福田の雑記帖

www.mfukuda.com 徒然日記の抜粋です。

おにぎり(2) 握る人と食べる人の絆

2024年03月07日 06時35分21秒 | コラム、エッセイ
 おにぎりが好き、という人は多い。
 食品関係の某アンケートでは、おにぎりを「嫌い」と答えた人は0.1%しかいなかった、という。

 私の幼少期にはご飯はかまどで、薪で炊いた。水蒸気を噴き出し始めた釜をあやしながら、時に声をかけながら炊き上がるのを待ったものである。さらに、この釜にはお焦げというおまけがつき、それをこそぎ取ってしょうゆをひと垂らししてキュッと握り、「ホレ・・」と渡してくれた母のおむすびほど懐かしいのは他にない。朝の楽しみの一つだった。
 あの時間と味を、電気釜以降は失ってしまった。
 
 普通、おにぎりは、朝に握られて、お昼に食べるもの。冷めたおにぎりを一口ほおばる時、子どもの頃の味、を思い出す。
 おにぎりにまつわる豊かな思い出は、いい人生を過ごしてきた、としみじみと思わせてくれる。

 日本人とおにぎりのつきあいは古い。石川県にある弥生時代の遺跡からは、おにぎりの「化石」が見つかっている。奈良時代の書物、「風土記」のひとつ「常陸国風土記」に握飯という記述が残され、平安時代には蒸したもち米を握り固めた屯食があった。戦国時代、江戸時代には携行食として広くおにぎりが普及していった。

 おにぎりの具材も色々楽しみであるが、おにぎりのおいしさは作る人の「ぬくもり」にもある、と思う。「握る」「結ぶ」は単に力を加えることではなく、気持ちをこめる特別な行為でもある。寿司の握りとは自ずと異なる。

 素朴な食べ物のやりとりを通して、握る人と食べる人が互いに絆を深める意味もあっただろう。

 「東北のマザー」と呼ばれた青森県弘前市の佐藤初女氏は岩木山の麓に立つ「森のイスキア」で、人生に迷い心が疲れた女性たちを、おむすびと手料理で迎えた。2016年94歳で亡くなったが、著書の中で「おむすびを握るということは、それを通して握る人の心を伝えることです」と述べている。

 おにぎりの具材で一番人気は塩にぎり。食が細い子どもでも、おにぎりにすると喜んで食べる。

 コンビニでは色々の具材の握りが売られているが、機械で作られるから冷えてなくとも冷たい。先のアンケートでは回答者の約4割が「作るよりも買う」と答えた。
 具材の人気はシャケ> 梅>昆布>明太子>・・・と続くが、豚の角煮、カツ、チーズなど、おにぎりらしからぬ具材も登場した。

 具材でダントツ人気の「サケ」はおにぎりの場合「シャケ」と呼ばれるが、ふたつとも「鮭」の正しい読み方だという。また、「鮭」と「サーモン」は別の魚で「ます」ある。

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