土木の工程と人材成長

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パウエル将軍のリーダーシップ

2015-09-09 10:10:47 | リーダーシップ
 米国元国務長官コリン・パウエル「リーダーを目指す人の心得」飛鳥新社、2012.10.13のPP106-107に、陸軍入隊時の士官基礎訓練終了後に、軍曹から「部下の兵隊が信頼してついてきてくれれば、あなたはいいリーダーということになります」と言われたらしい。パウエルの解釈は「部下はリーダーを信頼するが故についてくるのだ。だからリーダーは、常に、チーム内に信頼関係を築くことを念頭に動かなければならない。リーダー同士の信頼、部下同士の信頼、そして、リーダーと部下のあいだの信頼を築かなければならない。そのような信頼は、他人を信頼する無私のリーダーからしか生まれない」と書いている。書いただけでなく、それを忠実に実践している。この信頼の解釈は、かなり包括的であり、哲学的であり、人間的である。

 なぜ「信頼」を取り上げたかと言うと、工事成績で80点を連発している優良工事表彰技術者への質問で「相性が悪い監督職員だった場合、どうしますか?」の回答が「とにかく信頼を得るようにしている」だったからである。「信頼」というのは、「責任」を越えて、無限責任的な領域に入ると考えられるので、高い意識を持つ必要があると思い、気にかかっていたからである。

 また、PP38-39には「部下には優しい一言をかける、背中をぽんとたたく、「よくやった」とほめるといったことを一対一でしなければならない。物事がうまくいかなかったとき、それはリーダーの責任であって部下の責任ではない」とも書かれている。

「背中をぽんとたたく」のくだりでは、カエサルが寒い冬の野宿で、兵士の肩を抱いてはげました場面を思いだした。「一対一」というのは、リーダーは部下の一人ひとりを見ている、気にかけているということであり、なかなか困難なことではあるが、しかし、これこそがリーダーたるべき者の基本中の基本だと思う。

 そして、責任については、パウエルは単に結果責任を引きうけるだけでなく、戦闘の時はともかく平時においては、できうる限り事前に部下には必要な情報を与えると共に、十分でない時があるにしても、一定の準備のための時間を与えている。このように、こまやかな配慮をして、部下が成功するように導いているのである。

 後に大統領選出馬へ期待の声もあがったが、冷静に分析して断念している。しかし、黒人で米国の国防と安全保障の最高指揮官となったパウエルが先鞭をつけたからこそ、ライス氏やオバマ氏の活躍の道を拓いたと言えるのではないだろうか。

 パウエル氏の冷静沈着さは、どこで培われたものなのであろうか。そして、リー・クアンユーと同じような分析能力はどのようにして獲得したものであろうか。


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