犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(009)見れど飽かぬ

2011年04月30日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は ご覧になれません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【四月七日】放映分

見れど飽かぬ 吉野の河の 常滑とこなめの 絶ゆることなく また還り見む
  《見飽けへん 吉野の川に また来たい またまた来たい ずうっとずっと》 
                         ―柿本人麻呂―(巻一・三七)



【万葉歌みじかものがたり】《見れど飽かむ》

【宮滝の激湍】


持統天皇の治世も  ようやく 安定を見たころ 
天皇は 思い起していた 
(吉野 
 夫大海人おおあまと 越えた雪の峰 氷雨ひさめふる山路やまみち 父天智との確執かくしつの後 手に入れた 地位 
 ああ 吉野が恋しい  そうじゃ 離宮を作ろう 宮滝に離宮を) 

風光明媚な 吉野宮滝 
立派に った離宮
持統女帝の 吉野行幸みゆきが 重なる
行幸の 従駕人じゅうがびと 
そこには 必ず 人麻呂の姿があった 
みかどへの 捧げ歌 人麻呂はうた
 
やすみしし わご大君の きこす あめの下に 
国はしも さはにあれども 山川の 清き河内かふちと 
御心を 吉野の国の 花らふ 秋津の野に 宮柱 太敷ふとしきませば

天皇おおきみの お治めなさる 国々は 仰山ぎょうさんあるが
 山川の 綺麗きれえなとこと 気に入りの 吉野の国の 秋津野あきつのに 宮殿みやどの作り おわしまし》
百磯城ももしきの 大宮人は 船並ふねなめて 朝川渡り 舟競ふなこそひ 夕河渡る 
《お連れの人は 朝となく ゆうべとなしに 船遊び》
この川の 絶ゆることなく この山の いや高知らす  
水激みずたぎつ たぎの都は 見れどかぬかも

《流れ続ける 川水と たこたこうに 茂る山 その滝の宮 見飽けへん》
                         ―柿本人麻呂―(巻一・三六)

《見飽けへん 吉野の川に また来たい またまた来たい ずうっとずっと》 
                         ―柿本人麻呂―(巻一・三七)

見れど飽かぬ 吉野の河の 常滑とこなめの 絶ゆることなく また還り見む
人麻呂は 得心した 
(これぞ 神の宮 寿ことほぎの歌)


――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
<訳してみよう万葉集>へ

【万葉歌みじか物語】はこちら



<万葉歌みじかものがたり>へ





■リンク先

      
      

■日めくり万葉集Vol・2(008)一昨日も

2011年04月27日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は ご覧になれません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【四月六日】放映分

一昨日をとつひも 昨日きのふ今日けふも 見つれども 明日あすさへ見まく しき君かも
  《一昨日おとついも 昨日きのう今日きょうも うたのに 明日あすも逢いたい 門部王あんたさんです》


【万葉歌みじかものがたり】かはづ聞かせず》

左為王さいおう 葛城かつらぎ王 弟
さすがに  王族の出 
鷹揚おうようたる 物腰 取り巻き官人に 受けがよい

左為王さいおう様 もうお帰りですか
 宴のたけなわ 今がと言うところ に」
「ハハハ もう十分に 堪能たんのう致した
 あとは 皆々で よろしゅうに ご歓談を」

思ほえず ましし君を 佐保川の かはづ聞かせず 帰しつるかも
《珍しい おしやったに 佐保川さほ河鹿かじか 聞かしもせんと なして仕舞しもた》
                         ―按作くらつくり村主のすぐり益人ますひと(巻六・一〇〇四)

「親父殿 いま一時ひととき おいでになれば
 皆も  喜びましょうに お悪うございますよ」
「お相伴しょうばんが 物うでない
 おぬし 馳走ちそうが しいのであろう
 次じゃ  次の席が 待って居る」

辿たどり着いたは 弾正尹だんじょうのかみ 門部王かどべおうが屋敷
「これは これは 左為王さいおう
 本日は 参向さんこうかなわぬとのおお
 十分なご用意  致しておりませぬ」
「大事ない 腹はもう満腹くちる」

あらかじめ 君まさむと 知らせば かどにやどにも 玉敷かましを
《前もって 佐為卿あんたるのん 知ってたら 門や庭にも 玉いたのに》
                         ―門部王かどべのおおきみ(巻六・一〇一三)
父に代り 息子橘文成あやなりが 応じる
一昨日をとつひも 昨日きのふ今日けふも 見つれども 明日あすさへ見まく しき君かも
一昨日おとついも 昨日きのう今日きょうも うたのに 明日あすも逢いたい 門部王あんたさんです》
                         ―橘文成たちばなのあやなり(巻六・一〇一四)
玉敷きて 待たましよりは たけそかに きた今夜こよひし 楽しく思ほゆ
《用意して 待つのんよりか 突然とつぜんに られるんも うれしもんです》
                         ―榎井王えのいのおおきみ(巻六・一〇一五)
          ―――――――――――――――
左為王さいおう近く つかえの侍女じじょは 
つときつうて 夜昼なしで
宿がれんと おっとに逢えず 
鬱屈うっくつまり 恋焦こがれがたぎ
ある夢見に おっとでて 
やれうれしやと 双手もろてを伸ばし
抱きつきみるに くう切るかいな 
糠喜ぬかよろびに 気付いた侍女じじょ
嘆きいや増し 叫びてうたう 

いひめど うまくもあらず
  ぬれども 安くもあらず
    あかねさす 君が心し 忘れかねつも

めしても 美味おいしあらへん
  寝てたかて  良う寝られへん
     思うんは やさしあんたの こころづかいや》
                         ―左為王婢さいのおおきみがまかだち(巻十六・三八五七)
聞いた左為王さいおう あわれに思い 
泊まり勤めを 長きにゆる


――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
<訳してみよう万葉集>へ

【万葉歌みじか物語】はこちら



<万葉歌みじかものがたり>へ





■リンク先

      
      

■日めくり万葉集Vol・2(007)物皆は

2011年04月23日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は ご覧になれません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【四月五日】放映分

ものみなは あらたしきよし ただしくも 人はりにし よろしかるべし

  《何事なにごとも 新しえで そやかても 人は古いが えのんちゃうか》
                          ―作者未詳―<巻十・一八八五> 


【万葉歌みじかものがたり】《人はりにし》

年が明ければ よわいが増える
よわいさかなに 年寄り茶化ちゃか
しとしと雨が 春趣おもむき深め
恋のときめき  春こそなれば

冬過ぎて 春しきたれば 年月としつきは 新たなれども 人はりゆく
《冬過ぎて 春になったら 新年や でも人だけは ふるなってくで》
                         ―作者未詳―<巻十・一八八四> 
 
ものみなは あらたしきよし ただしくも 人はりにし よろしかるべし
何事なにごとも 新しえで そやかても 人は古いが えのんちゃうか》
                          ―作者未詳―<巻十・一八八五> 
 
春の雨に ありけるものを 立ちかくり いも家道いへぢに この日暮らしつ
う程の こと無い春雨あめを けとって たずね行く道 日ィ暮れて仕舞た》
                          ―作者未詳 ―<巻十・一八七七>
 
今行きて 聞くものにもが 明日香あすかがは 春雨はるさめ降りて たぎつ瀬の
《すぐ行って 聞きたいもんや 春雨あめ降って 流れ激しい 明日香川あすか瀬音せおと
                          ―作者未詳 ―<巻十・一八七八>
 
住吉すみのえの 里行きしかば 春花はるはなの いやめづらしき 君に逢へるかも
住吉すみのえの 里へ行ったら 春花はなみたい 立派ええ人あんた えたでほんま》
                          ―作者未詳― <巻十・一八八六>

【旋頭歌】 
春日かすがなる 御笠みかさの山に 月もでぬかも
佐紀さきやまに 咲ける桜の 花の見ゆべく

春日かすがある 御笠みかさの山に 月しな
 佐紀山さきで咲く 桜の花を 見てみたいんで》
                          ―作者未詳 ―<巻十・一八八七>
 
白雪の つねく冬は 過ぎにけらしも
はるかすみ たなびく野辺のへの 鴬鳴くも

《白雪が 積もり降る冬 ったらしいな
 春霞はるがすみ 棚引たなびく野ぉで 鳴く鶯や》
                          ―作者未詳 ―<巻十・一八八八>

【比喩歌】 
我がやどの ももの下に 月夜つくよさし 下心したごころよし うたてこのころ
《庭にある もも木の下 月照らし なんや知らんが 楽し心や》
うち童女むすめ やっと大人に なったんや 月のしるしや 目出度めでたいことに>
                          ―作者未詳 ―<巻十・一八八九>


――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
<訳してみよう万葉集>へ

【万葉歌みじか物語】はこちら



<万葉歌みじかものがたり>へ





■リンク先

      
      

■日めくり万葉集Vol・2(006)なまよみの

2011年04月20日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は ご覧になれません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【四月四日】放映分

なまよみの 甲斐かひの国 うち寄する 駿河するがの国と
   こちごちの 国のみなかゆ 出で立てる 不尽ふじ高嶺たかねは・・・

《甲斐のお国と 駿河国するがくに 二つの国の まん中に デンと控える 富士の山・・・》 



【万葉歌みじかものがたり】《火もちちつつ》
東海の道 
西にたどる一行がいる 
任解かれて 上京の旅  藤原宇合主従だ 
養老五年〔721〕春 
菜の花の向こう 富士が見える 
裾を 大きく引き  
見渡す限りの  野が 西に東に 広がっている
中ほどに 雲が巻き 
いただき 雪の中 噴煙けむりが昇り 火が赤い

一行に 遅れて 虫麻呂 筆を運ぶ 

なまよみの 甲斐かひの国 うち寄する 駿河するがの国と こちごちの 国のみなか
出で立てる 不尽ふじ高嶺たかね
 
《甲斐のお国と 駿河国するがくに 二つの国の まん中に デンと控える 富士の山》 
天雲あまぐもも い行きはばかり 飛ぶ鳥も 飛びものぼらず 
燃ゆる火を 雪もちち 降る雪を 火もちちつつ 
言ひもえず づけも知らず くすしくも います神かも
 
てん行く雲も 行きよどみ 空飛ぶ鳥も のぼられん
 噴火の炎  雪が消す 降り来る雪も 火が溶かす
 言うことなしの 神の山》 
石花の海と 名づけてあるも その山の つつめる海そ 
不尽河ふじがはと 人の渡るも その山の 水のたぎちそ
 
石花の海うんも せき止め湖 富士川流れも き水や》
もとの 大和やまとの国の しづめとも います神かも たからとも 
れる山かも 駿河なる 不尽の高嶺は 見れどかぬかも

《鎮めの山や この国の 宝物たからもんやで この国の ほんまえ山 富士の山》
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻三・三一九〕 

不尽ふじに 降り置く雪は 六月みなつきの 十五日もちゆれば その降りけり
富士山ふじさんの 積もった雪は 真夏日に 消えたらその晩 もう降るんやで》 
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻三・三二〇〕 
不尽の嶺を 高みかしこみ 天雲あまぐもも い行きはばかり たなびくものを
《雲行かず 棚引たなびいてるは 富士山を 高こうて偉い おもてるよって》
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻三・三二一〕 

〔わしも 富士のように れぬものか
 雪をかぶっていれば いい 顔色見せずに
 雲が ちまたわずらい おおってくれる 
 誰もが あがめ たてまつる
 何よりも 孤高ひとりでいられる〕
思いとは別に 虫麻呂の心は つぶやく 
〔独りは・・・〕 


――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
<訳してみよう万葉集>へ

【万葉歌みじか物語】はこちら



<万葉歌みじかものがたり>へ





■リンク先

      
      

■日めくり万葉集Vol・2(005)あをによし

2011年04月16日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は ご覧になれません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【四月一日】放映分

あをよし 奈良の都に たなびける あま白雲しらくも 見れどかぬかも

《奈良みやこ 空に棚引く 白雲は 何時いつなんどきも 見飽きんこっちゃ》
                         ―遣新羅使人 ―〔巻十五・三六〇二〕




【万葉歌みじかものがたり】《処女をとめを過ぎて》

家を離れた 旅行く遣使つかい
好天続き 遊興ゆうきょう気分
行き先不安 何処どこかへ忘れ
土地土地ゆかり みはしゃぐ

あをよし 奈良の都に たなびける あま白雲しらくも 見れどかぬかも
《奈良みやこ 空に棚引く 白雲は 何時いつなんどきも 見飽きんこっちゃ》
                         ―遣新羅使人 ―〔巻十五・三六〇二〕
青柳あをやぎの 枝おろし たねき ゆゆしき君に 恋ひ渡るかも
やなぎえだ し祈り蒔く 神のたね ゆかしあんたに うちれてんや》
                         ―遣新羅使人 ―〔巻十五・三六〇三〕
いもそで 別れてひさに なりぬれど 一日ひとひも妹を 忘れて思へや
《お前とは 逢わんでなごう なるけども わし片時も 忘れてへんで》
                         ―遣新羅使人 ―〔巻十五・三六〇四〕
わたつみの 海にでたる 飾磨しかまがは 絶えむ日にこそ が恋やまめ
《わしの恋 切れて仕舞うんは 飾磨川 水枯れて仕舞う 日ィ来た時や》
                         ―遣新羅使人 ―〔巻十五・三六〇五〕
玉藻刈る 処女をとめを過ぎて 夏草の 野島が崎に いほりす我れは
《藻ぉをる 処女おとめ過ぎ 夏草の 生えてる野島 そこ泊るんや》
                         ―遣新羅使人 ―〔巻十五・三六〇六〕
白栲しろたへの 藤江の浦に いざりする 海人あまとや見らむ 旅く我れを
《藤江浦  釣りの漁師と 見るやろか 旅してわしは 行くんやけども》
                         ―遣新羅使人 ―〔巻十五・三六〇七〕
天離あまざかる ひな長道ながぢを 恋ひれば 明石のより 家のあたり見ゆ
《長い道 恋し恋しと 明石あかし来た 海峡かいきょう向こは 家のあたりや》
                         ―遣新羅使人 ―〔巻十五・三六〇八〕
武庫むこの海の 庭よくあらし いざりする 海人あま釣船つりふね 波のうへゆ見ゆ
《武庫の海 いでるらしい 波の上 りょうの釣船 浮いて見えてる》
                         ―遣新羅使人 ―〔巻十五・三六〇九〕
安胡あこの浦に 船乗ふなのりすらむ 娘子をとめらが あかの裾に しほつらむか
安胡あこの浦 舟遊びする 乙女らの 裾濡らすかな 潮満ちてきて》
                         ―遣新羅使人 ―〔巻十五・三六一〇〕
大船に かぢしじき 海原うなはらを 漕ぎて渡る 月人つきひと壮士をとこ
《大船に 梶付け揃え 月人壮士おつきさん 空の大海おおうみ 漕ぎ渡ってる》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―〔巻十五・三六一一〕



――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
<訳してみよう万葉集>へ

【万葉歌みじか物語】はこちら



<万葉歌みじかものがたり>へ





■リンク先

      
      

■日めくり万葉集Vol・2(004)面形の

2011年04月13日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は ご覧になれません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【三月三一日】放映分

面形おもかたの 忘るとあらば あづきなく をとこじものや 恋ひつつらむ

面差おもざしを 忘れる時が あるんなら あたら男が がれるもんか》【正述心緒】
                         ―作者未詳 巻十一・二五八〇



【万葉歌みじかものがたり】山鳥やまどりの》

どんな威張いばって にしても
恋に落ちたら 男はみじ
日頃ひごろ言うこと 何処どこ行て仕舞しも
慣れん恋路に 狼狽うろたえばかり

大夫ますらをと 思へる我れを かくばかり 恋せしむるは しくはありけり
《男やと おもてるわしが なんのこと 恋に落ちるて どう仕様しょもないな》【正述心緒】
                         ―作者未詳 巻十一・二五八四
 
面形おもかたの 忘るとあらば あづきなく をとこじものや 恋ひつつらむ
面差おもざしを 忘れる時が あるんなら あたら男が がれるもんか》【正述心緒】
                         ―作者未詳 巻十一・二五八〇
 
つるぎ大刀たち 身にふる 大夫ますらをや こひといふものを しのびかねてむ
《身に大刀たちを びたこのわし 男やに えきれんのか 恋のごときに》【寄物陳思】
                         ―作者未詳 巻十一・二六三五
 
すがの根の ねもころいもに 恋ふるにし 大夫ますらをごころ 思ほえぬかも
心底しんそこに あの児に恋し 男やに しっかりごころ くして仕舞しもた》【寄物陳思】
                         ―作者未詳 巻十一・二七五八
 
独り寝る夜に  夜更けは長い
寝付き出来んで 転々てんてん
思うあの児が まぶたに浮かび
よるじゅうつうつ 夜明けが近い

あかときと かけは鳴くなり よしゑやし ひとりは けば明けぬとも
《朝来たと にわとりくが どでもえ ひとり寝るや 何時いつなと明けや》【寄物陳思】
                         ―作者未詳 巻十一・二八〇〇
 
思へども 思ひもかねつ あしひきの 山鳥やまどりの 長きこの
《忘れとこ 思うけどまた 思て仕舞う ひとり寝ならん この長いに》【寄物陳思】
                         ―作者未詳 巻十一・二八〇二
 
あしひきの 山鳥やまどりの しだり尾の 長々ながながを ひとりかも
《山鳥の 長いで この長い よるひとりで 寝んならんのか》【寄物陳思】
                         ―作者未詳 巻十一・二八〇二 或る本



――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
<訳してみよう万葉集>へ

【万葉歌みじか物語】はこちら



<万葉歌みじかものがたり>へ





■リンク先

      
      

■日めくり万葉集Vol・2(003)かくばかり

2011年04月09日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は ご覧になれません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【三月三十日】放映分

かくばかり ひつつあらずは 高山の 磐根いはねきて 死なましものを

《いっそ死の こんなくるして 悩むなら 奥山行って 岩枕して》
                         ―磐姫皇后―(巻二・八六)



【万葉歌みじかものがたり】《わが黒髪に》

磐姫いわのひめは 深く 仁徳にんとくを おもっていた
葛城かつらぎ襲津彦そつひこの勢力を 後ろだてとしたとは言え 熾烈しれつな 皇位継承争いを勝ち抜き 
大王だいおうの地位を得たのは 仁徳の 知力と勇気
私は この世で 一番と言ってよい男の なのだ
でも でも でも でも 
これだけは  せない
私の 留守をいいことに あの手弱たおやかな あやつ 八田皇女やたのひめみこを きさきにするなんて

「姫さま そねみ心も 程々ほどほどが 良うございます」
とつぐときからの 老女が言う
「熊野もうでの帰途 難波の宮に寄らず 山城の この筒城宮つづきのみやはいられては 大王だいおうの顔が立ちませぬ」 
「お迎えの 使いが 再三さいさん られたでは ありませぬか」

【堺市・仁徳陵にある磐姫歌碑】

ついに 仁徳みずからのむかえが来る
平身低頭 諄々じゅんじゅんと説く 仁徳 
手を着かんばかりの 
磐姫いわのひめ 自尊が 許さない
「もう いい  って!」

(なぜ ついて かなかったのだろう
 いいえ  くものですか
 どうして わたしは こうも ・・・)

君が行き 長くなりぬ 山たづね むかへか行かむ ちにか 待たむ
《あんたはん 行ってしもうて なごうなる うちから行こかな それともとか》
                         ―磐姫皇后―(巻二・八五)
かくばかり ひつつあらずは 高山の 磐根いはねきて 死なましものを
《いっそ死の こんなくるして 悩むなら 奥山行って 岩枕して》
                         ―磐姫皇后―(巻二・八六)
ありつつも 君をばたむ 打ちなびく わが黒髪に しもくまでに
《死ぬもんか 生き続けたる あんた待ち うちの黒髪 しろうなるまで》
                         ―磐姫皇后―(巻二・八七)
秋の田の 穂のらふ 朝がすみ 何処辺いづへかたに わがこひまむ
《こんな恋 消えてもえで 霧みたい 行くとこうて ただよう恋は》
                         ―磐姫皇后―(巻二・八八)

愛 深きゆえ 逢わずにえし ふたり
奈良山のふもと 和泉いずみさと 
別れし陵墓りょうぼ 離れて和すか


――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
<訳してみよう万葉集>へ

【万葉歌みじか物語】はこちら



<万葉歌みじかものがたり>へ






■リンク先

      
      


■日めくり万葉集Vol・2(002)足柄の

2011年04月06日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は ご覧になれません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【三月二十九日】放映分

足柄あしがりの 刀比とひ河内かふちに づる湯の よにもたよらに 児ろが言はなくに

《足柄の 土肥とひみたい 揺れるな 気持あの児が 持つもんかいな》
                         ―東歌・相模国歌 巻十四・三三六八


【万葉歌みじかものがたり】《よにもたよらに》

手にした恋は  嬉しいが
なんぼうても せつないで

いとしあの児と 結ばれしたが
恋の不思議さ  結ばれた後
恋しせつい 逢いたい心
逢えば逢うほど  切なさ募る

芝付しばつきの 御宇良崎みうらさきなる ねつこぐさ 相見ずあらば れ恋ひめやも
御宇良崎みうらさき えるねつこの 草ちゃうが うて共寝んけりゃ 恋焦こがれはせんに》
                         ―東 歌 巻十四・三五〇八

かみ 伊奈良いならの沼の 大藺草おおゐぐさ よそに見しよは 今こそまされ
大藺草おおいぐさ はげしに繁る わしの恋 知る以前まえよりも 今が激しで》
                         ―東 歌 巻十四・三四一七
                       (柿本朝臣人麻呂歌集に出づ) 

足柄あしがりの 安伎奈あきなの山に こ船の しりかしもよ ここばがたに
安伎奈山あきなやま 船ろすんは うしろ引き 朝帰るんも 後髪うしろ引きやで》
                         ―東 歌 巻十四・三四三一

足柄あしがりの 土肥とひ河内かふちに 出づる湯の よにもたよらに 児ろが言はなくに
《足柄の 土肥とひみたい 揺れるな 気持あの児が 持つもんかいな》
                         ―東 歌 巻十四・三三六八

栲衾たくぶすま 白山風しらやまかぜの なへども 子ろが襲着おそきの ろこそしも
《山風が 寒て寝られん あの児欲し あの児の上着うわぎ あるだけしか》
                         ―東 歌 巻十四・三五〇九

かなしみ ればこと さなへば 心のろに 乗りてかなしも
きな児と 共寝たら五月蝿うるさい 寝なんだら 胸が詰って せつてならん》
                         ―東 歌 巻十四・三四六六

昨夜きそこそば 児ろとさしか 雲のうへゆ 鳴き行くたづの 間とほく思ほゆ
昨晩さくばんに 共寝たとこやのに 雲上くもうえの い鶴のや えろ以前まえみたい》
                         ―東 歌 巻十四・三五二二

春へ咲く ふぢ末葉うらばの 心安うらやすに さる夜ぞなき 児ろをしへば
《春来ても 心安らに 寝るない お前思うて 悶々もんもんとして》
                         ―東 歌 巻十四・三五〇四



――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
<訳してみよう万葉集>へ

【万葉歌みじか物語】はこちら



<万葉歌みじかものがたり>へ





■リンク先