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『52ヘルツのクジラたち』

2024年03月17日 | 映画(か行)
『52ヘルツのクジラたち』
監督:成島出
出演:杉咲花,志尊淳,宮沢氷魚,小野花梨,桑名桃李,金子大地,
   西野七瀬,真飛聖,池谷のぶえ,余貴美子,倍賞美津子他
 
TOHOシネマズなんばにて2本ハシゴの1本目。
衝撃的だったのは、タダで観られる株主招待券をもらっていたのに、持って出るのを忘れたこと。
当日劇場に持参しないと使えないのですよ、この券は。
致し方なく出先でスマホを取り出してムビチケ当日券を購入。
なんでタダで観られるものを1,900円払って観とるねんと自分を呪いながら。
 
原作は本屋大賞を受賞した町田そのこの同名小説。
文庫化される前に単行本を貸してくださった姐さんがいたので、2年半前に読了しています。
そのときの感想はこちら
余談ながら、同著者の作品はこれまで読んだものはどれも好きですが、
本作よりも私はこっちのほうがより好きです。
 
監督は安定安心の成島出
 
東京から大分の海辺の町へと引っ越してきた三島貴瑚(杉咲花)。
小さな町のこと、若い女性の単身転入に噂が飛び交う。
東京の風俗嬢で誰かに追いかけられて逃げてきたとか、そんなふうに噂されていると、
貴瑚が移り住んだ家の修繕を担当した工務店の村中真帆(金子大地)が教えてくれる。
「半分は当たっている」とつぶやく貴瑚。
 
そんな貴瑚がある大雨の日、腹痛に見舞われて倒れていたところ、
傘を差し掛けてくれたのが長髪の少年。
言葉をいっさい発しない彼を家まで連れて行き、びしょ濡れの服を脱がせてみると、
彼の体じゅうに虐待されているとおぼしき傷跡があった。
理由を尋ねようすると一目散に逃げ出す少年。
 
少年を探していることを真帆に相談すると、それはおそらく品城琴美(西野七瀬)の子どもだと言う。
琴美はかつて男子生徒たちのマドンナだったが、町を出て行ったかと思うと、
しばらくしてシングルマザーとなって子どもを連れて帰ってきたらしい。
しかし子どもを学校にも通わせず、母子ともに一緒にいるところは誰も見たことがない。
しかもその子どもは口をきけないのだと。
 
琴美が働いているという食堂を訪れて話しかけると琴美は激怒。
子どものせいで人生がめちゃくちゃになったと毒づく。
貴湖が少年の名前を尋ねると、あんな奴に名前はない、「虫(ムシ)」と呼んでいると。
 
貴湖自身にも母親の由紀(真飛聖)から虐待を受けていた過去があり、
少年のことを放っておけなくなって保護、一緒に暮らしはじめるのだが……。
 
と書くと、貴湖と少年の話が大半を占めているような感じですが、そうでもない。
むしろ貴湖の半生を綴ったシーンのほうが多いです。
 
母親が再婚した相手が倒れてから3年間、ずっと介護をさせられてきた貴湖。
脳梗塞なのかなんなのか、ベッドで寝たきりの継父の食事から下の世話まで全部。
母親は夫の世話をまったくせずに娘に押しつけ、気に入らないことがあれば殴る蹴る。
それでも母親のことが好きで、母親から好きになってほしくて耐えていた貴湖でしたが、
あるとき母親から首を絞められ、ふらふらと自殺しかけたとき、
救ってくれたのがたまたまそこを通りかかった岡田安吾(志尊淳)でした。
 
原作ではいつ明らかにされることだったのか覚えていませんが、
安吾は性同一性障害で、女性としてこの世に生まれながら今は男性として生きている。
それを知らない貴湖は安吾に恋心を抱いて告白するけれど、
期待した返事をもらえなくて、拒絶されたように感じてしまいます。
 
そんな折に出会った職場の御曹司役が宮沢氷魚
今までわりと優しい人の役が多かったと思いますが、こんな演技もするんですね。鬼ですよ鬼(笑)。
こうして見ると、DV加害者は男性でも女性でもどういう立場の人でも同じ。
激昂して相手を痛めつけ、でも好きなのよ、大好きなのよ、
あなたがいなけりゃやっていけない、そばにいてと泣きすがる。最低です。
琴美役の西野七瀬にしても、嫌いになりそうなほど酷い母親でした。
杉咲花は、本作と言い、『市子』と言い、こういう訳ありの女性を演じると絶品。
 
誰かひとりでも自分のことをわかってくれる人がいたら生きていけるでしょうか。
虐待する奴なんて死んでしまえ。みんなが穏やかに暮らせたらいいのに。
 
52ヘルツのクジラの声、聴いてみたい。聴きたい。

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