犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(050)佐保山に

2011年09月28日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【六月三日】放映分

 佐保山に たなびく霞 見るごとに 妹を思ひ出 泣かぬ日はなし

《佐保山に 棚引く霞 見るたんび お前思うて 泣かん日いで》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻三・四七三)

【万葉歌みじかものがたり】おくと思へば》

葬儀 しょ七日と 日は過ぎる
多忙のまぎれに 隠れていた悲しみが よみがえ

かくのみに ありけるものを 妹もれも 千歳ちとせのごとく たのみたりけり
《こんななる 運命さだめやったに 二人して ずっと長生き 出ける思てた》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻三・四七〇)

家離いへさかり います我妹わぎもを とどめかね 山隠やまがくしつれ こころどもなし
《この家に らすするの 出けへんで 死なして仕舞しもた 情けないがな》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻三・四七一)

世間よのなかは 常かくのみと かつ知れど 痛き心は 忍びかねつも
 世の中は こんなもんやと 分かるけど 辛い気持は 耐えられんのや》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻三・四七二)

 佐保山に たなびく霞 見るごとに 妹を思ひ出 泣かぬ日はなし
《佐保山に 棚引く霞 見るたんび お前思うて 泣かん日いで》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻三・四七三)

昔こそ よそにも見しか 我妹子わぎもこが おくと思へば しき佐保山
何気なにげう 見てた山やに 佐保山は お前の墓と 思たらいとし》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻三・四七四)

索漠さくばくの思いの日が 過ぎていく
(恋にうつつを抜かし
 穏やかなさいわいが 何事もない日々にあること 気付かなんだ)
若気わかげの 移り気
手痛い  しっぺ返し
佐保 の山を 望むたび
おみなめへの思い 家持の胸に 深くみ入る


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■日めくり万葉集Vol・2(049)なかなかに

2011年09月24日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
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【六月二日】放映分

なかなかに 人とあらずは くはにも ならましものを 玉のばかり

かいころ なまじにひとで きるより どうせみじかい いのちやからに》【蚕に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇八六)



【万葉歌みじかものがたり】まし草と》

女の恋は 色々あるよ
健気けなげ娘に 後悔こうかい
あきらめ恋は 蚕になろか
嫉妬しっと心は 女の常か
 
浅茅あさぢはら 小野にしめふ 空言むなことも 逢はむと聞こせ 恋のなぐさに
浅茅あさじはら 小野にしめう 嘘でえ 「お」てうてや 気休きやすめなるわ》【浅茅に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇六三)
                       (小野に標結ふや=広い野原に標結うのは甲斐がない)
  
浅茅あさぢはら 小野にしめふ 空言むなことも 来むと知らせし 君をし待たむ
小野おのしめ 出任でまかせで 「今行く」て うたあんたを うち待つてるわ》【浅茅に寄せて】
                      ―作者未詳―(巻十二・三〇六三 或る本)
   
かくのみに ありける君を きぬにあらば 下にも着むと が思へりける
薄情はくじょうな あんな人やに ころもなら 身に着けかと 思てたなんて》【衣に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・二九六四)
  
なかなかに 何か知りけむ 我が山に 燃ゆるけぶりの よそに見ましを
なんでまた うっかりちぎり したんやろ てたかった そとからそっと》【煙に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇三三)
                        (我が山に燃ゆる煙=離れて見る→外に=外ながら)
  
朝日さす 春日かすがの小野に 置く露の ぬべきが身 しけくもなし
春日かすが小野おの 置く露ちゃうが うち命 消え入りやが もうしないで》【露霜に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇四二)
   
なかなかに 人とあらずは くはにも ならましものを 玉のばかり
かいころ なまじにひとで きるより どうせみじかい いのちやからに》【蚕に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇八六)
                                  (玉の緒は切れると短くなる)
  
あかときの ましくさと これをだに 見つついまして 我れとしのはせ
共寝ともねけ 目まし用に この草を 見てこのうちを 思いしてや》【草に寄せて】
                          ―作者未詳―(巻十二・三〇六一)
                                 (他の女と寝たと思うての皮肉)


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■日めくり万葉集Vol・2(048)山高み

2011年09月21日 | 日めくり万葉集
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【六月一日】放映分

・・・山高み 川雄大とほしろ
      野を広み 草こそしげ
          鮎走る  夏の盛りと・・・


《山は高いし 川幅広い 野原広うて 草多数よけ茂る 鮎が跳ね飛ぶ 夏が来たら》



【万葉歌みじかものがたり】大黒おほぐろに》

都より戻り かみの任務に戻った 家持
黙りこくり  不機嫌であった
自分 でも 判っていた
上京 この方 半年
あれほど 心捉えていた 歌がうたえない
都の風が けた封を 又もや閉じたのだ

以来 半年の 歌なし
晴れぬ 心の 泣き面に 蜂が刺す

大君おほきみの とほ朝廷みかどぞ み雪降る 越と名にへる 天離あまざかる ひなにしあれば 山高み 川雄大とほしろし 野を広み 草こそしげき 
《国の役所の この越国こしくには み雪降る越 言われる様に 遠く離れた くにではあるが 山は高いし 川幅広い 野原広うて 草多数よけ茂る》
鮎走る 夏の盛りと 島つ鳥 鵜養うがひともは 行く川の 清き瀬ごとに かがりさし なづさひのぼる 
《鮎が跳ね飛ぶ 夏が来たら 手綱たづなあやつる 鵜飼の漁師 清い瀬毎に かがりいて 流れさお差し 川さかのぼる》
つゆしもの 秋に至れば 野もさはに 鳥多巣すだけりと 大夫ますらをの ともいざなひひて 
しも置く秋の 季節になると 野原いっぱい 鳥つどうので 仲間誘うて 鷹狩りに出る》 
鷹はしも 数多あまたあれども 矢形やかたの 大黒おほぐろに 白塗しらぬりの 鈴取り付けて 朝狩りに 五百いほつ鳥立て ゆふ狩りに 千鳥踏み立て 追ふ毎に 許すこと無く 手放たばれも をちもかやすき 
《鷹とうても いろいろあるが 矢形やかたの尾持つ 我が大黒おおぐろは 銀の鈴付け ばしてみると 朝追い立てた 五百の鳥も 夕にりだす 千もの鳥も 狙いたがわず とめて捕って 放ち舞い降り 自在じざいの鳥や》
これをきて またはあり難し さ並べる 鷹は無けむと こころには 思ひ誇りて ゑまひつつ 渡るあひだに 
《この鷹いて おなじの鷹は 滅多めったに無いと 心で思い ほくそみして 誇っていたが》
たぶれたる しこおきなの ことだにも 我れには告げず との曇り 雨の降る日を 鷹狩とがりすと 名のみをりて
《間抜けじじいの 大馬鹿者が わしに一言 断りなしに 雲立ち込める 雨降る日ィに 鷹狩り行くと 出かけた挙句あげく
三島野みしまのを 背向そがひに見つつ 二上ふたがみの 山飛び越えて 雲がくり かけにきと 帰り来て しはぶぐれ・・・・・・ 
《「大黒鷲は 三島野みしまのあとに 二上山ふたがみやまの 山飛び越えて 雲に隠れて 何処どこぞへた」と 息せき切って 告げ言う始末・・・》
                                   【「彼面此面をてもこのもに」へ続く】

松反まつがへり しひにてあれかも さ山田の をぢがその日に 求め逢はずけむ
《老いぼれの あの山田じじ けたんか その日のうちに よう探せんと》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻十七・四〇一四)


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■日めくり万葉集Vol・2(047)我が背子は

2011年09月17日 | 日めくり万葉集
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【五月三一日】放映分

我が背子は 物な思ひそ 事しあらば 火にも水にも 我れけなくに

 《あんたもう 気遣きづかなや いざ時 火かて水かて うちいとわんで》
                         ―安倍女郎あべのいらつめ―(巻四・五〇六)



【万葉歌みじかものがたり】 にも水にも》

 二人誓えば この世の中は
 恐いものなぞ 何処どこあるもんか)

今さらに 何をか思はむ うちなびき 心は君に 寄りにしものを
《もう何も 思わんとくは この心 丸ごとあんた 寄って仕舞しもたで》
                         ―安倍女郎あべのいらつめ―(巻四・五〇五)
我が背子は 物な思ひそ 事しあらば 火にも水にも 我れけなくに
《あんたもう 気遣きづかなや いざ時 火かて水かて うちいとわんで》
                         ―安倍女郎あべのいらつめ―(巻四・五〇六)

(雨が降ろうと 雪降りよと
 軒を貸したら 母屋おもやに及ぶ)

石上いそのかみ 降るとも雨に つつまめや 妹にはむと 言ひてしものを
《雨って 来たからうて どやんや お前におて うたんやから》
                         ―大伴像見おおとものかたみ―(巻四・六六四)
らば むと思へる かさの山 人にな着せそ れはつとも
《雨たら かぶろ思てる 御笠山みかさやま 濡れた来ても したらあかん》 
                         ―石上乙麻呂いそのかみのおとまろ―(巻三・三七四)
                          (笠の山=女性を見たて)

(心おどるよ たまわり物は
 例え魂胆こんたん 見え隠れでも)

玉にき たずたばらむ 秋萩の うれわくらばに 置ける白露
《秋萩の 枝先えださき置いた 白露を 消さんとつなぎ くだされわしに》
                         ―湯原王ゆはらのおおきみ―(巻八・一六一八)
沖辺おきへ行き を行き今や 妹がため 我がすなどれる ふしつかふな
《お前にと あちこち行って やっとこさ 捕った小鮒こぶなや まだ生きてるで》
                         ―高安王たかやすのおおきみ―(巻四・六二五)

(雪は降る降る あの人んか
  雪と一緒に 埋もれてみたい)

真木まきの上に 降り置ける雪の しくしくも おもほゆるかも さへ我が背
《木の上に 降りもる雪 しきりやで しきり恋しい 今晩きょうにもてや》
                         ―他田廣津娘子おさたのひろつのおとめ―(巻八・一六五九)



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■日めくり万葉集Vol・2(046)うちひさす

2011年09月14日 | 日めくり万葉集
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【五月三十日】放映分

うち日さす 宮道みやぢを人は 満ち行けど ふ君は ただ一人のみ

 《大通り 人仰山ぎょうさんに 通るけど うち思うは 一人だけやで》
                          ―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二三八二)



【万葉歌みじかものがたり】《我がふ君は》

巻の七から 十二まで まれし巻の そこここに
人麻呂歌集 数多あまたある 歌の習いに よとてか
いにしえ歌の お手本を 先に並べた 編み姿
そぞろ歩きに 巻々まきまきで 拾い探して 集めみた

人麻呂歌集 歌かたち 短歌多くて 三百余 
 に旋頭歌 三十五 長歌も少し 含まれる
歌の題材 豊かにて 正述せいじゅつ心緒しんしょ 比喩ひゆの歌
寄物陳思きぶつちんしに 相門歌そうもんか 七夕たなばた多て 三十九
問答うたに りょの歌 はるあきふゆの ぞうの歌

正述せいじゅつ心緒しんしょ 何物ぞ ただ心緒おもいを 述べるとは
心思いを 直接に 物に寄せずに うたう歌


ただの心の 代表は 
言わずもがな の 恋の歌

先ずの手始め うぶうた集め
心思うが 口にはせん
垣間見た だけ 心は弾む
清ら な思い あの児に届け

うち日さす 宮道みやぢを人は 満ち行けど ふ君は ただ一人のみ
《大通り 人仰山ぎょうさんに 通るけど うち思うは 一人だけやで》
                          ―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二三八二)
垂乳根たらちねの 母が手はなれ かくばかり すべなきことは いまだせなくに
かあちゃんの 手元離れて うちこんな ない気ぃ もう初めてや》
                          ―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二三六八)
白栲しろたへの 袖をはつはつ 見しからに かかるこひをも れはするかも
《白い袖 ほんのちょっぴり 見ただけで こんな切無せつない 恋するなんて》
                          ―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四一一)
朝影に が身はなりぬ 玉かきる ほのかに見えて にし子ゆゑに
恋苦くるしいて こんなせたで ちらと見て かして仕舞しもた あの児の所為せいで》
                          ―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二三九四)
心には 千重ちへに思へど 人に言はぬ が恋妻を 見むよしもがも
 心秘め 胸いっぱいに 思うてる わしのあの児に どしたら逢える》
                          ―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二三七一)
妹があたり 遠く見ゆれば あやしくも れは恋ふるか 逢ふよしなしに
《あの児いえ 遠く見えてる それだけで 胸ときめいた 逢えもせんのに》
                          ―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四〇二)
たまさかに 我が見し人を 如何いかならむ よしをもちてか また一目ひとめ見む
偶々たまたまに 見掛けたあの児 今度また 見る切っ掛けが いもんやろか》
                          ―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二三九六)
玉くせの 清き川原かはらに みそぎして いはふ命は 妹がためこそ
 清らかな 川原に出かけ 身ぃ清め 命祈るん あの児のためや》
                          ―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四〇三)



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■日めくり万葉集Vol・2(045)はね蘰

2011年09月10日 | 日めくり万葉集
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【五月二七日】放映分

はねかづら 今するいもが うら若み みみいかりみ 付けし紐

 《まだうぶな かずらの児やで 笑いかけ しかりつけして ひもほどくんや》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六二七)



【万葉歌みじかものがたり】みみいかりみ》

深まる仲は ちぎりへ進み
結べば男 もう有頂天うちょうてん
この 児手にした 喜ぶ胸に
惚気のろけ心が 知らずと湧くぞ

天地あめつちの 寄り合ひのきはみ たまの 絶えじと思ふ いもがあたり見つ
《いつまでも 愛し続け 思うてる あの児とこ 見た見た見たで》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七八七)
 天地の寄り合う極み=天地が接する遙か彼方までの長さ=長時間)
  
玉桙たまほこの 道行きぶりに 思はぬに いも相見あひみて 恋ふるころかも
たまさかの 道の往き来いきで お前い がれるんや このごろずっと》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六〇五)
  
まよき をか見むと 思ひつつ 長く恋ひし いもに逢へるかも
まゆかゆて えるん誰か おもてたら がれ続けた お前たがな》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六一四 或る本)
  
はねかづら 今するいもが うら若み みみいかりみ 付けし紐
《まだうぶな かずらの児やで 笑いかけ しかりつけして ひもほどくんや》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六二七)
                         (はねかづら=女子成人の祝いに着ける)
若草の にい手枕たまくらを まきめて をやへだてむ 憎くあらなくに
新妻にいづまと はじめて共寝たで 一晩ひとばんも っておけるか 可愛かわいやに》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五四二)
  
大君おほきみの 御笠みかさへる 有馬菅ありますげ ありつつ見れど 事なき我妹わぎも
《ずううっと 見続けてても え児やで 悪いとこなぞ 有馬菅ありますげかさ――ありませんがな――》
                                       寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七五七)
                                  (有馬ありま→ありつつ)
奥山の いはもとすげの 根深くも 思ほゆるかも が思ひづま
すがの根は こ張るよ 妻のやつ わしの心の るよ》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七六一)



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■日めくり万葉集Vol・2(044)君なくは

2011年09月07日 | 日めくり万葉集
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【五月二六日】放映分

君なくは なぞよそはむ 櫛笥くしげなる 黄楊つげ小櫛をぐしも 取らむとも思はず

綺麗ぎれいに する気もせんわ 黄楊つげぐしも 手に仕様しょ思わん あんたらんに》 
                         ―播磨娘子はりまのおとめ―(巻九・一七七七)



【万葉歌みじかものがたり】かへらばかへれ》
帰る とならば 心は先へ
お前 待つ家 この目に浮かび
船路ふなじ波間なみまに 強風あらしが来ても
はやる心は 押さえは出来ん

土師水道はにしのみみち筑紫より京へ上る海路にて】
大船おほぶねを 漕ぎの進みに いはに触れ かへらばかへれ 妹にりては
荒波なみ乗って 岩で転覆てんぷく するなら お前にはよう 逢えるてなら》 
                         ―土師水道はにしのみみち―(巻四・五五七)
ちはやぶる 神のやしろに 我がけし ぬさたばらむ 妹にくに
《神さんよ ささげたぬさを 返してや こんな海荒れ 妻えんなら》
                         ―土師水道はにしのみみち―(巻四・五五八)

帰る 別れは ここでも同じ
任地 暮らしで 生まれた恋は
置いて行かねば ならぬが運命さだめ
辛さまぎらす 空しい約束ちか

【藤井むらじ 豊後から遷任 京へのぼる時】
明日あすよりは 我れは恋ひむな 名欲山なほりやま いは踏みならし 君が越えなば
明日あしたから うち恋焦こがれるで 名欲山なほりやま いわみあんた 越えて行ったら》
                         ―娘子おとめ―(巻九・一七七八)
いのちをし まさきくもがも 名欲山なほりやま いは踏みならし またまたも
何時いつまでも 達者たっしゃりや 名欲山なほりやま いわみ越えて またるよって》
                         ―藤井広成ふじいのひろなり―(巻九・一七七九)

石川君子いしかわのきみこ 播磨から遷任 京へのぼる時】
絶等寸たゆらきの 山のの 桜花 咲かむ春へは 君し偲はむ
絶等寸たゆらきの 峰の桜花さくらの 咲く春が たらあんたを しのぶんやろな》
                         ―播磨娘子はりまのおとめ―(巻九・一七七六)
君なくは なぞよそはむ 櫛笥くしげなる 黄楊つげ小櫛をぐしも 取らむとも思はず
綺麗ぎれいに する気もせんわ 黄楊つげぐしも 手に仕様しょ思わん あんたらんに》 
                         ―播磨娘子はりまのおとめ―(巻九・一七七七)

馴染なじみ来たった ひななる景色
 それとも鏡山やまは 誰ぞのことか)
【豊前の国から 京へのぼる時】
梓弓あづさゆみ 引き豊国とよくにの かがみやま 見ずひさならば 恋しけむかも
《豊の国 そこの鏡の 山別れ ずっと見んなら がれるやろな》
                         ―按作益人くらつくりのますひと―(巻三・三一一)



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■日めくり万葉集Vol・2(043)秋さらば

2011年09月03日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【五月二五日】放映分

秋さらば 見つつしのへと 妹が植ゑし やどのなでしこ 咲きにけるかも

 《撫子なでしこの 花咲いとおる 秋来たら 楽しみ見よと お前の植えた》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻三・四六四)



【万葉歌みじかものがたり】せきも置かましを》

何事 もなく 過ぎていく日々
穏やかな 時間ときが 流れている
 恋とは 気疲れの伴うものよ)
 家がいい)
落ち着き を取り戻した 家持の家

それも つかの間
天平 十一年(739)夏六月
家持 を 悲劇が襲う
妻 おみなめの死
幼馴染おさななじみ 大伴書持ふみもちも駆け付ける

今よりは 秋風寒く 吹きなむを いかにかひとり 長き夜を寝む
 これからは 秋の風吹き 寒いのに 長い夜ひとり 寝るのん寂し》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻三・四六二)

長きを ひとりやむと 君が言へば 過ぎにし人の 思ほゆらくに
《長い夜を 独りで寝るて 聞いたとき うなった人 目ぇ浮かんだで》
                         ―大伴書持おおとものふみもち―(巻三・四六三)

秋さらば 見つつしのへと 妹が植ゑし やどのなでしこ 咲きにけるかも
撫子なでしこの 花咲いとおる 秋来たら 楽しみ見よと お前の植えた》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻三・四六四)
うつせみの 世は常なしと 知るものを 秋風寒み しのひつるかも
 世の中は 無常なもんと 知ってるが 秋風吹くと 思い出すがな》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻三・四六五)

我がやどに 花ぞ咲きたる そを見れど こころも行かず しきやし 妹がありせば 水鴨みかもなす 二人ふたり並び 手折たをりても 見せましものを
《庭で咲く 花を見たかて 面白おもろない もしもお前が ったなら 並んで花を 手折たおるのに》
うつせみの れる身なれば 露霜つゆしもの ぬるがごとく あしひきの 山道やまぢをさして 入日いりひなす かくりにしかば
《人の定めや 仕様しょうなしに 露霜みたい はかのうに 帰らん旅へ 出て仕舞しもて 日ィ沈むに うなった》
そこ思ふに 胸こそ痛き 言ひもえず 名づけも知らず あともなき 世間よのなかにあれば むすべもなし
《思い出すたび 胸痛い 嘆く言葉も 見当たらん 消えてく定め どもならん》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻三・四六六)

時はしも 何時いつもあらむを こころ痛く にし我妹わぎもか 若子みどりごを置きて
《人何時いつか 死ぬけどなんで 今やねん わし悲しませ 幼子おさなご残し》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻三・四六七)

でて行く 道知らませば あらかじめ 妹をとどめむ せきも置かましを
《もしわしが あの世行く道 知ってたら お前の行く手 ふさいだったに》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻三・四六八)
妹が見し やどに花咲き 時はぬ 我が泣く涙 いまだなくに
 時過ぎて お前見た庭 花咲いた わしの涙は まだ乾かんが》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻三・四六九)



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