利上げなしは既に織り込み済みの市場にとって今回のFOMCの焦点となっていた政策金利の見通し。報じられているようにFOMC参加者の提示した中心値のレートは、12月からなんと50ベーシス(0.5%)も引き下がった0.875%ということで、これはサプライズだった。
おまけに「世界経済と金融動向は引き続きリスクをもたらす」との一文を声明文に盛り込んだことで、2016年これからの世界経済に弱気を表明ということになった。前回の見通しを示した時からわずか3ヵ月。2月中旬以降、比較的堅調な指標の発表が見られていたこともあり、この点からも市場にはサプライズとなったのだろう。
3ヵ月先の金は1100ドルという年始の見方を変えないとしていた、先々週のゴールドマン・サックスの見通しは、前提が崩れたのではないか。それとも6月利上げでGSの見通し達成か?しかし、6月のFOMCのスケジュール直後に、想定外のEU離脱を問う英国の国民投票が入って来ただけに、イエレン議長にとって迷惑千万ということだろう。
サプライズであったからこそ、金を含め市場は大きく反応した。
米国の成長は続いているものの、想定していたほどのスピード感は出ていない。むしろこれだけアクセルを吹かしてきたにもかかわらず、成長テンポは時間の経過とともに緩やかになっているのは、構造変化の成せる技か。供給不足というわかり難い解釈もある。
いずれにしても4回の引上げを肯定するほど年内の成長は見込めない、ということを認めたことになる。加えて外部環境にも不透明要因多く、それらを強気の利上げ観測で刺激したくないということもありそうだ。
下手に刺激して市場の乱高下を引き起すと、それ自体が引き締め効果に転じることもあり、それが年始に起きたこと。利上げ見通しの、下方修正は当然と思う。
隠れた理由に、ここまでのドル高是正もありそうだ。製造業の交易条件を改善し、ここにきての上向き傾向を押し上げる。さらに輸入物価を押し上げてインフレ条件を満たすというイエレン流深謀遠慮。欧米マネーの執拗な流入は、それか。
一方で、不透明な外部要因のひとつには、関心が薄れているものの厳然と存在する、シェール企業の社債の償還、乗り換え問題もある。4月が山とされる。産油国もそれまでには生産の現状維持であれ何であれ、集まって“合意”したという事実が欲しいのだろう。 6月のOPEC総会を待たずに4月に枠を超えた会合を開きたいと、ざわついているのは、そういうことか。ならば、先を見据えたものというより、目先をどう交わすかという場当たり的な対応ということ。
後は、全人代が終わった中国も、減速はいまや懸念ではなく既成事実なので、引き続きリスク要因になると思われる。
夜に入ってのドル円が一時110円台まで入る乱高下。この程度のことは今やすでにニューノーマルということか。このままならば、明日の日本株も売られることになる。