犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(243)出でて行きし

2014年02月26日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【三月十五日】放映分
出でて行きし 日を数へつつ 今日けふ今日けふと を待たすらむ 父母ちちははらはも
《出てからも 今か今かと 指折って 待ってるやろな おとうとおかあ
                    ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・八九〇)


【万葉歌みじかものがたり】みやこを見むと》

肥後国ひごのくに益城郡ましきのこおりの国司の使い 
筑前国府へ突然のおとな
相撲使すもうづかいとして 都のぼりの途上 
若い従者 大伴君熊凝おおとものきみくまこり急死
親元 への 急ぎ使いに 馬をとの要請
一部始終を聞き 熊凝くまこりの心を 思いる 憶良

うち日さす 宮へのぼると 垂乳たらちしや 母が手はなれ つね知らぬ 国の奥処おくかを 百重山ももへやま 越えて過ぎ行き 何時いつしかも みやこを見むと 思ひつつ 語らひれど 
《花の都へ 行くんやと 恋しおんと 別れ来て 知らへん国の 奥深う 山を多数なんぼも 越えて来て その内みやこ 見られると うてみんなと 来たけども》
おのが身し いたはしければ 玉桙たまほこの 道の隈廻くまみに 草手折たをり 柴取り敷きて とこじもの うちして 思ひつつ 嘆きせらく 
《折り悪る病気 なって仕舞て 道端そばで 草や柴 敷いて作った 仮のとこ 倒れ伏し寝て あぁあ言て 横なったまま 思うんは》
国に在らば 父取り見まし 家に在らば 母取り見まし 世間よのなかは かくのみならし いぬじもの 道にしてや いのちぎなむ
故郷くにったら おっあん 家ったなら おっさん 枕そば来て 看取みとるのに ままにならんと 道のはた ここで死ぬんか 犬みたい》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・八八六)

たらちしの 母が目見ずて おほほしく 何方いづち向きてか が別るらむ
かあちゃんに 会わんとくか 鬱々うつうつと 何処どこどないして 行ったらんや》
常知らぬ 道の長手ながてを くれくれと 如何いかにか行かむ かりては無しに
《行ったこと い道続く あの世旅 食糧めしも持たんと どないに行くか》
家に在りて 母が取りば 慰むる 心はあらまし 死なば死ぬとも
《家って お看取みとって くれるなら 例え死んでも くやまへんのに》
出でて行きし 日を数へつつ 今日けふ今日けふと を待たすらむ 父母ちちははらはも
《出てからも 今か今かと 指折って 待ってるやろな おとうとおかあ
一世ひとよには 二遍ふたたび見えぬ 父母ちちははを 置きてや長く が別れなむ
《この世では もう会われへん ととかか 残してくか あの世へひとり》
                         ―山上憶良やまのうえのおくら―(巻五・八八七~八九一)

子煩悩こぼんのう憶良に 他人ひとの身とも思えぬ 痛みが走る
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大伴君熊凝おおとものきみくまこりの歌二首】
くに遠き 道の長手ながてをおほほしく 今日けふや過ぎなむ ことどひもなく
故郷くにとおに 来た道中どうちゅうで 心細さみしいに 今日死ぬのんか 親声こえ聞かんまま》
                         ―麻田陽春あさだのやす―(巻五・八八四)
朝露あさつゆの やすきが身 他国ひとくにに 過ぎかてぬかも 親の目を
朝露つゆみたい 消えて仕舞うんか たびぞらで 死ぬに死ねんが 親いとうて》
                         ―麻田陽春あさだのやす―(巻五・八八五)



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古事記編纂1300年を期し 一大叙事詩を作ってみました
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