた当初の金市場はこの時期の台風のように迷走した。(非農業部門の)雇用者数は市場予想10万人の増加に対し、16万3000人と市場全般にとってはポジティブ・サプライズとなった。一方で失業率は前月の8.2%から8.3%に上昇となった。

まず金市場では売りが先行することとなった。言うまでもなく「予想以上の雇用の増加」は「景気の底堅さ」を表すものと読み替えられ、そのまま「追加緩和環境の後退」となり、金価格の押し上げ要素の後退を示すからだ。逆に、景気動向に作用される原油や産業用メタルなどは、プラスに反応することになる。株式もまたしかり。

ところが3日のNY金市場では、売り一巡後は押し目買いが入り、逆に上昇に転じることとなった。昨年秋以降、金も株などとの連動性を高める傾向が強くなりリスク資産として捉えられることも増えている。したがって雇用増を好感した株価の上昇に“つれ高”したということも言える。3日はそれまでの「リスク‐オフ(リスク資産回避)」の巻き戻しから米国債が売られ株が買い戻されという流れの中で、ドルが売られたことも金の買い要因となった。

その際に注目されたのは失業率の上昇が表す、雇用回復の脆弱さだった。投資家心理(市場センチメント)とは移ろいやすいもので、予想より良かった雇用増も安定的な雇用増を示す20万人超の増加ではなかったこと、さらに失業率の高止まりはFRBの緩和方針を変えるものではないとの解釈になった。

先月までは、10万人を下回る雇用の増加は「弱い」しかし「追加緩和をするほど弱くない」とされてきた。先週末の動きは、「雇用統計は予想以上によかった、しかし追加緩和をなくするほど強くない」というものに変わった。視点をどこに置くか、という問題といえる。環境の変化にしたがい、スルリと視点も変わっていく。マインドも変わる。

スペイン国債の急落という市場の動きに背中を押される形で(結果的に)緩和方向に動き始めたドラギECB総裁。金市場は、市場の“風向きの変化”を察知し始めたようだ。

立ち位置の違いが際立つという意味で、金とプラチナの価格差はさらに開くことになろう。


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1 コメント

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Unknown (こがねむし)
2012-08-06 23:21:19
豊島さんの金粒で、子供をグローバルに育てるグローバル・ネットワークなんたらというクラブの話があったが、先日こちらの日本料理屋で見た光景。

3人のご家族が来て、母親は日本人、父親は中国人らしく、2歳くらいの娘を連れていた。
小さな子供は最初、日本語で母親と話をしていたが、途中から中国語で話し始め、こんな小さいのに大したものだと思って驚いていたら、父親に英語で話し始めて2度びっくり。

母親も中国語を話せるようだったが、しかしどういう教育方針やら、どんな子に育つやら、将来どこに行っても困らんだろうと、ちょっと羨ましくなったのでした。

日本人は島国にとどまらず、一時でも海外で暮らしてみれば、大分世の中変わるんじゃなかろうかと思います。
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