犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(180)こもりくの

2013年02月27日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【十二月五日】放映分
隠口こもりくの 泊瀬はつせ小国をぐにに よばひせす 我が天皇すめろきよ 
泊瀬はつせくに 妻問つまどてる おうさんよ》 
おくとこに 母はねたり どこに 父はねたり 起き立たば 母知りぬべし でて行かば 父知りぬべし
《お奥床おくどこ 寝ておるで おとう戸口とぐちで 寝とるがな 起きそしたら お知るで 出て行こしたら お分かる》
ぬばたまの けゆきぬ 此処ここだくも 思ふごとならぬ こもづまかも
《だんだん空が こうなる どもならんのか ええいもう 何ともならん 内緒ないしょづまやわ》
                          ―作者未詳―(巻十三・三三一二)


【万葉歌みじかものがたり】《この戸ひらかせ》

問答長歌ちょうか 珍しい 古い歌謡の 名残なごりかも
天皇てんのうさんの 妻問つまどいも 警戒つて はいられん
幼馴染おさななじみの 似合いの児 取られんにと 苦労する
鏡を売って 馬えと まるで一豊かずとよ 妻みたい
紀伊の白玉 立派ええ玉や 欲しが新妻にいづま 待つ寂し


はつ王さん 妻問つまどいするよ
るからんか 腕前うでまえ次第しだい
  
隠口こもりくの 泊瀬はつせの国に さよばひに 我がたれば たなぐもり 雪は降り さぐもり 雨は降り 
泊瀬はつせくに わしが妻問つまどい たならば 空はくもって 雪が降り くもくもって 雨も降る》 
つ鳥 きぎしとよむ いへつ鳥 かけも鳴く さは明け このは明けぬ 入りてかつむ この戸ひらかせ
《野ぉきじの 鳴声こえひびき 家のにわとり 鳴き立てる そうこするうち 夜ぉけた それでも共寝るぞ けんかこの戸》
                          ―作者未詳―(巻十三・三三一〇)
隠口こもりくの 泊瀬はつせ小国をぐにに 妻しあれば いしは踏めども なほしにけり
泊瀬はつせくに あの児るんで わしたで 石道いしみちやけど わしたんやで》
                          ―作者未詳―(巻十三・三三一一)
   
ぁとおの 警戒つて
待つ児可哀想かわいそ 思うよ出来ん

隠口こもりくの 泊瀬はつせ小国をぐにに よばひせす 我が天皇すめろきよ 
泊瀬はつせくに 妻問つまどてる おうさんよ》 
おくとこに 母はねたり どこに 父はねたり 起き立たば 母知りぬべし でて行かば 父知りぬべし
《お奥床おくどこ 寝ておるで おとう戸口とぐちで 寝とるがな 起きそしたら お知るで 出て行こしたら お分かる》
ぬばたまの けゆきぬ 此処ここだくも 思ふごとならぬ こもづまかも
《だんだん空が こうなる どもならんのか ええいもう 何ともならん 内緒ないしょづまやわ》
                          ―作者未詳―(巻十三・三三一二)
川の瀬の いし踏み渡り ぬばたまの 黒馬くろま来るは つねにあらぬかも
 川の瀬の 石踏み越えて あんた乗せ 黒馬来るん 毎晩欲しな》
                          ―作者未詳―(巻十三・三三一三)



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■日めくり万葉集Vol・2(179)白雲の

2013年02月23日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
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【十二月二日】放映分
白雲の 竜田たつたの山の つゆしもに 色づく時に うち越えて 旅行く君は 
《木々の色く 竜田を越えて いくさの旅に 出られる宇合卿あんた
五百重いほへ山 い行きさくみ あた守る 筑紫に至り 山のそき 野のそき見よと ともを あかつかは
《山々越えて 筑紫に行って 監視ものみの家来 あちこちって》


【万葉歌みじかものがたり】早く 来まさね》

「蟲麻呂 このたびの 西海道さいかいどうの旅 同行かなわぬぞ」
難波 の宮造営が成った 翌 天平四年(732)
宇合うまかいは 西海道さいかいどう節度使せつどしの任を受けた
軍旅ぐんりょじゃ そなたは 役にたたぬ」

主従 として 難波との 往還を繰り返した 竜田
秋 黄葉もみじの照り映える 小鞍おぐらの峰
蟲麻呂は わだかまり隠し うた

白雲の 竜田たつたの山の つゆしもに 色づく時に うち越えて 旅行く君は 
《木々の色く 竜田を越えて いくさの旅に 出られる宇合卿あんた
五百重いほへ山 い行きさくみ あた守る 筑紫に至り 山のそき 野のそき見よと ともを あかつかは
《山々越えて 筑紫に行って 監視ものみの家来 あちこちって》
山彦やまびこの こたへむきはみ 谷蟇たにくぐの さ渡るきはみ 国形くにかたを し給ひて 冬こもり 春さり行かば 飛ぶ烏の 早く来まさね 
《国の隅々すみずみ 巡視させて回り 任務を終えて また春来たら どうぞ早くに お戻りなされ》
竜田道たつたぢの 岡辺をかへの道に つつじの にほはむ時の 桜花 咲きなむ時に 山たづの 迎へ参出まゐでむ 君がまさば
《竜田の道に べにばなツツジ 桜の花の 咲く山道に 迎えに来ます 戻られたなら》
                         ―高橋蟲麻呂たかはしのむしまろ―(巻六・九七一)
千万ちよろづの いくさなりとも ことげせず 取りてぬべき をのことぞ思ふ
敵方てきがたが 千万あろと 世迷言よまいごと 言わず討ち取る 男や宇合卿あんた
                         ―高橋蟲麻呂たかはしのむしまろ―(巻六・九七二)

 さらばじゃ 蟲麻呂
 そなたの顔 き物が 落ちたみたいだの
 もう  宮仕えはいい
 そなたは自由じゃ 心まかせに生きるがい」
馬上からの 言葉を残し 宇合うまかいの背が 遠ざかる

(今回の旅のはずし 気づかいからであったか)
ひざまずき こうべを垂れた 蟲麻呂の肩 
黄葉もみじの錦が 降りかかる



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■日めくり万葉集Vol・2(178)夜を寒み

2013年02月20日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
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【十二月一日】放映分

さむみ 朝戸あさとを開き で見れば 庭もはだらに み雪降りたり
夜通よどおしに 寒かったんで 出てみたら 庭にうっすら 雪もってる》
                          ―作者未詳―(巻十・二三一八)


【万葉歌みじかものがたり】あまつみ空は》

冬の雑歌ぞうかは 雪と梅 数も少ない 冬枯れか
少し合わぬは うたに まと仕様しょうとて 無理したか


奈良 に降る雪 昔も今も
さほど大雪 降るのはまれ
空をおおって 雪雲出ても
降るはあわゆき 庭薄化粧うすげしょう

奈良山ならやまの みねなほらふ うべしこそ まがきしたの 雪はずけれ
奈良山やまの峰 雪けぶってる それでやな まがきした雪 消えとらんのは》
                          ―作者未詳―(巻十・二三一六)
  
はなはだも 降らぬ雪ゆゑ こちたくも あまつみ空は くもらひにつつ
たいしても 降らん雪やに えらいまた 空一面の 雪雲ゆきぐもやんか》
                          ―作者未詳―(巻十・二三二二)
  
こと降らば 袖さへ濡れて 通るべく 降りなむ雪の 空ににつつ
るんなら 袖とおるほど 雪降りや 空で降り消え とらんでから》
                          ―作者未詳―(巻十・二三一七)
  
我が袖に 降りつる雪も 流れ行きて いも手本たもとに い行きれぬか
《わしの袖 降りかかる雪 吹き流れ あの児の手ぇに からんもんか》
                          ―作者未詳―(巻十・二三二〇)
  
我が背子せこを 今か今かと で見れば 沫雪あわゆき降れり 庭もほどろに
《あの人が 今に来るかと 出てみたら 沫雪あわゆき庭に うっすらやんか》
                          ―作者未詳―(巻十・二三二三)
  
沫雪あわゆきは 今日けふはな降りそ 白栲しろたへの 袖まきさむ 人もあらなくに
沫雪あわゆきよ 今日きょうりなや この袖を して巻く人 らんのやから》
                          ―作者未詳―(巻十・二三二一)
  
ゆふされば 衣手ころもで寒し 高松の 山の木ごとに 雪ぞ降りたる
夕暮ゆうぐれに 袖口寒い 高松たかまつの 山の木々きぎみな 雪もってる》
                          ―作者未詳―(巻十・二三一九)
  
さむみ 朝戸あさとを開き で見れば 庭もはだらに み雪降りたり
夜通よどおしに 寒かったんで 出てみたら 庭にうっすら 雪もってる》
                          ―作者未詳―(巻十・二三一八)
  
あしひきの 山に白きは 我がやどに 昨日きのふゆふへ 降りし雪かも
《山々に しろう見えるん 昨夜ゆうべうち 庭先った 雪なんやろか》
                          ―作者未詳―(巻十・二三二四)



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■日めくり万葉集Vol・2(177)燈火(ともしび)の

2013年02月13日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
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【十一月三十日】放映分
灯火ともしびの 明石あかし大門おほとに らむ日や ぎ別れなむ いへのあたり見ず
《日ィ沈む 明石の大門おおと 振り向くと 大和とおなる 家さえ見えん》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・二五四)

【万葉歌みじかものがたり】《》
ぎ別れなむ
石見いわみの国
 岩を見る国か・・・)
荒涼こうりょうたる 景色が 目に浮かぶ
(歌読みの わしが 何故なにゆえ・・・
宮仕えの つらいところか)

 波風 まだ静まらぬと云うに・・・)
御津みつの崎 波をかしこみ こもりの 船なる君は 野島ぬしまにと
さきで 風波けて 待つ船の 船頭せんど「野島へ 船そ」うた》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・二四九)

赴任の船は 難波の津を離れ 天離あまざかる ひなへと
人麻呂は 船縁ふなべりに立っている 
うつろな目 岸辺の風景が 過ぎていく

わびしさ つのる 旅か)
たま刈る 敏馬みぬめを過ぎて 夏草の 野島のしまの崎に 舟近づきぬ
にぎやかな 藻を刈る敏馬みぬめ 後にして 草ぼうぼうや 野島の岬》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・二五〇)

(おお いい日だ 格好かっこうの歌情景 なのに・・・)
灯火ともしびの 明石あかし大門おほとに らむ日や ぎ別れなむ いへのあたり見ず
《日ィ沈む 明石の大門おおと 振り向くと 大和とおなる 家さえ見えん》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・二五四)

 妻が 思い出される)
淡路あはぢの 野島の崎の 浜風に いもむすびし ひも吹きかへす
 無事でねと お前結んだ この紐を 野島の風が 吹き返しよる》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・二五一)

(思いのほか 小ぶりな 赴任ぶねであった)
荒拷あらたへの 藤江ふぢえの浦に すずき釣る 海人あまとか見らむ 旅行くわれを
《藤江浜 すずき釣ってる 漁師りょうしやと 見られんちゃうか わし旅やのに》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・二五二)

(旅ごころ 湧く 伝説の印南いなみ国原くにはら
 も高い もう かなり来たな)
名ぐはしき 印南いなみの海の 沖つ波 千重ちへかくりぬ 大和島根は
稲見いなみうみ 次から次と 来る波に 隠れて仕舞しもた 大和の山々やまは》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・三〇三)

内海うちうみの島々 もたげる 歌ごころ)
大君おほきみの とほ朝廷みかどと ありがよふ 島門しまとを見れば 神代かみよおもほゆ
《にぎやかに 筑紫行きの 船とおる じま見たら ろ神秘やな》
                         ―柿本人麻呂かきのもとのひとまろ―(巻三・三〇四)

過ぎゆく波頭なみがしら 景観の展開
歌人うたびと人麻呂が 取り戻る



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■日めくり万葉集Vol・2(176)筑波嶺の

2013年02月09日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
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【十一月二十九日】放映分
筑波嶺つくばねの 彼面をても此面このもに 守部もりへゑ 母いれども たまぞ逢ひにける
《筑波嶺の あちこちにる 番人ばんみたい お監視てても 心はうで》
                          ―東 歌―(巻十四・三三九三)


【万葉歌みじかものがたり】石崩いはくえの》

恋した女 強うなる 邪魔するもんを 蹴散らして

乙女 育って 年頃迎え
 に目覚めて あの人恋し
逢瀬おうせ思うて 高鳴る胸を
隠し待つ 身の 心が痛い

我が背子せこを どかも言はむ 武蔵野むざしのの うけらが花の 時無きものを
《あの人に どうんや この思い しのび続ける うけらの花や》
                          ―東 歌―(巻十四・三三七九)
                          (うけら=山野自生の菊科多年草 白または淡紅色の目立たない花が咲く)
高きに 雲のくのす 我れさへに 君に着きなな 高嶺たかねひて
《高い山 雲くっつくよ うちもや あんたくっつく え山おもて》
                          ―東 歌―(巻十四・三五一四)
遅速おそはやも 君をし待たむ むかの しひ小枝さえだの 時は過ぐとも
おそうても うち待ってるわ しいの枝 伸びて行くに 日ィ掛かっても》
                          ―東 歌―(巻十四・三四九三 或る本)
とほくの 野にも逢はなむ 心なく 里のみなかに 逢へるなかも
《人目い 遠い野原が 良かったで 村中むらなかうて 気ィかん人》
                          ―東 歌―(巻十四・三四六三)
阿遅可麻あぢかまの かたにさく波 平瀬ひらせにも 紐くものか かなしけを置きて
干潟ひがた波 広う広がる 手ぇ広げ のべつ許すか 良男あんたるのに》
                          ―東 歌―(巻十四・三五五一)

 うなるのは 恋した女
ぼやぼや 男 尻目に走る
 の反対 物ともせんと
恋の闇路やみじは 向こ先見えん

恋しけば 袖も振らむを 武蔵野むざしのの うけらが花の 色になゆめ
《恋しとき うち袖振るわ あんたさん 表情おもて出さんと じっと待ってて》
                          ―東 歌―(巻十四・三三七六)
鎌倉の 見越みごしの崎の 石崩いはくえの 君がゆべき 心は持たじ
《見越し崎 くずれる岩と ちゃうねんで 嘆かす心 うち持たへんわ》
                          ―東 歌―(巻十四・三三六五)
筑波嶺つくばねの 彼面をても此面このもに 守部もりへゑ 母いれども たまぞ逢ひにける
《筑波嶺の あちこちにる 番人ばんみたい お監視てても 心はうで》
                          ―東 歌―(巻十四・三三九三)
かみ毛野けの 佐野の舟橋ふなはし 取りはなし 親はくれど さかるがへ
《佐野にある 舟橋はずし れんに 親がしたかて うち別れんで》
                          ―東 歌―(巻十四・三四二〇)



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■日めくり万葉集Vol・2(175)ぬばたまの

2013年02月06日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
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【十一月二十八日】放映分
ぬばたまの けぬれば 久木ひさきふる 清き川原に 千鳥しば鳴く
よる更けた 久木えてる 川原かわはらで 千鳥啼き声 しきりにとる》
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻六・九二五)

【万葉歌みじかものがたり】千鳥 しば鳴く》

 わかったぞ」
突拍子とっぴょうしもない声が がる
 そうじゃ そうだったのか なるほど」
紀伊国きのくに行幸みゆきの 献上歌を反芻はんすうする 赤人
おのがものとする歌は 如何いかにすれば・・・
己が心を 素直にうたうには・・・
 を探っていた赤人に 歌が教えている
(出来てるではないか
 長歌を受けつつ 反歌の心 別を見て
  隠されていたのだ 己が心が・・・)
人麻呂 の重圧が 遠のいて行く

神亀じんき二年(725)夏五月
吉野 離宮
山川を背に 赤人は うた
その声は 自信にみなぎり 
川のとどろきを打ち消すかに響く

やすみしし 我ご大君おほきみの たからす 吉野の宮は たたなづく 青垣隠あをかきごもり 川なみの 清き河内かふち
 春べは 花咲きををり 秋されば 霧立ち渡る 

天皇おおきみが おおさめなさる 吉野宮 かさなる山に 囲まれて 水の清らな 川淵かわふち
 春には花が 咲きあふれ 秋に川霧 立ち込める》
その山の いやますますに この川の 絶ゆること無く ももしきの 大宮人は 常にかよはむ
《山益々に 繁るに 川滔々とうとうと 絶えんに 大宮人ひとはずうっと かよてくる》
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻六・九二三)
み吉野の 象山きさやまの 木末こぬれには ここだもさわく 鳥の声かも
《吉野山 象山きさやま木立ち こずえさき 鳥無数いっぱいに さえずる朝や》
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻六・九二四)
ぬばたまの けぬれば 久木ひさきふる 清き川原に 千鳥しば鳴く
よる更けた 久木えてる 川原かわはらで 千鳥啼き声 しきりにとる》
                         ―山部赤人やまべのあかひと―(巻六・九二五)
長歌 と繋がりのない反歌
きょを突かれたかの 沈黙
やがて  
みかどの 大きなうなづきを見て
どっと 湧く歓声
さわやかな余韻よいんが広がる
その反歌は 儀礼にのっとった長歌を離れ 
別の美をうたい上げていた

辞を低くし 謙虚けんきょにじませる 赤人




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【古事記ものがたり】への誘い
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■日めくり万葉集Vol・2(174)花細(ぐは)し

2013年02月02日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
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【十一月二十五日】放映分
花ぐはし あしかきしに ただ一目ひとめ 相見あひみし子ゆゑ 千度ちたび嘆きつ
またぞろに 溜息ためいき出るん 垣根し ちらと目のた あの児の所為せいや》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五六五)
  

【万葉歌みじかものがたり】かみくらむ》

巻十一に 納めるは 四百九十しひゃくくじゅうの 歌の数
人麻呂歌集かしゅを 除いても 三二九さんにいきゅうの 大歌群
ここに集めし 内容は 全て揃って 相聞そうもん
万葉集の 又の名を 恋歌こいうた歌集と 言う所以ゆえん
旋頭歌せどうか 短歌 歌かたち 内容表現 いろいろに
正述せいじゅつ心緒しんしょ 問答 寄物陳思きぶつちんしに 比喩ひゆの歌

万葉集に む形 編者意向の うたじゅん
 形式と 表現の 種類同じを 並べしが
これら全てを きほぐし 歌内容に 目を留めて
恋の諸相しょそうを 拠所よりどこに 並べてみたで ご覧あれ


 の始まり 昔も今も
何のことない 一寸ちょとした弾み
男単純 見た目にれる
惚れてのぼせて あとも出来ん

奥山の がくりて 行く水の おと聞きしより つね忘らえず
さわやかな かくながれの 水音の 評判ひょうばん聞いて 気もそぞろやで》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二七一一)
                                     (評判=あの児の評判)
振分けの 髪を短み 青草あをくさを 髪にくらむ いもをしぞ思ふ
かみの毛
が みじこ青草くさを わえ付け 大人おとなってる あの児可愛かいらし》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五四〇)
  
あしひきの 山鳥やまどりの尾の ひと越え 一目ひとめ見し子に 恋ふべきものか
《山一つ 越えたとこる あの児見て 一目れやて そんなんあるか》【寄物陳思】
                          ―作者未詳―(巻十一・二六九四)
                                            (
花ぐはし あしかきしに ただ一目ひとめ 相見あひみし子ゆゑ 千度ちたび嘆きつ
またぞろに 溜息ためいき出るん 垣根し ちらと目のた あの児の所為せいや》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五六五)
  
色にでて ひば人見て 知りぬべし 心のうちの こもづまはも
《顔色に がれたら 見つかるな 心で思う 内緒ないしょの児やで》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五六六)
  
心には 千重ちへしくしくに 思へども 使つかひらむ すべの知らなく
《心では せんまんもに 思うても 使つかかた わし分からへん》【正述心緒】
                          ―作者未詳―(巻十一・二五五二)

旋頭歌せどうか】元掛け合いの二人歌 一人二役歌もあり 五七七を二度詠う
正述せいじゅつ心緒しんしょ】心思いを直接に 物に寄せずに詠う歌
寄物陳思きぶつちんし】景色や物にたくし付け 心思いを詠う歌
比喩ひゆ歌】人の姿態すがたおこないや 感情こころを物に置き換えて 寓意ぐうい含ませ詠う歌
【問答】二つの歌を並べ置き 掛け合い機微きびを詠う歌




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