犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(166)沫雪の

2012年12月29日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【十一月十五日】放映分

沫雪あわゆきの ぬべきものを 今までに 流らへぬるは 妹に逢はむとぞ
《雪みたい 消えになって 生きてるは あんた会いたい 思てるからや》
                         ―大伴田村大嬢おおとものたむらのおおいらつめ―(巻八・一六六二)


【万葉歌みじかものがたり】継ぎ て相見む》

神亀じんき五年(728)夏 大宰府からの急使
旅人赴任同行の 妻大伴郎女おおとものいらつめ死去の知らせ
次いで 家持からの 要請ようせいぶみ
 父 旅人の 落ち込み 只事では ありませぬ
 叔母おば上の 下向げこう 乞い願うばかり》
時に 家持十二歳 必死の願いぶみ
前年 宿奈麿を亡くし 寡婦かふの身の坂上郎女いらつめ
した 大嬢おおいらつめ 二嬢にのいらつめの 幼子おさなごを抱えていた
急遽きゅうきょのこと 田村大嬢たむらのおおいらつめの 宿下がり願い出
二人 を託し 筑紫へと急ぐ

留守宅 を 預かる 田村大嬢
忠実忠実まめまめしい 世話のなか
同母妹とも見紛みまがきずなが この時生まれた
 何年か後)
やがて 佐保邸家刀自いえとじとなった 郎女
大嬢おおいらつめ 二嬢にのいらつめは 引き取られる
田村 邸に 一人残る 田村大嬢
大嬢への 募る思慕しぼ
よそて 恋ふれば苦し 我妹子わぎもこを ぎて相見む ことはかりせよ
《離れてて 焦がれんつらい ねえあんた 会える手立てを 考えてえな》
遠くあらば わびてもあらむを 里近く りと聞きつつ 見ぬがすべなさ
《遠いとこ るんやったら 仕様しょうないが 近く住んでて 会えんの何で》
白雲の たなびく山の 高々に 我が思ふ妹を 見むよしもがも
 首伸ばし あんた会いとて 堪らんで 会える手立ては 無いもんやろか》
いかならむ 時にか妹を 葎生むぐらふの 汚なきやどに 入りいませてむ
《むさくるし このあばに あんたをば 何時になったら 迎えられんや》
                         ―大伴田村大嬢おおとものたむらのおおいらつめ―(巻四・七五六~九)

係累けいるいの無いまま 生母実家 飛鳥奈良思ならし岡に 引きこもった田村大嬢
大嬢 への 思慕は続く
茅花ちばな抜く 浅茅あさぢが原の つほすみれ 今盛りなり が恋ふらくは
《ツボスミレ 花が満々いっぱい 咲いとおる うちも満々いっぱい 焦がれとるんや》
                         ―大伴田村大嬢おおとものたむらのおおいらつめ―(巻八・一四四九)
故郷ふるさとの 奈良思ならしの岡の 霍公鳥ほととぎす ことりし いかに告げきや
奈良思ならし岡 さとホトトギス らしたが ちゃんとあんたに 伝えたやろか》 
                         ―大伴田村大嬢おおとものたむらのおおいらつめ―(巻八・一五〇六)

我がやどの 秋の萩咲く 夕影ゆふかげに 今も見てしか 妹が姿を
 夕暮れの 咲いた秋萩 見とったら あんたの姿 見となったがな》
我がやどに 黄変もみ鶏冠木かへるで 見るごとに 妹を懸けつつ 恋ひぬ日は無し
《庭先の 赤いかえでを 見るたんび あんたのことが 思えてならん》
                         ―大伴田村大嬢おおとものたむらのおおいらつめ―(巻八・一六二二~三)

老境  田村大嬢に なお大嬢への思慕は尽きない
沫雪あわゆきの ぬべきものを 今までに 流らへぬるは 妹に逢はむとぞ
《雪みたい 消えになって 生きてるは あんた会いたい 思てるからや》
                         ―大伴田村大嬢おおとものたむらのおおいらつめ―(巻八・一六六二)



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【古事記ものがたり】への誘い
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■日めくり万葉集Vol・2(165)高麗錦

2012年12月26日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
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【十一月十四日】放映分
高麗錦こまにしき 紐解きけて るがに ろとかも あやにかなしき
綺麗きれえ帯 いて共寝といて その上に どないんや この可愛かわい児は》
                          ―東 歌―(巻十四・三四六五)


【万葉歌みじかものがたり】八尺やさか堰塞ゐでに》

 激しい恋は 火花散る 抱きに抱いても 尽きはせん

東男あずまおとこに あずまの女
 の炎に 火がつきゃ激し
共寝ともねしとうて あの児の許へ
共寝 するため あんたを待つよ

空も飛んでく かどわかせ言い
春から秋まで 共寝たいと言うよ
挙句の果てに まだ共寝らんと
負けてなるかよ 恋敵こいかたきめが

しも 安蘇あその川原よ 石まず 空ゆとぬよ が心
いとうて の川原の 空の上 わし飛んで来た お前どやねん》
                          ―東 歌―(巻十四・三四二五)
足柄の 可鶏山かけやまの かづの木の かづさねも かづさかずとも
可鶏山かけやまの カズの木ちゃうが うちのこと かどわかしてや 門めてても》
                          ―東 歌―(巻十四・三四三二)
奥山の 真木まき板戸いたどを とどとして 我が開かむに 入りさね
《奥山の 丈夫な木の戸 ごとごとと うち開けるから はいり早よ共寝よ》
                          ―東 歌―(巻十四・三四六七)
伊香保いかほろの 八尺やさか堰塞ゐでに 立つのじの あらはろまでも さをさてば
《伊香保ある せきに立つ虹 くっきりや 表立つほど 寝続けたいで》
                          ―東 歌―(巻十四・三四一四)
子持山こもちやま 若鶏冠木わかかへるでの 黄葉もみつまで もとふ あど
かえでの葉 若葉黄葉いろづき するまでも ずっと共寝てたい どないやお前》
                          ―東 歌―(巻十四・三四九四)
かみ 安蘇あそ真麻群まそむら かきむだき 寝れど飽かぬを あどがせむ
麻束あさたばを かかえるように お前抱き 寝たけど足らん どしたらんや》
                          ―東 歌―(巻十四・三四〇四)
高麗錦こまにしき 紐解きけて るがに ろとかも あやにかなしき
綺麗きれえ帯 いて共寝といて その上に どないんや この可愛かわい児は》
                          ―東 歌―(巻十四・三四六五)
かないもを 弓束ゆづかべ巻き 如己男もころをの こととし言はば いや片増かたましに
《お前抱き 恋敵やつと変わらん うんなら これならどうや まだ足らんかい》
                          ―東 歌―(巻十四・三四八六)



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■日めくり万葉集Vol・2(164)田子の浦ゆ

2012年12月22日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
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【十一月十一日】放映分
田児の浦ゆ うちでて見れば ま白にぞ 富士の高嶺に 雪は降りける
《田子の浦 回って見たら パッと富士 山上やまうえ白う 雪降っとるで》
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻三・三一八)

【万葉歌みじかものがたり】田児 の浦ゆ》

 うわぁ 富士のお山だ!」
赤人あかひとは 思わず声を上げた

駿河の国 庵原郡いばらのこおり由比ゆい
狭隘きょうあいな 崖にかる海沿いのみち
足元 に気を集め 歩を運ぶ赤人
やっと険路けんろはずれ 崖のふちめぐる平坦道に
ふと 仰ぐ目に 富士が飛びこむ
 突く 霊峰
まぶしい  雪
威容 に虚を突かれ 立ちつくす赤人
やがて 
胸深く 思いがあふれ 調べとなる

田児の浦ゆ うちでて見れば ま白にぞ 富士の高嶺に 雪は降りける
《田子の浦 回って見たら パッと富士 山上やまうえ白う 雪降っとるで》
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻三・三一八)

生まれたばかりの歌を 反芻はんすうする赤人
 思わず出来てしまった歌だ
この歌を生かすには たたえる長歌が欲しい)

天地あめつちの わかれし時ゆ 
かむさびて 高くたふとき 
駿河 なる 富士の高嶺を 
あまの原 振りけ見れば 
渡る日の 影もかくらひ 
照る 月の 光も見えず 
白雲 も い行きはばかり 
 じくぞ 雪は降りける 
語り つぎ 言ひつぎ行かむ 
富士 の高嶺は

天地てんちのできた 昔から 
神々こうごうしいて 崇高けだかしい
駿河 の国の 富士の山
振り仰いで も 高過ぎて
日ぃ隠されて  よう見えん 
 の光も 届かへん
白雲なずみ よう行かん
雪は常時いっつも 降っとおる
語り伝えて  言い継ごう
富士 の高嶺の この尊さを》
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻三・三一七)

赤人をうた上手じょうずとする 長・短歌の誕生であった



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■日めくり万葉集Vol・2(163)古に

2012年12月19日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
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【十一月十日】放映分

いにしへに ありけむ人も わがごとか いもに恋ひつつ ねかてずけむ
おんなじか 昔の人も ワシみたい 焦がれ恋して 寝られへんのは》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻四・四九七)

【万葉歌みじかものがたり】《浦の浜木綿はまゆふ

 なんとした ことか)
人麻呂は 苛立いらだっていた
文机ふづくえを前に 小半時こはんとき
(ええい 言葉が むすべぬ
 天皇すめらみことの 寿ことほぎ歌 
 身罷みまかびとへの き歌
   次々と 口をついて 出るものを
 女人おみなへの 思い歌
 それ も わが思い歌 となると 結べぬ)
人麻呂は 仰向あおむだおれに 天井を見る
 を つぶる
閉じた目に 軽郎女かるのいらつめ

「抜くのじゃ おのが身から 思いを抜くのじゃ」
もう一人の 人麻呂が ささやきかける

み熊野の 浦の浜木綿はまゆふ 百重ももへなす こころへど ただはぬかも
浜木綿はまゆうの 葉ぁ幾重いっぱいに 茂ってる 思いもやが よう逢い行かん》
いにしへに ありけむ人も わがごとか いもに恋ひつつ ねかてずけむ
おんなじか 昔の人も ワシみたい 焦がれ恋して 寝られへんのは》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻四・四九六、四九七)
 出来たぞ 出来た
 われにも あらぬ うぶな歌じゃ)

 この歌を 贈るとして 返し歌は どうかな)
今のみの 行事わざにはあらず いにしへの 人ぞまさりて にさへきし
《今だけの こととはちごて 昔かて 恋して泣いた 今よりもっと》
百重ももへにも 来及きしかぬかもと 思へかも 君が使つかひの 見れどかざらむ
何遍なんべんも 来て欲し思う あんたから 使い来るたび 見るたびずっと》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻四・四九八、四九九)

(自分で 返し歌まで むか)
人麻呂のほおは ゆるんでいる

喪の明けやらない 人麻呂に 恋のやっこが 取り付いた

未通女をとめらが そで布留山ふるやまの 瑞垣みづかきの 久しき時ゆ 思ひきわれは
《布留山の 瑞垣みずがき古い なごずっと なごうずうっと 思てんやわし》
夏野行く 牡鹿をしかの角の つかも 妹が心を 忘れて思へや
なつ牡鹿しかの つの短いで そんなも 忘れてへんで お前の気持ち》
玉衣たまきぬの さゐさゐしづみ 家の妹に 物言はずにて 思ひかねつも
《バタバタと 出て来て仕舞しもて お前には 何も言わんで 気にしとんやで》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻四・五〇一~五〇三)
君が家に わが住坂すみさかの 家道いへぢをも 我れは忘れじ 命死なずは
 あんた家 うち住みたいで そこへ行く 道忘れへん 死ぬまでずっと》
                         ―柿本人麻呂妻かきのもとのひとまろのつま―(巻四・五〇四)

離れ住む二人の 歌り取りが続く



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■日めくり万葉集Vol・2(162)振分けの

2012年12月15日 | 日めくり万葉集
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【十一月九日】放映分
振分けの 髪を短み 青草あをくさを 髪にくらむ いもをしぞ思ふ
かみの毛が みじこ青草くさを わえ付け 大人おとなってる あの児可愛かいらし》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五四〇)
  

【万葉歌みじかものがたり】かみくらむ》

巻十一に 納めるは 四百九十しひゃくくじゅうの 歌の数
人麻呂歌集かしゅを 除いても 三二九さんにいきゅうの 大歌群
ここに集めし 内容は 全て揃って 相聞そうもん
万葉集の 又の名を 恋歌こいうた歌集と 言う所以ゆえん
旋頭歌せどうか 短歌 歌かたち 内容表現 いろいろに
正述せいじゅつ心緒しんしょ 問答 寄物陳思きぶつちんしに 比喩ひゆの歌

万葉集に む形 編者意向の うたじゅん
 形式と 表現の 種類同じを 並べしが
これら全てを きほぐし 歌内容に 目を留めて
恋の諸相しょそうを 拠所よりどこに 並べてみたで ご覧あれ


 の始まり 昔も今も
何のことない 一寸ちょとした弾み
男単純 見た目にれる
惚れてのぼせて あとも出来ん

奥山の がくりて 行く水の おと聞きしより つね忘らえず
さわやかな かくながれの 水音の 評判ひょうばん聞いて 気もそぞろやで》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七一一)
                                   (評判=あの児の評判)
振分けの 髪を短み 青草あをくさを 髪にくらむ いもをしぞ思ふ
かみの毛が みじこ青草くさを わえ付け 大人おとなってる あの児可愛かいらし》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五四〇)
  
あしひきの 山鳥やまどりの尾の ひと越え 一目ひとめ見し子に 恋ふべきものか
《山一つ 越えたとこる あの児見て 一目れやて そんなんあるか》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六九四)
                                      (
花ぐはし あしかきしに ただ一目ひとめ 相見あひみし子ゆゑ 千度ちたび嘆きつ
またぞろに 溜息ためいき出るん 垣根し ちらと目のた あの児の所為せいや》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五六五)
  
色にでて ひば人見て 知りぬべし 心のうちの こもづまはも
《顔色に がれたら 見つかるな 心で思う 内緒ないしょの児やで》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五六六)
  
心には 千重ちへしくしくに 思へども 使つかひらむ すべの知らなく
《心では せんまんもに 思うても 使つかかた わし分からへん》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五五二)

旋頭歌せどうか】元掛け合いの二人歌 一人二役歌もあり
       五七七を二度詠う
正述せいじゅつ心緒しんしょ】心思いを直接に 物に寄せずに詠う歌
寄物陳思きぶつちんし】景色や物にたくし付け 心思いを詠う歌
比喩ひゆ歌】人の姿態すがたおこないや 感情こころを物に置き換えて
      寓意ぐうい含ませ詠う歌
【問答】二つの歌を並べ置き 掛け合い機微きびを詠う歌



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■日めくり万葉集Vol・2(161)ぬばたまの

2012年12月12日 | 日めくり万葉集
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【十一月八日】放映分
ぬばたまの 夜さりれば 巻向まきむくの 川音かはと高しも 嵐かも
よるけた 川の水音 こなった 今に一荒ひとあれ じき来るみたい》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一一〇一)

【万葉歌みじかものがたり】川音かはと高しも》

人麻呂 は 馬を急がせていた
ここしばらく 吉野行幸みゆきの はからい事で
つまいが 遠ざかっていた
昨日 降った 春の雪
ぬかるみ  
 の足取りが もどかしい

新妻にいづまを待たせて仕舞しもうた 巻向郎女まきむくのいらつめ
  待ち焦がれているじゃろう 急がねば)
三輪山 を 右手に見ながら
馬は 三輪の大社おおやしろを過ぎた 
泥道 が続く
霧の立ち込める中 檜原ひばらもりが見える

巻向まきむくの 檜原ひばらに立てる 春霞 おぼにしおもはば なづみめやも
《すぐ消える 霞みたいな 思いちゃう そんな気ぃなら 無理してんわ》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻十・一八一三)
夕闇の 訪れに 湿しめの広がり
穴師あなし川の 橋を渡り 川上に 馬首ばしゅめぐらす
 川に 波 立ってきたぞ)
穴師あなしがは 川波立ちぬ まきむくの つきたけに くも立てるらし
《穴師川 波立ってるで ざわざわと つきたけに 雲出てるがな》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一〇八七)
 おお 瀬が 鳴っとおる)
あしひきの 山川やまがはの瀬の 鳴るなへに 弓月ゆつきたけに 雲立ち渡る
《山筋の 川瀬鳴ってる やっぱりな つきたけに 雨雲あめぐも出てる》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一〇八八)

 今 戻った」
 を 飛び降り 門前から 呼びかける
まろぶが如き 出迎えの 巻向郎女いらつめ
 雨には 合わずに済んだぞ」
微笑ほほえみ おも伏せる 巻向郎女いらつめ

夕餉ゆうげを 済ませ
くつろぎ の ひと時
山間やまあい静寂せいじゃくに 川音かわおとが 高い
ぬばたまの 夜さりれば 巻向まきむくの 川音かはと高しも 嵐かも
よるけた 川の水音 こなった 今に一荒ひとあれ じき来るみたい》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ歌集―(巻七・一一〇一)

至福しふくの一夜
激しかった雨脚あまあし 次第に 遠のく



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■日めくり万葉集Vol・2(160)去年見てし

2012年12月08日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
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【十一月七日】放映分
去年こぞ見てし 秋の月夜つくよは 照らせども あひ見しいもは いや年さかる
去年きょねん見た 秋のえ月 今もえ 一緒いっしょ見たのに もうらんがな》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻二・二一一)

【万葉歌みじかものがたり】引手ひきての山に》

巻向郎女まきむくのいらつめと 人麻呂の 住みどころ
穴師あなしがわのほとり
庭先の川堤かわづつみに 大きなつきの木が 葉を広げる

うつせみと 思ひし時に たづさへて わが二人見し 走出はしりでの つつみに立てる つきの木の こちごちのの 春の葉の しげきが如く 思へりし いもにはあれど 頼めりし らにはあれど 
《元気る時 二人で見たな もん出たとこの 堤のけやき 枝満々いっぱいに 茂った若葉 そんな満々いっぱい 好きたお前 末おもた お前やけども》
世間よのなかを そむきし得ねば かぎろひの 燃ゆる荒野あらのに 白拷しろたへの 天領巾あまひれがくり 鳥じもの 朝ちいまして 入日いりひなす かくりにしかば 
《世の中ならい 逆らい出来ず 陽炎かげろう消えて てん行くみたい 鳥飛び立って 帰らんみたい 太陽ィ沈むよに 隠れて仕舞しもた》
我妹子わぎもこが 形見かたみに置ける みどり児の ひ泣くごとに 取りあたふ 物し無ければ をとこじもの わきはさみ持ち 
《残った赤ん 泣くたびごとに 取って与える 物とてうて 乳もんのに 胸抱きかかえ》
我妹子わぎもこと 二人わが寝し まくら付く つまの内に 昼はも うらさび暮し 夜はも 息づき明し 嘆けども むすべ知らに 恋ふれども よしを無み
《共に暮らした 住まいにこもり 昼間ひるまぼっとし よるためいきし なげいてみても どうにもならん 恋しがっても うこと出来でけん》
大鳥おほとりの 羽易はがひの山に わが恋ふる いもいますと 人の言へば 石根いはねさくみて なづみし けくもぞなき 
うしろの山で お前の姿 見たと聞いたら いわみち分けて 探しに来たが え目はうて》
 
うつせみと 思ひし妹が 玉かぎる ほのかにだにも 見えぬ思へぱ
《生きてるはずと おもてたお前 影も形も 見えんなった》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻二・二一〇)
衾道ふすまぢを 引手ひきての山に いもを置きて山路やまぢを行けば 生けりともなし
引手ひきて山 お前まつって 降りてきた ひとり生きてく 気ィならんがな》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻二・二一二)
去年こぞ見てし 秋の月夜つくよは 照らせども あひ見しいもは いや年さかる
去年きょねん見た 秋のえ月 今もえ 一緒いっしょ見たのに もうらんがな》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻二・二一一)

つきの木の住みどころ 嘆きの枯れない 人麻呂がいる



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■日めくり万葉集Vol・2(159)秋萩の

2012年12月05日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【十一月四日】放映分
秋萩あきはぎの 散りゆく見れば おほほしみ 妻恋つまごひすらし さを鹿鳴くも
秋萩あきはぎが 散って行くのん さみしいて はぎつま呼んで 雄鹿おじか鳴きよる》
                           ―作者未詳―(巻十・二一五〇)

【万葉歌みじかものがたり】秋萩あきはぎしのぎ》

 鹿鳴き】
鹿をしとうて あきはぎ咲けば
萩を求めて 鹿鳴きしき
鹿 と秋萩 連れ合い同士
散るのしいと 声響かせる

秋萩の 咲きたる野辺のへは さを鹿ぞ 露をけつつ 妻問つまどひしける
おす鹿しかが つゆえだ別けて かよたんは ここの秋萩 咲いてる野ぉや》
                           ―作者未詳―(巻十・二一五三)

秋萩あきはぎの 散り過ぎゆかば さを鹿は わび鳴きせむな 見ずはともしみ
《秋萩が 散ると雄鹿おすしか わびびしいに 鳴くんやろうな もう逢えんから》
                           ―作者未詳―(巻十・二一五二)
  
秋萩あきはぎの 散りゆく見れば おほほしみ 妻恋つまごひすらし さを鹿鳴くも
秋萩あきはぎが 散って行くのん さみしいて はぎつま呼んで 雄鹿おじか鳴きよる》
                           ―作者未詳―(巻十・二一五〇)
  
雁はぬ 萩は散りぬと さを鹿の 鳴くなる声も うらぶれにけり
《雁来たで はぎ散ったでと 雄鹿おじか鳴く その声なんか さみし聞こえる》
                           ―作者未詳―(巻十・二一四四)
  
秋萩の 咲たる野辺のへに さを鹿は 散らまくしみ 鳴き行くものを
秋萩あきはぎの 咲いてる野ぉで おす鹿しかは はぎ散るして 鳴きとおるんや》
                           ―作者未詳―(巻十・二一五五)
  
なぞ鹿の わび鳴きすなる けだしくも 秋野あきのの萩や しげく散るらむ
《なんで鹿 わびし鳴くんか そらきっと 秋野あきの咲くはぎ ろ散るからや》
                           ―作者未詳―(巻十・二一五四)
  
さを鹿しかの 妻ととのふと 鳴く声の 至らむきはみ なび萩原はぎはら
おす鹿しかが い呼ぼと 鳴く声が 届く果てまで なびけよはぎよ》
                           ―作者未詳―(巻十・二一四二)
  
君に恋ひ うらぶれれば しきの 秋萩あきはぎしのぎ さを鹿鳴くも
がれして しょんぼりどきに 野ぉの秋萩はぎ 押し別け雄鹿おじか 鳴く声わびし》
                           ―作者未詳―(巻十・二一四三)



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■日めくり万葉集Vol・2(158)そき板持ち

2012年12月01日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
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【十一月三日】放映分
そき板もち ける板目の あはざらば いかにせむとか 我が寝けむ
いまえが あとわへんて なったとき どうおもて うち共寝たんやろ》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六五〇)
                         (そき板=薄くそいだ板 これでいた板目いためは合いにくい)

【万葉歌みじかものがたり】《打てどもりず》

独りごち歌 くくるのは
他男ほか共寝る児に がれる男
あと思わんと 共寝仕舞た女
どこまでりん こいやっこ

ころも りといめに見つ うつつには いづれの人の ことしげけむ
《結ばれた 夢見たけども じつとこ 誰とも噂 立たへんのんや》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六二一)
                               (ころもを着る=結婚する)

あま飛ぶや かるやしろの いはつき 幾代いくよまであらむ こもづまぞも
かる神社やしろ まつつき神木 永久とこしえや 内緒ないしょの妻は いつまでやろか》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六五六)
  
こもの したに恋ふれば らず 人に語りつ むべきものを
むねなかで こらえてた恋 たまらんで しゃべって仕舞しもた たあかんのに》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七一九)
  
我妹子わぎもこが なにとも我れを 思はねば ふふめる花の に咲きぬべし
《気にすらも あの児んので れて仕舞て めたむねなか 出て仕舞しまや》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七八三)
  
しるしなき 恋をもするか ゆふされば 人の手まきて らむ子ゆゑに
《何でまあ こんな詰まらん 恋するか ばん他男ほかのと 共寝るあの児やに》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五九九)
  
そき板もち ける板目の あはざらば いかにせむとか 我が寝けむ
いまえが あとわへんて なったとき どうおもて うち共寝たんやろ》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六五〇)
(そき板=薄くそいだ板 これでいた板目いためは合いにくい)
おも忘れ だにもえやと 手握たにぎりて 打てどもりず 恋といふやっこ
《せめて顔 忘れさそかと どついても 恋のやっこめ りんとるわ》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五七四


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